新型コロナウイルス労働問題
新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)拡大により、日本全国各地において経済活動の停滞、小中高校の一斉休校などの影響が出ております。労働問題でお困りの方は、ホットライン・各地域の相談窓口にご連絡ください。
まずは、下記の情報をご覧ください。
Q&A
1賃金
- 会社が休みになった場合、基本的に 100%の賃金を要求すべきです。
- 100%の賃金がもらえない場合でも、6 割以上の休業手当の支払は必要です。
- 労働者としては、働く意思があることを会社に示しましょう。
- 在宅勤務であることは、賃金を下げる理由にはなりません。
感染拡大の防止を理由として会社が休業する場合、すなわち、会社が労働者に労務を提供させることが可能であるのに、自らの判断によって休みにする場合には、「使用者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)があるものと考えられます。
そのため、感染拡大予防を理由として会社が休みになった場合、その休み中の賃金は全額支払われるべきです。労働者としては、会社に対して就労させるように求めた上で、賃金全額の支払いを求めましょう。
なお、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、「特措法」と言います。新型コロナへの適用については、同法附則1条の2による読み替え後)に基づく緊急事態措置等については、以下のQ&Aをご覧下さい。
① 協力要請等の強さの程度-段階(レベル)を把握すること
全国で緊急事態宣言が出されて多くの事業が休止を強制されているような雰囲気がありますが、実際には都道府県ごとに、出されている緊急事態措置の中身は異なりますし、厳密には、法律上、事業の休止を強制することはできません。
都道府県知事が行う協力要請等の強さには、法律上いくつかの段階(レベル)があるので、都道府県のホームページで公開されている緊急事態措置の内容等をしっかりと確認して、ご自身の勤務先の事業内容、担当業務にどの程度の影響があるのかをしっかりと把握しましょう。
具体的には、以下の各段階があります。
② 「協力の要請」(特措法24条9項)の段階
都道府県知事(特措法23条1項)は、「公私の団体又は個人」に対して、新型コロナ「対策の実施に関し必要な協力の要請」をすることができます(特措法24条9項)。なお、この「協力の要請」は、緊急事態宣言期間中でなくともできます。
事業の休止との関係でみると、例えば東京都の場合、現時点での緊急事態宣言を受けた緊急事態措置等の内容は、施設管理者やイベント主催者を対象とした施設の使用停止及び催物の開催の停止要請にとどまるものです。すなわち、㋐特措法24条9項に基づくもので特措法施行令11条該当施設に対して基本的に休止を要請するもの、㋑特措法によらずに一定の施設に対して使用停止の協力依頼を行うものやイベント・パーティー等の開催の自粛を要請するものとなっています(東京都ホームページ2020年4月10日発表)。この「協力の要請」に従わない場合の罰則(行政罰を含む)はありませんし、特措法45条4項の「公表」の対象にもなりません。
なお、この段階では、施設の使用停止等の「協力の要請」がされているに過ぎませんので、施設管理者やイベント主催者がこれに自主的に「協力」しても使用者側に起因する経営判断に過ぎません。
また、施設の使用停止等の対象は限定されています。例えば、現在の東京都の場合、商業施設であっても一律に対象とはされず、生活必需物資の小売関係等以外の店舗で、しかも床面積の合計が1,000㎡を超えるものに限られています(東京都ホームページ2020年4月10日発表)。対象外の事業などにおける休業であれば、都道府県による「協力の要請」とは無関係に使用者が自発的に行ったに過ぎません。
③ 施設の使用の停止等の「要請」の段階(特措法45条2項)
緊急事態宣言期間(特措法32条1項)中、都道府県知事は、一定の施設管理者等に対して、「当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請」することができます(特措法45条2項)。かかる「要請」は、新型コロナウイルスの「まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるとき」に限り出されるものです。「要請」に従わない場合の罰則はありませんが、一定の施設管理者等に対して「要請」を行った場合は、遅滞なくその旨を公表しなければならないとされています(特措法45条4項)。
2020年4月23日、政府は各都道府県に特措法45条の規定に基づく要請、指示及び公表についての事務連絡(内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長「第45条の規定に基づく要請、指示及び公表について」)を通知し、同月24日、大阪府が初めてパチンコ店を対象に施設の使用停止の要請を出し、公表しました。
「要請」が出されたら、ホームページなどで内容が公表されるので、きちんと確認しましょう。
