1月24日、武漢赤十字病院で励まし合う看護師たち(写真:財新)

※前回『第2回 医師たちへの箝口令』から読む

医療関係者への新型コロナウイルスの感染はどこまで広がっているのか。湖北新華病院の放射線科医の李雲華には詳しいデータはわからなかったが、彼が現場で見聞きするケースはますます増加していた。

例えば健康診断科のある医師は、感染者だった疑いのある来客と30分ほど接した後、すぐに肺への感染が判明した。ウイルスに感染した1人の歯科医からは、歯の治療に訪れた2人の放射線科医へと伝播した。

これらの事実は、呼吸器内科など感染リスクがもともと高い科だけでなく、院内感染があらゆる部門に広がっていることを示していた。

1月29日までに、新華病院で働く900人余りの医療関係者のうち「新型コロナウイルスに感染した疑いがある例は30人を超えた」。李は財新の記者にそう明かした。

同じ頃、新華病院からそう遠くない別の大型総合病院で、1人の放射線科医がCT画像に写ったすりガラス状の影を注意深く見つめていた。劉力という名のこの医師は、2019年12月30日に「SARS(重症急性呼吸器症候群)に似た患者が現れた」との情報を見た翌日からマスクを着用し、同僚たちにも注意を促していた。

劉の病院では5000~6000人が働いており、1月下旬時点で感染が確定、またはその疑いがある医療関係者が100人近くに上った。「私の専門はCT画像の診断で、多い時は(新型肺炎の病変を)20例は見た。自分の科は感染者が相対的に少ないが、それでも3人が隔離された」。劉はそう振り返る。

防護服やマスクを自力で調達

慎重な劉がいま最も敬服しているのが、武漢赤十字病院の放射線科の主任医師である。