オーバー・アクターズ   作:とし3

1 / 7
ハグレ王国農場

 

 

 「‥ハグレ王国を一通り見て回ったのだが、農業には手を付けてないのだな」

 

 モモンガはハグレ王国の王であるデーリッチと、参謀であるローズマリーに話を振る。

 彼がハグレ王国にお邪魔して2週間、悠々自適のニート生活を満喫していたのだが流石に限界が来た。元々社畜である彼には何もしない生活に耐えられ‥いや、それだけならば耐えられたのだろうが小さな子供までが働いている環境に、良心がズキズキと痛み耐えられなかったのだ。

 

 そこで彼はハグレ王国で取り入れられている、お店提案と融資と言うシステムに目を付け、内心に〝脱・無職〟を掲げて王国のトップに話を振り、自分の仕事を確立しようとしていたのだ。

 

 「そうですね‥今は王国の規模が拡大するごとに交易の食糧輸入枠を拡大していましたが」

 「果実も野菜も卵も魚も今は沢山手に入って大満足でちよ?」

 

 ユノッグ村、妖精王国、クックコッコ村、港町ザンブラコに海の街、砂漠の街サンサーラ‥

 拡大したハグレ王国はヅッチーの交易馬車により、各地の名産品が山のように手に入る。

 ローズマリーはこの体制で問題が無いと思っていたがモモンガの指摘を聞いてこれが危険な事だと自覚する、経済制裁や災害時の食糧備蓄の不安を感じたのだ。

 飢えへの恐怖は人一倍詳しいのに、その指摘を受けるまで気が付かなかった事に深く反省する。

 

 「‥たしかに、1歩間違えればハグレ王国の危機に繋がったかもしれませんね」

 「う‥うむ?」

 

 モモンガは動揺していた、「自然環境の多いこの世界で、額に汗をかいて畑仕事がしたいなぁ」レベルの陳情だったはずなのに、いつの間にやらハグレ王国の危機とか言われていたからだ。

 

 「‥なるほど、そういうことですか」

 

 モモンガと王国トップの二人の会話に入り込む少女が2人。 

 1人は妖精王国の№2であり、現在はハグレ王国に帰属し相談役を務めている妖精のプリシラだ、そんな彼女はモモンガの発言の真意を予測し、警戒を強めていた。

 

 「うん?どうかしたのかい?」

 

 「ん?‥あぁ、私にもわかりましたよ‥不死者達の労働力やハグレの技術を使って大規模農園を運営し、安価に量産された食料品で他国の生産を駆逐して‥食糧支配を狙うって所ですかね?」

 

 プリシラの懸念を理解したメニャーニャが、言葉を継ぐ。

 彼女は召喚士協会の召喚士で、弱冠16歳にして、帝国の士官まで登りつめたエリートだ。

 そんな彼女がモモンガの提案により起きるだろうハグレ王国の影響を予想し提示した。

 

 「‥そんな、いや、ありえるのか」

 

 2人の意見を聞いてローズマリーも戦慄する、それが可能だと理解できてしまったからだ。

 恐ろしいものを見る目で見詰めてくる3人の少女を前に、(何でそんな大きな話になってんだよ!?)と眼球があれば涙目になってそうなモモンガは、動揺を押し殺して答える。

 

 「ふふふ。そこまでは考えていないさ」

 

 警戒する3人の視線を前に内心冷や汗をかきながら、モモンガはどうしたものか‥と悩む。

 そんなモモンガに助け舟をだしたのはハグレ王国の王であるデーリッチだった。

 

 「デーリッチはロケットモロコシを作りたいでち!」

 「待ったー!ヅッチーはマジカルチェリーが作りたいんだぜ!」

 

 「そっ、そうだな、ハグレ王国の外周にでも共同畑を作ろうと思うが融資してくれるかな?」

 

 拠点の外周(前側)を解放します。

 ハグレ王国農場では種を撒くことによりドーピング野菜を育てる事ができます。

 珍しい種を育てれば育てるほど、ハグレ農地の収入は増えます。

 (基本的な種はベルくんのお店で入手可能です)

 

 ただし、店舗のブースト対象にはなりません。

 

 モモンガの提案。

 「ハグレ王国農場」

 初期投資に80000G必要です。

 提案を採用しますか?

 

 「「いい(でち)ともー!」」

 

 ハグレ王国の国王デーリッチと、何時の間にか参加していたヅッチーが勢いよく賛成する。

 怪訝な顔をしていたローズマリーも、プリシラとメニャーニャと顔を見合わせ、目を閉じて悩む。

 大きなため息を吐いた後、「仕方ないなぁ‥」と提案を認め、‥他の二人も黙って頷く。

 実際の所、戦略級に拡大しなければ必要性の高い施設だからだ。

 

 「不死者達を格安労働力にするのは止めてくださいね‥過去に騒動になった事もありますし」

 

 モモンガに80000G手渡した。

 拠点外周に出る事が可能になり、新たにハグレ王国農場が解放されました!

 

 王国の頭脳達からの指摘に驚いたものの無事に提案が通り、モモンガは安堵した。

 何故あそこまで話の規模が大きくなったのかはさっぱり理解できなかったが、少し前に殺し合った相手であることを考えれば彼女らの警戒は納得できる部分はあった。

 

 ユグドラシルのキャラそのままに単独でこの世界へ転移してしまい、一人次元の狭間に隔離されていたモモンガを優しく迎え入れてくれた、デーリッチを中心としたハグレ王国の人達に、何か恩返しがしたいと思い、汗水垂らした気分でモモンガは畑を作るべく一生懸命に鍬を振るう。

 

 モモンガはユグドラシルのアバターのまま異世界へ飛ばされ、ハグレ不死者(アンデッド)として第二の人生を歩み始める‥仲間達と過ごした輝かしい日々は今も褪せないが、今の自分の環境に覚悟を決める。

 

 そして時は流れ、驚異的な速度で成長するこの世界の作物に驚き、楽しそうに収穫をする子供達を見て微笑ましく思い、収穫物を美味しそうに食べるハグレ王国民と共に収穫の喜びを楽しんだ。

 

 




ざくアクのクロスのが更新無いので自給自足してみる‥

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。