麒麟がくる感想あらすじレビュー

麒麟がくる第21回 感想あらすじ視聴率「決戦!桶狭間」

永禄3年(1560年)――。

大高城と鳴海城が今川方により陥落。今川義元自ら出陣し、沓掛城まで進軍して来ました。

馬ではなく、輿に乗って移動しています。

この輿というところが大事です。そのせいで、軟弱なイメージが定着しました。けれども、指揮をする総大将が馬以外で移動することは必ずしも悪いことではありません。

例えば『三国志』の諸葛亮は、車で移動しますね。劉備は「髀肉の嘆(ひにくのたん)」、馬に乗らずにいたせいで贅肉が脚についたことを嘆いたわけです。

どっちなの? 矛盾なの? そういう単純なことでもありません。

今川義元は、前線で馬に乗って指揮をするのではなく、「謀を帷幄の中に運らし勝つことを千里の外に決す」(テント内で作戦をたて、遠隔地の戦場で勝利する)という境地に至りつつある――ということでしょう。

輿での移動は、足利一門である今川だからこそ、許可を得たものでもあります。

これも余裕と戦力差、そして性格の違いではあります。

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    地の利ある元康に任せよう

    今川で軍議が行われました。

    義元に対し、朝比奈親徳は松平元康の活躍っぷりを告げます。

    丸根砦と鷲津砦を無傷で通過したのだと。これには義元も満足し、地の利を知っているといいます。

    地形は大事ですからね。

    義元は、引き続き元康に砦攻めを任せようと考えます。それでも気遣っていて、二つとなると荷が思いかと心配する義元。朝比奈泰朝に3,000で加勢させようと言います。

    信長の援軍到着前に、一気に片付けようとしているのですね。そのうえで、明日、二つの砦を片付け大高城に入ろうとしている。

    前回もそういう予兆はありましたが、今回は破綻の予兆が見えています。

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    ・義元の性格はわかりやすく、家臣もそうである

    →元康自身は、織田勢がろくに攻撃しなかったことに疑念を抱いています。しかし、今川は信じ切っている。

    ・義元は気遣えて、性格もよろしい

    →元康に無理をさせないように気遣っています。斎藤道三織田信長よりも「理想の上司」だと思えるんですよね。人徳があるんだなぁ。

    悪いことって、一つだけではそこまで困らない。

    例えばネジが一本だけ抜けても、そうそう機械は故障しません。けれども、落ちるネジの数が増えていけば危険。

    ネジが落ちる音がするような、高度な展開が続きます。

    義元は、元康の大高城に大軍を集結させ、一気に清須城を攻めると言い切るのでした。

     

    善人面の俊介元康が凄まじい

    そのころ、大高城の松平元康は菊丸と話しています。

    母は勝っても負けてもよいことはないと思っている。戦から手を引くと言っている。そう確認します。

    菊丸も、今川がいる限り三河に日が当たらぬと思っていることを確認する。

    菊丸は、殿ご自身もそう思われているはずだと言います。

    でも、この元康は、自分の気持ちと目の前の現実を切断できる。「それはそれ、これはこれ」です。

    元康は「此の期に及んで今川様に弓は引けない」という。

    おっ? 義理堅い?

    でもこれも、元康すら無意識でやらかすフェイクかもしれません。

    元康は信長以上におそろしい。世間が求める善人としての仮面くらい、即座に被れます。

    菊丸は、信長は三河のものは三河に返すと条件を提示する。そのうえで今川を切り捨てるよう迫るのです。

    「何卒、今川様をお切り捨てくださいませ!」

    元康はデータ分析野郎ですからね。大高城の軍勢と織田方を合わせても、数で勝てないとキッパリ言い切る。今川に到底及ばぬと言うのです。

    「切り捨てられるのは、三河と織田ではないのか?」

    そう反論します。母上のお気持ちも、そなたの申すこともわかる。そう言い切る。

    元康は信長以上におそろしいので、人の気持ちをわかっているポーズが即座に取れるのです。

    無駄に煽ったりあんまりしない。元康が不機嫌になっていたら、逆鱗に触れたということです。もう、手遅れかも、しれない……。

    そして元康は、織田につくデメリットをまとめます。

    ◆元康の「ここがダメだよ織田方につくこと」

    ・家臣たちに勝てるかどうかもわからぬ今川との戦を強いるわけですよね……。

    ・裏切り者イメージがつくのは嫌なんですよね……。

    →後年のことを考えると、石田三成からすれば「何言ってるの?」となりますが。外堀を埋め、幕府を開き、汚名を逆転させると確信してから動いていますもんね。小早川秀秋と比較しましょうか。

