2020年6月3日15時。『ららマジ』は約3年半に渡って続いたそのサービスを終了します。正直とても悲しいことであり、私も聞いたときはショックでした。
でも、事実であり、受け入れなければならないことなのでしょうね。それならば、せめて華々しく、『ららマジ』の話をしながら見送るのもいいのではないかと、今回のサイトジャックとインタビューを提案いたしました。
ジャックについては別記事で話すとして、こちらでは構成・メインシナリオ・西村悠氏、CloverWorks・蟹江寛之氏のインタビュー(オンラインにて行いました)の模様を掲載。今回は3年半の軽い振り返りや、シーズン3・フロウライン調律編のストーリー解説&雪菜・真中華編について、「ららドリ」のお話など、以前のインタビューで聞けなかったことや、消化不良に終わってしまったこと、細かい設定についてなどをお聞きしているほか、キャラクターデザイン・飯塚晴子氏のイラスト&メッセージを載せています。
6月3日が『ららマジ』とチューナーたちにとって、少しでも良き日となるように。そして、器楽部員たちの物語が終わることなく、次に続いて行くように。少しクサイですが、そんなことを思いながら書き上げました。ぜひ、最後までお楽しみください。
――最初は少し振り返りみたいなところから始めていければと。西村さんは飯塚さんとともに『ららマジ』の中核を担うクリエイターですが、お二人はプロジェクトの前から交流ってあったんですか?
西村悠氏(以下、西村)なかったですね。
蟹江寛之氏(以下、蟹江)企画が始まってから1年後くらいですかね。顔を合わせたのは。
西村並行作業で進めていたので、お互いの成果物を見ながら調整していった感じですかね。そういう意味では、間接的にですがやりとりはあったかなと。
――最初、飯塚さんのキャラを見たとき、どう感じましたか?
西村やっぱりすごくかわいくて。「この娘たちを動かせるんだ」と思うと、モチベーションに繋がりましたね。一方で、記号的なかわいさの下に、人間的な深さ・文学的な「ブレ」を感じました。イラストとシナリオというぜんぜん違うジャンルですけど、かわいさと深さのバランスは自分の作品でも目標としています。絵を見たときから、自分の目指している作品を作れば、自然とマッチしていくなという予感はありましたね。
――イラストだけでそこまで感じさせるのはさすが飯塚さん……!結果的にもぴったりだったと思います。では、メインストーリーの振り返りもしていければと。前回のインタビューでは、シーズン2の終わり(11幕)まで伺いましたので、今回はシーズン3(12幕~)のテーマ等を聞いていければと思います。
西村シーズン3、つまりフロウライン編はとにかく苦労しましたね。テーマが深く繊細で、全体的に模索しながら制作していきました。蟹江さんと何時間も打ち合わせしながら作っていったのを覚えています(笑)。
蟹江シーズン1は夢世界や調律についてのチュートリアル的な側面を持ち、シーズン2では調律にこなれてきて自由度が出てきたと思います。そしてシーズン3に入るわけですが、ここでは調律に対する「認識のやり直し」をしてもらうつもりでした。
「単純に調律を進めていいのか?」というのを改めて考えてもらいたかったんです。カグラが調律の是非を問う場面とかもありましたよね。
――12幕では亜里砂先輩が「家族の問題に踏み込んでいいのか」という話もしていましたね。
蟹江そうですね。シーズン2までは、ホニャに言われるがまま調律を進めていましたが、それに綻びが起こるのがシーズン3であり、それを通してチューナーは「調律」に対する一つの答えを得ます。その答えが正しいかどうかは別として、確固たる信念を持って以降の調律に望むことになります。
――ユーザー的にも、どこか引っかかりを感じながら進めている感覚はありました。共通のテーマなどはありますか?
