拡大する 「テラスハウス」の公式サイト
聞き手・関根和弘
フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラー木村花さんが亡くなったことは、リアリティー番組のあり方や、ネットにおける誹謗(ひぼう)中傷など、多くの問題を私たちに突きつけた。
世界中でリアリティー番組の出演者の死亡が相次いでいる中、どうしたら次の犠牲者を防げるのか。リアリティー番組が盛んな米国の芸能事情に詳しい映画批評家、町山智浩さんにスカイプを使って聞いた。
――テラスハウスに出演していた木村花さんが亡くなりました。番組をめぐってツイッターで誹謗中傷を受け、それに悩んでいたと言われています。米国でも大きな反響があったそうですね。
はい。彼女はプロレスラーとして知られていてファンも少なくありませんでした。テラスハウスはネットフリックスを通じて世界中で見られているので、アメリカでも知名度は高かったです。
今回の一件は、日本の問題とは誰も思っていないですね。というのもリアリティー番組に出演した人たちが自殺する例は、アメリカも含めて全世界でざっと40ぐらいありまして、アメリカの人たちも国や民族を超えた共通の問題として受け止めています。
――米国ではいち早く、テラスハウスのようなリアリティー番組が放送されてきたそうですね。
はい。視聴者から募った若者たちが共同生活する様子を追った「リアルワールド」が1992年に放送され、2000年代に入ると、リアリティー番組のブームになりました。
ただ、アメリカの場合、テラスハウスのように男女の恋愛模様を楽しむだけではないんですね。貧富の格差が大きく、人種、民族が多様な国なので、本来なら一緒に住むことのない人たちが共同生活し、生活習慣や考え方の違いから生じるあつれきがスリリングで、それが面白さなんです。
だからアメリカ人は、テラスハウスを見て「日本人てお気楽だね」という受け止め方でしたが、逆にだからこそ、新鮮に映っていたと思います。
――番組のカラーが違うにもかかわらず、出演者が死亡する事態が起きました。
共通するのは、視聴者側の態度だと思います。憎むために見るんです。例えば、出演者の中にはお金持ちでツンツンしていたり、傲慢(ごうまん)だったりする人もいますよね。そういった人を見て「なんてやつだ」って文句を言いながら見るんです。「ヘイトウォッチング」と呼びますが、あまりよくない文化です。
ヘイトウォッチングの矛先は当然、番組内の「悪役」に向かいます。制作側も人気を得るために、悪役を作ります。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で誹謗中傷されたり、自殺したりした出演者のほとんどはこの悪役にされた人です。視聴者が悪役像をそのまま信じて攻撃する。木村さんも同じだったと思います。
――制作側が悪役を作るということですが、テラスハウスは「台本は一切ない」ということをうたい文句にしています。
はい、確かにシナリオ(台本)はないのでしょう。だけど、シナリオライターはいると思いますね。
――どういう意味でしょうか。
シナリオはないんだけど、出演…
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