給付金委託費 説明責任は国にある

2020年6月3日 08時19分

 コロナ禍対策のための持続化給付金の業務委託をめぐり不透明な資金の流れが浮上している。給付の遅れが目立つ中、看過できる問題ではない。国は実態を調べた上で説明責任を果たすべきだ。
 経営が苦しい中小企業や収入が激減した個人事業主を助ける持続化給付金事業は、経済産業省が所管している。
 同省は事業を七百六十九億円で一般社団法人サービスデザイン推進協議会に委託した。協議会は広告大手の電通に七百四十九億円で再委託していた。さらに電通は一部業務を大手人材派遣のパソナなどに四百五億円で外注していた。
 四年前に設立された協議会の代表理事は給付業務について「一切知らない。(業務は)電通の人がやっている」などと回答している。東京都中央区築地にある協議会の入り口には、先月十九日現在で「お問い合わせは(給付金の)コールセンターまで」との紙が張られていた。
 これでは実体のない組織に委託したと指摘されても否定できないのではないか。再委託の過程で二十億円の差額が生じたことも不可解だ。さらに協議会は電通が設立に関わっている。
 協議会への委託について梶山弘志経産相は「過去に給付を行った際、支払い元に電通と記載され受け取る側が混乱したため」としている。しかし、それなら国からの給付と明記すれば済むはずで納得できる説明とは言い難い。
 持続化給付金は多くの中小企業や店舗、個人事業主にとって頼みの綱だ。だが一律現金給付同様、給付が届いていないという声が噴出している。給付が間に合わず倒産したり仕事を失ったりするケースは各地で起きているはずだ。
 協議会を通じて民間に委託した今回の仕組み自体、迅速性を著しく欠いていることはもはや明白だ。その上、給付業務に不透明さがあったのでは国への信頼は一層揺らぎかねない。
 国の施策が透明性を保ち公平であることは当然であり、民主主義の根幹を成す。ましてや今は未曽有の危機の最中にある。不透明な状況の放置は許されない。
 今後、国は差額の二十億円の名目や使途、協議会を通して電通に委託した理由などについて丁寧に説明する義務がある。さらにその説明は安倍晋三首相が直接国民に向けて行うべきだ。同時に、国会での実態解明のための追及にも強く期待したい。 

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