「デーリッチ、何だ‥その奇怪な格好は?」
「うん?これでちか?秘密結社ヘルラージュの戦闘員の服でちよ?」
奇妙なナスビの着ぐるみを着込んだデーリッチが、モモンガの質問に回答する。
秘密結社でナスビで戦闘員服‥想定の斜め上を行く回答にモモンガは頭を抱えた。
(秘密結社ヘルラージュ?ヘルラージュって、たしかあのキワドイ衣装を来た女の子だったか?
秘密結社って一体何をやってるんだろうか?名前だけ聞くと悪の厨二病を刺激するのだが‥)
何がなんだかさっぱり理解できないまま思考にふけってると、何を勘違いしたのかデーリッチがドヤ顔で予想外の提案をしてきた。‥短い付き合いだが、このパターンは嫌な予感がする。
「おっ?どうやら秘密結社の活動に興味を持ったようでちね、デーリッチに任せておくでち!」
「ふむ?‥いや、待つのだデーリッチよ、俺は別にだな」
どうやら奇怪な行動について悩んでいるのが、デーリッチには興味を持ったととられてしまったようだ‥ガシッとモモンガの手を引っ張って秘密結社の集会へと引っ張っていく。
秘密結社なのにそんなに簡単に紹介して良いものなのか?と悩んでいる間にモモンガはハグレ王国の応接室に連れていかれ、堂々と着ぐるみを被って集会してる奇怪な一団を発見する。
「‥ええっと、ヘルラージュさん」
「はい、別にヘルちんでも構いませんよ、さっそく秘密結社に興味を持って、
体験入隊に来てくれたのだとデーリッチちゃんに聞きましたわ」
何時の間にやら体験入隊希望になっていたことで動揺し、強制沈静化がスゥーッと働く。
助けを求めて周囲を見渡すと、信じられない物を見つけてしまった。‥それはモモンガの中では常識人枠に分類されていたローズマリーまでもが、ナスビの戦闘員服に身を包んでいたからだ。
「えっと‥ローズマリーさん?」
「うん?ああ、この活動は息抜きにもなりますし、私も参加させてもらってますよ」
孤立無援が確定する‥体験入隊を決めたデーリッチに助けを求めるのは無理だ。
目の前には純真な目をした、悪の秘密結社のボスであるヘルラージュさんからへは断れない。
他を探すと、すまし顔で見詰めてくる黒髪おかっぱの幼女が居るが距離を置いて見ている。
‥どうやら今の自分には援軍も逃げ道も無らしい。
「どうしましたか?モモンガさん」
ローズマリーがこちらの動揺を見抜いたのか声をかけてくる。
「戦闘員服が気に入ったんじゃないでちかね?」とデーリッチが言うが‥違うそうじゃない。
「ナスビスーツを着るのも悪くないですよ、色々な雑務を忘れて無心になれる気がしますし」と、意外にもガンガンと着ぐるみを押してくるローズマリー‥逃げられない!絶体絶命のピンチ!
しかし、その危機を救いの手を差し伸べてくれたのは想定外の場所からだった。
「気に入ってくれたのに申し訳ありませんわ、予備は姉に渡した分で最後だったんです‥」
本当に悲しそうに謝罪するヘルラージュ、内心全力で助かったーと思っている事は口に出さず、「気にしないでください」と少し惜しんだように見せて慰めの言葉をかけることにした。
‥これが失敗だった。
後日、ローズマリーに呼び出され、代わりの着ぐるみを渡される事となる。
〝野菜を食べようキャンペーン〟に使った着ぐるみなのだと渡されるが、ペンキ垂れてるし‥
だが、ナスビスーツと違い顔を出さず全身を隠すタイプなのでモモンガは妥協して受け入れた。
モモンガサイズに調整された着ぐるみを被り、秘密結社の集会に顔を出す。
「遅くなりました、今日は戦闘員服を着て来ましたよと」声をかけたところ、
その着ぐるみを見た瞬間デーリッチとヘルラージュが、恐怖にひきつけを起こし、
「「お芋も野菜も大好き(でち)!」」と叫び2人は全力で逃げ去って行った。
「‥えっ!?」
そして、そこには何が起きたか理解できないモモンガが1人残された。
(絶望のオーラが勝手に発動して攻撃をしかけてしまった?フレンドリーファイアーもするのか‥)と困惑していると、ヘルラージュの姉を名乗るおかっぱ幼女が呆れて鏡を見せてくれる。
そこでモモンガが見た物は――
「ひいいいっ!俺超怖い!?」
漆黒の後光に包まれ、SAN値の減少を誘発する奇怪なマスコットの姿だった‥
着ぐるみ「おいも‥たべて?‥ぽてと君こどもだいすき‥いっしょに‥タベル‥」
モモンガ「な、なあ?やはり‥この着ぐるみが勝手に喋ってる気がするのだが?」
ローズマリー「ははっ、まさか。私が作ったただの着ぐるみですよ?」