幼女戦記inオーバーロード   作:とし3

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…軍人じゃないからどう成長するか予想がつかない。


漆黒・ショータイム(上)

 

 皆さまこんにちわ、ネム・エモット9歳です!

 

 カルネ村は優しい旅の魔法使いのゴウン様によって救われました。(記憶操作済)

 お父さんやお母さんは殺されてしまったけど、お姉ちゃんと私は毎日頑張って生きています。

 

 さて、ここで大切な話が報告があります。

 お姉ちゃんには反対されましたが私、ネム・エモットは冒険者になりました!

 エ・ランテルにきて、色々な人たちと知り合えました、見る物、聞く物、全てが勉強です。

 まだ、小さいのでいろいろと失敗してしまいますが、一つ一つできることを頑張っていきます。

 

 例えば、これまでは、小さくて、重いものをしっかりと持てませんでした。

 …でも何とか、できるようになりましたよ!

 

 

 ようやく鎚矛(メイス)を振り回してオーガーの頭蓋骨を粉砕することができるようになったんです。

 

 

 と言うわけで、とっとと死んでくれ…大人しく処理されてやってくれ。

 冒険者なんて言葉は良いが、実際の所は害獣駆除業者みたいなものだ…戦闘する事に対して不満は無いが護衛任務で無駄な戦闘ほど嬉しくないものは無い。功績にしたって今回の仕事の依頼主様は今の私の身元引受人のンフィーレア・バレアレだ。必要以上に実力をアピールする必要もない。

 それに、戦果についても少し先のエリアで、まるで挽肉製造機(ミート・ミンサー)のように大剣を二刀流で振り回す甲冑男(モモン)と、第三位階を使い敵を容赦なく撃ち抜く魔法使い(ナーベ)の存在とで、どれだけ頑張ったとしても霞んでしまうだろう。…これには同行している〝銀級〟冒険者の漆黒の剣の連中も呆れ顔だな。

 

 …あれで階級が私と同じく、駆け出しの(カッパー)級の冒険者だと言うから始末が悪い。

 あれが私の出世のライバルになるのだが…あの戦闘力は反則だろう。何とかして蹴落とすか…?

 

 いや、ギルド長のように冒険者としてのキャリアを積んで、ギルドの上位事務官を目指す私としては、あの手の英雄候補との対立は、私の将来にも差し触るのだから友好的に接するべきだろう。

 名士のンフィーレアが指名依頼を出した時も、先約を優先した事から常識もある人物だしな。

 

 ただ、甲冑男の相棒の、黒髪の魔法使いから気になる言葉を聞いたな…二人は恋人関係なのか?と言った質問に反応して答えた「私なぞでは無くアルベド様と言う御方が」と言った言葉だ。

 アルベド…その名前はたしかカルネ村を救ったゴウン殿が連れていた全身鎧の女騎士の名前だ。ンフィーレアが気にしていた〝神の血〟は、やはりエンリが貰ったポーションと同じ物だろうか。

 

 …この情報は覚えておいて損は無いだろう、何かが気になる…何かを忘れてる気がする。

 

 

 

 

 ンフィーレアがモモンと繋がりを持つために依頼した、薬草探索の仕事は順調に進んだ。

 ゴウン殿に貰ったマジックアイテムの力で、ゴブサーの姫となった姉とゴブリン達が、カルネ村に防壁を作っていたり。薬草探索中に別行動を取っていた甲冑男達が森の賢王を撃ち伏せ捕獲し、支配下に置いていたのは流石に驚いたが、終わってみれば実に有意義な仕事であったと思う。

 

 少なくとも堅実な仕事で評価を上げている漆黒の剣と、最上位の冒険者(アダマンタイト級)もかくやのモモン殿達と繋がりを持てた事は、私の今後の活動に大きくプラスになるだろう。…この流れは悪くない。

 …ハムスター騎兵の姿を見かけるたびに笑いを噛み殺すのは大変だが、それは、まあ許容範囲だ。

 

 森の賢王を冒険者ギルドへ登録しに向かうモモン殿達と一旦別れ、漆黒の剣の連中と共に、依頼主様を自宅に送り届ける。これで報酬を貰えば薬草捜索の護衛の依頼は終了するはずだった。

 

 …しかし、バレアレ家に到着した所で厄介な事件に巻き込まれることになる。

 

 始まりは「お帰り、まってたよぅ」と言う、部屋の中から聞こえる見知らぬ女の声。そして声と共に、部屋の中からは猫科の肉食獣のような雰囲気を持ったビキニアーマーの痴女が現れたのだ。

 

「いやー心配しちゃったよぅ、何日も帰って来ないんだもの。ずっ~っと待ってたんだからぁ」

 

 その女は殺意と悪意を吐き溜めの中にぶち込み、醗酵させたような猟奇的な瞳でンフィーレアを見つめ、狂人のような笑みを浮かべる。そして鼠を弄ぶ猫を前にしたような気配の中、一人延々と、この街を死と混沌に満たす、邪悪で身勝手な狂気の計画を喜々として語り始めた。

 

