1月22日、武漢赤十字病院の発熱外来に押し寄せる患者(写真:財新)

※前回『第4回 罪深き「空白の20日間」』から読む

1月20日、武漢市衛生健康委員会は公式ウェブサイトを通じて、全市の医療機関の発熱外来および新型肺炎の治療に当たる指定病院のリストを公表した。その数は発熱外来が全市に61カ所、指定病院が市街地区に3カ所だった。

さらに21日、武漢市当局は発熱患者を収容する病院を7カ所指定し、体温が37.3度を超える患者はそこで集中的に診療すると発表。同時に、前日に公表した61カ所の発熱外来はいかなる理由があれ休診してはならず、症状に応じたトリアージ(優先治療)の判断や通常の発熱患者の診療を継続するよう求めた。

だが、もう手遅れだった。現実は当局の想像力をはるかに超えていたのだ。

当年69歳の武漢市民の謝作良は、(新型コロナウイルスの感染源とされる)華南海鮮市場へ行ったことはなかった。だが、1月18日午前に漢口へ写真展を見に出かけ、その夜から熱が出た。翌日病院へ行くと、肺にウイルス性感染があると告げられた。

謝は医師の勧めに従い、翌20日は早起きして武漢協和病院へ向かった。ところが、発熱外来の前にはすでに数百人が診察待ちの長蛇の列を成していた。

この日、財新記者も協和病院で同じ光景を目撃した。発熱外来だけではなく点滴室でも行列が入口の外にあふれ、医師や看護師は防護服を着て受付、診察、点滴などに当たっていた。窓を隔てた室内の検査科の医師たちもマスクを着用していた。