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この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています。

君に焦がれて

作者:高岩 唯丑

 桜の季節。入学式にはいつも桜が舞って新しい生活を彩る。ほとんどの人がそうだろう。でもそうじゃない人もやはりいる。根暗で陰湿な私みたいなヤツら。桜の彩りでさえ心の暗さは塗りつぶせない。なぜこんなにウキウキとした空気を出せるのだろう。私はそんな事を思いながら騒いでいる女子高生の集団を通り抜ける。もう私達友達だよねとかそんな言葉も聞こえて来るのだけどそんなのありえない。出会ってまだたかだか数時間なんの苦楽も一緒に乗り越えていないのに。そんな友達作りの天才たちの顔を少しだけ拝むと今までより早足でその場を去る。ちょっとムッとした。

 誰がどのクラスに割り当てられるのかその発表がどこかに貼り出されている筈だ。さっきからそれを探しているのだけど見当たらない。いたるところに人集りができているせいでクラスの発表を見ている集団と見分けがつかない。すぐ分かると思ったのに。

「……疲れた」

 沢山の人の中にいるのは苦手だ。ツライ。どこか人のいないとこはないだろうか。人がバラけるまで休めれば。

「……校舎裏」

 入学式なんて晴れ舞台に陰気な裏側なんかに人はいないと思う。いても同類。同じように人ゴミに疲れた人だけだ。


 案の定誰もいなかった。ただ桜のせいか陰湿な感じはしない。校舎の壁にもたれかかってため息をつく。思えば入学式まで心休まる時がなかった。地元から離れた私立に入ったせいで受験も大変だった。今や念願の一人暮らしだが。一番助かったのはさみしいとか言って色々くっついて来るヤツがいなかった事だ。そもそも友達がいないんだからそんな事もあるわけないが。たまに今まで話した事もないヤツが友達面してそういう類の事をしてくるらしい。たぶん自分に酔ってるんだ。今まで話したことなくても離れていく可哀想な子に優しくできる自分に。本当によかった。そういうのは吐き気がする。

 しばらく何も考えずたたずんでいると同じく人の中から逃げて来ただろうという者が現れた。やはりいるんだなそう思いながら顔を拝んでやろうと視線を向ける。

 そこにいたのは何とも言えない魅力を持つ女の子だった。見た事がない魅力。いや私は知っている魅力。何かははっきりわからない。でも目が離せない。心臓が高鳴る。私はあの子が好きだ。同性だが私はいつもそう。同性愛者。ただいつもと少し違う。いつもはこんなに不思議な感じはしない。こんな不思議な……同じだという感覚。伝えたいそう思った瞬間にはもう遅かった。

「あなたの事が好きです」

 考えるより早くからだが動く。今まで信じられなかったけど本当にあるんだとかさっき見た友達作りの天才達の仲間入りだなとか。告白しながらそんな事を思っていた。


 私は恋をした……はずがあまりワクワクウキウキしない。いつもなら少しだけどそういうのもあるのに。昔ほど子供ではなくなったのかそれとも好きという感情で多い被されたべつの気持ちがそこにあるのか。

 あの告白のあとすぐには返事がもらえなかった。少し考えたいと。約束は今日。告白をした校舎裏。昼休みにと言っていた。本当に来てくれるだろうか。その場しのぎでそう言ったのかもしれない。いや違う。そうじゃない。そんな事を心配してるわけじゃない。いなくなってしまうんじゃないか。そんなわけのわからない不安があるんだ。自然と早足になる。早く会って安心したい。ガラにもなく必死な感じだ。

 約束の場所が近づいてきて突然私の足は動きが悪くなった。考えてしまったのだ。もしいなかったら。いなくなってしまっていたら。少しづつ約束の場所に近づく。それでも完全に足が止まらないのは会って安心したいという気持ちとせめぎ合ってるから。不思議なものだ名前も知らない共有した時間なんて少しもないあの子の事をこんなに考えてるなんて。

