ふしぎのくにのありんすちゃん ~ALINCE IN UNDERGROUND LARGE GRAVE OF NAZARICK~ 作:善太夫
ナザリック地下大墳墓 第二階層〈屍蝋玄室〉──…ありんすちゃんはベッドから起き上がるとお風呂に向かいました。途中でパジャマを脱ぎ散らかしています。
泡で満たされた浴槽に潜り、ブクブクと息で泡を作ったりきめ細かな泡を積み上げて息を吹き掛けて飛ばしてみたりします。
手や足でバシャバシャし始めるとシモベのヴァンパイア・ブライドがバスタオルを持ってやってきます。
ありんすちゃんは万歳をした格好で身体を拭いてもらうと、他のシモベがありんすちゃんの衣類を持ってやって来ます。ヴァンパイア・ブライド達に着替えさせてもらったありんすちゃんは小さくくしゃみをしました。
次の瞬間、ありんすちゃんは何処かに転移してしまいました。
※ ※ ※
テレポーテーションしてしまったありんすちゃんは何やら狭い場所にいました。とりあえず手元にあったスイッチを片っ端から点けてみました。
と──ウィィ……ンンと音がして目の前に画面が表示されます。何やら裸の女性といた裸の男が大きな口を開けてこちらに向かってきます。
ありんすちゃんが小さく頭をふると声が聞こえてきました。
「──おい! こら! 冗談じゃないぜ? なあ、どうせツアーの悪戯なんだろ? なあ? ま、待てよ!」
ありんすちゃんは男の無様な姿に笑いました。うん? 頭の中にいろいろイメージが浮かんできます。どうやらありんすちゃんの意思でいろいろ動かす事が出来るみたいです。
ありんすちゃんは空高く飛びあがるとたちまち見えなくなってしまいました。
※ ※ ※
「……おいおいおい! なんてこった!」
後に残された男──リ・エスティーゼ王国アダマンタイト冒険者チーム“朱の雫”リーダーアズス・アインドラは立ち尽くしたままでありんすちゃんが消えた空を見上げていました。
ちなみに下半身も裸です。
ありんすちゃんが転移したのはアズスのパワードスーツの中だった為、アズスにしてみたらいきなりパワードスーツが勝手に飛び出していってしまったのでした。
「くそ! いったいどうなってやがる……」
アズスは他の“朱の雫”メンバーに情報収集させると同時に冒険者組合のネットワークを使ってパワードスーツの行方を探させるのでした。
※ ※ ※
やがてアズスのものと思われるパワードスーツについての情報がアズスのもとに報告されました。それによるとトブの大森林の近くの開拓村のひとつで幼女が自慢気に見せびらかせていたとの事です。
うーん。間違いありません。きっとそれ、ありんすちゃんです。
アズスは“朱の雫”の仲間を伴い、その村を訪ねる事にしました。
※ ※ ※
「……うん? カルネ村とはここのようだな。……しかし……これは……」
アズスは一介の開拓村に過ぎないはずのカルネ村のものものしさに緊張します。
村の周囲は頑丈な柵が巡らされていてちょっとした要塞のようでした。
「……ちょっと訊ねるが、この村にパワードスーツを所有するよう……少女がいると聞いたが……?」
アズスは利発そうな少女に声をかけました。
「あれ? お客さんですか? この列に並んでください。スッゴーイんですよ」
アズス達は仕方なく50人位の列に並びました。
しばらくするとパワードスーツが空から降りてきました。
「な、なんで腕が? ドリル?」
思わずアズスは叫びます。パワードスーツの右手は肘の先がドリルになっていました。しかも胴体の部分が異様に太くなっています。
やがて胸のあたりのハッチが開きありんすちゃんが出てきました。
「おまたせちたでありんちゅ。こりからありんちゅちゃのしぇんようガリダムに順番あしょぶでありんちゅ!」
ありんすちゃんが宣言をすると列に並んでいた皆が歓声を上げました。
※ ※ ※
「…………いやいやいや。子供のオモチャにするなよ……ああ、そんな小さな子に操縦は無理だろ……………ああ。やっぱり……いやいや、『丈夫だから大丈夫でありんちゅ』って……いやいやいや。ダメだって……やめろ! 赤ちゃんに操縦はやめろ! 無理だって……いやいやいや……せめて十歳以上とか身長制限を……いやいや。ゴブリンだぞ? ゴブリンがパワードスーツ乗っちゃう? いやいやいや……てかゴブリンどこから出てきたの? せめて列に並ぼうよ? ルール守ろうよ……オーガ! いや無いわあ。オーガ無いわあ。オーガに操縦さすか? 普通……そもそもパワードスーツ操縦が普通じゃないよね……いやいや。『ありんちゅちゃのパワードスーツ』じゃないから。そもそも俺のだし…………」
アズスはブツブツと呟き続けていますが仲間達はスルーしていました。
やがてアズスの番になりました。
※ ※ ※
アズスはパワードスーツから降りるとありんすちゃんに返して欲しいと頼んでみました。
意外にもありんすちゃんは快く頷いてくれました。
「……ちなみに何故、ドリルをつけたんだ?」
アズスはささやかな疑問を口にしました。
「……かっこいいでありんちゅ。ドリルグルグルしるでありんちゅ」
アズスは更に訊ねてみました。
「……しかし、コクピットに湯船をつけるのは全く理解できないのだが……」
ありんすちゃんは答えました。
「ありんちゅちゃはお風呂だいしゅきでありんちゅよ」
うーん……仕方ありませんよね。だってありんすちゃんはまだ5歳児位の女の子なのですから。