    ・犠牲者もでるでしょ……。

    こうして理由をあげて、命じられた通り明朝、丸根砦を落とすしかないと断言します。母上にそうお伝えしてくれとも言い切れる。

    先週、元康をマザコンだなんだと言うネットニュースがあったんですけど、男が女の意見を聞き入れるドラマを見ただけで、そういうことを断定するメディアっていかがなものでしょう。

    マザコンだったらマシかもしれません。

    というのも元康は、父の時点で「それはそれ、これはこれ」と切り分ける独自の考え方が出ている。情が通じないということです。

    情が全く通じないで切り分けるって、見方によっては冷酷であり、敵に回したくないタイプではないでしょうか。

    しかも、元康は外堀を埋める理由列挙野郎です。怒鳴って黙らせて、菊丸を追い払ってもありですよね。それを、真剣トークで理由を説明しまくります。

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    例えばこういう元康が同じ職場にいたら……怖い。先週はうっすら、今週はあきらかに怖い。

    で、風間俊介さんですけどね。もう、どうしろっていうんでしょう?

    目に涙が溜まっていてこぼれないようで、滑舌が明瞭明確で、説得力と知性があふれている。

    過去の家康を蒸発させるような、なんだかすごいものが目の前にいます。

    風間さん「インタビューでは凡人に見えるかも……」みたいなニュアンスのことを言ってます。

    いや、無茶苦茶怖いですから!

    大迫力です。その中に善人みたいに見える要素も漂わせていて……私達は、ものすごいものを見ている。

     

    光秀と左馬助は戦場へ急ぐ

    さて、そんな中、光秀と左馬助は馬を走らせています。

    戦が始まれば勝負がつくのは早いと考え、急いでいるのです。

    光秀が目立たないだのなんだの言われていますが、やたらと濃い人々の中でむしろスッキリできます。

    明智の皆様は涼しげですね。

    特に左馬助は、目立たぬことが持ち味だと思うのです。透き通った清水のようだ。

    5月18日、午前4時――。

    そうテロップが出ます。現在の時刻で表現するところが、親切仕様です。本作はわかりやすさ重視。

    織田方の丸根砦では、隠密らしき者が中にいるものを始末し、犬の鳴き声を真似ています。

    元康……こいつ。隠密の使い方が相当こなれていますね。

    服部半蔵というなまじ有名な人物がいるだけに、そのイメージが先行しがちな徳川家康ですが、菊丸がいるわけですし、三河は隠密の使い方が長所だとわかります。

    で、隠密フル活用野郎が本作にいたじゃないですか。

    斎藤道三ですね。

    むしろ弱いからこそ、隠密を活用するのか、それとも賢さなのか。どっちみち、敵に回したらいけないんだよな……。

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    こうして攻める順序を整え、螺貝の音と太鼓が響く中、喚声をあげつつ、元康の兵たちは攻め入るのでした。

    戦国武将が兵法を知っているのは、プロ野球選手がバットを振るくらい当然っちゃそうなんですけど。

    本作の武将ども、全員、兵法わかってるなあ。早朝に攻め込む。リアリストであり、強いとわかります。

    あっ、今にして思えば織田信秀はちょっと甘かったのかな、という気もしてくる。

    いや、信長や元康が強すぎるだけだから。

     