 そして校舎裏の手前もう目の前の角を曲がるだけだ。歩みがとても遅くなっている。あと数歩。あの告白をした時に見えていた桜が見えてきた。あと少し。そして校舎裏にたどり着いた。

 私はホッとした。少し暗い感じのする女の子がちゃんといたからだ。まだいなくなっていなかった。

「またせてすまない」

 私の言葉に反応してこちらに気づく。

「いえ……どうせする事もないので」

 寂しい顔をする。同じ種類の人間。

「ところで名前教えてくれないかしら、それぐらい返事をする前に知っておきたいわ」

「そうだな、ユミだ……君の名前は……」

「名前も知らない相手に告白したの」

「……すまない」

 女の子はすこしあきれた顔でこちらを見る。本当に一目惚れだった。そんな真剣な表情をして見返す。

「まぁ、いいわ……私はカナエ、好きなように呼んで」

 カナエが腕を組んで壁にもたれかかる。

「ところで実際に同性を好きになる人っているのね、それとも罰ゲームか何かで告白したの?」

「違う! 本当に……一目惚れで……気持ち悪いか?」

 カナエの表情はなんで? という風に全く変わらなかった。ホッとした。嫌われても別にいいなんて思えない。いつもはそんな事かまわないのに。

「ところで告白の返事なんだけど」

 心臓が大きく動いたような感覚だった。緊張する。断られても全くおかしくない。

「付き合ってもいいわ」

「ほ……本当に?」

「えぇ……最後だし」

「え……最後……って?」

「言ってなかったかしら」

 その時またあの魅力を感じた。告白の時に感じたあの。

「今年の私の誕生日が終わる時、自殺するのよ」

 カナエのその時の顔はとても嬉しそうな悲しい顔で。それはとても魅力的だった。


 あぁあの魅力はそういう事だったのか。私は妙に納得していた。あれは人が死ぬ事を本気で決意した時の独特な空気。私もそれを知っている。本気で思ったけど怖くてできなかった。それをカナエにはできてしまう気がして。それは憧れに近い物。

「付き合うのやめたくなった?」

「いや、付き合いたい」

「自殺を止めてみせるってやつかしら?」

「いや……わからない」

 私はカナエが好きなんだ。でも死を決意するカナエにも魅力を感じる。

「じゃあまた後で」

 カナエがその場から去ろうとする。

「時間もないからさっさと進展させてほしいわ、リードしてよ」

 そして私一人になった。何も言えなかった。言ってやれなかった。言いたくなかった。

 教室に戻るとすぐ自分の席に直行する。基本的にいつも空気になって席にいる。おかげで誰も話しかけてこない。今日ほどそれをありがたく思った事はない。考えたい。どうすればいいのか。

 放課後全ての授業が終わってクラスメイト達が帰り支度を始める。私はずっと考えていて答えが出なかった。そして気がつくと教室には誰もいなかった。

「帰るか」

 手早く荷物をまとめて教室を出る。そういえばカナエの連絡先とか聞いてなかった。とりあえず一緒に帰ったりしてみようと思ったのに。それで答えが出るとは思ってないけど。

 下駄箱の前まで来ると私の靴いれの前に人影が見えた。

「ユミ」

 人影がそんな事声を出しながらヒラヒラと手を振る。

「カナエ」

 下駄箱の前で待っていたのはカナエだった。手を振ってるに顔は笑ってない。無表情で手を振るのはとても不気味な感じに見える。

「私帰るけど一緒に帰ってみるかしら?」

「私も一緒に帰るという案は考えていたんだ、ただ連絡先がわからずどうするか考えていた」

「そう……連絡先は」

 そこまで言ってカナエは少し考える素振りを見せる。

「教えないでおくわ、私が死んだあと諸々面倒だし」

 胸に何かが刺さったのではないか。そんな事を思って胸のあたり確認してしまう。それほどの痛みを感じた。カナエが自殺を考えている。そんな実感をしてしまう。何かの間違いじゃなく何かの聞き間違いじゃない。カナエが死ぬなんて嫌。そんな思いと自分ができなかった事をやろうとしているカナエに対しての憧れと。グチャグチャになってどうすればいいのかわからない。私はどうすれば。