この「要請」の対象は、営業停止や労働者の休業ではなく、施設の使用や催物開催の制限などに過ぎません。要するに、多人数が集まらなければ、使用者が工夫をして事業継続することは可能な場合もあるので、この点は注意が必要でしょう。
そして、「要請」の内容が使用制限にとどまるのか(例:営業時間短縮など)、完全な使用の停止なのかも、具体的な要請の中身を把握する必要があります。具体的な要請の程度及び内容について、法律では、施設の使用や催物開催についての㋐制限、㋑停止(以上、特措法45条2項)のほか、㋒入場者の整理、㋓症状を呈しているものの入場の禁止、㋔手指の消毒設備の設置、㋕施設の消毒、㋖マスクの着用や防止措置の周知、㋗施設の換気と定められています(以上、特措法施行令12条及び令和2年4月7日厚生労働省告示176号)。完全な使用の停止でなければ、「要請」に基づいて労働者の休業が本当に必要であるかも吟味すべきでしょう。
もし、「要請」が出された地域において事業者が休業を強いられたと言っても、その事業が「要請」に該当しない事業・業務内容であれば、その休業は、「要請」とは無関係な自主的判断による休業に過ぎません。
④ 要請に応じない場合の「指示」の段階(特措法45条3項)
「③ 施設の使用の停止等の「要請」の段階」で述べた「要請」が出された後、要請の対象となった施設管理者等がこれに応じないときは、都道府県知事は、施設管理者等に対して、当該要請に係る措置を講ずべきことを「指示」することができます。
この「指示」が出されるのは、要件として、㋐施設管理者等が「正当な理由」がないのに、㋑前記③で述べた「要請」に従わない場合で、㋒「まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限」ると限定されています。
「指示」が出された場合も、従わない場合に罰則(行政罰を含む)などもありませんが、都道府県知事は「指示」を行った場合、遅滞なくその旨を公表しなければならないとされています(特措法45条4項)。
2020年5月1日に、兵庫県及び神奈川県で初めて施設の使用停止の「指示」が出されました。
ホームページなどで内容が公表されるので、「指示」の対象なのか、内容を確認しましょう。
⑤ 住民に対する外出自粛の「協力の要請」(特措法45条1項)
前記③~④は事業者向けの要請等でしたが、住民を対象にするものとして、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他感染の防止に必要な「協力を要請」することができるという規定があります(特措法45条1項)。
例えば、東京都は、この規定により、都民に対して、食料の買い出し、 職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないことを要請しています(特措法45条1項。具体的には各都道府県のホームページをご覧ください)。
但し、この規定による外出自粛は「職場への出勤」を対象としないとされているので(新型インフルエンザ等対策研究会編『逐条解説 新型インフルエンザ等対策特別措置法』157~158頁)、都道府県から外出自粛の協力要請が出されていることは、事業者が休業する理由とはなりません。
政府は、2020年4月16日までに全国の都道府県を対象に緊急事態宣言を出しており(特措法32条1項)、現在、対象都道府県の知事は住民に不要不急の外出をしないことなどの要請を行っています(特措法45条1項)。この外出「自粛」の協力要請は、緊急事態宣言を受けて都道府県知事が当該都道府県内の住民に感染の防止に必要な「協力を要請」(特措法45条1項)するものですが、「職場への出勤」は不要不急の外出にあたらず(詳しくは、前記アの「⑤ 住民に対する外出自粛の「協力の要請」」をご覧下さい)、「自粛」の対象にはなりません。
例えば、東京都の緊急事態措置を見ても、「職場への出勤など、生活の維持に必要な場合を除き、原則として外出しないこと」の協力が要請され(東京都ホームページ:2020年4月10日発表)、職場への出勤は明確に協力要請の対象外となっています。
したがって、緊急事態宣言が出されて不要不急の外出「自粛」の協力が要請されているからといって、それだけで直ちに、会社が「協力の要請」に基づき休業しているとは言えません。
そのため、この場合は、会社が労働者に労務を提供させることが可能であるのに、自らの経営判断によって休業する場合であって、「使用者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)があるものと考えられます(休業手当60%(労働基準法26条)の支払は当然認められます)。
なお、労働組合があるような多くの職場では、使用者との交渉を経て、休業中も労働者に100%の賃金の支払いを受けられるようにしていますので、諦めないで下さい。
また、国は新型コロナに関連して「雇用調整助成金」(雇用保険法62条1項、雇用保険法施行規則102条の3)の要件緩和や支給内容の拡大の特例措置を実施しており、会社は支払った休業手当の相当部分を雇用調整助成金(ただし、労働者一人当たり一日の上限は8330円)として国から受けることができます。詳しい要件などは、次項以下のQ&Aで解説していますので、ご覧下さい。
新型コロナ感染拡大防止に会社が積極的に協力すること自体、社会を新型コロナの感染の脅威から守るため歓迎すべきことですが、だからといって休業による不利益を労働者が受け入れねばならぬ理由にはなりません。
