木村花さんを苦しめたSNSの誹謗中傷。匿名の相手を訴える方法は?
プロレスラー木村花さん(享年22)の死をきっかけに、SNS上での誹謗中傷やデマについて、大きな話題となっています。これまでいくつもの事件が起こり、問題視されながらも、いっこうになくならないネットいじめやネットリンチ。一般人でも、いつ、なんのきっかけで自分がターゲットとなるかわかりません。
もし、SNS上でトラブルが起こったら、どうすべきなのでしょうか?
昨年、「常磐道あおり運転事件」で「同乗の女」としてデマを流された女性の代理人を務めている、インテグラル法律事務所の小沢一仁弁護士に話を伺いました。
「SNSの書き込みによって権利を侵害されたら、当然、法的な責任を問うことはできます。たとえば、『名誉権侵害』であれば、ある投稿が、①公然と②事実を摘示(てきし)し、③人の社会的評価を低下させる、という3つの要件を満たせば成立します。たとえば、〈Aは人を殺した〉〈Bは詐欺師だ〉といった犯罪者よばわりをするものや〈CはDの妻と不倫をしている〉といった倫理上非難される行為をしたと指摘することが名誉権侵害にあたります」
「公然性」「事実の摘示」「社会的評価の低下」というのが、名誉権侵害の3要件。聞き慣れないのが「事実の摘示」だけれど、これは表現において事実が指摘されていることを指すそうで、指摘された事実が “真実”かは名誉権侵害の成立との関係では問題にならないのだそう。
つまり、真実であってもウソであっても成立するということ!? ウソでも名誉権侵害になるの?
「事実の摘示にあたるかどうかでよく問題になるのが、“意見”や“評価”です。たとえば、〈CはDの妻と不倫をしている! 人の道に外れた行為だ!〉という書き込みがされたとき、〈CはDの妻と不倫をしている!〉は“事実の摘示”だけれど、〈人の道に外れた行為だ!〉というのは事実に対する“評価”にあたります。意見や評価であっても名誉権侵害が成立することもありますが、成立するためのハードルは上がります」
そのため、実際の裁判では、慰謝料を請求する側が「これは事実の摘示だ!」と主張し、請求される側が「いや、これは意見または評価だ!」と反論することがよくあるそうです。法律って、やっぱりややこしい……。