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 report=2003/6/24


“ 隕石・火球説”に待った!!”
「千葉・茨城、謎の爆音&怪光」の驚くべき正体!!

 ズッ、ズドドドドォォ~ン!
 6月16日午後10時10分頃、突如として関東地方の広い地域で大音響が鳴り響いた! その時間は数秒間。地域によっては窓ガラスがビリビリと震え、屋外では千葉・茨城県方向の夜空が昼間のように明るく輝いて見えた。
 な、なんだ!?  雷か地震か? それともテポドン攻撃か? 各地の警察や気象台に問合せ電話が殺到したが、その後は何の異変も起こらなかった。 そして翌日の新聞とテレビでは、謎の怪音&怪光の正体は「火球」ではないかと報道された。これは、大気圏に突入した隕石が異常に明るく燃え輝く、珍しい自然現象だという。 
 まあ、空の上で異常が起きたことは間違いないので、この火球説は一見して説得力がある。ところが取材を進めていくと、どうも奇妙なのだ。たとえば国立天文台の広報官によると、
 「私どもが隕石落下だと断定したような報道もありますが、実際には原因不明です。過去にはまるで月が落ちたような大型火球現象も観測されていますが、落下時に大音響をともなうケースは非常に少ない。それに16日の晩は曇天だったので、隕石だと結論できるような目撃報告はなかったんです」
 もうひとつ東京天文台が首を傾げるのは、隕石が燃える時に発生する強い“電波ノイズ”が、今回はまったく観測されなかったこと。
 それじゃ一体、何だったのか???
 さらに取材を進めると、ひとつの驚くべき仮説が浮かび上がってきた。日本の海洋科学のパイオニア奈須紀幸博士(東大名誉教授)は、こう語る。
 「この現象は、おそらく隕石落下ではないでしょう。私は、爆発の原因は海底下に埋もれている“ガスハイドレート”ではないかと思います。これは氷に閉じこめられたガスで、その主成分は燃えやすい“メタン”です」
 水深数百~3千メートルほどの大陸棚斜面海底下に超高水圧で低温氷結したメタンハイドレートは、最近、新エネルギー資源として脚光を浴びている。日本列島の沿岸にはこれが大量に存在し、数年前から本格的な採掘利用計画がスタートした。奈須博士は説明する。「問題の爆発音と怪光が観測された約3時間半前に、茨城県沖を震源としたM5.1の地震が起きていました。その衝撃で、海底下のメタンハイドレート層が大規模に崩壊し、海面上へ浮上した可能性があります。仮に水深2千メートルほどの海底下で氷に封じ込められていたメタンハイドレートならば、海面上では高水圧から解放され2百倍以上もの体積のガスにもどって大気中に拡散します。そして次第に濃度が高まり、海面上数百~数千メートルの辺りで大爆発を起こした。その引き金は、ほんのわずかな空中放電で十分です。むろん、まだ断定はできませんが、隕石説よりもはるかにリアリティがある仮説です」
 なんと! 真相はガス爆発だったのか!? 調べてみると、確かに千葉・茨城県沖にもメタンハイドレート層がある。16日午後6時18分の地震も、海岸から約40キロ離れた同じ海域を震源としていた。やはり謎の爆発音&怪光=隕石説を疑問視するジャーナリストの有賀訓氏もいう。
 「隕石や火球現象の専門家たちの間でも、どうもこれはおかしい!? という意見が強まっているようです。栃木県上空から鹿島灘方面へ飛んだ大火球ともいわれていますが、だとすれば日本全国で観測されたはずです。それに、もし本当に火球だとすれば日本全国で観測されたはずです。また、海上が轟音とともに巨大な炎に包まれたという多くの証言は、やはり火急説では説明がつきません」
 確かに納得がいかない点の多い隕石・火球説。おそらく今回、真相はわからずに終わる可能性が高い。しかし、これが日本経済再生の切り札ともなるメタンハイドレードの爆発だったことを、本誌は今後も検証していきたい。


