実績だけ残せ 元会長指示か
東京都新宿区の金融商品取引会社「パシフィック」が顧客から金をだまし取ったとされる事件で、詐欺容疑で逮捕された同社元会長の山下〓喜(しょうき)容疑者(69)が、部下に「金を動かさずに取引実績だけ残せ」などと指示していた疑いがあることが3日、広島県警の合同捜査本部への取材で分かった。捜査本部は顧客に取引明細書を送るなどして安心させたほか、監督官庁である金融庁の目をごまかす意図もあったとみている。
合同捜査本部によると、パシフィックの関連会社「ユニバーサルデータ」元社長の北畠充治容疑者(49)=同容疑で逮捕=は「山下会長に『金を使わずに取引実績だけを残すような取引をしろ』と指示された」と供述しているという。
パシフィックが投資を募っていた「オプション取引」は通常、損失発生時の担保として顧客からの委託保証金を市場に送金する必要がある。しかし売買注文を入れる際、一定の条件で反対売買の注文を同時に入れると、保証金を入れずに済む。
パシフィックが顧客から受託した売買注文を、英米両国の証券会社に入れる役割を担っていたユニバーサルデータは、山下容疑者の指示を受けてこの取引の仕組みを悪用。組織的に保証金の流用を繰り返していたと合同捜査本部はみる。
合同捜査本部の調べでは、山下容疑者を含むパシフィックグループの幹部ら10人は共謀。09年3月から10年1月までの間、広島、岡山県内の60代の女性3人に対し、金のオプション取引を紹介し、保証金名目で計約6300万円をだまし取った疑いが持たれている。山下、北畠の両容疑者は「だましていない」などと容疑を否認しているという。
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