コロナショックが実体経済をグローバルに悪化させている中、いま経営不安が指摘されているのが銀行業界である。企業がこれからバタバタと倒れていった場合、不良債権が銀行経営を圧迫することは間違いない。そうして「金融崩壊」が現実になった時、いったい何が起こるのか――。
今回は、新作小説『よこどり 小説メガバンク人事抗争』で、金融の未来や銀行の在り方に独自の切り口で迫った作家の小野一起氏が、メガバンクの現役幹部、地銀の中堅、元日銀幹部など金融の最前線を知る銀行員たちと緊急対談を実施した。「銀行救済で、公的資金100兆円が投入される?」「銀行は政治家に梯子を外されるかもしれない」「コロナで5大銀行は2~3行に再編される可能性もある」……銀行員たちからは衝撃の本音が次々飛び出した。
小野 われわれは近年、二つの経済ショックを経験してきました。一つは、バブル崩壊に伴う1990年代後半の日本の不良債権問題。もう一つは、2008年のリーマンショックです。いずれも発信源は金融という点で共通点がありました。
一方、今回のコロナショックは国内外の人の動きが途絶えることで起こるビジネスの停滞が発信源です。いったい、われわれは、この危機をどう克服すればよいのか。そして、コロナショックが銀行の経営危機を引き起こし、グローバルな「金融崩壊」が世界恐慌を招くことがないのか。みなさんはどう考えますか。
メガバンク部長A(50代) 金融恐慌が起こるかどうかは、実体経済の痛みの深さがどの程度かによりますね。メガバンクの自己資本率は、おおよそ15%です。1990年代後半に日本の大手銀行の不良債権問題がクローズアップされた時は損失の処理に追われて、当時の規制ぎりぎりの8%前後まで自己資本比率が下がっていましたからね。リーマンショックの際が10%程度でした。しかも今は、資本の内容は普通株が中心で損失を吸収する力が当時より遥かに高い。
2021年3月期には、コロナショックによる損失に備えて、引当金の水準を2倍近くに引き上げて、メガバンクを中心にした5大銀行で1.2兆円になる見通しです。なので、今年度の倒産が増えて、銀行の損失が1兆円出ても、何の問題もありません。その程度なら、メガバンクはびくともしません。
ただグローバルな景気後退が泥沼化して、数千億円規模の融資を実行している企業がバタバタと潰れるような恐慌なような状態になれば、話は別ということになります。