蟹江共通のテーマは「家族」ですね。ただ、「家族愛」ではありません。
西村部員たちの育ってきた環境。友愛やホームという言葉でも表現されるような「拠り所」がメインですね。
蟹江これが1人の物語なら迷うことなく「家族愛」なんでしょうけど、『ららマジ』には沢山の娘がいますからね。「家族」と一口に言っても、その認識はそれぞれ違うように、部員たちが持っている「拠り所」とはどういうものなのか。それを提示できればいいなと思っていました。
――麻衣先輩のシナリオとかはわかりやすく「ホーム」の話でしたね。それでは、「12幕・カノホナピリカイ」から順にシナリオ解説をお願いできればと思います。
西村シーズン3の始まりとなる12幕は幸のメインストーリーでしたね。
テーマとしては、ストレートに考えれば「大切な人の喪失」ですが、そうすると真中華と重なる部分が出てきそうだと思ったのと同時に、「当時幼かった幸にそこまでの思い入れがあったのだろうか?」という疑問が出てきまして。であれば、その疑問を中心に持っていこうと。つまり、父との思い出に乏しい幸が感じている、家族からの「疎外感」ですね。
『ららマジ』という作品は「ユーザーの誰もが感じたことのある感情」がシナリオに入っているか、というのを大切にしています。そういう意味であれば「父親の死」というのはかなり限定された体験ではあります。ですが、大好きな人達(幸の場合は母と姉)が共有しているものに入っていけない「疎外感」というのは、誰もが感じたことがあるのではないかと思いますし、共有しているものが大きいほど、そこに入れない「疎外感」もまた大きくなります。その「疎外感」にテーマを充てたのが「12幕・カノホナピリカイ」になります。
そして、それとは別に幸の「色気」を出そう、という考えがありました。
――色気、ですか……!12幕の幸には、たしかに妖艶な部分がありました……。
蟹江ギャップ萌えみたいなところで、幸のメインストーリーではより女性的な部分を出していこうという狙いがありましたね。女性って我々男性から見たときに、急に姿が変わったように見える瞬間があるじゃないですか。それこそ、急な心変わりに見えたりとか。そこが男性から見て魅力的に見える部分でもあるのですが、本当に変わったのかどうかは男性からだとわからないんですよね。
西村幸の変化をシナリオに落とし込むにあたって、「疎外感」をノイズにえぐられている幸は、無意識に自分の中の女性的な魅力を利用し、男性に頼ることで寂しさを埋めようとするのではと考えました。思い返してみると、12幕の幸は少し「悪女」っぽい言動がありましたね。しかもその言動は、亜里砂たちが出てきた途端になくなります。「疎外感」がある種の計算高さに直結しているのかなと。それを持って、幸の危うさ・儚さをシナリオで描き、昔の青春映画であったような、女の子の神秘的な部分と幼さのバランスを描ければと意識しましたね。
蟹江今回のシナリオでは、結果的に西村さんが前述の形で落とし込んでくれましたが、幸が本当に寂しさを埋めようとして姿を変えていたかは、実の所、我々にもわかりません。12幕の幸は、その姿をコロコロ変えているように見えますが、それはあくまでチューナー視点でのことですから。同行の3人の少女達のリアクションも、それぞれが幸に対して違う印象を受けているように描かれています。
――12幕を見てから、幸の底の知れなさ、みたいなのは感じる様になってきましたね。
蟹江ストレートに描けば、寂しさを埋めたくてチューナーを頼り、最終的に家族の輪に戻れた、という作りになると思います。ですが、12幕の後半、母親に抱きしめられた時も、最後まで幸は笑ってないんですよね。キョトンとしてたと思います。この表情は意図して作っていましたが、結局、このときの幸が何を思っていたかは、シナリオと同じく我々にも計り知れない部分です。作ってる側にも見えない幸の内側というのは、うまくユーザーにも届いたのかなと思っています。
12幕ではこういう形で女性らしさを表現しましたが、『ららマジ』のヒロインは性差を超えたところでも共感を得られるキャラになれるよう目指しています。12幕の幸については、女性ユーザーの感想も聞いてみたいところですね。女性から見て、幸の姿がどう見えるのかは個人的にも興味があります。
ちなみに、母親が幸にどう声をかけるかも悩みましたね。若くして最愛の夫を亡くしていますが、娘に夫を否定されたとき、彼女はどう声をかけるのだろうかと。結局、何も声をかけられなかったのですが、そういうところにも共感を持ってもらえればと思っています。
――12幕、単純な「家族」テーマではなく中々に深いですね……!ちなみに、卯月母って設定とか決まっていたりするんですか?
