麒麟がくる感想あらすじレビュー

麒麟がくる第21回 感想あらすじ視聴率「決戦!桶狭間」

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麒麟がくる第21回
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    「三河守」に困惑しかない元康

    午前10時30分――――。

    鵜殿長照は、松平元康のお手並を褒めています。

    「さすが三河衆! 砦のひとつやふたつ、ものの数ではなかったろう!」

    ここでの元康、疲れもあってか若干の塩対応が出てきています。長照が「三河守になってこの快挙!」と褒めると、喜ぶどころか不信感すらうっすらと漂わせています。

    「三河守? 殿が?」

    「まだご存知なかったのか?」

    そう前置きしつつ、朝廷から三河守を受けたと長照は言います。

    「名実ともに三河の主じゃ!」

    元康、全然嬉しそうじゃないぞ。だから、いちいち、怖いって……。

    信長は、何で起こるかわからない。いきなり地雷を踏みそうで怖いところはあるのです。

    でも、元康はさらに怖い。

    信長は地雷を踏んだ瞬間、態度に出るから「わっ、やっちまった!」となるのですが、元康の場合、どこに地雷があるかわからない。

    踏んだことすら認識できない。次元装置で爆発する。いや、場合によっては爆発すら気づかないまま葬られている。そういうステルス時限式の何かがあるから危険です。

    長照としても、そして義元としても「気遣ったぞ、三河守としてがんばろうな!」という気分ではあったのでしょう。想定する反応は、きっと笑顔と奮起です。それが……。

    「……ではわれらはこれで」

    わー、むしろ逆効果だ。なんか怒ってません?

    でもこれ、現実社会でもあるあるですよね。

    大変な労働をしている人に、メッセージで励まそうという試みが今あります。あれを素直に受け取って感激する人もいれば、集団には少数派ながら元康タイプもいる。

    応援で解決したら苦労しない、と舌打ちするタイプです。

    「待たれよ! 殿からお下知があったのじゃ」

    そう聞かされ、君臣一同、膝をザッとつくあたりが美しい。なんでしょう、規律の取れた美がある。こういう所作ひとつとっても本作は綺麗です。

     

    戻って来たばかりで鳴海城へ行け

    下知の中身は、労働搾取のような話でした。

    戻ってきたばかりなのに、その脚で鳴海城に行け――というのです。

    なんでも、鳴海城のそばにある善照寺砦に織田方がいるとか。

    元康は苛立っています。

    我らは一戦を終えたばかり。兵糧米を運び、昨晩は一睡もしていない。明朝まで御猶予をいただきたいと交渉します。

    「皆、疲れ果てております。せめて一刻(二時間)のご猶予を」

    ここで三河武士も苛立ちを見せています。三河武士が我慢強いと誰が言いましたっけ?

    それでも長照は、猶予すら許しません。

    兵法のミスをやらかしました。孫子は別に優しい性格では全くありませんが、それでも兵士に思いやりは見せています。部下を虐待する奴はダメだとも言い切っている。

    孫子とならぶ兵法家の呉起は、兵士の傷口の膿を吸い出しました。

    そのことを息子の戦友から聞いたある母親は泣き出してしまいました。

    「将軍様が膿を吸い出すんです。よいことじゃないですか」

    「私の夫もそうだった。膿を吸い出され、この将軍様のためならば死ねると奮闘して戦死した……」

    今さら人には聞けない『孫子』って? 著者・孫武には激辛エピソードも!

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    人心掌握術ってやつですね。

    高いモチベーションを引き出すためならば、慈悲を見せるべき。現代ならば福利厚生をしっかりしろってことです。

    シリコンバレーにあるIT企業の社員食堂は豪華だと言います。これも現代流の人心掌握なのでしょう。

    豪華な食事と、高いモチベーションの費用対効果を考えたら、安くつくってことです。

    しばきあげだの、根性論だの、同調圧力だの。そういう士気の高め方は危険です。高まるのはむしろストレスと不満だけです。

    鵜殿長照は、三河守という名誉で釣って、威圧して、言うことを聞かせようとしました。そんなことは結局のところ、危険で非効率なだけなのです。

    この場面で、不満をため込んだ元康の顔からそれを読み取らねば、良い仕事はできません。

     

    乱取りする自軍に激昂する義元

    午前11時――。

    今川方は余裕を持って食事をしています。

    バンド演奏と踊りもあって、優雅なものです。でも、だからといって義元が愚かなわけでは全くない。

    「何? 織田の軍勢が来る?」

    絵図を持たせ、兵数が300ほどだと確認します。

    鷲津の泰朝とともに向かえばよいと言うのですが……それがまだ鷲津砦で乱取りをしていると聞き、義元は激怒します。

    「愚か者めが!」

    敵が残した食料なり、金品を漁ることは野盗と変わらぬ下衆の振る舞いであると言うわけです。

    やはりこの義元は、理想的な人物です。「本軍から兵を出して始末せい」と命令します。

    本作は、綺麗事とは現実的で効率がよく、必要なのだと教えてくれます。

    乱取りをすることを悪とするかどうか?

