そして僕は、「ゲームデザイナー」というモンスターになったんです。「INDIE Live Expo 2020」に送られたトビー・フォックスからのメッセージ全文書き起こし

 2020年6月6日、インディーゲームとしては世界最大級となる日本発の情報番組「INDIE Live Expo 2020」が開催された。当日は4時間にもわたり多数のインディーゲームが紹介され、さまざまなパフォーマンスも披露されたが、その中でもとくに注目を浴びたのが『UNDERTALE』『DELTARUNE』のインディーゲームで知られるトビー・フォックス氏のメッセージだ。

 まずそもそも、「INDIE Live Expo」の開会宣言では主催側から、「今、世界はCOVID-19により分断されています。あれほどあった国際的なゲームイベントは開催されなくなり、私たちは直接出会うことができなくなりました。しかし、ゲームを通じた友情や熱狂が、今こそ必要であると私たちは信じます」とのコメントがあった同イベント。このメッセージを受けた上で、トビー氏がどのような言葉を伝えたのか書き起こしてみた。

 

 本動画は顔出しがNGのトビーの代わりにイヌが代わりに登場してメッセージを読んでくれる。音声は日本語で中国語の字幕がついている。以下は、トビーからのメッセージの引用となっている。

みなさん、こんにちは。トビー・フォックスです。
このところ、世界中の国が大変な状況ですね。
新型コロナウイルスが暴れているせいで、みんな家から出られない。
このまま世界が終ってしまうんじゃないか……
そんな気さえしてきます。
「こんなときに、ゲームなんて作っていいのかな?」
「こんなときに、ゲームなんて必要とされているのかな?」
…なんて、つい考えてしまいがちだと思います。
でも、どうかみなさん、気を落とさないでください。
だって、こんなときだからこそ、人は笑わなきゃいけない。
笑顔にならなきゃいけない。幸せを感じなきゃいけないんです。
空が闇に包まれているとき、人は、とにかくなんでもいいいから、光を求めるものです。
道を照らしてくれるものが必要なんです。
僕はなにも、「ゲームが世界を救う」とか言うつもりはありません。
だけど、ゲームは、誰かの1日を幸せにすることができる。
つらい状況が続くとき、その日1日を笑顔で過ごすことができたら、
それだけで救われたりするんです。
じゃあ、インディーゲームの、なにがそんなに特別なのか。
それは、「心」です。
ゲームを作る時クリエイターは自分の作品に自分の心を注ぎ込む。
自分の個性、自分の夢、忘れられない思い出、忘れたい悪夢、愛情。
それが、「心」です。
インディーゲームのいいところは少人数のチームで作っているから、
作り手1人ひとりの心を、プレイヤーに感じてもらうところ。
だから、プレイヤーの心とクリエイターの心が、通じ合うチャンスも大きくなるんです。
プレイヤーとクリエイターの心が通じ合うと、
不思議なことが起こります。
ゲーム画面が呪いの鏡みたいに点滅して、プレイヤーの心も光りはじめて
鏡と共鳴するように点滅して…
そうなったらプレイヤーはもう、そのゲームと出会う前の自分には戻れない。
あなたが作ったゲームから、信じられないほど大きな希望を受け取ったりするんです。
それが、インディーゲームの力。
だって、僕が自分で経験したことですから。
僕の心も、インディーゲームをプレイして輝いたことがあります。
『洞窟物語』とか、『ゆめにっき』とか。
そしてもちろん、ZUNさんの『東方Project』とか。
そう。帽子をかぶった好戦的な女の子たちや、きれいに並んだ弾幕や、日本ならではのエネルギッシュなBGMに触れて、
僕の心が輝きました。
聖なる光に飛び込んで、僕の体も進化を遂げた。
そして僕は、「ゲームデザイナー」というモンスターになったんです。
僕は、自分のゲームをプレイしてくれた人にも、同じ呪いをかけたい。
そうやって、みんなを笑顔にできたらいいな……っと脱線しました。
要するに、僕が言いたいのは、「ゲームを作れば、誰かに希望を与えたり僕みたいなとんでもないモンスターに生まれ変わらせたりできるよ」ってこと。
どんな状況であろうと、それってすばらしいことだと思います。
だから、世界中が大変なときでも、みんな、あきらめないで!
世界が闇に包まれているなら、自分で輝けばいい!
ゲームクリエイターも、プレイヤーも、みんな、一緒に、がんばろうッ!!
ご清聴、ありがとうございました。
あ、でも、がんばりすぎは禁止ですよ。
人間には、限界ってものがありますね。みんな人間ですからね。
少なくとも、いまこの配信をみてくれてる
みなさんの大半は、そうでしょ?違うのは、このイヌくらいですね。

 トビー氏は現在の状況に対して不安な気持ちを抱えて、押しつぶされそうになっている方にまずは1日を幸せにし乗り越えるためにゲームがあって欲しいという願いから伝えはじめた。

 そしえゲームクリエイターの「心」についての話。「自分の個性、自分の夢、忘れられない思い出、忘れたい悪夢、愛情。」、それが「心」だと語っている。きっと、個人的な気持ちや経験が多くの人々の価値観に影響を与えることのすばらしさを伝えたいのだろう。

 ときに「忘れたい悪夢」をゲームに落とし込むという言葉が印象的だ。ゲームの経験を通して、個人の嫌な思い出を親身になって考えることができるようになる。他人の気持ちを考えるという、人間として重要なことをゲームで経験することによって、この世界の無意味な分断に対して問題意識を持つことができるのではないか。

 また自分がゲームによって輝いたという経験についても語った。『洞窟物語』『ゆめにっき』などが自らに輝きを与えたと語る。『東方Project』の名前があがった時は会場のZUNさんは笑みを浮かべた。

(画像はtwitch「INDIE Live Expo 2020」より)

 インディーゲームのすばらしさについて語るトビー。ゲームの体験は、ある時は人の価値観を変えたり、人を救ったりする。これからも、そのような体験を大切にして生きていきたい。

文/tnhr

ライター
メイプルストーリーで人との関わり方を学び、ゲームのゲームらしさについて考えるようになる。主にRPG、アドベンチャーゲーム、アクションゲームの物語やシステムに興味のある学生。
Twitter:@zombie_haruchan

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