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 2025年までの子育て支援政策などの指針となる、政府の新たな少子化社会対策大綱が閣議決定された。

 昨年、国内で生まれた日本人の赤ちゃんは推計86万4千人。政府の予測を上回るペースで少子化が進んでいるとの危機感のもと、育児休業給付金児童手当の拡充、不妊治療支援などの方向性を示したのが特徴だ。

 ただ、いずれも財源の裏付けは無く、今後の検討課題だ。新型コロナウイルスへの対応で巨額の財政支出をしている上、景気・税収の落ち込みも予想され、新たな政策のための財源の確保が容易でない、という事情もあるのだろう。

 しかし日本は先進諸国の中で、この分野への支出がそもそも手薄だ。若い世代への支援は未来への投資でもある。

 目の前の経済、雇用の立て直しが重要なのはもちろんだが、将来を見すえた議論からも逃げるべきではない。

 新たな大綱は、結婚したい、子どもがほしいと望む人たちの希望がかなった場合に見込まれる「希望出生率1・8」の実現に向け、若い世代が将来に展望を描ける環境の整備を目指すとしている。

 言うまでもなく、結婚や出産は個人の自由な選択だ。価値観の押しつけや当事者へのプレッシャーとなることがないよう、政府には丁寧な説明と周知の徹底を求めたい。

 大綱は、男性の育休取得率を25年に30%にする、20年度末の待機児童解消などの数値目標を掲げる。だが、5年前の大綱で掲げた数値目標も、多くが未達成のままだ。

 少子高齢化を「国難」と言ったのは他ならぬ安倍首相だ。なぜ達成できなかったのか、これまでの政策は効果的だったのか。検証して今後の政策に反映し、具体的な行動で、その本気度を示さねばならない。

 例えば、政権の看板政策の3~5歳児の保育園・幼稚園の無償化には、子育て世代の当事者から「まず待機児童の解消を」との不満が出ている。無償化で待機児童数が増える可能性も指摘されているが、保育所の整備計画や解消目標は、無償化を決める前のままだ。まず、その見直しが必要ではないか。

 子育てと仕事の両立を阻む長時間労働、女性に偏りがちな育児や家事の負担なども、長年の課題だ。企業風土や働き方の見直し、社会の意識改革は、巨額の税金を使わなくても取り組めるはずだ。

 コロナ禍をきっかけに、テレワークが広がり、家事や育児により深くかかわるようになった男性も多いだろう。働き方や生活様式を見直す契機にしたい。

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