細野 当時、私が田中先生に原子力規制委員長をお願いしようと考えた一つの理由は、1999年のJCO臨界事故に関わっておられたことでした。JCOの事故と福島第一原発事故を比較して、気になることはありませんか。
田中 JCOは原子力業界の中では非常にマイナーな存在でした。一方、東電は日本の原子力を代表する存在です。しかしだからこそ、JCO事故の反省を踏まえていれば、福島の事故は起こさないで済んだような気もします。
JCOの事故でも、東京電力は事故対応に力を尽くしたとは思いますが、しかし本当の意味での反省はなかった。あれは原子力業界の端っこで起こった事故だとか、事故を起こしたのは当事者であるJCOに知識がなかったからだとか、そういうふうに言ってきたところがある。
でも福島の事故でわかったのは、東京電力の職員の知識も、私から見ると知識も心構えも非常に欠けていた。技術に対する傲慢さが、トップから現場まであったと思います。
細野 とはいえ、東京電力は電力会社の中でも最大手ですし、人材も層が厚い。慢心はあったと思いますが、あれだけシビアな事故を乗り越えるだけの、人的な厚みもあったとも思うんですが。
田中 それについては、私は若干疑問があります。実際に機器を作ってきたのは東芝とか日立ですから。
東電は大会社であるがゆえに、現場もほとんど下請け構造になっている。だから現場を知っているのはメーカーや下請けの人になる。こういう危機が起こった時に、立場にかかわらず総力を挙げて知恵を出し合うという姿勢が、東京電力には欠けていたと思います。