持続化給付金 独立した検査が必要だ
2020年6月10日 07時07分
コロナ禍対策の持続化給付金事業の検査を経済産業省が行うことになった。だが経産省は事業を発注した当事者である。次々湧き起こる疑念の徹底的な解明は外部の独立した組織が行うべきだ。
給付金事業については一般社団法人サービスデザイン推進協議会が受託し、それを広告大手の電通に委託。さらに電通は関連会社を通じ人材大手のパソナなどに一部業務を外注した。その間の経緯や資金の流れに疑念が生じている。
梶山弘志経産相は給付金事業について、監査法人なども交えて「中間検査を行う」と発表。同時に検査とは別に有識者による会議を立ち上げ外部委託のあり方を議論する方針を示した。
しかし、外部の専門家を入れるとはいえ検査や議論はあくまで経産省主導型だ。問題の当事者が自らを調べる形であり、どこまで真相の解明が図られるのか強い疑問を持たざるを得ない。
この事業は協議会が二団体による入札を経て受託した。だが協議会に決まった理由や、協議会の活動実態について経産省、協議会のいずれからも納得のいく説明は依然ない。
協議会が電通に再委託する間に減った約二十億円についても不透明なままだ。国は振込手数料や人件費に充当したとしている。だが実際に誰が業務を行い、何件の給付につきどれだけの手数料がかかったのかなど詳細な情報は不明だ。電通に直接委託しなかった理由についても分かりにくい。
経産省は疑念を追及する野党に対し一部を黒塗りした資料を出した。これでは疑念解消に消極的だと指摘せざるを得ない。
そもそも給付金事業が各自治体ではなく民間に委託されることを、多くの国民は知らなかったはずだ。民間への委託理由が迅速な給付のためというのなら、事業はすでに失敗したと断じてもいいのではないか。
今後、国は巨額の税金が投入された事業全体についての実態解明を行い、その内容を包み隠さず公表しなければならない。そのためには当事者を外した別組織による調査は必要不可欠だ。
給付はコロナ禍で苦しむ多くの中小企業や個人事業主を救済する事業だ。そのための原資は国民が払った税である。
その使い道に疑念が生じた場合は、金額の多寡にかかわらず国は納税者が納得するまで調査する義務があることを改めて肝に銘じるべきだ。
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