 「私はねぇ…君をさらいに来たんだぁ」とサイコ痴女がニヤニヤしながら呟くと同時に、漆黒の剣の前衛職が庇うように前に立ち、ニニャと私にンフィーレアを連れて逃げるように指示をする。

 

 …部屋の中の全ての存在が、あの女はヤバイと本能的に理解してしいた。善良なンフィーレアなどはその悪意に怯み、手にしていたこの部屋唯一の照明であるランタンを落として割ってしまう。

 

 「ガキ連れて逃げろや」と斥候の下等生物(ガガンボ)君も言ってくれた事だし、ここは階級が上の冒険者様の指示に従い撤退させてもらおう。これで依頼主さえ守り切れば、私の失点にはならない。

 そう判断し、撤退するための退路を確認すると、そこには不健康な顔の怪しげなハゲが居た。

 

 「遊び過ぎだ…」

 「でも悲鳴が漏れないように準備してるんでしょう?少しくらい遊んでもいいんじゃなぃ?」

 

 どうやらすでに囲まれているようだ…連中は簡単に逃がしてくれるつもりはないらしい。

 何故こうも私にばかり災厄が訪れる?…まさか存在Xめ、今だに私を呪うのか!?

 もう決めた、こうなったら徹底的にやってやるさ…どいつもこいつも私を殺そうとしやがって、改心しろとでも言うのか?この私に?…ふざけるな!そんなものはクソくらえだ!!

 

 魔力干渉で身体強化(ドーピング)をして、愛用している鎚矛(メイス)をハゲの魔法使いに叩きつける…

 しかし至近距離にも関わらず、召喚された骨の障壁に攻撃が阻まれてしまった。

 追撃に放ったニニャの〈マジック・アロー/魔法の矢〉も骨の壁に弾かれ消滅したのをみると、あれは随分と優秀な障壁のようだ。「バカめ…」と呟くハゲの余裕が癇に障る。

 

 「はい、終了~」と言う、後方からの煽るような女の声に意識を向けると、ほんの僅かな間に、漆黒の剣の前衛が皆、スティレットで急所を貫かれ息絶えていた。銀級冒険者が肉壁の役目も果たせないのか!と漆黒の剣の不甲斐なさに怒りが湧くが、あの化け物の異常さを考えれば仕方ない。

 そんな事を考えていると、冒険者証(ハンティングトロフィー)を剥ぎ取っているサイコ痴女と目が合ってしまった。

 

 「カジッちゃーん、これは私の獲物だから取っちゃダーメだよぅ」

 「ふん、好きにしろ」

 

 サイコ痴女が血塗れのスティレットを舐めながら、ゆらりゆらりとこちらに近寄ってくる。

 私は敵の初撃に対応すべく、更に魔導干渉を高め、<反応速度向上><瞬発力増大><痛覚遮断><魔力回路全開>といった、魔力による身体強化を発動させる。…攻撃が来ると思ったその瞬間、ニニャが崩れ落ちた、1瞬で移動したサイコ痴女がニニャの左足の太腿を切り裂いていた。

 

 「アッハハ、心臓をドンと突き刺して殺すのもいいけどね…今日はどーっちで遊ぼうかなぁ?」

 

 反応速度を向上させた今でも捉えられない速度でサイコ痴女が突撃を仕掛けてくる。気が付いた時には左脇腹にスティレットが突き刺さっていた。サイコ痴女は「アハッ」と笑みを深めるが、次の瞬間、何か信じられないものを見てしまったかのように、1瞬、笑みが消えて真顔になった。

 

                          

               「ツ カ マ エ タ」

 

 

 敵が急所を避けて嬲りに来ると思えば、捕捉できない速度の攻撃でも対処法はある…突き刺した相手の腕を攫んだまま、切り札である《ファイヤーボール/火球》を、零距離で発動させる。

 …私とサイコ痴女の間を中心に、巨大な炎の塊が炸裂して辺り一面を吹き飛ばした。

 

 「自爆だと…」

 

 ハゲの魔術師が心底驚いたように呟き、叡者の額冠を使わせる予定のあるンフィーレアを眺め、《ファイヤーボール/火球》の爆発に巻き込まれず無事であったことに安心し、深く溜息を吐く。

 「はーぁあ、玩具が自分で壊れちゃった」とサイコ痴女の気楽な声が瓦礫の中から聞こえてくる。火球の直撃に耐え、瓦礫を押しのけ這い上がった女は、両手を頭上で組んで全身を伸ばした。

 

 「ふん、クレマンティーヌよ、今のは危なかったのではないか?」

 「まーさかぁ、ちょーっと驚いちゃったけーどね。ささっ、帰って楽しいお祭りの準備しよ?」

 

 腹部を刺され、威力を調整したものとは言え火球の直撃を受け、満身創痍になりながらも瓦礫の下で息を潜めて、2人の狂人を観察する。死体の確認が大変そうな状況を作り、周囲が驚くレベルの騒音を立てさえすれば、殺しよりも撤退を優先するだろうとの予想が当たって心底安堵する。

 

 …そして当面の脅威が去ると、火球の火種で焼ける屋敷の中で眠るように意識を失った。

 

 

 




週1ペースでは更新できるように頑張りますのでよろしくお願いします。

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