    これは難しい話ではあります。それで効率があがることもあるようで、規律が乱れることもある。

    午後0時――。

    織田方は300の兵。対する今川本陣は1,000。残りは5,000。それを聞き、信長はそれならやれると言い出します。

    ※編集部注:『信長公記』に信長が善照寺までくると「佐々政次と千秋季忠が兵300で今川に突撃し50騎ほど討たれる」という記述があり、それを活かしたものと思われます

    「よいか、この先山沿いの道を桶狭間に向かう。他の者には目を配るな。塗り腰が目印じゃ。出陣!」

    ここで雨が降り始め、雷鳴が響きます。

    「雨か、雨か!」

    天佑とはこのことでしょう。雨と雷鳴は、視覚や聴覚に悪影響を及ぼします。両軍ともに厄介ではありますが……。

    ・行軍距離が長い

    ・地形の知識で劣る

    こういう条件があるからには、攻め手がより不利にはなります。

    今川方は、雨を避けるために移動しようとするのです。岩陰まで移動するように促され、義元は移動をするのでした。

     

    床を拳でぶっ叩く元康と三河武士たち

    そのころ、元康は食事中です。

    そこへ鵜殿長照が来ました。

    「飯など食うておる場合ではない! 物見からの知らせじゃ、信長の軍勢が桶狭間に向かっているという!」

    「それで?」

    「ただちに兵を率いて桶狭間へ向かい、信長を背後から攻めるのじゃ!」

    「先ほどは鳴海城、今度は桶狭間……」

    元康が無茶苦茶不機嫌、見放すモードに突っ込み始めました。こうなったらもう、手遅れ感がある。

    「悲運の三河大名」とキャストビジュアルにコピーがついているし、実際に苦難の生活を送ってはいる元康ですが、個人的には全く同情できません。

    同情すべきなのは、彼と対峙する側だもの……。

    「松平殿!」

    「我ら三河の者は、桶狭間へは参りませぬ。本日はここを一歩も動きませぬ。あしからず」

    怒涛の冷淡反応を見せる元康。

    しかも、隣でお食事中の三河武士は、床をドスドスと叩き始めます。

    三河者の立場が弱い。つらいというのは確かではあるのですが、それも状況次第ではあります。

    元康の怖いところは、常に反撃できるしなやかさだと思いますね。どんな苦労をしても、自分自身の意思さえあれば、跳ね返すことはできる。古狸どころか、鎖に繋がれぬ猛獣めいたものを見せ始めています。

    元康は、信長のように激しく怒りを炸裂させない。ただ、箸を握りしめている。そして脳裏には、幼き日の誓いが蘇ります。

    「今川は敵です。いずれ討つべきと思うております」

    数で劣るからには、今川に逆らえなかったけれど、内心は、打ち果たしてやりたい気持ちが渦巻いている。

    消極的なようで、おそろしい一撃を元康は放ちました。

    今週の元康怖いぞポイントまとめです。

    ・幼少期から隠し通す敵意

    →あんなかわいい子が、ブレない敵意を抱く。師匠である太原雪斎に習わせたし、元服の面倒を見たし、三河守にしたし。義元はそう思っているのでしょう。相手があまりに悪かった……。

    ・両立できるたくましさ

    →普通の人間は、そこまでずぶとくなれるものでもない。でも、この元康は違う。先週、家康は「祖母に会うのか、将棋をしたいのか」と聞かれ「両方」と答えました。今週の彼も両方と言えます。今川と織田、どちらのために戦う? 両方。そういうことができる。おそろしい人物です。

    ・ステルス裏切り

    →このやり方だと、元康の本心はわかりにくい。消極的な一手ならば目立たない。言い訳もできる。そういう巧妙な裏切りを元康はやらかした。真の裏切り者とは、そもそもがそうだと認識されないのかもしれない。

    元康、今週も怖い……。

     

    「輿はどこじゃー、輿に向かえー!」

    午後2時――。

    そして雷鳴と豪雨の中、信長は桶狭間へ向かいます。

    一方、お昼時ということもあり、今川勢は油断して食事中です。

    そんな相手に、織田方の弓矢が襲いかかります。

    「かかれー!」

    毛利新介が叫びます。

    何気ないようで、兵法大好き本作は基本をおさえている。織田方は敵に対して、高いところに陣取っています。

    自転車で走ることを考えてみると良いかもしれません。

    同じ距離でも、登るのと、下るのでは、どちらが早いか? 言うまでもないことです。上から下へと向かうと、勢いがつく。

    水の手が確保できないとか、物資補給に問題がある場合は別として。

    三国志』の馬謖はこれで失敗しておりますけれども、そうでなければ基本的に高いところを取るのが有利です。織田方は高低差を把握する「地の利」があればこそ、把握できたのでしょう。

    今川方も騒ぎを察知します。義元も輿から外をのぞきます。

    一方で信長はこう叫んでいるのです。

    「輿はどこじゃー、輿に向かえ、輿じゃー!」

    義元は家臣に導かれ、逃げ延びようとしています。

    そのころ、奇妙丸を抱いた帰蝶は何かを察知し、光秀は馬を走らせているのでした。
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