「ユミ、あなたは出会ってから辛そうな顔しか見た事ないわ」

「カナエだって無表情で絶望した様な顔しかしてない」

「類は友を呼ぶね」

 同類。多分私達はそれだ。同じ種類の人間。唯一違うのは勇気があるか臆病か。

「誕生日はいつなんだ?」

「教えない」

「じゃあ明日、遊園地に行かないか?」

「いいわね、いい感じだわ」

 きっと誕生日は近い。早く答えを出さないと。どうしたいのか。決めた時に終わっていたら。そう思うと。


 カナエと遊園地に行く事になった。二人で学校をずる休みして。どうせ夢もないから学校で真面目に一生懸命勉強しても意味がない。

「特に意味はないけど出席だけはちゃんとしてたのよ」

「私もだ」

 話をしながら受付でチケットを買う。

「責任取って楽しませてほしいわ」

「努力する、行こう」

 中に入ると平日のおかげで人が少ない。二人とも人ゴミは苦手だったからちょうどいい。乗り物もほとんど待ち時間なしで乗れる。


「少し休むか」

 遊び疲れた二人は公園の様な広場にあるベンチに腰掛けた。

「どう? 楽しいか?」

 こういうところはほとんど来た事ないから遊び方がこれで合ってるか少し不安だ。

「ぜ……全然楽しく無いわっ」

 カナエは顔を赤くして否定する。別人のような反応。驚いた。

「本当によっ全然よ」

 初めて見る表情豊かなカナエは結構可愛い。

「ふっ、わかった」

「なに笑ってるのよ!」

 私の顔も表情豊かになっているらしい。

「楽しんでもらえてよかった」

「楽しくないっ、もうっ次行きわよ」

「あぁ」

 私も久々に楽しい。カナエ一緒だからかもしれない。これからもそうだったら。

 何個かの乗り物に乗ってそれから観覧車に乗る事になった。もう夕方でロマンチックな感じがする。一応恋人なんだからそういう雰囲気もいるだろう。

「観覧車って何が面白いのかしら」

「そういう事言うんじゃない」

「だって回ってるだけよ」

「まぁそうだけど」

 二人の間に沈黙が流れる。もうそろそろ頂上だ。夕日もいい色。

「キスとか狙ってないでしょうね、嫌よ、私ノーマルだから」

 見破られてしまった。でも私の方が体は大きいし力も強い。だから。

「好きだ」

 私はカナエの腕を掴んで引っ張る。それと同時に唇が触れ合った。

「なっなにするのよっ」

 真っ赤になっているカナエを見ているととても嬉しくなる。

「何ニヤニヤしてるのよ、変態っ」

「ニヤニヤなんてしてない」

「もうっ信じられない」

 そうやってカナエが文句を言っているうちに観覧車は下に着く。それと同時にカナエは外に出て行ってしまった。

「あっ待って」

「やだっ」

 カナエはズンズンと歩いて行ってしまう。怒ってる感じはしないんだけど。そこにちょうどお土産屋があった。もしかしたら。

「カナエッそこでヌイグルミ買ってあげるから許してっ」

 その言葉に反応して立ち止まる。

「どうしても買いたいっていうならもらってあげるわよ」

 カナエはそういうとお土産屋へ足早に入って行く。後について入っていくと一つのヌイグルミの前でカナエが立ち止まっていた。

「これほしいの?」

「別に」

 私はそのヌイグルミを掴むとレジに持っていく。たぶんほしいんだ。カナエは素直じゃないから欲しいとは言わないけど。購入したヌイグルミを持ってすでに外に出て行ったらしいカナエのもとに行く。

