バスタ新宿で野宿を敢行するが、警備員に追い払われ、隣の建物の床に寝袋を広げる。周りには汚らしいホームレスどもがいて嫌だった。彼らからどう見られるか気にした。天井に映る草木の揺らぎを見ているとマレーシアを思い出した。なかなか眠れなくて人生に悩んだ。「強くないと生きていけないけど、優しくない人は生きていく資格がない」。強くならなくちゃと思う。「人生が水浸しになってゆくよ、このような滝の下」。足が臭く冷たく、ネカフェに行こうかと思ったが、お金を使うことが怖い。多重債務でたらい回しとか、自分には縁がないと思ってる。最初はみんなそうだろう。今回3万円ドブに捨てた。弱みにつけ込む人はいる。弱い人間に残る美徳は優しさだけ、そこを巧みに刺激して、「悪い人じゃないんだ」と思わせて。僕はすでに片足突っ込んでる。
高円寺から消費者センターに電話した。ネカフェが臨時休業なので個室ビデオでシャワーする。個室がとにかく臭く数分で出た。暖かいので半袖に着替えて、さわやかな気分になる。
「新型自立支援」のことを聞き、新宿区役所へ。肌に当たる春の風。繁華街の匂い。活気ある街。リオを思い出す。髪を染めた人たち、ブヨブヨのヘソ出しおばさん、色んな人がいて、気安い気持ちになる。ここでは余所者じゃない! 役所の人はテキパキして気持ちよく、実家帰れと言われ、新幹線代を貸し付けられた。言われるがままに新幹線に乗り、京都に帰った。富士山を拝むのを忘れた。
京都駅で春風に当たっていると、見える世界が二日前と違うので、旅の効用を感じた。結局僕は旅に飢えてたんだ。移動によってリフレッシュして、マトリックスが少し書き換わったんだ。新鮮な気持ちで京都駅を見る。
友人たちに先日の曲を送りつける。笛吹きさんと呼吸と音楽やゲシュタルト崩壊について話した。札幌のムッシュとは近況やホームページを作ったことなど話して、Twitterで繋がった。
Fは「実家に帰れ」の一点張りで、部屋には入れてもらったけど「出てけ」。気持ちがわからない。真実がわからない。
高校の教室で、臭いと言われていた気がするけど、親しい人や医者はみな臭くないよと言った。本当のところは今も謎だ。修理屋は白々しくも僕を騙したのか、善意もあったのか? 彼は「あなたの正義とわたしの正義は違うんですよ」と言った。彼には養うべき家族があり、金を稼ぐためにあらゆる手段を使う、くらいの意味かな。
物事は解釈だから、芥川の「藪の中」みたいに、人の数だけ真実が存在するはずだ。僕の東京行きに関しても、父はそれを評価したし、精神科の面々は「得策でない、戻ってこい」だったし。で、「僕は」どう考え、どう感じているのか? 自分を信じるしかないんだ。
答えはもう見えてる。戻った理由は、荷物を減らすためだ。東京のリサイクルショップは全滅だったから、京都で荷物を減らしてまた旅立つ。後はひらさんに連絡してよろしくやるもよし。野となれ山となれ。
人生の棚卸しした結果、テーマは「移動」「流れ」ではないかと思った。移動のための移動。僕はいつも自分が書いてることの意味を理解していない。
「善人より悪い奴はいない」を読み返す。僕は一見アクティブだが、精神構造は「ひきこもり」と同じだ。社会に出ることを恐れ、幻想に逃げてるんだ。昔はその自己欺瞞に気づいてなかった。今はもう気づいてる。逃げちゃだめだ。ぬるま湯から出なきゃだめだ。