緊急事態宣言後においても、勤務先の都道府県で出されている緊急事態措置の内容をしっかりと確認しましょう。
都内の商業施設でお勤めということですが、東京都知事から出されている緊急事態措置は、2020年4月24日時点で、上記アの「② 「協力の要請」(特措法24条9項)の段階」で説明した、罰則もない「協力の要請」(特措法24条9項)の段階にとどまっています(特措法45条4項の公表対象にもなりません)。
この時点では、施設の使用停止等の「協力の要請」がされているに過ぎませんので、事業主がこれに自主的に「協力」しても使用者側の事情に起因する経営判断に過ぎません。
また、施設の使用停止等の対象も限定され、東京都でも、商業施設でも一律に対象とはされず、生活必需物資の小売関係等以外の店舗で、しかも床面積の合計が1,000㎡を超えるものに限られています。対象外の事業などであれば、要請とは無関係な自主的対応となります。
また、仮に職場の商業施設がその対象となっていても、この「要請」の対象は、営業停止や労働者の休業ではありません。あくまで、「施設の使用や催物開催の使用の制限」などに過ぎず、多人数の密集状態が生じる形態による営業の停止が要請されているだけです。ですから、施設を使用しない営業形態を構築するなどの経営努力により、営業活動を継続することで、完全な休業を回避している業種も少なくありません(例:飲食店等で入店者数の制限、テイクアウト、百貨店やスーパーなどの営業時間の短縮や入店者数の制限、小売店などの通信販売、ネット配信サービスの活用など)。
こういった営業を継続する経営努力をせず休業するのは使用者の経営判断ですから、60%の休業手当(労働基準法26条)はもちろん、100%の賃金(民法536条2項)を支払うように要求すべきでしょう。
厚生労働省がだした「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」「4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」「問7」には、「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。」との記載がありました(2020年4月21日時点。なお、2020年5月1日時点版では、「新型インフルエンザ等対策特別措置法による対応が取られる中で、協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。」と表現が変わりました。)。
この点、厚労省の解説には、休業手当の支払義務を負わない不可抗力による休業といえるには「①その原因が事業の外部より発生した事故であること ②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること、という要素をいずれも満たす必要があります」としつつ、「①に該当するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。」としていました(2020年4月21日時点。なお、2020年5月1日時点版では、「①に該当するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。」と表現が変わりました。)。
しかし、特措法に基づく措置といっても、前記「ア 緊急事態宣言期間中における協力要請等の段階(レベル)について」で解説したとおり、法的には様々な段階があり、その効果は全く異なります。その影響を一律に論じて、事業の外部において発生した事業運営を困難にする要因であるとすべきではありません。
具体的には、㋐緊急事態宣言前から可能な特措法24条9項に基づく施設の利用停止・催物開催の停止の「協力の要請」にとどまるのか、㋑緊急事態宣言期間中における施設の使用の停止等の要請の段階(特措法45条2項)か、㋒さらには特措法45条2項の要請に対して施設管理者等が「正当な理由」なく従わなかった場合であって「まん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り」認められる「指示」の段階なのか(特措法45条3項)によって、事業運営を困難にする度合いは全く異なります。ですから、厚労省の解説は誤解を招くもので不適切であったといえます。
また「緊急事態宣言や要請」といっても、要請内容や事業内容、当該労働者の担当業務との関係で休業など必要がない事業もありますから、厚労省が掲げる「②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること」の該当性の判断において、厚労省の解説が示すとおり、「自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか」「労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか」が慎重に検討されねばなりません。
そういった意味では、厚労省のQ&Aが結論として指摘するとおり「労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません」といえ、緊急事態宣言に基づく要請(特措法45条2項)や指示(同法45条3項)が出されても、休業手当の支払は個別具体的な事情を考慮して決せられることに注意すべきでしょう。
