キャベツには「春キャベツ」と「冬キャベツ」の二種類があります。実はどちらも年間を通して様々な産地のものを食べることができますが、冬キャベツは甘みと旨味を活かした加熱調理に、春キャベツはやわらかさと瑞々しさを生かし、短時間の加熱、あるいは生食に向いています。今日は春キャベツを和風コールスローにしましょう。
和風コールスロー
キャベツ…1/4個(300g程度)
新玉ねぎ…1/2個(100g程度)
みょうが…3個(50g程度)
塩…重量の2%
米酢…大さじ2
サラダ油…大さじ1
1.キャベツは太めの千切りにする。それを三等分にする。ボウルに移し、さっと洗い、水気をよく切る。新玉ねぎ1/2個は半分に切り、繊維を断ち切るように薄切りに、みょうがは半分に切り、千切りにする。
2.ボウルに1の野菜を移し、重量の2%の塩を振り、全体を和えて20分〜30分置く。
3.しんなりするので何回かにわけてキッチンペーパーなどで絞る。ボウルに移し、米酢、サラダ油で和える。
キャベツの正体
キャベツは不思議な野菜です。植物の葉は普通、光合成をするために広がるものですが、キャベツは短い茎にたくさんの葉が伸び、互いに重なり合った状態。どうしてこんな不思議な形をしているのでしょうか?
キャベツの原種はケールという野菜で、こちらの葉は丸まっていません。どちらもスーパーで買えるので機会があったら食べ比べてください。キャベツの方がずいぶん甘く感じられると思います。
キャベツもケールと同じように葉を広げ、光合成をしながら生長します。ある時期になると主軸の芽に栄養が送られるようになり、それが肥大化していきます。これがキャベツです。つまり、私たちが食べているキャベツの葉は光合成器官ではなく、貯蔵器官。そのため糖分などを含み、甘く美味しいのです。
つまり、キャベツは通常の葉物野菜とは性質が異なります。したがって調理法が異なるのは当然です。貯蔵器官ですから調理法的にはどちらかというとカブや大根といった根菜類に近く、さっと火を通すのではなく、ある程度加熱したり、生食する場合でも薄く切って、食べやすい状態にするのが基本です。
キャベツは生食にも向いていますが、そのままではなく浅漬けにしたりします。浅漬けは葉物野菜ではあまりしませんが、カブや大根ではよく見られる調理法です。
コールスローの場合もはじめに2%の塩をふり、浸透圧で細胞壁を壊し、やわらかくすると同時に食べやすくします。浸透圧とは二つの濃度の異なる液体が隣り合ったとき、濃度を一定にしようと働く現象です。この場合、キャベツの組織液(塩分濃度に換算すると0.7%程度)よりも濃い塩分が外側に存在することで、キャベツの水分が出ていき、代わりに塩分が浸透していきます。
キャベツの切り方は好みで、小さく切ってもいいですし、千切りにしてもいいですが、やや大きめに切ったほうが春キャベツの甘みが生きるか、と思います。塩を振って時間を置くと、キャベツがしんなりします。これは細胞壁が壊れた証拠です。
このままの状態だとキャベツの浅漬けなのですが、マヨネーズや酢、オイルで味付けするとコールスローというサラダになります。今回はマヨネーズを使わず、みょうがを加えてさっぱりとした和風にしてみました。食べ残ったコールスローは冷蔵庫で保存すれば2〜3日は食べることができます。(noteではマヨネーズを使った基本のコールスローの作り方も紹介しています)
ところで、食べ残したコールスローは次第にキャベツの色がくすみ、反対にみょうがの色が鮮やかになってきます。キャベツの色のもとであるクロロフィルはアルカリ性には強いのですが、酸性になると退色してしまうからです。一方、みょうがのアントシアニンは酸性で赤紫色に発色するので鮮やかさを保ちます。こうした料理一つとってみても、様々な性質が作用しているのです。野菜=植物の世界は多様で、だからこそ料理は奥深いのです。