東京アラート 第2波への備えを急げ

2020年6月6日 07時09分

 東京都が「東京アラート(警報)」を出して初めての週末を迎えた。政府の緊急事態宣言が解除されても新型コロナウイルスへの警戒は全国どこでも怠れない。感染第二波に備え対策を急ぎたい。
 東京都の新規感染者は五月下旬から増加に転じた。十九日ぶりに三十人以上となった六月二日には感染拡大への心配から注意喚起のため警報を出した。
 ただ、都は前日の一日には休業要請を緩和した。緩和自体は警報発出後も後戻りさせていない。休業の要請や解除を頻発させると事業者への影響が大きいからだ。営業しながら感染対策にも取り組んでもらう方針だ。
 だが、感染が拡大したのでは再度の自粛要請が必要になる。ウイルスと共存せざるを得ない以上、社会経済活動と感染防止対策をどう両立させていくのかは全国で抱える難しい課題である。警報はそれをあらためて示した。
 社会経済活動の緩和ペースはこのままでいいのか、都も再点検する必要があるだろう。
 自治体を支援する政府も、経済動向と感染状況を注意深く監視する責任がある。
 都の感染の多くは接待を伴う飲食店の従業員や客など「夜の街」関連で、長引く自粛で隠れて営業を続ける店舗もあるようだ。ここで感染が広がれば他業種も含めた再自粛要請を求められかねない。
 生活のために営業せざるを得ない事情もあるだろう。都は経営への経済支援などもセットで考える必要がある。
 一方で、業界の感染防止への努力も不可欠だ。密閉・密集・密接の「三密」になりやすい業態である上、素性を知られたくない客もいて感染経路をたどりにくいとの事情もある。
 業界団体は指針を定めて対策に取り組んでいるが、専門家や行政の協力を得てさらにできる対策はないか、知恵を絞ってほしい。
 医療機関内の感染も都や北九州市で発生している。既に封じ込めに成功した医療機関の対策を共有したい。受け入れ態勢の拡充と合わせ防護具の確保や医療従事者への検査拡大なども必要だ。
 警報が出た東京に限らず、どの地域でもいつ感染が広がるか分からない。「夜の街」や医療機関が直面する課題はどの地域も共通だ。人ごとと思わず警戒してほしい。
 「誰でもいつでも感染しうる」と考え、個々人もマスク着用や人と距離を取るなどの対策を徹底して防ぎたい。

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