謎の赤線20円入場券/茜堂 赤線20、謎の久大本線田主丸駅入場券=茜堂 |
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この赤線20円入場券は、平成18年の暮れにネット上に突然現れて、そして突然消え去った謎多き切符です。 前の持ち主は、20年程前に入手されたようで、たまたま同県の方のようでしたので、入手に向けての接触を致しました。 最終交渉時点では、この入場券が偽券で有る様だと言う、双方認識の元に、茜堂の研究用にお譲り頂いた物です。 ● 現在、最新の赤線20円入場券リストによれば、久大本線では、南由布駅と庄内駅の二駅が、確認されていますが、 先輩諸氏のご意見を伺ったところ、過去において田主丸駅には、精巧な偽券の存在を、確認されているようで、 赤線20円入場券については、恐らく、存在しないだろうとのお話でした。 ● 今回、その特異な入場券の姿を収録し、印刷事情から、真偽の程を検証して参ります。 |
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表面の文字表記について、まずは検証してみます。 ● 沿線のページ掲載の、門司印刷場発行の20円券の代表と、画像照合致しましたが、活版の字組が全く合っておりません。 勿論、掲載中の他の7枚の20円券を照合してみますと、真券同士では駅名以外のスミ文字は、 全て、活字の大きさや配列配置位置が、ピッタリと合っています。 ● ここで活字が合わないという事は、初期ロットの印刷券では無いかも知れません。 ただ、紙厚と赤線の刷り幅はしっかりと、10円券末期の物と合致しているようです。 ● ダッチングについては、147の三文字での印字照合により、正規品(天虎式)による物と、判断されます。 ● 赤線につきましては、凸版か平版(オフセット)ですので、版下での偽造作成は非常に簡単です。 文字類は活版のため、活字の組み立ては、植字での手作業となりますので、 活字とインテルや込物などの微妙な配置が、なかなかサンプルと合わせ辛い為、ここでは最初から諦めて、手を抜いているようです。 ● ● と、ここまで来ると偽券が確定致しますが、上記の記述による照合母体は、篠栗線や筑豊本線の初期の20円券です。 やはり、同一線上の物と比べなくてはいけませんので、豊後中川駅の券番40番台の初期券で、画像照合を行ってみましたら、 駅名の差し換え活字以外は、なんとケイ線も含め寸分違わず、見事一致しています。 ● 活版で、ここまで合わせきるのは、至難の技ですので、活版部分は少なくとも真券である可能性が、非常に高くなります。 |
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赤線刷の、 先刷後刷の、検証。 |
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左=久大本線、田主丸駅。右=久大本線、豊後中川駅。 下=両駅の画像照合。 |
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料金改正135日目の発券(田主丸駅)と、351日目の発券(豊後中川駅)との照合画像。 | ||||||||||
● 平版刷りの赤線が、活版刷りの下側に位置する事にでもなれば、見事真券であると言う結論が、導き出されるのですが、 重なり合う面積が少ないだけに、光学機器や放射性炭素を当てない限り、刷面を黙視しただけでは、その判定は不可能です。 ● そこで赤線が掛かる、左右の断裁面を調べてみる事にします。 ● 化粧断ちの前に赤線を刷ったのか、その後に刷ったのかで、真偽がハッキリ致します。 当券使用の原紙は、バラ板紙で紙目は横目になっていますので、 断裁面を、25倍のマイクロルーペで確認すれば、赤ベタの加刷の場合、微量なインクの吸込みの痕跡が、少なからず表れます。 ● ● 結果としては、左右の断裁面表側に、十分の一程の吸込みが確認され、断裁後に加刷された物と判断致します。 ● 尚、赤線については、印刷用の油性インクでは無く、水性インクで手刷りしたかのような、痕跡も見受けられます。 更に、赤線の境界線上下には、赤刷りの際のマスクに使われたと思われる、セロテープのような物の、剥がし痕も確認できます。 推測の域を出ませんが、左右に同厚の紙を置き、フェルトに調合した水性インクで、横一に、マークしたのではないかと思われます。 ● その根拠として、片側に引き始めの流れるような、インク溜まりが、微量ながらルーペにて確認できました。 ● 正規の、凸版印刷や平版印刷では、このようなインク溜まりは発生致しません。 どうやら、真券の20円白券に手作業で赤線を加刷した、赤20の偽物である事は、間違いないようです。 ● ● |
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券番の、 連数印刷の、検証。 |
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左=久大本線、田主丸駅。右=久大本線、豊後中川駅。 下=両駅の画像照合。 |
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券番0047(田主丸駅)と、券番0042(豊後中川駅)との照合画像。 | ||||||||
裏面の文字表記について、引き続き検証してみましょう。 ● 検体標本は、0047という非常に若い券番を持ち、赤線20円券にリアリティーを、かもし出しています。 他の同期券のカウンターの活字と、画像照合の結果では同類の様式券と同じで、別段気に掛かるところは無いようです。 ● 尚、当券裏面には珠に見受けられる赤線の裏写りは有りませんが、この症状は印刷後のエイジング不足(不養生)による断裁の結果で、 これについては、丁付赤刷り真券では稀な症状で、通常では裏写りの無い物を、正常な印刷物と見なします。 ● 東京印刷場の赤線入場券の末期券では、在庫調整の為に、 化粧断ちの後に、活版で赤とスミの二色を施した券が有りますが、特性上この券では、赤色の裏写りが多発したようです。 ● 当券に関しては、真券に赤刷りを施しているとの判定を、茜堂は優先致しますので、 裏写りの是非は、真偽の判定基準からは遠ざかる物と認識され、例え有ったとしてもここでは、真券の証明には成り得ません。 ● ● 尚、有価証券の偽造につきましては、有効期限も過ぎ実質的な被害は皆無の為、これを真券への落書き扱いとします。 真券赤20ならば大発見でしたが、善意のレプリカとして、所蔵目的で作成された物だと、茜堂は判断させて頂く事と致します。 |
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