蟹江名前等は特に決まっていませんが、昔、卯月父のおっかけをしていて、売れていなかった頃に食わせていたという設定があります。今も割と所得はある方で、卯月家の経済面を一人で支えています。その分、真中華と幸が家事方面で補完しているという感じですね。
――卯月母きれいですよね……。それでは、次に「13幕・チェインギャング」の解説をお願いします。12幕とは打って変わってコメディ色の強いシナリオでしたね。
西村「拠り所」を描くという全体テーマがある中、幸がかなりシリアスなお話でしたので、メリハリ付ける意味でもちょっと違ったアプローチをしたのが13幕・チェインギャングですね。ここでは「自立」というものを扱っています。思春期ですね(笑)。
智美の場合、兄たちに対する偏見に傷があるのではなく、その偏見からくる苛立ちを兄たちにぶつけてしまった、というのが心の傷になります。クラスメイトに理解されないとか、そういうところとはまた少し違った部分に本質的な問題があったというお話です。「自立」というのは、自分も他人も理解して一歩先に進んでいくこと。そう定義したときに、智美は他人、この場合は兄への理解が欠けていました。それを考えることができるようになって、智美は少し成長できたんです。ピアスのくだりでそれが表現されていますが、うまく書けたのではないかと思っています。
――ピアスの場面、とてもよかったです。書く際に気をつけた部分はありますか?
西村実は、いわゆる不良漫画というのをほとんど読んだことがなくて……(笑)。13幕を書くときに、手当り次第読んでいき、不良の魅力を勉強しましたね。それで、感情を素直にぶつけてくるかわいさ、みたいなものがあるなと。もちろん、本質的な心の傷は複雑にしていますが、智美の言動には表裏のない安心感や素直さが、魅力として顕れていると思います。表に出てくるものが幸とは真逆なのが楽しかったですね。
――智美はストレートですよね。
西村そうですね。変なDVDとかも出てきましたが、ギャグをやりたかったと言うよりかは、智美のストレートな思春期っぽさを演出したかったという意図があります。
蟹江扱ったテーマ自体はもう少しエグい展開になりえたと思えます。それこそ不良マンガにありそうな、家出しちゃって夜の街で危ない目にあったりとか。でも、智美の明るくて素直な性格によって、さわやかなお話になったのかなと思います。
――「チェインギャング」というタイトルの由来は?
