きっかけがどんなものだったのかは、最早知る由もありません。
「挨拶に来ない」だったのか、「世界観が気に入らない」だったのか。
それとも単に「チヤホヤされててイラつく」だったのか――。
※
ワイの前任の首長さんは、その人の思いを繋ぐために椅子を守っていたのだそうです。
「とてもお世話になったから」と、静かに、けれどハッキリ仰っていました。
みんなその人のことをとても慕っていたようで、他の街でも、
その人の話をよく聞きかせてもらいました。
周囲に「ワイも首長をやってみたい」と打ち明けてからは尚のこと、
いったい何度井戸端の話題にのぼり、聞かせてもらったか知れません。
そして大抵その話は、悲劇として語られていました。
その人が、精力的にイベントを行っていた頃。
首長職が一番楽しく感じられる、まさにこれから、というピークの時期。
その和気藹々と遊ぶ姿を、内心、忌々しく思っている人物がありました。
――なにが気に入らなかったのでしょう。
思うようにマウントが取れなかったから?
あるいは、その人が目立ち過ぎていたから?
いずれにしてもその人物は突然、ふらりと無名のキャラクターを投入し、
自分が繋がっている他シャードの、決して身ぎれいとは言えないグループの協力を得て、
あっという間に首長の椅子を奪取してしまいました。
現職さんからすれば、いやその街のコミュニティの全員にとって、
これはまさしく青天の霹靂でした。
この人は誰だ――という話になります。
当然です。
既にかなりの人数のコミュニティが形成されているところへ、
なんの前触れもなくそれを上回る数の投票が投げ込まれ、首長がすげ変わったのです。
険悪な仲の、別コミュニティがあった訳でもありません。
思い当たる人物がいません。
現職だった人は、大変に落ち込んだそうです。
※
おそらくは、「一度煮え湯を飲ませてやろう」というくらいの感覚でしょうか。
よもや徹底的に追い詰めて、このシャードから追い出してやる、
などという強い敵意があったのでは、ないと思われます。
現にその、新しく椅子に座った人物は、「一期だけ」と公言しています。
不自然ではない程度に首長として活動する姿を見せたら、
また元の人に、椅子を返すつもりだったのかも知れません。
しかし、そうはなりませんでした。
現職だった人は、深い無力感を抱え込んでしまった様子で、
「こんなに楽しく遊んでいた場所が、こんな簡単に奪われてしまう」
というような悲しみに、囚われてしまったのだそうです。
システム上は不正でもなんでもない。
ルールは逸脱していない。
ただ仄暗い悪意がその時、その街に、ゆらめいた結果でした。
結局、その現職だった人は蝋燭が消えるように、
静かにUOから去りました。
※
この出来事は沢山の人々に、大きなトラウマとなって残りました。
思い出すことすらつらい時期が続いたそうです。
ワイが首長に立候補をした時、ワイを推してくれた人々は、
口を揃えて「あの頃のように」と言いました。
あの頃のように、活気のある街にしてほしい、と。
一方で、その人を引退にまで追い込んでしまった結果を、
そもそもの例の人物はどう思ったのでしょう。
「しまった、やりすぎた……」と慌てた?
――いやいや。そんな様子はありません。
ずっと注意深く、この目で見てきましたが、微塵もそんな態度は出てきませんでした。
なんなら「メンタル弱すぎでしょ!覚悟が足りないよ!w」
とでも、思っているのかも知れません。
そうでもなければ未だに、この出来事でトラウマを抱えた人達の横で、
のうのうと座っていられる訳がありません。
恐ろしい人も、いればいるものです。その人物の関係者らも、愚直だったり博識だったり、いろんな人達がいますが、
みな既にそんな事件はなかったかのように過ごしています。
光が明るいぶん、闇も深いね、飛鳥は。
ホントに。ハハッ。
※
ワイの在任期間中、きちんとみなさんの期待に応えられていたのか、
往時のベスパーの賑わいが取り戻せていたのかどうか、
自分ではいまいち自信がない、というのが正直なところです。
ワイの首長の任は、あの人への憧憬を土壌に種として蒔かれ、
どうにか真相に届くまで伸び育ったところで、また、
例の人物によって刈られる感じの結末になりそう。
例の人物によって刈られる感じの結末になりそう。
しかし、それもまたよし!!
しゃあないしゃあない!!! ガハハ!!
復帰と引退のすれ違いで、一度も面識はありませんが、
ずっと心の中で理想としてきた、その首長さん。
ずっと心の中で理想としてきた、その首長さん。
その人を葬った黒幕の顔をしっかりと拝みながら、
ワイは、ベスパー首長の職を退任する覚悟ができました。
二年くらいの間? でしたが、どうもありがとうございました。
みなさんと色んなことができて、楽しかったですね。へっへっ。
なんつーか、既に来期の投票が始まってしまっておりまして、
今更辞退するとワイに入れてくれた人の票が完全にムダになってしまうもんで、
それはイヤだから、最後まで状況は確認させてもらうつもりではおります。
でも相手があいてなんで、小さなコミュニティしか出来てないワイでは、
たぶん無理やろなぁという感じがビンビンでございます。すみません。
ひょっこり何かの拍子でまた、首長に戻れることがありましたら、
仲良くしてやってください。
――あっ、別に引退するわけじゃないんですよ!!!!
ワイちゃんはずっと、ベスパーに住んでおりますからね!!
これからもいつでも、ミニホール(の廃墟)に遊びに来てね!!!
ほな、また……
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