2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学高等研究院の本庶佑特別教授が受賞の記者会見で「日本の製薬会社は見る目がない」と発言した。
ノーベル賞級の画期的な製品を手に入れるには
発言の根拠は日本の研究者がいい研究をしているにもかかわらず、外国の研究者ばかりに資金援助をしていること。ノーベル賞受賞の対象となった免疫の働きにブレーキをかけるたんぱく質「PD-1」についても、当初は「日本のすべての大手製薬会社から共同研究を断られた」という。
武田薬品工業<4502>がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に6兆8000億円もの巨費を投じるのは、製品化が近い開発中の候補物質を多数保有しているためだ。
それだけの巨費を投じることから、短期間で資金を回収しようとするのは企業としては当然のこと。だが本庶特別教授が言うように日本の基礎的な研究にも目を向けることで、ノーベル賞級の画期的な製品を手に入れる可能を無視することは得策ではないだろう。
すべての大手製薬会社から共同研究を断られた
本庶氏はPD-1が持つブレーキの機能を取り除くことによって、免疫機能が復活し、がん細胞への攻撃を再開する新しいタイプの「がん免疫療法」の開発に成功した。
この「がん免疫療法」を製品化するには製薬会社の協力が必要だったため、本庶氏は小野薬品工業に共同研究を持ちかけた。これに対し小野薬品はそれまで、がん治療薬を手がけたことがなかったため単独での共同開発参画は難しいと判断。小野薬品が他の製薬会社に共同研究を打診することで、製品化を模索した。
しかし、小野薬品以外の国内大手製薬会社からは共同研究を断られた。このため本庶氏は米国のベンチャー企業に製品開発を持ちかけ、合意が得られたところに小野薬品から共同研究の体制が整ったとの話が寄せられた。その後、小野薬品との共同開発が進み、PD-1の抗体医薬「オプジーボ」が誕生した。