生い立ち(思春期1)の続きです。
入学して今後の生活が人並みに不安だった僕は、1週間程経って恋人を作りました。彼女は僕に一目惚れをしたらしく、少しでも早く学校に馴染みたかった自分は彼女と付き合うことにしました。しかし僕はまだその頃、自分の恋愛的性質を理解してはいませんでした。
僕は人を信じることができない質で、自己肯定感が低いという言い方があるとするなら、他者肯定感も極めて低く、それが自分の場合は恋愛観を大きく傾けているようでした。まぁつまりは、いつの間にか彼女に依存してしまっていたわけです。
彼女にだけ自分の陰湿な部分を見せて、彼女の内面を無理やり覗き込み、それで秘密を共有したつもりになって、常に浮気が心配で、何もかも上手く行かず、2年ほどで別れることになりました。しかし、問題なのはその先でした。僕は彼女に執着し、一方で彼女は僕を軽蔑して、僕の内面の暗く陰湿な部分や弱みを周りの友達に流し始めたのです。自分は周りから笑われているような気がして学校へ行くことが怖くなり、半ば不登校のような状態になってしまいました。寮と保健室とを往復するだけの日もありました。学校へ行かずに寮の個室に引きこもっている時には、太宰治やフロイトなどを好んで読んでいたり、相変わらずCDプレイヤーでRADWIMPSやamazarashiを聴いて過ごしていました。
自分はその学校にいることに耐えかねて、実家に何度か電話をして母親に学校を辞めたい、もしくは死んでしまいたいという由を伝えました。すると彼女からは「学校辞めるくらいなら死んでくれた方が楽だ、いくら学費を払っていると思ってるんだ」という言葉が出てきて、自分は絶望の中へ突き落とされた気持ちでした。それがトドメとなり、自分はぼんやりと死ぬことを決意し始めました。
その頃から僕は眠れなくなっており、真っ暗な部屋で起きているのか眠っているのか分からないような時分に背の高い女(メラン)に襲われる夢なのか幻覚なのか分からない、とても恐ろしい現象を繰り返し味わうことになります。まるで毎晩ベクシンスキーの世界へ迷い込むような、そんな心地でいました。また、同じ頃に僕は幻聴を聴くようになりました。蜂か虻かが自分の近くを飛んでいる音、そいつが僕に語りかける言葉、最初は不可解でどうしようもなく怖かったですが、そのうちに彼らは僕の味方であり、メランと僕とを遠ざける為の役割であることを知り安心しました。それから、僕は彼らのおかげで無理をすれば学校へ行けるほどの気力が湧いてきて、少しづつ学校へ足を運んでいました。死のうと決めた割には、できる限り学校へ通っていたんです。
そんなギリギリの生活の中、自分は無事大学へ入学することが出来ました。大学の合格が決まった頃には蜂もメランも僕の前からいなくなっていました。