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last updated 2001 Nov. 12

アフガニスタンへの自衛隊派遣はやめるべき? じゃあ、かわりに日本は何をすべき?
米国との安全保障はどうしたらいい? ……NGOの現場から衆議院議員になった
辻元清美さんに、「日本のこれから」を聞く超短期集中連載。5日間毎日更新でお届けします!
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辻元清美さん (衆議院議員)
第1回 自衛隊さえ送れば何か解決すると信じている
与党の男たちこそ、平和ボケだ!



視察してきたアフガン難民キャンプの実情

——パキスタンの難民キャンプ視察から戻られたばかりですが、日本で伝えられていることと違うことはありましたか?

  全然違いました。ペシャワールというアフガニスタン国境に近い街の難民キャンプなどに行ったのですが、日本の国会の審議がいかに非現実的かということを痛感しました。

  現場はものすごく緊張していて、治安も悪い。とくに反米感情が非常に高くなっていて、タリバンに送るための寄付が募られていたり、難民キャンプの中でもタリバンに参加するための義勇兵の受け付けなんかもやっている。

  私たちは現地の女性と同じブルカ(体を頭からすっぽり覆う布)を被って行動していたんですけど、日本人だとわかると「なんで日本はアメリカの肩を持つん だ」とタクシーの運転手さんやレストランの人に何度も聞かれました。よく言われてますけど、あちらでは日本の評判は本当に高い。第二次大戦でアメリカにこ てんぱんにやられたのに、がんばって復興した国、戦争をしない平和主義の国、と思われてきた。同じアジアの国、という親近感もある。それが今回の自衛隊の 派遣でブチ壊しになってしまうかもしれないんです。

  ペシャワール周辺に住む人々と、アフガニスタンの多数派民族は同じパシュトゥン人(タリバンもパシュトゥン)。国境はあとから引かれたものだから、言って みれば、東京の人にとって、箱根の山の向こうが爆撃されているようなものなんです。同じ仲間だし、親戚だっている。そんなところに、アメリカの子分のよう な自衛隊が迷彩服を着て銃をブラブラ下げて入っていけるわけがないんです。いかに日本政府が現地の状況を把握していないか、「人道支援」なんてできるわけ ないですよ。

  アフガニスタンから避難してきたNGOやUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の人たちに話を聞いたんですが、この数年続いた大旱魃のせいもあり、アフ ガニスタンでは、400万人くらいの人が飢餓で苦しんでいると推定されているそうです。中でもそのうち90万人はこの冬を越せずに餓死する可能性が高い。 国会では「多少の犠牲があってもテロの根絶だ」と言うけれど、90万人のどこが多少の犠牲なのか、ということです。


男どもこそ「平和ボケ」だ!

——自衛隊派遣反対、戦争反対、などというとすぐ「女は平和ボケ」なんて言われがちですが、それについてはどう思いますか?

  自衛隊を送りたいと言う男どもこそ平和ボケだと思いますよ。何か、自衛隊さえ出せば解決するような幻想にしがみついているの。今回のパキスタンも、「一緒 に行こうよ」って誘ったんですけど、「治安が悪いんだろ」なんて言うわけ(笑)! それなのに、自衛隊を出すことには必死になる。自分は安全なところにい ながら、何かやった気になりたいんでしょうね。

  山崎さん(自民)、冬柴さん(公明)、二階さん(保守)の与党3幹事長もパキスタンに行きましたけど、「どこに行くの?」って聞いたら、イスラマバードと カラチに行って帰ってくるんだって。ズルイ(笑)! だから、電話して言ってあげたの、「難民キャンプ案内しましょうか」って。そうしたら「いやあ、そん なところまでは行きたくない」って。自衛隊の人もかわいそうだよね。

  私は、日本は憲法9条を武器にして、「ウチは、戦争はしませんけど、ホンマに仲介とかやったらどんなとこでも、地の果てまでも行きまっせ」とやるべきだと 思う。そういう国のほうがカッコいいと思わない? お金出すなんて恥ずかしいって言うけれど、人道支援にもお金はかかる。重要な支援になるんです。


北東アジアの安全保障を作ろう

—— このあたりを考えると、どうしても日米安保条約のことを考えざるをえなくなってきます。日本がアメリカの傘の下から丸腰で出ることなんてできるんでしょう か? 辻元さんは「21世紀の北東アジアの平和構想」というのを掲げていらっしゃいますが、日本の安全保障はどうあるべきだと思いますか?

  安全保障に関しては、日本には今、日米安保条約しかないんです。アメリカとの二国間のこの軍事安保しかなく、ここに頼りきっちゃってるわけです。これはす ごく脆い。EUは多国間安全保障の形になっているし、ASEANも似たような働きを持っています。たとえばASEANでは加盟国メンバーの2国がケンカし ていても、年に1回は必ず集まるし、そこで仲裁に入る国があるわけ。ところが、日本、韓国、中国、モンゴル、北朝鮮の北東アジアにはこういった機構がな い。ないどころか、戦後1回も集まったことがないんです。

  韓国と北朝鮮も去年から対話を始めたことだし、ここらでこの5ヶ国が年に1回集まるようにしたい。軍事的な安全保障の話から入ると対立があるし、国の体制 も違うから、たとえば環境問題や人権問題を話し合うことから入る。各国が話し合うテーブルを作りたいんです。

