【ベルリン=石川潤】ドイツのメルケル政権は3日夜(日本時間4日朝)、2020~21年に実施する総額1300億ユーロ(約16兆円)規模の新たな景気対策をまとめた。消費税に相当する付加価値税を期間限定で3ポイント引き下げ16%にすることや、子育て家庭への現金給付などを盛り込んだ。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ消費や投資の回復を後押しする狙いで、ドイツ政府は追加の国債発行などで必要な資金を調達する見通しだ。
2日間にわたる交渉の末、連立与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)とドイツ社会民主党(SPD)が合意した。消費減税が柱で、付加価値税の税率は20年7~12月の期間限定で現在の19%から16%に下げる。食料品などに適用される軽減税率も7%から5%に下げる。
子育て世代には子供1人あたり300ユーロの現金を支給する。電気自動車への投資や普及を支援する一方で、ガソリン車やディーゼル車への補助金は見送った。売り上げが大きく落ち込んだドイツ鉄道の支援や電気料金の引き下げなども盛り込んだ。メルケル首相は記者会見でコロナ危機からの脱却に向けた「礎石」になるとの考えを示した。
ドイツ政府は3月に1560億ユーロの国債発行を伴う大規模な経済対策を発表したばかりだ。経済安定ファンドによる債務保証分なども含めると7500億ユーロ程度という大規模な対策で、企業の資金繰りを支援して経済の崩壊を食い止めてきた。
今回の新たな対策は、新型コロナの感染の第1波をしのぎきり、経済が底入れしつつあることを受けた措置だ。消費や投資の活性化に力点を置き、力強さに欠く経済の回復を下支えしたいという思惑がある。
ドイツが大規模な対策を矢継ぎ早に打ち出せるのは、これまで財政黒字を続けて、財政状況が極めて健全であることが大きい。コロナ後の経済の回復は各国の財政に左右されやすいため、政府債務の国内総生産(GDP)比が高く大胆な経済対策に動きにくいイタリアなどとの格差が広がるとの懸念もある。