修理屋の面接に向かう途中でスマホが起動しなくなるというギャグのような状況。駅員さんに調べてもらった住所を書きとめ、遅れて行った。稼いでる人のデータを見せられ、その気になった。研修費の支払い額を聞いて高いなと思った。話をしてくれた人への不信感がまずあり、疑いと不安に支配されて、一度「論破」して、というか聞き耳持たずに、やめときますと言って出てきた。来た時はノリノリで、これぞシンクロニシティだみたいな気分だったのに、信じる事が怖かった。ここに来たきっかけを話したとき、「商材」という単語が相手の口から出たのを聞いて、一気に疑いが膨らんだ。ネガティブな根拠集めが始まり加速していった。「東京は怖いところ」とかいうアレは、人を騙す人間もまた騙されてるみたいな話かなーとかカッコつけたことを思った。去り際、相手は声を荒げて「いい加減にしろよ」「ほんと頭わりい」と汚かった。
そのあと虚しい気持ちで駅に戻る途中、やっぱり信じてみようと思い、引き返した。曰く、二日の研修で二十万なのは、教える人が普段一日十万稼ぐからだ。その人につききりで教わるのだから当然。仕事ってそういうことでしょ。納得できる話だった。だがまだ不信感は拭えぬと思い、数時間粘って、ぼくの嫌なところがどんどん出てきて汗もかくし、多分臭かったろうな。自分が人を騙してるから人に騙されると思うんだろう。多分あの人はそんな悪い人じゃない。汚れた自分を鏡で見てるんだ。下ばかり見てきたツケだ。世の中には自分よりもっとひどいやつがいると確認し続けた結果がこれだ。それでも助けを求めたら応えてくれる人がいる。世の中捨てたもんじゃない。そんないい人たちを引き当てては嫌な気分にさせることを続けてきたイヤなやつ、それが僕だ。
Fに話したら、聞いてくれて、そんだけ胆力あれば大丈夫だと言ってくれた。なんて優しいんだろうか。僕はなんと人に恵まれてるんだろうか。僕が人に恵まれてることは、僕の魂がほんとうは綺麗だということの証になるだろうか? それとも、光は闇と惹かれ合う? とか書いてたら道端で涙出てきた。僕は頭いいと思われたいだけのバカかもしれない(と書きながら、やっぱりほんとは頭いいんだと信じてる)いつも自分に酔ってばかりの困ったやつだ。それでもいい。迷惑かけても自分の人生なんとかすると決めたんだから。あれよという間に修理屋を出店する流れになった。頑張るのは俺じゃない、お前だぞと言われた。手取り足取りでもいいや。面倒みてもらおう。ほんとの責任を果たさなきゃ本末転倒だから。つまり、僕の人生をこれ以上めちゃめちゃにしないということ。そのためになら、人に迷惑をかけることをもはや厭わない。若い頃に必要な迷惑枠はちゃんと消化されなければならない。頭金を入れたから、今後の話も進めてもらえる。お金は大事だな