いまから20年後、高齢者人口がピークを迎えるころ、自治体の現場はどうあるべきか。
働き手の世代は確実に減る。道路も橋も上下水道も老朽化し続けるなか、福祉や教育などの住民サービスをどう担うのか。
この難問を議論してきた首相の諮問機関の地方制度調査会が答申案をまとめた。近く正式決定し、首相に手渡す。それを受けて、政府は関連する法案をつくり、国会に諮る。
自治体ごとに異なるデジタルの情報システムを標準化する。NPOや企業などと「公・共・私」の連携を深める。都道府県が市町村の業務を補完・支援する体制を強める。地方議員のなり手不足への対策を含め、内容は多岐にわたる。
そんななか、自治体の広域連携のあり方をめぐり、賛否両論が併記されたことに注目する。政府は慎重な対応を求められたといえる。
両論を大まかに言えば、政府主導の連携中枢都市圏構想などの法制度化に賛成か反対かだ。
「連携中枢」は中心的な市と近隣の市町村が医療、防災、観光、福祉、産業振興など幅広い分野で協力する。6年前に導入され、札幌から鹿児島まで約30地域、300ほどの市町村で展開。広島と山口、長崎と佐賀など県境をまたぐ例もある。
将来の苦境を見越し、法制度化でさらなる普及を促す考えに対し、全国町村会や全国市議会議長会などが反発した。
「連携中枢」は中心市に財源や権限が集まり、周辺が切り捨てられかねない。対等であるべき市町村の関係を上下関係にゆがめる。そんな理由からだ。
法制度化されれば、いま以上に政府が行財政の効率化を唱えて連携を迫るとの危惧もある。政府が財政上の優遇措置を設けて進めた「平成の大合併」の結果、役場が消えて疲弊した地域も多かった。その二の舞いを恐れているわけだ。
すでに地方自治法には広域連携の制度が多くある。ごみ処理などの「一部事務組合」、介護認定などでの「機関等の共同設置」、国や都道府県から権限を移管される「広域連合」など。これらを活用すれば、新たな法制度は無用との指摘もある。
広域連携の原点は、自治体の自主性が尊重され、地域の持ち味、個性を生かしあうことだ。医療や観光振興などテーマごとに自治体の組み合わせが違う場合もあるだろう。
20年後、さまざまな連携が不可欠なのは、政府も全自治体も共通認識といえる。
各地の「連携中枢」の検証を踏まえ、役割分担を考える。そんな姿勢が、政府にも自治体にも求められている。
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