蟹江某有名バンドの楽曲から来ています。歌詞を調べてもらえると楽しいかもしれません。
西村ちなみに、自分が初期につけていたタイトルも某楽曲から取っていたのですが、「さすがにそれは」と笑われましたね(笑)。
蟹江あれは不良ではなく、むしろ盗んだバイクで行くあてもなく走り出すことが出来ない子供のための曲だと思うので(笑)。直情的な智美とはちょっと違うのかなと。
――ちなみに、幸が智美のことを「智ちゃん」と親しげに呼んでいますが、幼い頃から交流があったのでしょうか。
西村これは自分が提案しましたね。幸と智美は、まだ先輩後輩の関係がない頃、幸にとっては「友達」「お姉さん」くらいの認識だった頃からの友人です。それなら「智ちゃん」と呼んでいるのがしっくり来るなと。
蟹江智美がベースを始めたのは、兄のバンドに入りたかったからなのですが、それと同時期に、真中華が道場破りみたいな感じで色々なライブハウスで対バンしまくっていました。真中華と智美はその時に知り合っていて、真中華に同行していた幸とも顔を合わせています。智美が中1、真中華が小6、幸が小4くらいの頃の話です。幸がオドオドしつつも割と年上とは話せるというのは、真中華についてライブハウスに出入りしていたからですね。
――ありがとうございました。それでは、次は「14幕・Trust」について聞いていければと思います。
西村これは本当に苦労しました。蟹江さんとホワイトボードを前に、何時間も話し合ったのを覚えています。
蟹江ありましたね。
西村シーズン3の全体テーマとしては、14幕が一番わかりやすいですね。今とは違う場に進もうとするときに受けるストレスの話にしています。苦労はしていたのですが、これは社会人で言えば「転職」の話だと言われたときに、すごく腑に落ちて。これなら多くの人の共感を得られる話が書けそうだと。でも、実はこの14幕では、ストレスの落とし所に対する明確な「答え」って出ていないんです。これは「答え」を用意すると嘘くさくなってしまうというのと、痛みを引きずって生きていくことに焦点を当てたかったからです。
シーズン3では、どのシナリオにも「文学的な迷路」を入れ込んでいます。それが人によってはモヤッと感じることもあると思いますが、より生(なま)感は出せていると思います。
蟹江補足ですが、シーズン3には先程話したように「調律を認識し直してもらう」という意図もあるので、カグラに揺さぶられたり、個々のシナリオでスッキリしない部分があるというのは、あえて入れ込んでる部分はあります。なので、麻衣の14幕についても、結果として器楽部に戻ったことだけが提示されていて、「バスケ部よりも器楽部がいい」というセリフがないんです。
こういうモヤッとするものを感じつつも、最後の真中華シナリオで「やはり調律は必要」であると見出し、スッキリと次の話を迎えるというのがシーズン3であり、これは一気に読んでもらうことを大前提としていたものだったので、このような形で止めることになってしまったのは、本当に申し訳ないと思っています。
――それは、本当に残念です。いつか読める日が来ると信じています。14幕は他にどのような意識されて作られたのでしょうか。
蟹江制作していく中で「友人関係」が中心になっていったのですが、出発点としては親子の関係もありました。麻衣は一人っ子で家庭環境も悪くなく、何不自由なく育ったという背景があり、自己肯定感が強くマイペースを保てる娘です。その結果として、両親は物語の後ろにひっこみ、家庭の外が中心の物語となりました。
――それまでイベント等で見てきた麻衣先輩とはちょっと違う側面も見られたかなと思います。
西村そうですね。もうちょっと明朗な内容になると思いきや、深みのある話になったと思います。これは全部の話に言えることですが、やはり心の中に潜って初めてキャラの本質的なところや複雑性といった部分というのは見えてくるので、イベントとメインとでは分けて作っていますね。
蟹江内容的には言ってしまえば誰にでもあるようなことなのですが、それを麻衣の心に入って麻衣の視点で見ると、人生のターニングポイントになりうる大事件に見えるんですよね。それを、読んでいる人にも感じてもらえたのであれば『ららマジ』らしいシナリオになっているのかなと思います。まぁ、一応コメディ色もあるんですけどね。ノイズとバスケしたりとか。
