海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」

浜辺に打ち上げられたクジラたち(Photo by Dan Kitwood/Getty Images)

ここに掲げた「クジラが打ち上げられた写真」をニュースで時々見かけることはないだろうか?

海外だけでなく、今年も宮崎や鹿児島で同じようなことが起きている。原因については、解体された胃袋の中から大量のビニール袋やプラスチックごみが見つかり、消化器系が損傷したとか、あるいは海底の掘削やタンカーのスクリュー音が障害を引き起こしているとか、気候変動の影響だとか、さまざまなことが言われている。

いずれにせよ人間が原因を作っていることには変わりない。

海は地球の3分の2を占める。さて、この海について高い関心と知見をお持ちのキャロライン・ケネディ氏が駐日大使として東京に赴任されていた間、私は同窓ということもあり、何度となくアメリカ大使館主催の海洋環境に関する食事会や会議にお声掛けいただいた。なかでも、ケネディ大使との会話の中で、とりわけ忘れることができない言葉がある。

「ゴミは中国、漁業は日本よ」

この言葉の意味を解き明かすことからこの連載を始めてみたい。

「マイクロプラスティック化」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

海に捨てられたプラスチックごみが、海中でどんどん壊れていって微粒になることだ。これにより、微粒のプラスチックが海洋生物の体の中から発見されるようになった。海の問題はこれだけではない。地球温暖化とそれに伴う海水の酸性化と水温上昇、乱獲および違法漁業など水産業による資源の枯渇……海洋環境の劣化は、近年著しくなっているのである。

海は人類共有の財産である。陸には高いフェンスを建てられても、海に国境は引けない。海洋環境問題は世界規模で各国が連携して解決しなければならない。

ここで注目されているのは、世界のセレブたちの動きだ。

レオナルド・ディカプリオは海洋環境に特化した財団Oceans 5に加盟した。イギリスのチャールズ皇太子やモナコのアルベール皇子は海洋経済発展への提言し、欧米ではすでに政府主導の海洋環境保護への取り組みやNGO、財団による活発な活動が展開されている。


国連で地球温暖化についてスピーチをするレオナルド・ディカプリオ(Photo by Getty Images)


ロックフェラー家の当主でありロックフェラー&カンパニー会長のディビッド・ロックフェラーも、The Pew Charitable Trustsの会合に参加したことで啓蒙を受け、自らも海洋環境保護のNGO、セイラーズフォーザシーを設立するに至った。

私のアメリカの親友、ディビッド・ロックフェラー夫人のスーザンは、筋金入りの海洋環境保護活動家である。私は彼女の薫陶を受けて2009年から海洋環境保護活動に注力し始めた。それが「セイラーズフォーザシー日本支局」の設立に至った原点だ。

前述したキャロライン・ケネディ氏もご子息のジョンと共に海洋環境保護に注力されている。APECハイレベルディナーの折にマイクロプラスティック問題を話し合っていたときのケネディ氏の発言が、前述の「ゴミは中国、漁業は日本よ」だったのだ。

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これは、「中国はゴミ問題」「日本は水産資源」の改善に責任を持つべき、という意味である。では、なぜ日本人が水産資源の持続可能な消費にコミットするべきなのか。

海の中の出来事は普段日常生活で目にすることもなく実感が薄いが、海洋資源の枯渇は深刻だ。特に日本の漁獲量は減少の一途を辿り、2015年の年間漁獲量は約350万トンで、1984年の約1280万トンに対し3分の1以下である。

文=井植美奈子

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