このほか、織田裕二は1991年放送のスペシャルドラマ「実録犯罪史 新説三億円事件」、ビートたけしは2000年放送のやはりスペシャルドラマ「三億円事件―20世紀最後の謎―」(一橋文哉のノンフィクション『三億円事件』が原作)、宮崎あおいは2006年の映画「初恋」(塙幸成監督)でそれぞれ犯人役を演じている。それにしても、ドラマ放送当時53歳だったビートたけしから、映画公開当時20歳の宮崎あおいまで、そのキャスティングの振り幅にあらためて驚かせる。
これだけ犯人の配役がバラエティに富んでいるのは、事件が未解決であり犯人像も明確に定まっていないからこそだろう。ここまであげた以外にも、小説や映像作品で三億円事件をとりあげた作品は枚挙にいとまがない。今夜(10月11日)からTBS系列で放映が始まる連続ドラマ「クロコーチ」および同名の原作マンガ(リチャード・ウー作、コウノコウジ画)でも、物語に三億円事件がからんでくる。
三億円事件はなぜ発生から45年経った現在にいたるまで、これほどまでにつくり手たちを触発してきたのか? その理由をいくつか考えてみたい。
【理由その1】迷宮入り事件なので、想像する余地が大きいから