実体のない胡散臭い一般社団法人を定款まで準備したのは実は経産省自身であった件

さて、今回は今話題の『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』を取り上げましょう。

一般社団法人サービスデザイン推進協議会は、中小企業などに最大二百万円を支給する持続化給付金で、経済産業省から769億円分、委託されますが、実際は委託費の97%に当たる749億円で電通に事業を再委託。電通から、人材派遣のパソナ電通子会社など法人の設立に関わった企業に非公表で外注されていました。

野党議員たちが所在地を確認しても誰もおらず、一六年五月の設立から、社団法人に関係する法律で義務付けられている官報などへの決算開示をされておらず、ホームページすらない、代表電話も設置されていない、実体の乏しいこの法人に多額の税金が渡っている構図なのです。

さらに不思議なのは、この胡散臭い民間団体「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が、過去に経済産業省の計14件の事業(総額約1600億円)を受託していたというのです。しかもそのうち少なくとも7件では協議会だけが単独で入札をしていたといいます。

(関連記事)
給付金受託団体、国から14件1600億円 再委託9件
https://www.asahi.com/articles/ASN616744N61ULFA022.html

そもそも『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』が設立された2016年5月16日といえば、偶然にも平成28年5月16日付公募情報「平成27年補正予算「サービス産業海外展開基盤整備事業(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関の立ち上げ・運用支援等)」の公募開始日なのです。

このあたりの流れを徹底的に検証しているのが以下のサイトです。

一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは何者か。「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える。
東京蒸溜所 蒸溜日誌
https://note.com/tokyodistillery/n/n6564a5ecf2a3

興味のある読者は是非上記サイトを直接お読みください、読みごたえありです。

さて以下、興味深い事実だけ上記サイトを参考に押さえていきましょう。

『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』の定款情報が次のサイトにPDFファイルとして公開されています。

おもてなし規格認証
運営者情報
https://www.service-design.jp/administrator/

でPDFファイルの「定款」を開いていますと。

f:id:kibashiri:20200604102853p:plain
https://web.archive.org/web/20180218031829/https://www.service-design.jp/files/user/omotenashi/pdf/SDEC_AOI_20161213.pdf

まあPDF上定款の法人名は『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』なのですが、画面左上の情報に注目ください、アップしますと。

f:id:kibashiri:20200604102909p:plain
https://web.archive.org/web/20180218031829/https://www.service-design.jp/files/user/omotenashi/pdf/SDEC_AOI_20161213.pdf<<

補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)』と、赤裸々な名称になっております。

興味深いのは『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』ではなく、『補助金執行一般社団法人(仮称)』と、執行もされていないはずなのに補助金執行と明確にうたわれているのですよね。

さらに興味深いのがこのファイルのプロパティ(属性)を表示して見たならば、なんと本当のタイトルと本当の作成者が痕跡を残しているではありませんか。

f:id:kibashiri:20200604102926p:plain
https://web.archive.org/web/20180218031829/https://www.service-design.jp/files/user/omotenashi/pdf/SDEC_AOI_20161213.pdf

作成者:情報システム厚生課が、この定款の作成者の名前なのでした。これこそがこのいかがわしい法人の首謀者と目される存在です。

「情報システム厚生課」とは、経済産業省大臣官房に属する純然たる内局組織なのであります。

ここまでデジタル上痕跡を残しそれをネット上でさらしていたとは、このファイル(定款)の作成者の経済産業省情報システム厚生課も、それを流用してネットで公開し続けた『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』側(その実態は電通スタッフか)も、あまりにITリテラシーがなさすぎです。

おそらく経産省側はマイクロソフト・オフィスの仕様を知らなかったのでしょう。WordなどのOfficeソフトから書き出したPDFには、PDFのファイル名を変えたとしても、元ファイル(Wordであればdocまたはdocxファイル)のタイトル名や作成者が保存されることを知らず、委託先にファイルを渡してしまったのです。

そして委託先もまた、それに気づかず、タイトルと作成者情報をそのままにして、ワードからPDFを書き出してしまったのです。

これはデジタル的にはいろいろな意味で完全にアウトです、動かぬ証拠です。

以上、実体のない胡散臭い一般社団法人を定款まで準備したのは実は経産省自身であったという件でした。



(木走まさみず)

コメントを書く
プロフィール
注目記事