  多国間安全保障って、軍事だけじゃないんです。たとえばエネルギーの安全保障というものがある。ヨーロッパは今すごく軍縮してきていますが、これができる ようになった一因に、天然ガスのパイプをいろいろな国を巻き込んで引いたことがあります。これは強い抑止力になる。どこかが爆撃されたりすると、自分のと ころにもエネルギーが来なくなっちゃいますから。私の構想は、シベリアの天然ガスをモンゴル−中国−北朝鮮−韓国−日本とパイプラインで引こうというもの です。

  21世紀の安全保障というのは、軍事よりも先にエネルギーや環境、人間の安全保障を創り上げるという概念からスタートさせる。人間が最低限必要なものを シェアしあい、お互いの利害関係を一致させていく。私はNGOで活動していた時代から国連の会議などにも参加してきましたが、こういったことは国連でもだ いぶ議論されてきている。その中で、北東アジアの平和構想のためには、この多国間の安全保障システムを作れれば、自然に日米二国間の安全保障だけに頼らな くてもいいようになれるのではないかと考えているんです。


北朝鮮ともまずは国交正常化を

——ということは、北朝鮮とも早期に国交正常化をするということでしょうか。 拉致問題などもありますが?

  やったほうがいいでしょう。力だけで押そうとしても解決しないと思うからです。まずは国交正常化して、正式な話し合いのチャンネルを作り、その中で解決していくほうが可能性は高いと思う。

  拉致問題というのは、これまでにも世界のいろいろなところで起きてきているんです。日本人は、北朝鮮というと特殊な国と思ってしまうけれど、たとえば中南米などにも軍事独裁政権でもっとテロっぽい国家があったし、アフリカにも危険な軍事独裁政権はあった。

  そういうときに国際社会はどうしたかというと、その国家ときちんとコミュニケーションをとる中で包囲し、民主化を促し正していくことをやってきました。北 朝鮮も、国際的に孤立させてはいけない。国際社会の一員にうまくインプットしていくことで、北朝鮮の社会をも変えながら拉致問題を解決していかないと。

  こういうことを弱腰だと言う人に言いたいのは、「声高に非難して帰ってくるんですか、道が開けるんですか?」ということ。国交正常化の中では、戦後補償が 出てくるでしょう。日本は、かつて朝鮮半島を植民地にして言葉まで奪ったことに対して、北朝鮮には補償を何もしていないのだから、あたりまえの話です。そ のこととセットにせずに、「9人、10人返せ!」ばかり言ってもフェアじゃないと思います。

up

●次号以降の予告とバックナンバー
第1回 自衛隊さえ送れば何か解決すると信じている
与党の男たちこそ、平和ボケだ!
Nov. 12
第2回 オランダ型ワークシェアリングと株で、
社会のしくみを変えていこう
Nov. 13
第3回 NPOは、社会を変えていく起爆剤になる!
NPOの可能性
Nov. 14
第4回 今の政治がイヤなら、
しなければいけないコト
Nov. 15
第5回 辻元さんの目指す社会とは?
ユーザーからの質問にも答えます
Nov. 16

text / Aoki Yoko (Cafeglobe.com)
photos / Yoshioka Shinjiro (interview), 辻元清美事務所


つじもときよみ
早稲田大学時代に民間国際交流団体「ピースボート」を設立、交流や援助活動でのべ3万人の若者を組織して60ヶ国以上を訪問。1992年、国連主催の地球 サミットに参加。1996年、土井たか子さんの要請で近畿比例区で当選。NPO法を議員立法で成立させる。2000年には激戦の小選挙区(大阪10区/高 槻・島本)で再当選。社民党政策審議会長。「総理、総理、総理!」と小泉さんに食らいついた国会中継の視聴率は史上最高の13.1%を記録。
辻元清美サイト「清美したデ」
http://www.kiyomi.gr.jp/




10 月下旬、パキスタンのペシャワールに社民党の阿部とも子議員、北川れん子議員と一緒に視察に出かけた。日本のNGO、ペシャワール会による食糧支援のト ラックの前で記念撮影。右端が日本人スタッフ、その他の男性は現地スタッフやアフガニスタンの内地まで運転していくドライバー、荷運び係の人たち。


小麦をトラックに積み込む作業。この小麦が200キロあれば、飢えに瀕した10人家族がこの冬を乗り切れるという。200キロの小麦は、日本円で6000円程度だという。


ペシャワール近郊の難民キャンプ。タリバンの弾圧や戦乱、食糧難を逃れてすでに20年近く暮らしている人々もいるなど、難民キャンプといっても集落のようになっている。しかし上下水道などの設備がないなど、生活条件は非常に悪い。




辻元さんも支援を呼びかけているNGOペシャワール会では、「アフガン いのちの基金」への寄付を募っています。
2000円あれば、アフガニスタンの平均的な1家族(10人)が1ヶ月食べることができます。6000円あれば、餓死寸前の一家がこの冬を乗り越えることができるのです。
「6000円なんて、ちょっと飲みに行ったらすぐ使っちゃう金額。自分のお財布から少し出すことで、直接的に貧困を助けることができるんです」(辻元さん)
ペシャワール会サイト
http://www1m.mesh.ne.jp/
~peshawar/

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