まず、緊急事態宣言下での休業であったとしても、会社に対して100%の賃金の支払いを求めることができること(民法536条2項)、また、会社には少なくとも労働基準法26条に基づく休業手当の支払義務があることは既にQ1-2からQ1-5で述べたとおりです。この休業手当は義務違反に対する刑事罰(労基法120条1号)をもって支払いが強制されており、労働者の生活保障の点からも、会社は労働者に対する休業手当の支払いを免れることはできません。
それでもなお、会社が売上の低下など経営上の理由で休業手当の支払を拒むのであれば、会社に、一定の要件の下で国から「雇用調整助成金」(雇用保険法62条1項、雇用保険法施行規則102条の3)を受給できること、新型コロナ対策として受給要件が緩和され、受給金額も拡充されていることを説明し、雇用調整助成金を活用しての休業手当の支払いを交渉しましょう。
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用維持を図るための休業に要した費用を助成する制度です。この助成金は、直接労働者に対してではなく、休業手当を支払った事業者に支払われるものですが、売上の低下等により資金繰りにあえぐ会社にとっては、労働者に支払った休業手当の相当部分が国から助成されるので、使用者には大きなメリットがあります。是非、使用者に積極的な活用を求めましょう。
2020年4月1日~6月30日の緊急対応期間中は、全国で、全ての業種の事業主を対象に、雇用調整助成金の特例措置が実施されており、例えば、以下のとおり、受給要件が緩和されています。
「手続が面倒」などと言って活用を渋るかもしれませんが、
○休業計画の事後提出を認める
○申請書類の簡素化、記載事項を少なくしている
等、手続に関する諸要件も緩和されています。
また、助成率も、中小企業は支払った休業手当の4/5、大企業は2/3と従来より引き上げられており、さらに、会社が解雇等(雇止めを含む)を行っていない場合、中小企業は9/10、大企業は3/4へと拡大されています(更に、[拡充1]中小企業が解雇等を行わず雇用を維持して賃金の60%を超えて休業手当を支払う場合、60%超の部分の助成率を100%とする、[拡充2]拡充1の中小企業が休業等要請を受けた企業で一定の要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を100%とする拡充が行われます)。但し、日額一人8330円が上限となっており、上限額の引き上げ又は撤廃が政府には求められます。
また、企業が休業手当を支払わない、原資がなく企業が休業手当を支払えないような場合に対応するために、企業の休業手当を政府が労働者に立替払いするような制度改正も必要です。
詳しくは厚生労働省のホームページをご覧下さい。
()
申請は、各地の労働局等で、労働者ではなく、事業主が行います。詳しくは、厚生労働省の窓口案内
()
を参照して下さい。
この制度は、使用者が支払った休業手当の相当部分を助成するものですので、制度を活用して、使用者には休業手当をより多く支払うよう求めましょう。
基本的な考え方は、上で述べた会社が休みになった場合と同様です。まずは会社に対して賃金の全額支払いを要求しましょう。
もっとも、民法536条2項の「使用者の責めに帰すべき事由」まではなく、賃金全額を支払って貰えない場合もあります。それでも、新型コロナの影響による操業停止・営業停止は不可抗力とまではいえないと考えられ、労働者は会社から、休業手当(労働基準法26条)を受け取ることができます。
ア テナント契約を結んでいる店舗が、デパート休業に伴って営業ができなくなっていますが、店舗がデパートとの賃貸借契約にしたがって、店舗を使用収益したいのに、デパートの都合でそれができなくなっているという場面です。
これは、店舗のスタッフからすれば、使用者側に起因する事情により勤務することができなくなっている場面であるといえます。労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」がある休業は、労働者の生活保障の観点から緩やかに解釈されるべきですので、本件では使用者側に起因する事情によって勤務することができなくなっている以上、店舗のスタッフは、少なくとも同条に基づき休業手当の支払を受けることができます。なお休業の場合、休業手当を支給した会社は雇用調整助成金を活用できることがあります(前記「(3)雇用調整助成金の活用」参照)。
イ 更に、当該店舗が休業せざるを得ないとしても、それは直ちに同店舗のスタッフの行うべき仕事がないということにはなりません。労働者の勤務するデパートの上記店舗が営業できないとしても、会社が同デパート以外でも店舗を運営しており、同店舗は営業を続けている、あるいは本社の営業・総務・経理等他の部署で行うべき業務があり、配置転換の可能性がある場合、会社は休業した店舗のスタッフに業務を行わせることができます。そのような余地があるのに会社が検討を行わない場合、民法536条2項により、店舗スタッフは賃金請求権を失わず、賃金全額を会社に請求することも考えられます。まずは休業手当分を確実に支払ってもらい、状況に応じて、同支給分と賃金全額の差額の請求を検討しましょう。
