「論文の書き方が分からない」「もっと良い論文にしたいけれど、どうしたら良いんだろう」こんな悩みが出てきたらこの記事で紹介する本を手に取ってみてください。
「研究の中身がよければ論文なんて自己流で良い」なんて考えていたら大間違いです。
論文は「ロジカルで説得力のある構成」「わかりやすい表現」「分野ごとに決まった作法」などの条件を満たしていなければ、中身の評価すらしてもらえないはずだからです。
そこでこの記事では、論文、小論文やレポートの書き方について学べる本を厳選して紹介します。「時間がないから本当に読むべき本だけ知りたい」という方向けにも説明していますので、関心のあるところから読んでみてください。
なお、この記事では、以下のように悩み別に書き分けています。
- 論文の書き方が全然分からない(学部生など)→1章基礎編
- より良い論文を書きたい・文章力を磨きたい→2章中級編
- プラスアルファの役立つ情報→3章応用編
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目次 [非表示]
1章:論文の書き方本:基礎編
まずは基礎編として、
- 『論文の教室』→論文の書き方について姿勢から考え方まで全般的に学べる
- 『文章力の基本』→わかりやすい文章の書き方のルールが網羅的に学べる
- 『合格小論文の書き方』→パラグラフライティング(後述)の練習ができる
という3冊の本を紹介します。基礎編としては『論文の教室』に目を通すだけでも論文の質が変わるはずです。
①『論文の教室』
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『論文の教室』は、論文の課題が出て「さあ何から始めよう、、」と悩んでいるような読者を対象とした本です。
内容としては、以下のように論文に関する全般的な知識です。
- 論文を書く上で知っておくべきこと(論文の構成要素、論文を書く段取り、論文の型)
- 論文のアウトラインについて
- 文章の書き方(パラグラフライティングやわかりやすい文章を書くコツ、引用や註のルール)
それぞれの内容はそこまで深掘りされていませんが、論文の書き方についてまずは基礎知識を得たいという場合はこの本をまず読むべきです。
この内容が実践できたら、次の本に進むことをおすすめします。
②『文章力の基本』
この本は、論文というよりも「わかりやすい文章の書き方」について詳しく書かれた本です。
論文は何よりも、ルールにのっとって論証されていることが大事ですが、中身がしっかりしていても「何を言っているのかよく分からない」という論文では、評価されにくいです。
そのため、どのような書き方をしたらわかりやすくなるのか、この本から学んでみてください。非常に基本的なルールから書かれていますが、初心者には勉強になるはずです。
具体的には以下のようなルールが紹介されています。
- 文章は短く言い切る
- 主語と述語の関係に関するルール
- 「に」と「で」や「には」の使い分け
- 「なります」「なので」のような話し言葉を使わない
- 読み手に頭を使わせない
- 修飾語は直前に置く
- 削れる言葉は徹底的に削る
- 簡潔な表現を選ぶ
…etc
上記は一例ですが77の項目から説明されているため、すべてを完璧に実践できている人は少ないはずです。
論文だけでなくメールやビジネス文書などにももちろん活用できる内容なので、ぜひ読んでみてください。
表現力を向上させるためには「接続詞」を意識して使うことも大事です。2章でもおすすめ本を紹介しますが、こちらの新書も良い本です。
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③『合格小論文の書き方』
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論文を書く上でのとても大事な基礎が論理的な構成を作ることで、その力を鍛えられるのがこの『合格小論文の書き方』です。
論文を書くためには、まずは構成をしっかりつくりそれに沿って書き進めることが大事なのですが、そのときに大事なのが以下の原則です。
- 「序論・本論・結論」という構成で書くこと
序論で「問題提起」と「問題背景」、本論で問題に対する答えにたどり着くまでの具体的な論証、結論で「全体のまとめ」と「今後の展望」を書くこと。また、論文全体、章、小見出しレベルまでこの3つの入れ子構造で書くこと。 - 一つ一つの項目・段落(パラグラフ)を「パラグラフライティング」という方法で書くこと
1つのパラグラフで1つの意味を伝えることを前提に、1つのパラグラフを「結論」→「論証」→「結論」という形で書く書き方。