――最初は明るく読めましたが、後半は中々シリアスでした。
西村美咲との1on1のシーンとかはすごく入れ込んで書きましたね。書きながら泣いていたと思います(笑)。
蟹江美咲の扱いについても結構難航しましたよね。喋らせるのか、とか。
西村色々ありましたね、美咲は。麻衣よりも美咲が気になってしまうのではないかとか、色々懸念はありました。
蟹江最終的には、より麻衣にフォーカスが行くような話になりましたね。でもそれは、あくまでこれが麻衣視点の話ということなんですよね。美咲やバスケ部の他の部員が、実際の所麻衣のことをどう考えていたのかというのは、麻衣の認識と異なることもありえます。
美咲から見て、麻衣は高校バスケで通用すると思っていたのか、みたいな話も制作段階ではありましたね。シナリオの中で身長の話が少しだけあったと思います。美咲の言う通り、麻衣が高校でバスケを続けていったとして、高身長の美咲ともう背が伸びない麻衣、このふたりの関係って変わらず続いたのかなと。自分がスタメンで、あこがれだった麻衣が補欠となったとき、昔のままでいられるかというと微妙なところですよね。
実際、美咲との1on1でどちらが勝ったのかは明示していませんが、このときの美咲は果たして本当に勝ちたかったのか、それとも敗けたかったのか。そういうのを考えてると、スッキリしない部分がありますね。
――部員以外の登場人物が出てくると、そちらもちょっと気になってしまいますよね。10幕のあーちゃんとりょー君とか。
西村いましたね。ちなみにあのお話は、あーちゃんはりょー君のことを好きだと思って書いていました。だからこそ、春香だけ置いていかれている感じが出ているかと思います。
蟹江でも、りょー君も春香の反応についてはある程度予想ついていたと思うんですよね。逃げるまではいかないにしても。
西村なので結局の所、りょー君のあれは自己満足なんですよね。まぁそんなものだろうと思いながら書いていましたが。
――ちなみに「チューナーズノート」だと麻衣先輩と真中華が「盟友」という書かれ方をしていますが、実際どのようなつながりなのでしょう。
蟹江理解者、同好の士みたいな関係かなと。東奏学園には軽音部がないんですよね。麻衣はバスケ部をやめて器楽部に入り、楽しくドラムやってるわけですけど、器楽部は百花の楽団なのでクラシックやジャズ、ポップスがメインになってきます。当然、ヘヴィメタとかやらないので、そこに対して若干の物足りなさを感じています。そこに「バンドやるぞ!」という真中華が入ってきたことで、麻衣や他のバンド組は新たな「拠り所」を得たわけです。なのでバンド組は、器楽部以上にフロウラインへの帰属意識が強いところがあるのかなと思います。
このあたりは雪菜のシナリオにも関わってきますね。今は百花の部長としての側面しか見えていませんが、バンド組が入ってきたとき、当時2年だった百花はどう思ったのか。百花は器楽部の王様ですが、まだまだ少女です。「みんなが活躍できる場を作る」と掲げていても、それは完全ではありません。雪菜のシナリオを出すことができれば、百花への印象が大きく変わると思います。
西村これは個人的に思っていることですが、麻衣って音楽に対してすごくシンプルに「楽しさ」を感じられる娘なんですよね。楽しいから、気持ちいいから音楽してるんだ、というのが溢れ出ています。真中華のような音楽に対してすごく複雑な想いを持っている娘からしてみると、複雑な感情を一旦置いて、一緒に夢中になれる麻衣のような存在は、貴重なのかなと。
――さて、では予定されていた雪菜先輩の「15幕・My Road, My Journey」についてですが、お話できるところまででいいので伺えますか?個人的にはRPGモチーフというのが意外でした。乃愛先輩じゃないんだ、と。
蟹江自分もそれは思いましたね。
西村シナリオ自体はもう何年も前に書き終わってはいます。亜里砂とはまた違う形での「才能」とその落とし所を探るのに苦労しましたね。深く書いていると、とにかく発見が多い娘だったなと。
RPGモチーフについては、雪菜の好きなチップチューンやフューチャーベースという音楽ジャンルから、クラシックな8bitRPGみたいな世界観でやってみようというのが一つありましたね。それを念頭に置きつつ、いわゆるJRPGのようなゲームへの大雑把なイメージや固定観念を、雪菜に対する周囲のイメージや思い込みと重ねたらうまく噛み合うのではと思いました。雪菜ってこういう娘だよね、と思われていることについて、雪菜自身はどう感じているのか。そういう流れを話に組み込んでいます