ウ なお、デパートのテナントの店舗に派遣されて働いている派遣労働者もいます。デパートの休業に伴って働けなくなった場合、それは派遣元事業主と派遣先との労働者派遣契約の問題、すなわち派遣労働者からすれば使用者側の事情であり、少なくとも労働基準法26条の休業手当の支払を受けるべきであることは同様です。また、派遣元事業主が他の業務をさせることができる場合には、賃金全額の請求も考えられるでしょう(派遣労働者の解雇・雇止め後記「12 派遣」を参照)。
労働条件通知書や労働契約書があればその内容、あるいは、口頭や職場での了解事項、勤務実績があればその内容での労働契約が成立しているといえますので、当該一定時間の勤務(労働)に対する対価として、その時間の賃金も請求できます。
シフトが入らなくなった分については、上で述べた会社が休みになった場合と同様に考えて、まずは、減ってしまったシフト分の賃金全額の支払いを求めましょう。
在宅勤務は会社も了解の上でのことですから、賃金を会社の都合のみで一方的に引き下げることは違法で、許されません。これは在宅勤務を会社が一方的に命令する場合であっても同様です。
労働者と使用者の合意によって、賃金を変更することはできますが(労働契約法8条1項)、仮に、一度、在宅勤務中の賃金減額に形式的に合意をしてしまったとしても、これを受け入れる労働者が自由な意思に基づいて合意したものと認めるに足りる合理的理由が客観的にないと、その合意は労働者の真意に基づかないとされ、変更後の労働条件が無効であるとされる場合もあります。
諦めずに元の賃金を要求しましょう。
2感染予防
- 会社には、適切な感染予防措置をとるよう、要求しましょう。
- マスクの着用を義務付けられたら、会社に準備してもらいましょう。
事業者は、労働災害等を防止する義務があり、また、快適な職場とするよう努める義務があります(労働安全衛生法3条1項)。労働契約法上も、使用者の労働者に対する安全配慮義務があります(同法5条)。
特に、常時50人以上の労働者を使用する事業場では衛生委員会を設置しなければなりません。(労働安全衛生法18条1項、労働安全衛生法施行令9条)。その場合、事業者は、衛生委員会を月に1度は開き(労働安全衛生規則23条1項)、職場衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関することについて議論することとなっています(同22条3号)。その議事録は労働者に公開する必要があります(同23条3項)。
新型コロナの感染拡大とこれによる健康への脅威が大きな問題となっている中、使用者は、職場における感染リスクを適切に評価し、対策を講じることが必要です。
そこで、職場内で議論を行い、使用者には、具体的に講じた対策を公表させるべきです。特に、衛生委員会の設置が義務付けられている事業場では、使用者に衛生委員会の開催を求め、具体的な改善策を提案してみて下さい。例えば、テレワークの導入や時差出勤(詳しくは「」をご覧下さい)、手近には、消毒液の設置や職場の換気などが挙げられます。
職場に労働組合がある場合、労働組合に相談して、使用者に団体交渉を申し入れて団体交渉を行い、その交渉を通じて、職場の衛生環境の改善を求めましょう。
職場に労働組合がない場合、一人でこのような提案をしても、会社が聞き入れてくれないかもしれません。職場の皆さんで話し合いをして、職場の意見として、具体的に会社に提案してみたり、外部の労働組合に相談して加入し、労働組合として会社に交渉を申し入れてみて下さい。職場に労働組合がなくても、一人でも加入できる労働組合があります。具体的な労働組合は、本Q&A末尾に記載している労働組合をご覧下さい。
いくら改善を求めても使用者が何ら改善措置をとらず安全配慮をしない場合には、テレワークなどの方法で労務提供することも考えられます。テレワークでの勤務ができるのに、会社が何ら検討もしないでテレワークによる労務提供を拒否したような場合には、賃金全額を請求できる可能性もありますから、専門家に相談して下さい。また、安全配慮を全く会社がしてくれずやむを得ず会社を欠勤しても、これを理由に懲戒したり解雇したりすることは無効と考えられます。
一般論としては、上のQAで述べたことが同様に当てはまります。
もっとも、職場が医療機関の場合、その職務の性質上、業務従事者が新型コロナに罹患する可能性が高まるものと思われます。そのため、医療機関においては、労働者が衛生的な環境で職務に従事することができるよう、速やかに、また、具体的な措置をとることが要求されるものといえるでしょう。
会社には、労働者の就業中の服装等について、業務命令で、一定程度指示する権限があります。そして、業務命令違反の内容が懲戒事由として就業規則などに定められており、労働者が業務命令に反した場合、労働者は懲戒処分を受ける可能性があります。
もっとも、会社からの業務命令が実現不可能か、その実現が極めて困難な場合、業務命令そのものが有効とされず、無効な業務命令への違反を理由とした懲戒処分は、懲戒権の濫用(労働契約法15条)と判断される可能性があります。