これはどのような論文、小論文、レポートにも通用する書き方です。
要点を一言で言えば「先に結論を言え」ということです。研究者・教授は大量の論文を読まなければならないため、読む時間を節約できるように、結論や全体像が先に分かる書き方がルール化されているのです。
極めて簡単に言えば、パラグラフライティングとは、以下の要素が一つのパラグラフ(段落)にまとめられた文章を、いくつも積み上げて一つの論文を作る書き方です。
結論:○○という問題を△△という方法で考えると、××という答えが導き出される
論証:なぜなら(理由①)(理由②)(理由③)だから
結論:つまり、○○は~~という理由から××という答えになる
『合格小論文の書き方』では、こういった論理的な構成作り、パラグラフライティングの方法について初学者レベルから訓練できる本です。
わかりやすく論理的に一貫した文章を書く上で必読書といえます。私は学部時代にこの本を人から紹介されて繰り返し読みました。ぜひ読んでみてください。
よく新人社会人(特にコンサル系)におすすめされる本として『考える技術・書く技術』があります。
この本も論理的な文章を学べる本ですが、紹介されている文章の書き方は『合格小論文の書き方』で紹介されているものと大差ありません。
社会人の教養として読んでみても良いですが、私の経験上、この記事で紹介している他の本をしっかり学んだ方が文章力も論理的思考能力も高まります。
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2章:論文の書き方本:中級編
基本的な論文の書き方が身についているなら、さらに良い論文を書くためにこれから紹介する本をおすすめします。
特に『大人のための国語ゼミ』は、論理的でかつわかりやすい文章を書くためにとても良い本なので一番おすすめです。
④『大人のための国語ゼミ』
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よっぽどしっかり国語を学習し文章を訓練してきた人でなければ、正しい国語を使いこなして文章を書けているとは言いがたいです。
よりわかりやすく、論理的に正しい文章を書くためには、1章で紹介したようなルールを意識するだけでなく、「国語の仕組み」を理解しておくことも大事です。『大人のための国語ゼミ』では、正しくわかりやすい表現をするために必要な国語が、とてもわかりやすく解説されています。
一部をピックアップすると以下のようなことが書かれています。
- 事実、推測、意見を区別すること
- 論理的な接続表現
- 「理由」や「原因」は「根拠」と同じものなのか
- だめな根拠・弱い根拠
私が特に勉強になったのが、論理的な接続表現の使い方の解説です。
1章では論文の大原則「パラグラフライティング」を説明しましたが、パラグラフライティングはいわば文章のブロックを作り、ピラミッドのように積み上げていく方法です。そのため、パラグラフライティングにこだわるだけでは文章のつながりが曖昧になり、わかりにくいことがあります。
そこで重要なのが全体につながりを作る文章力であり、特に「接続表現」を活用することです。接続表現とは「それで」「または」「しかし」などの接続詞などのことです。
接続表現をしっかり身につけることで、一本の論理の筋が通った論文が書けます。
この本では、接続表現を以下のグループに分け、その使い分けが説明されています。
接続表現の3つのグループ
- 付加・選択・換言・例示
- 対比・転換・補足
- 条件・譲歩条件・理由・帰結
この仕組みを知るだけで、わかりやすく論理的な文章が書けるようになるはずです。この本は特におすすめなのでぜひ読んでください。
『大人のための国語ゼミ』を書いた著者の野矢茂樹氏は、論理的思考力や論理的な文章を書くための力をトレーニングできる『論理トレーニング101題』という本も執筆しています。
この本は論理力系の本として名著でよく紹介されるものですが、論理的な文章力を磨くための必読書の一つでもあります。
私も学部時代に何度も繰り返し読みました。
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論理的思考能力を鍛える系の本はたくさんありますが、この本が一番おすすめです。
⑤『100ページの文章術』
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この本はある程度の論文の書き方や文章力がある前提で、「もっと論文の書き方を磨きたい」と考えている方におすすめです。
