稲野慎
医師不足が深刻な鹿児島県錦江町がふるさと納税を活用し、東京都内など各地の医師がオンラインで妊婦や子育ての医療相談に応じるサービスに取り組んでいる。町の子育てを支援する「子育て世代包括支援センター」の会議に医師がオンラインで参加する試みも6月から始め、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う子育て世代の不安やストレス解消についてアドバイスを受ける仕組みも整えた。
桜島を望む大隅半島に位置しダイコン畑などが広がる人口約7千人の同町。過疎と高齢化が進み、小児科医も産婦人科医もいない。
子育てをする保護者や妊婦らは車で40分ほどかけ、隣接する鹿屋市の小児科医や産婦人科医がいる医療施設に通ってきた。
町は2017年、ふるさと納税の使い道について町民からアイデアを募るコンテストを実施。その結果、「小児科医の誘致か、遠隔診療・相談ができるしくみづくり」が多くの支持を集めた。
町はこの結果を受け、東京都の小児科医らが設立した医療相談の遠隔サポートをする運営会社「Kids Public」に小児科の遠隔医療相談を委託することを決めた。
18年6月から同社が提供する「小児科オンライン」を導入。平日の午後6時~午後10時の間にスマートフォンの無料通信アプリ「LINE」の動画通話や音声電話などを使って1人あたり10分間、小児科医に相談ができる。都内などで働く小児科医が、診療時間外に交代で相談に応じている。
町はさらに、同社が提供する産婦人科医・助産師が妊婦の相談に応じる「産婦人科オンライン」も19年1月から始めた。町民の相談に応じる小児科医と産婦人科医・助産師は計約120人。財源にふるさと納税が充てられるため、いずれも町民は無料で使うことができる。
町によると、町民から小児科オンラインへ「子どもにしっしんが出ているが、このままにしていいか」「夜泣きが止まらない」「鼻血が何回も出る」といった相談が寄せられている。町の担当者は「オンラインでは医師に子供の顔を見せながら相談をすることができる。病院にすぐに行くべきなのか迷うとき、医師からのアドバイスはありがたいという声が多い。小児科医も産婦人科医もいない町にとって遠隔医療相談の恩恵は大きい」と話す。
コロナウイルス感染防止のため、このオンラインサービスに登録している町民のもとには同社から「手洗いの仕方」「マスクの役割」などをテーマにした医療の専門家が書いた記事も定期的に届けられている。
町が4月に設立した、子育て支援の関係者らでつくる「子育て世代包括支援センター」もこのオンラインサービスを導入する。月1回あるセンターの会合に、小児科医らがオンラインで参加し、専門的なアドバイスをする予定だ。
国外ではコロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や禁止で家庭内暴力が増えたとする報告がある。町でも人々は外出を控えめにしていることから、今後は妊婦や子育て世代のストレス解消策などについてもオンラインで医師を交え、協議を進めるという。
町の担当者は「自治体の子育て支援をする組織に遠隔で医療専門家のサポートが入るのはおそらく全国初のケース。今年は新型コロナウイルス関連の相談にも対応しながら、全国の過疎地のモデルになる取り組みとして進めていきたい」と話している。(稲野慎)
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6/1 21:00 時点
退院者数はクルーズ船の乗客らを含めた数。厚労省などによる
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