現在、マスクが品薄状態で、マスクを手に入れることが極めて困難な状況にあり、会社の指示を履行することは、不可能だといえるでしょう。ですから、「就業中にマスクを着けなければならない」という会社の業務命令に背いたことを理由とする懲戒処分は、実現不可能なことを強いられていたわけですから、懲戒権の濫用として無効となると考えられます。
会社には、業務命令として、就業中の服装等について、一定程度指示する権限があります。
会社が業務指示として、業務中のマスクの着用を義務付けているのでしたら、業務中の服装に関する指示ですから、会社の制服と同様、会社が準備するべきものといえるでしょう。
使用者には、労働者の健康等について、安全配慮義務があります(労働契約法5条参照)。通勤電車は、閉鎖空間であり、かつ、乗客同士の距離がとても近いため、新型コロナウイルスに感染するリスクがあるものと考えられます。混雑していれば尚更です。混雑した電車を利用して通勤しなければならない場所に居住する労働者から要望があれば、会社は、労働者の安全に配慮するように、例えば、時差出勤や勤務時間の短縮、テレワークを認めるなど、労働者が新型コロナに感染するリスクを抑えるようにする適切な措置をとる必要があります。
そのような労働者の要望があるにもかかわらず会社が出勤を命じた場合、それに労働者が従わずに欠勤しても、そのことを理由に解雇することや懲戒処分をすることは認められません。つまり、安全配慮義務に違反する出勤命令に対して労働者が拒否しても、それは処分の対象とはならないと考えます。また、感染リスクを考えての欠勤は、解雇や懲戒処分の客観的合理的理由にはなりません(解雇について労働契約法16条、懲戒について同法15条。なお解雇については「5 解雇」、懲戒については上のQAも参照して下さい)。
出勤をしなくてもテレワークなどで労務の提供ができる業種や業務等は多くあります。そのような業種や業務の場合、テレワークでの労務の提供を申し出ましょう。テレワークで労務を提供すれば当然賃金全額の支払いを受けることができます。会社が、テレワークで労務の提供をさせることができるにもかかわらず、それを拒否して無給休職とした場合、その休職による労務の不提供は「使用者の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)によるものとして、賃金全額の支払いを求めることができる可能性があります。少なくとも法律上の休業手当(労基法26条。直近3か月の平均賃金の60%以上)に基づく支払いは認められると考えられます。
3感染してしまった場合
- 就業規則等の給料保障の有無を確認、傷病手当金の受給を検討しましょう。
- (場合によっては)労災申請を検討しましょう。
新型コロナは、2020年2月1日から、指定感染症(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、「感染症法」といいます。)6条8項)に定められました(令和2年政令第11号第1項、令和2年政令第22号)。そして、新型コロナに罹患した場合、都道府県知事が一定の職種において就業制限をすることができます(令和2年政令第11号第3条により読み替えられた感染症法18条1項、同条2項、令和2年厚労省令第9号により読み替えられた感染症法施行規則11条2項3号、3項1号)。
そのため、労働者は、就業制限を受けた場合はもとより、感染拡大予防のために休業することが求められますから、欠勤した場合には、賃金の請求をすることができないのが原則です。また、新型コロナに感染してしまったことについて会社に責めに帰すべき事由があったとも言いがたいので、労働者から会社に休業手当(労基法26条)の支給を求めることも困難です。
もっとも、会社によっては、就業規則などに、病気で休んだ場合の賃金保障(100%保障するとか、70%保障するなど)が定められている会社もありますので、そのような制度がないかどうか就業規則などを確認してみましょう。
また、4日以上連続して業務に従事できなかった場合、健康保険法等を根拠とする傷病手当金を受給することができます。(但し、国民健康保険については、傷病手当金は条例等による自治体の任意対応とされています。今回、新型コロナに感染した被用者に対する傷病手当金の支給に要した費用について、市町村等に対して国が特例的な財政支援を行うので検討されたいとの厚労省事務連絡(令和2年3月10日付「新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給等について」)が出されていますので、お住まいの自治体に問い合わせしてみましょう。)
なお、業務中に感染した場合には、労災補償の対象となる可能性があります。これについては、次のQAをご覧下さい。
業務中に発生(業務遂行性と業務起因性が必要)した災害については、いわゆる「労災」として扱われ、労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」といいます。)に基づき、一定の補償、例えば、医療費である療養費、休業した部分に相当する休業補償を受けることができます。なお、労災保険は国が管掌する強制保険なので(同法2条、労働保険の保険料の徴収等に関する法律3条)、「うちの会社では労災の制度は使えない」ということは、原則として通用しません。
