台湾の韓国瑜・高雄市長が罷免へ 「親中」に逆風

政治
中国・台湾
2020/6/6 19:51

罷免が決まり記者会見する韓国瑜市長(6日夕、高雄市内)

罷免が決まり記者会見する韓国瑜市長(6日夕、高雄市内)

【台北=伊原健作】台湾南部の主要都市、高雄市で6日、韓国瑜(ハン・グオユー)市長(62)に対するリコール(解職請求)の賛否を問う住民投票が行われ、賛成多数で成立した。韓氏は1月の総統選に対中融和路線の野党・国民党候補として出馬し大敗。市長の座も追われることになった。香港問題で対中警戒感が強まり、親中派に逆風が吹く政情を映している。

高雄市選管によると賛成票は約93万9千票と、「有権者の4分の1」(約57万5千票)という成立条件を大幅に超えた。7日以内に結果が公告され、韓氏は失職する。台湾の主要県市の首長が罷免されるのは初めて。

リコールの成立を受け、韓氏は6日夕に記者会見し、対中強硬路線の与党・民主進歩党(民進党)が罷免に向け「メディアやネット工作員を買収した」などと不満をぶちまけた。

韓氏は2018年11月の統一地方選で高雄市長に当選した。総統選出馬に向け、就任後1年足らずの19年秋から市長職を休職したことから、市民団体などが「市民への約束を破った」とリコール運動を展開していた。

韓氏は中国ビジネスで人々を「大金持ちにするぞ」などと主張してきた。独特の風貌と話術で人気を博して「韓流」と呼ばれる社会現象を巻き起こし、統一地方選での国民党大勝の立役者となった。余勢を駆って総統選に参戦し、党内予備選では電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手である鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者、郭台銘(テリー・ゴウ)氏を破ったが、総統選では民進党から再選出馬した蔡英文(ツァイ・インウェン)氏に敗れた。

「香港」が韓氏の足かせとなった。19年6月から反政府デモが拡大。中国に統一されれば「香港の二の舞いになりかねない」との警戒感が台湾でも高まり、総統選での敗北につながった。

直近では中国で香港への統制を強める「香港国家安全法」の制定方針が採択され、台湾では中国への反感が一段と強まる。今回のリコールは特に対中警戒感の強い若者らが推進しており、香港問題に刺激されて活動に弾みがつき、賛成票が膨らんだ面がある。

今後は行政院(内閣)が高雄市に暫定的な市長を派遣し、3カ月以内に次期市長選が実施される。民進党は18年の高雄市長選で韓氏に敗れた副行政院長(副首相)の陳其邁氏を擁立するとの見方がある。国民党は逆風下で人選が難航している。

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