16日、千葉、茨城県沖の轟音の正体は「隕石などではない」

“謎の火の玉”は吹き出したメタンガスが原因だった
 群発地震がもたらす 海底ガス大爆発の悪夢--メタンハイドレード

21世紀の新エネルギー源として期待されているメタンハイドレード。
だが、地震などが“引き金”になって、大災害の原因となる可能性があるいうのだ…

 「最初に東向きの窓がパアーッと明るくなり、次にドカーン!と、凄い爆発音が響きました。ガラス戸棚がカタカタ震えたけれど、地震とは違う感じでした。外の黄色っぽい光も雷みたいに瞬間的ではなく、3~4秒間続いたと思います。いったい何が起きたのかわからず、しばらく立ちすくんでしまいました……」
 6月16日の夜10時過ぎ。茨城県神栖町に住む本誌読者の主婦Mさん(43)は、遅い夕食の片付け中に、その不気味な“異変”に襲われた。
 突然の爆発音と太平洋側の夜空の発光。同じ時刻に、関東地方各地で大勢の人々が、ほぼ同じような体験をした。
  明けて17日には多くのマスコミが、その謎の現象の正体は“隕石”ではないかと報じた。隕石のなかでも珍しい、強く光り輝く“火球”が、栃木県方向から茨城県の鹿島灘方向へ落下したというのだ。 さらに18日には、気象庁が火球説を裏づける“証拠”を発表した。それは伊豆・伊東市に設置された高感度カメラが撮った写真で、北東の夜空にポツンとひとつの光点が写っていた。そして国立天文台も、「やはり火球だった可能性が高い」と、発表した。
  これにて一件落着。なんだ、あれは隕石だったのか……。
 多くの読者が、そう思ったはずである。
 しかし、このニュースについて多くの専門家の意見や体験者の証言を取材した本誌取材班は、それほど簡単には納得できないのだ。
 まず、証拠写真。16日の関東地方は曇天で、鹿島灘から約150キロ離れた伊東市で撮られた光点もボンヤリと霞んでいた。こいつは、本当に火球なんだろうか!?
 毎日、夜空に注意を向けている天文観測家たちによれば、大爆発音を発するような大火球は当然ながら日本各地で観測されたはずだという。だが、目撃報告は皆無だった。
  同じく、日夜さまざまな自然界の変化から地震や火山噴火の予知活動を続ける民間研究者によれば、
 「伊東市の高感度監視カメラが向けられた伊豆東方沖海域では、6月13日から千回近い群発地震が観測されています。写真の光点はその真上に位置し、地殻変動による電気的な発光現象とも考えられます」(新日本地震雲研究会・鹿嶋実代表)
 もうひとつ、本誌が取材した貴重な情報がある。
 「16日の午後7時過ぎにも、海の方からドーン!という音が聞こえ、水平線方向に赤っぽい光が見えた。靄で視界が悪く漁船は出漁していなかったので、集魚灯とかの人工的な光じゃないことは確かだ」(千葉県・銚子漁港関係者)。
 つまり、16日午後10時過ぎの大異変から3時間前にも、小規模ながら同じ現象が起きていたらしいのだ。
 

燃える津波の沿岸を襲う

 とにかく気象庁発表の写真だけでは火球が原因だったとは断定できない。仮に隕石が太平洋に落ちたとしても、なぜ巨大な炎のような光が何秒間も目撃されたのか? どうやら真相を解き明かす鍵は、空ではなく海にありそうだ。
 そこで日本を代表する海洋科学者・奈須紀幸博士(東大名誉教授)にお話をうかがったところ、やはりこんな答えが返ってきた。
 「私も、16日夜の異常現象は火球の落下では説明が難しいと思います。関東地方の人たちはご記憶でしょうが、あの日の夕刻に茨城沖を震源とした有感地震が起きました。おそらく、この地震が謎の爆発音と発光現象の引き金になったと推測しています」
 どういうことか? 調べてみると問題の地震は16日18時34分頃に発生したマグニチュード5.1の中規模地震で、東京都内でも震度2~3の揺れが感じられた。震源地は茨城沖数十キロの鹿島灘。そして15日と9日にも、ほぼ同じ海域で有感地震が起きていた。奈須博士は続けていう。
 「これらの地震によって、関東太平洋沿岸の水深数百~3千メートルの海底で地殻変動が起き、海底下に埋もれていた可燃性のメタンハイドレート(※説明参照)という物質が海面上に噴出し、空中放電によって大爆発を起こしたという推理が成り立つのです」
 メタンハイドレートという科学用語は、数年前からしきりとマスコミでも紹介されてきた。この天然物質は燃料となるメタンガスを多く含み、日本列島周辺海底に大量に埋もれている。そこで、新しいエネルギー資源として大きな期待がかけられているのだ。
 しかし一方で、メタンハイドレートの危険性を唱える科学者たちも多いという。
 「例えばフロリダ沖の大西洋には、昔から原因不明の船舶・航空機事故が多発してきた“バミューダ・トライアングル”という魔の海域があります。その事故原因をアメリカの海洋学者が1998年に解明し、メタンハイドレートの噴出爆発だということがわかったのです」(奈須博士)
 日本でも昔から、周辺海底を震源とする大地震が起きるたびに、“海が燃える”奇怪な現象が目撃されてきた。例えば明治29年の三陸大津波でも、燃え盛る大津波が沿岸地域に押し寄せ、災害規模を破滅的に拡大させた。そして今後も、メタンハイドレートの津波が日本列島を襲うことも十分に考えられるのだ!
 今、秒読み段階といわれる巨大地震の再来に、さらに恐怖の拍車をかける“諸刃の剣”が、メタンハイドレートではないのか!? 6月16日の異常現象は、われわれへの緊急警告かもしれない……。

(※説明)
 メタンハイドレート/大陸棚斜面の数百~数千メートルの海底下に閉じこめられた可燃性メタンガス。高水圧で氷結しているため、海上に出るとガス体積は数百倍にも拡大する。
 日本では3年前から、この天然物質を石油や原子力に替わる新エネルギーとして採掘利用しようという政府計画が、本格的にスタートしている。