――同行メンバーは智美と幸なんですね。
西村それと麻衣も同行します。シーズン3はフロウラインの話なので、基本的にはそのメンバーと進めていくという方針があったのと、雪菜への固定観念というネタを表現する点からも、部員の中でもより近い存在である彼女たちを選んでいます。
蟹江あらすじとしては、RPGみたいな雪菜の夢世界を手がかりなくさまよっていたチューナー一行が、ツバサ姫に助けを請われお城に連れて行かれ、ヒャッカ王に闇のドラゴン討伐を命じられた雪菜に出会います。しかし、雪菜はドラゴン討伐なんて嫌だと言うわけです。それをなんとか説得して、一緒にドラゴン討伐へと出かけることになります。
チューナーたちはもう慣れているので、闇のドラゴンこそがディスコードであるとアタリをつけ、雪菜の話や記憶のカケラに触れることで、それを確信へと変えていきます。ただ、ちょっと違和感があるんです。それでも、とりあえずノイズを倒せば解決すると、ディスコードを倒して現実へと帰還するのですが……。というあらすじになっています。
シーズン3の全体テーマであるところの「拠り所」に関連した部分だと、旅のはじまりがヒャッカ王が玉座に就くお城という形で描かれています。ヒャッカ王がいて、ツバサ姫がいて、おそらく他にも色々な人がいるであろうお城。まるでどこかの部室のようですね。
西村かなりびっくりする話になっていましたね。先程、フロウライン編ではあえてストレスを感じさせているというお話をしましたが、その最たるものがこの15幕でした。これだけ出したら暴動が起きるレベルです。
蟹江ちなみにタイトルの「My Road, My Journey」は某楽曲からとられています。これも歌詞を見てもらえると、雪菜のこれから歩む世界がどんな道のりとなるのか、少し想像できるかも知れません。
――気になりますね……。しかし、今までのお話聞く感じ、シーズン3はかなり大事な局面だったように思えます。
蟹江物語的にターニングポイントになるところでしたし、あとはシーズン1,2を読んできたユーザーさんに続けて読んでもらうために色々仕掛けていた部分でした。そのためにカグラにも出てきてもらいましたし。
西村メインストーリーでは現状チョイ役ですが、シーズン3後半から本格的に登場します。
蟹江そうですね。雪菜の15幕のあとに、カグラのシナリオが入ってから真中華の16幕へという流れになっています。
――今の所、いけ好かないイケメンのイメージしかありませんが……!
蟹江今の所はそうだと思います。でも、ホニャは何も教えてくれず、グリムゲルデも都合よく来てくれないという状況の中、チューナーが縋れるのはカグラくらいしかいないんですよね。そしてカグラは、自分でも言っていますがウソはつきません。チューナーの疑問にも応えてくれるでしょうね。その目的はハッキリしませんが。
――これ、ゲームという形ではなくなると思いますが、どこかで続き読ませてもらえますよね!?何でもするので読ませてほしいです……。そして、ここまで話していただいたので聞きますが、シーズン3最後の真中華メインストーリーについても少しだけ……。
蟹江真中華のメインストーリーは「父親の存在証明」の話です。若くして亡くなった父は、幸せだったのか。そこに疑問を持ってしまう真中華が描かれます。自分の拠り所である家族を肯定するためにも、父の人生は幸せだったと肯定したいけれど、知れば知るほど疑問が出てきてしまう、と。真中華の夢世界では、空から降ってきたチューナーとともに、父親が遺したものを探しに行くことになります。何とはいえませんが、夢世界の物語や特定の人物には明確なモチーフがあります。
西村結構重たい話ですよね。もちろん、いい話ではあるのですが。直接出すことはないと思いますが、真中華のシナリオを作る過程で、父親視点のシナリオも別途制作しましたね。
――卯月父シナリオも含め、どのような形でもいいので、世には出してほしいです。本当に、お願いします。
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