ところで、労災保険法の適用を受け補償を受けるためには、労災申請が必要となります。また、業務中に発生したと認められる必要があるので、自身の感染経路を証明することが必要となり、時間と労力がかかります。ですから、速やかな補償を受けることができない場合もあります。
速やかな補償を受けることを目的とするのであれば、4日以上連続で業務に従事できなかった場合には、労災に当たらずとも健康保険の傷病手当金を受給することができます。ですから、まずは、傷病手当金を受給することを検討しましょう。なお、国民健康保険については、前述の通り、自治体の対応によりますので、まずは問い合わせしてみましょう。
なお、新型コロナに関する労災認定について、厚労省は、①医療従事者等については原則として労災保険給付の対象となること、②医療従事者等以外であって、感染経路が特定できなくとも、㋐複数の感染者が確認された労働環境下での業務や、㋑顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務に従事する労働者については、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断するものとしています(令和2年4月28日厚生労働省労働基準局補償課長 基補発0428第1号)。医療従事者等の方で新型コロナに感染してしまった方は、労災申請をすることを勧めます。
感染症の場合、そもそも業務中に罹患したといえるかどうかが大きな争点になりえます(医療機関に従事する労働者であっても、「感染経路を証明する」ということには困難が伴います)。
通勤中であっても、どこで新型コロナウイルスを体内に取り込んだかを証明することは、容易でない可能性があります。
まずは、健康保険の傷病手当金の受給手続をとることをお勧めします。なお、事後に労災申請をすることもできますし、労災認定がなされたとしても、傷病手当金の受給とは矛盾しません。
労働者が使用者に損害の賠償をする必要がある場合は極めて限定的です。
あなたが新型コロナに感染したことは、判明するまで時間がかかるもので、また、あなた自身の努力ではいかんともし難いものです。また、自らが保菌状態であったかどうかは検査しなければわかりません。そのため、あなたが新型コロナに感染していたり、保菌者であったことについて、あなたには何の責任もないことがほとんどでしょう。ですから、あなたが会社の売上の損失補填をする必要はないものと考えられます。
4会社による自宅待機命令
- 会社に対して、賃金の全額を補償するよう求めましょう。
新型コロナは指定感染症に定められていますが、単に感染が疑われているだけの場合には、労働者に就業制限は課せられません。また、家族に感染者が出たとしても、労働者自身が感染したわけではない場合も同様です。
そのため、会社が感染疑いや家族の感染を理由として、業務命令として一方的に自宅待機を命じる場合には、使用者の責めに帰すべき事由により労働者が就労できなくなるわけですから、基本的には、給料の全額が補償されます(民法536条2項)。
もっとも、現在、新型コロナウイルス感染症が蔓延する可能性について報道されていることに鑑み、また、同僚にうつさないようにするためにも、感染が疑われる場合には、無理をせず、自主的に自宅待機をするようにしましょう。この場合には、給料の補償について会社とよく話し合い、支払ってもらうよう交渉しましょう。会社の就業規則等に有給の病気休暇制度等があれば利用するか、そういう制度がなくても年次有給休暇を利用することもできます。また、病気で4日以上休業した場合には、健康保険組合の傷病手当金の請求もできます。なお、もし会社から病院での検査を受けるよう指示を受けた場合には、病院に行って検査をしてもらって下さい。
5解雇・雇止め
- 解雇・雇止めされても、諦めなくて大丈夫です。
- 新型コロナの影響による解雇は整理解雇とされ、厳格に制限されます。
- 職場復帰をしたくない場合も解雇・雇止めに対して争う余地はあります。
- 有期雇用契約の場合、より専門的判断が必要となるので、自己判断はせず、専門家へのご相談をお勧めします。
ア 解雇が許されるかについて
使用者は労働者を自由に解雇することはできず、正当事由(客観的合理的理由と社会的相当性)が必要です。正当事由がない解雇は無効です(労働契約法16条)。
特に、新型コロナが原因で会社の経営状態に影響が出たことを理由に解雇する場合、労働者に責任はなく、使用者の経営上の理由による解雇で「整理解雇」と呼ばれており、解雇の正当性が通常の解雇よりもずっと厳格に判断される点に特徴があります。新型コロナが原因で一時的に客がいなくなったとか仕事が少なくなって売上が減った程度の理由では整理解雇することはできません。
整理解雇は以下の4つの要件(要素)で正当性が判断されています。
① 人員削減の必要性があること
② 解雇を回避するための努力が尽くされていること
③ 解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
④ 事前に使用者が解雇される者へ説明・協議を尽くしていること