論文・レポートに書き慣れた学部3、4年生や修士1年生くらいだとさくっと読めて、論文の書き方が整理できると思います。文字通り100ページ程度で書かれているため、1日でインプットして実践に移れるのが魅力です。
- 論文を書く上での心構えや考え方
- 構成の作り方
- 論理的でわかりやすい文章の書き方
などが網羅的に、コンパクトにまとまっています。
多くの情報が100ページにまとまっているため、ある程度知識がある人の方が読みやすいとは思いますが、この本だけを読んで、本の通りに論文を書き始めても良いと思います。
理系向けの論文・レポートの書き方の解説本として有名なものには、以下の本もあります。
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漫画版もありますが、新書版が名著ですのでぜひ新書版で読んでみてください。
3章:論文の書き方本:応用編
1章、2章で紹介した本をしっかり読めば、論文を書く上での基礎的な力は十分身につくはずです。
しかし、さらに良い論文を書きたいなら類語辞典や学会誌を活用しましょう。
- 類語辞典・・・手元に置いてより良い表現を探しながら書く
- 自分の分野の学会誌・・・自分の分野の論文のルールや書き方を学ぶ
簡単に説明します。
類語辞典
類語辞典にもさまざまなものがありますが、三省堂の『新明解類語辞典』がおすすめです。学術用語も含む5万7000項目が収録されています。
類語辞典から表現を探す習慣を作ると、語彙力が飛躍的に向上します。
自分の分野の学会誌
あなたの分野の学会誌を読むことは、論文を書く上で必ず行わなければならないことです。
なぜなら、論文には書く上でのルールがあり、それが分野によって微妙に異なるからです。
たとえば、国際政治学分野の学会誌『国際政治』(日本国際政治学会)では、以下のようにルールが決められています。
三 用字・用語法
⑴新字体とすること。引用文についても同じとする。
⑵新かなづかいとすること。ただし、和文の引用文については、原文どおりでも良い。
⑶年号は、西暦を用いること。歴史論文などで元号を用いる必要がある場合にも、できるだけ括弧を付けて西暦を記入すること。
⑷日本語訳の定着していない専門用語は、必要に応じて括弧を付けて原語を記入すること。
⑸外国人の名はカタカナ表記とし、初出の際に括弧を付けて原名ないし欧文原音を記入すること。ただし、中国人名など漢字名の場合は逆にしても良いし、カタカナ表記を省略しても良い。
⑹カタカナの「ヴ」表記は、固有名詞のみに用いること。
例ローズヴェルト、ヴァージニア( 「サービス」のような場合には用いない)四 編別
⑴編別は、 節、 項、 小項の順とすること。なお、項や小項目を立てる必要は必ずしもない。
⑵節、項、小項のそれぞれに当てる数字等は次のように統一すること。
節一、二、三・・・・・・
項⑴、⑵、⑶・・・・・・
小項a、b、c・・・・・・
⑶「はじめに」と「おわりに」には節番号を振らないこと。
例 はじめに
一西欧国際体系の成立
⑴国際体系の視点
a体系とは
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
おわりに(引用元:日本国際政治学会『国際政治』掲載原稿執筆要領(最終閲覧日2019年12月22日)
これは一部ですが、このように細かくルールが決まっており、もし学会誌に論文を投稿する場合は、このルールを必ず守らなければなりません。
学校に提出する論文の場合は、あらかじめ決められたルールが知らされるとは思います。しかし、何も指定がない場合も「適当で良い」というわけではありません。たいていの場合は、あなたの属する分野の学会誌のルールを参考にすべき、と考えられます。
そのため、たとえ投稿するような予定がなくても、あなたの分野の学会誌のルールを知っておくことはとても大事なのです。
学会を検索すれば、学会誌の投稿規定も見られる場合が多いですし、大学の図書館で学会誌を見つければ、そこに投稿規定が書かれているはずです。ぜひ探してみてください。
まとめ
興味のある本はありましたか?
あえて絞るなら、初心者に特におすすめなのは『論文の教室』、誰にでもおすすめなのが『大人のための国語ゼミ』です。
ぜひ手元に置いて何度も読んでみてください。
一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。
最初の1冊は無料でもらえますので、まずは1度試してみてください。
また、書籍を電子版で読むこともオススメします。
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などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。