    踊る信長 困惑する帰蝶

    尾張清須城、午前6時――。

    中条家忠がオタオタしている。織田方はわずかな兵力で立ち向かうしかないわけで、これが普通だとは思います。

    「殿ー! 殿はいずこぉ!」

    その殿こと織田信長は、簗田政綱から水野信元の作戦が不発だと聞かされております。

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    譜代衆の中には、離反の余地もある者もいて、水野は引き続き説得へ動くそうですが。

    やはり、今週も信長はめんどくさかった……何を食ってるんだよ! なんで露骨に不機嫌そうなんだよ! このあと、また室内ウロウロするしさ。

    面接試験を通過できない男みたいな信長。帰蝶が「殿……」と困惑しています。

    信長は、広間の家老たちに伝えて参れと言います。信長、籠城するってよ。外に出ても勝ち目はないからってさ。

    帰蝶もこれには「籠城!」と絶句。それはもうダメってことですよ。

    信長、なんか無言でまたオラついている。と、見せかけて怒涛の『敦盛』だ!

    人間五十年、化天(下天)のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり

    一度生を享け、滅せぬもののあるべきか

    これを菩提の種と思ひ定めざらんは、口惜しかりき次第ぞ

    かっこいいと思えるのは、事前にその知識があればこそであり、そうでなく冷静に考えると……どうでしょうね、これって。

    重大な話題を話しているところで!

    よりにもよって危急存亡の時に!

    オレのテーマソングを、なんかバシバシ体を叩きながら歌い出す!

    しかも、討死した武将がテーマの不吉な曲だ!

    帰蝶が困惑しきっています。

    川口春奈さんは言うまでもなく美形なのですが、その美貌を崩すことを躊躇しない。眉をしかめるし、本当に嫌そうな顔をモロに出す。そこが、素晴らしいと思う――そりゃこういう顔になるでしょう。

    女性は男性よりも、愛想笑いを求められます。日本では長らく、女性が眉毛を剃ることを求められたわけです。男性でも剃る人はいたものの、圧倒的に女性がそうされると。

    眉を剃ると、表情がわかりにくくなります。女性のマナーって、そういう感情を隠すことを求められることが多いもの。

    でも、この帰蝶は、そういう女性像を壊してこそなのでしょう。川口さんの演技も、役の解釈も、素晴らしいと思えるのです。

     

    兵数を見誤れば?「わしは死ぬ」

    踊ったことで気が紛れたのか、信長はこう言い出します。

    「政綱!」

    【信長の兵数計算タイム】

    総兵力:20,000

    鳴海城の援軍:3,000

    鷲津砦:2,000

    大高城へ繰り出した兵:2,000

    6,000から7,000が消えたぞ!

    それに父上がよく仰せであったことを思い出してみよう。

    「今川義元は用心深いから、それなりの兵を残す」

    水野信元殿は、総数から5000か6000は差し引くべきと言っていた。つまり……実際は7000だ!

    まぁでも、それでも倍は差があるんだよな。

    そう踏まえて、善照寺砦で落ち合うと告げ、自らの出馬を告げるのでした。

    帰蝶が「籠城ではないのか?」と尋ねると、城の中には今川に通じる者もいるから籠城と思わせておくと告げるのでした。

    帰蝶が不安そうに大軍に勝てるかどうかと聞くと、信長は大軍でない可能性を示唆するのです。

    もし大軍なら?

    帰蝶にそう聞かれると、信長はきっちりとこう言います。

    「わしは死ぬ」

    気持ちを和らげる答えをこの信長に期待するなって話ですね。そりゃ、土田御前も絶望するよね。

    そして信長は、興奮してこう言います。

    そなたの親父殿が生きておられたら、こう仰せであろう。

    宿敵・今川義元がのこのこ出てきたのじゃ。打ち破るなら今しかない、城の外にいる今川を討つなら今しかないぞ――。

    「それでも負けたら?」

    「死のうは一定。いずれ人は死ぬ」

    そういう問題じゃないだろ、信長!

    土田御前の小鳥を死なせた時にもそう言ってないでしょうね。

    なんか脳内補完してみんなかっこいいと思うし、染谷将太さんは最高だし、いいとは思うけれども……。

    もしも信長が近くにいたらイライラしかねない点は大事だと思うのです。
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