「これどうぞ」

 カナエは差し出したヌイグルミを見ると満面の笑みになる。それからとても女の子らしい仕草でヌイグルミに抱きついた。

「別に嬉しく無いんだからっ」

 もうすでに言葉と態度があっていない。

「そう」

「それから今日は全然楽しくなかったわっ、全然よっ」

「あぁ、わかってる」

 今日の事ではっきりした。私はカナエに生きてほしい。死ぬなんて嫌だ。説得しよう。わかってもらえる様に何度でも。


 やっと恋をした実感がわいた。今までの恋より大幅にウキウキしている。鼻歌なんて初めてやった。遊園地から帰る時危うくスキップするところだった。こんな感覚本当に初めてだ。次は何をするか。どこに行くか。どんどん思いついていく。これが幸せという物か。

 家に帰ってベッドに飛び乗る。明日が来るのが楽しみだ。学校でカナエに会える。学校が楽しみなんて思うなんて信じられない。

 今好きだと伝えられないのがもどかしい。連絡手段が全くないから。今日は我慢だ。明日には何とか聞き出して。

「その前に自殺をやめるよう説得しないと」

 でも中途半端な説得じゃあ逆効果になる。経験上そうだ。直前になって怖くならなければどんな事があっても自殺してたと思う。そういう物だ。

「どうすれば」

 難しいかもしれないけど死は怖いものだと教えるか。生きてる事は楽しいと教えるか。

「たぶん無理だ」

 単純に両想いになる様に私が頑張れば。一番今の状況に合ってるかも。今日の遊園地での出来事から勝手に想像して脈ありなのかもと思うし。

 ふと思い出して唇に触れてみる。少し熱い。顔も熱くなってきた。今さらドキドキしてきた。我ながら大胆な事をしてしまった。強引なキスなんて。次はもっと。長いキス。濃密なキス。さらにその次は。想像するだけで顔から火が出そうだ。それでも想像せずにはいられない。カナエ好きだよ。


「ん……寝ちゃってた」

 眠りを邪魔された様な気分がする。ただぐっすり寝てて起きるのが辛いからか。もう十二時過ぎてる。ちゃんと着替えないと。


 朝はとってもスッキリ起きれた。昨日早くから寝てたからか。カナエに会えるのが楽しみなのか。

 素早く身支度をして家をでる。少し早いが気にしない。いやむしろ早い方がいい。それだけ早く会えるから。

 学校に着くとちらほらと生徒が登校してきている。先生たちの方は忙しそうにしながら足早に校門を抜けていく。大変な職業だな。朝早くから夜遅くまで。数十人の生徒を抱えて。だからと言ってズル休みを謝る気はないが。

 カナエのクラスはどこなのか知らない。だから玄関口で待つのが一番だ。必ず通るはず。

「……来ない」

 もうそろそろ教室に行かないと遅刻になる。見逃したか。用も無いのに私の姿見たからってカナエが声をかけて来るとは思えない。

「諦めるか」

 遅刻とかして目立ちたくない。そろそろ行こう。


 教室へつくともうクラスメイト達は集まっているみたいだ。遅刻がほとんどない真面目なクラス。馴染みづらい。

 そこにちょうど先生が入ってきた。神妙な面持ち。

「席についてください」

 低い声。いつもは少し陽気な感じなのに。

「みんなに大事な話しが……あります」

 胸が気持ち悪くなる。そんな空気。

「今朝ヤギリ カナエという生徒が……亡くなっているのが見つかりました」

 私の頭の中にカナエの声が響いた。

“今年の私の誕生日が終わる時、自殺するのよ”


