警官による市民殺害をうけて全米に広がっている抗議活動で、銃火器がつかわれていないらしいことが答えだと思える

米国が銃社会でありつづける思想的な根拠として、誤った公権力へ抵抗するため憲法で市民が銃を所持する権利が認められている。
銃規制に反対する全米ライフル協会とは何者か。500万人という数の力と政治力 | Business Insider Japan

アメリカの場合、イギリスの圧政から銃を持って独立した経緯があり、一種の革命権として（つまり、｢人権｣として）｢銃を持つ権利｣が存在するという難しさもある。｢刀狩り｣的な抜本的な摘発をするには、｢銃を持つ権利｣を認める｢憲法修正第2条｣そのものを変える必要がある。

その権利を主張して、全国的なロビー活動を展開しているのが全米ライフル協会、略称NRAだ。
ならば警察官が市民を殺害したことにはじまる抗議活動で、北米市民が銃を手にしてもおかしくはないし、それを支持するのがNRAのとるべき立場のように思える。

つい先日、明らかに自衛を超えた重武装で市民が議事堂に乗りこみ、それを大統領が後押ししていた。防疫のため移動の自由を制限するロックダウンへの抗議運動だった。
銃を手に……ロックダウンに抗議し州議会に押しかけ 米ミシガン州 - BBCニュース

ミシガン州では議事堂内での銃器携行は合法。そのため、州上院の傍聴席では複数の抗議者が公然と銃を携えていた。

一部の抗議者が本会議場に乱入しようとしたため、州警察や守衛官に阻止されたという。

ドナルド・トランプ米大統領は当時、「ミシガンを解放しろ」など、州政府への抗議行動が起きた州についてツイートし、デモ主催者を支持した。これは、野党・民主党所属の知事がトップにいる州政府に対して、反政府行動を扇動したに等しいと批判された。

一方、警官の市民殺害への抗議が暴徒化していると報じられても、市民が表立って銃を手にしたとは聞かないし、全米ライフル協会の声明もつたわってこない*1。
たしかに日本社会からは過激な印象ばかりおぼえるかもしれない*2。しかし武装した警察から暴力をともなう弾圧をうけても、市民は抑制につとめているように見える*3。

ちなみに、大統領が意向をしめしただけのANTIFA*4と異なり、すでにNRAは約1年前にサンフランシスコ市議会で国内テロ集団と認定されている。
全米ライフル協会を「国内テロ組織」に認定 サンフランシスコ市 - BBCニュース

米カリフォルニア州・サンフランシスコ市管理委員会（市議会）は3日、銃規制に反対の立場をとる全米ライフル協会（NRA）を、正式に「国内テロ組織」に認定する決議案を、満場一致で可決した。

しかし市民を弾圧するという国家の過ちに抵抗しないようであれば、NRAはテロ集団ですらないかもしれない。それが良いのか悪いのかは別として。

*1:北米在住でもなければ英語話者でもないので、もちろん情報を見落としている可能性はある。

*2:同時期に日本で警察がクルド人を違法に制圧した事件では、反ロックダウン運動はもちろん、今回の全米抗議運動にくらべて抑制的ではある。「首つかまれ、息できず」　クルド人に不当暴力、抗議デモ | 社会 | カナロコ by 神奈川新聞　もちろん抑制的でさえあれば良いというものでもなく、運動が制御できないほど広がっているわけではないことと表裏一体ではあろうが。

*3:鈴木一人氏のツイートはb:id:emiladamas氏のはてなブックマーク経由で知った。

*4:そもそも組織というより思想や概念に近しく、その名前を冠した個別の組織や個人を全て同様にあつかうのは難しい。トランプ米大統領、反ファシスト「アンティファ」をテロ組織に指定すると発言 - BBCニュース　また、白人至上主義者がツイッターでANTIFAになりすまして暴力を扇動し、削除されたとの報道もあり、暴力的なイメージもどこまで実態をとらえているか疑わしい。CNN.co.jp : 白人至上主義団体が「アンティファ」名乗り扇動、ツイッターがアカウント削除