「カナエさんと仲がよかった者はあとで来てくれますか?」

 先生の言葉に私はフラフラと立ち上がり前へ出る。

「カナエはどのカナエですか 学校に何人かいるでしょ」

 違う人だったら。同じ名前の違う人なら。

「……職員室に来なさい」

 職員室までの道のりはすごく長く感じた。祈りながら歩いていたから。職員室に入ったあとも先生の席までとても遠い。

「これです、生徒名簿の写真ですが、あなたの知っているカナエさんですか?」

 間違いなかった。そこには悲しげで辛そうな顔をしたカナエが写っていた。

「はい」

 先生は辛そうな顔で写真をしまう。

「カナエさんについて知ってる事を教えてもらいたいのです、特に悩んでる様子だったとか」

「……すいません」

「……大丈夫ですよ、ありがとう」


 やっぱり自殺なんだ。あの聞き方はそういう事。昨日が誕生日だったんだ。

「なんで」

 私はいつの間にか校舎裏に立っていた。カナエと初めて会った場所。桜は少し散り始めているけどそれ以外は変わらない。本当に少しの期間しかたってなかったんだ。とても濃密で楽しかった。何年も時間が過ぎている様な。

「あれ?」

 前が見えない。水の中にいる様な。

「泣いてるんだ、私」

 もう会えない。触れられない。抱きしめられない。想いを伝えられない。好きだよ。好きだ。好きだ……。

「カナエ好きだ」

 涙が止まらなかった。天国に届くけば。カナエに届けば後悔くらいはしてくれると思った。

「うあぁぁぁぁっ」

 だから涙が止まらなかった。


 カナエのお葬式。入り口で一度入るのをためらった。ここに入って進んでいけばカナエが亡くなった事を認めなければならない。カナエの死を目の当たりにしなければならない。嫌だった。そんな事絶対に。

 会場に着くとそこにはたくさんとは言えなくても人がいた。皆涙を流して。カナエは人との関わりを避けていたはずなのに学校で見たことある顔がちらほらとある。

「カナエ……なんでだ、こんなにもいたのに……こんなにも涙を流してくれる人がいたのに……なんでだ」


 私は公園のブランコに乗っていた。お葬式から逃げ出してそれからどうやってここまできたか覚えていない。もう泣き疲れて記憶も残らない。

「……カナエ」

「ユミ……さん?」

 声がした。カナエの声……に聞こえた。もういない人の声が聞こえた。気力を振り絞って顔をあげる。

「やっぱりユミさんね」

「カ……ナエ? カナエ? 何でっ、生きてっ」

「違うわっ、よく見て、もうカナエはいないの」

「ちが……う、カナエじゃない」

 カナエにしか見えないその人物はよく見ると少し違う。

「私はサナエ、カナエの姉よ」

 お姉さん。それなら納得できる。やはり死んだ人間が現われるわけがない。

「よく似てるでしょ、双子と間違われるけどこれでも四歳も私のほうが上」

 サナエさんは力なく笑う。目は泣きはらしてそれでも気丈に振舞っている。カナエと姉妹とは思えないほど強い人だ。

「それでユミさんに聞いてほしい事があるのよ」

「聞く? 何を」

「カナエの遺志、残されていた遺書に書いてあった」

「……何を、何を残していったんですか」

 サナエさんは一度大きく深呼吸をして話し始める。

「遺書にはね“心残りがあります、ユミという女の子です、あの子は私と同じでとても弱い子で私のあとを追いかねません、だから姉さんに守ってあげてほしいです、支えてあげてほしいです、生かしてあげてほしいです、お願いします”だそうよ」

「……カナエ」

 もう残ってないと思っていた涙がまた流れ始めた。

「心残りなら自分で守れよ、人に頼むなよ、自分で最後まで責任持てよ」

「そうよね、自分でやりなさいよ、バカ妹」

 サナエさんが優しく私を抱きしめてくれた。とても暖かい。心地良い。

「でも妹の頼みだから、私はユミを守るわ……でも今日だけゴメンね、今日だけは」

 サナエさんはとても弱々しかった。きっと我慢してる部分があったんだ。私はサナエさんとカナエをかぶせて見ているのかもしれない。でも守りたいと思った。今度こそ。

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