具体的に説明すると、①については預貯金や借入金の状況、株主配当の状況、人件費削減・役員報酬の状況、②については、先行して希望退職者の募集など他の雇用調整手段の検討、新規採用の停止があるか、残業抑制や賃金カット、配転の検討、雇用調整助成金の利用・検討の有無、③については、解雇の対象者が使用者により恣意的に選定されるのは許されませんので、合理的な人選の基準に基づかなければなりません。男女や国籍、年齢、障害の有無や性的指向・性自認に関する観点(例えば申告している性別や就業上の性別と戸籍上の性別が違うことなどを含む)に基づいて選定することは許されません。派遣労働者やパート・有期雇用労働者等の非正規雇用労働者を正社員より先に解雇してよいかという問題がありますが、非正規雇用労働者だからといって一律に整理解雇が適法となるわけではないので、慎重に検討しなければなりません。④については、解雇の必要性や内容・補償内容等について対象者の納得を得る説明・協議の有無などが考慮されます。
これらは、工場閉鎖・会社解散の場面においても同様で、解雇が無効とされる可能性はあります。
イ 解雇を争う方法・法的手続を利用する場合の当面の生活費
弁護士に依頼したり労働組合に加入したりして解雇を争う場合の解決方法ですが、職場復帰する解決と、一定の金銭の支払を受けて退職して解決する場合の両方があります。「職場には戻れないと思うが、解雇には納得できない」という方も、解雇による様々な心理的・経済的な被害を回復するため、解雇を争う余地があります。
法的な手続を利用する場合、訴訟を行うという方法もありますが、通常の訴訟よりも短い期間で賃金の仮払いを受けることができる仮処分手続や、原則として3回の期日で行われる労働審判という手続があります。どの手続を利用するのが適切かは事案によるため、弁護士に相談してみましょう。
また、法的な手続を利用する場合の当面の生活費については、雇用保険の基本手当等の仮給付という手続を利用することが考えられます。これは仮の給付であるため、解雇無効で復職ということになれば返還が必要となりますが、解雇時に退職するという和解をした場合など返還が不要な場合もあります。
ウ 解雇予告手当について
使用者は解雇する場合、労働者に対して30日以上前に告知するか、解雇予告手当を支払う必要があります(労基法20条1項)。
もっとも、使用者が解雇予告手当を支払ったからといって、解雇が有効になるわけではありませんし、労働者が解雇予告手当を受け取ったからといって、解雇を争えなくなる訳ではありません。ただし、労働者が解雇予告手当を受領したことをもって、使用者が後から、解雇を認めたと主張してくることもあるので、使用者に対して早めに、「解雇は争う・解雇予告手当は将来の賃金として受領する」ことを伝えればより安心です。
エ 解雇するとの脅しについて
悪質な使用者は「解雇する」「解雇されると〇〇な不利益がある」等と脅かしつつ、労働者に選択肢を与えず自発的に退職届を出させる形をとって、解雇をせず退職をさせることがあります。
解雇すると言われても、絶対に自分から退職届を出したりしないように注意して下さい。なお、退職勧奨についての対応は、「7 退職勧奨」を参照して下さい。
ア 雇止め(期間満了)
契約期間が定まった労働契約の契約期間満了時に、使用者が次の契約の更新を拒絶して雇用を打ち切ることを「雇止め」といいます。
解雇と違い、雇止めの場合は予め契約で決められた期間が終了したので、労働者は争う余地がないと考えてしまう労働者が多いのですが、誤りです。
「雇止め法理」と言って、労働契約法19条は、一定の場合には、解雇の場合と同様に、雇止めに正当な理由(客観的合理的理由と社会通念上の相当性)が必要であることを規定しており、自由な雇止めはできません。
具体的には、①過去に反復して更新されたものであって、雇止めをすることが期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められる場合、または②労働者が更新を期待することについて合理性があると認められる場合、のいずれかです。
①②に当たるかどうかは、更新回数、契約の通算期間、恒常的な業務をしていたか、契約期間の管理状況、雇用継続を期待させる使用者の言動、契約書の更新に関する記載(とりわけ、いわゆる「不更新条項の有無・内容」)など、様々な事情を下に総合的に判断されるので、どの程度争う余地があるのかは専門的な判断が必要となります。使用者の対応に不満がある場合、専門家への相談をお勧めします。
とりわけ、5年を超えて労働契約を反復更新している場合、いわゆる無期転換ルール(労働契約法18条)を用いて、雇止めを回避する方法もありますので、雇止めによる期間満了を待つことなく早めのご相談をお勧めします。
また、雇止めされた場合の労働者の対応で重要なのは、必ず新たな契約更新の申込み・契約締結の申込みをしておくことです。少なくとも、雇止めに対する抗議や不満の意思は表明しておいて下さい(できれば、メール等でよいので形を残す)。
イ 期間途中の解雇
契約期間が定まっている労働契約であっても、契約期間の途中で契約を打ち切られる場合は、雇止めではなく、解雇となります。
また、この場合の解雇は、いわゆる正社員の整理解雇と比較しても、約束した契約期間の途中で契約を打ち切ることになるので、より厳格に解雇が規制され「やむを得ない事情」が必要とされています(労働契約法17条1項)。期間の定めのない雇用契約とは異なり、有期雇用契約の期間の定めは、その期間は原則として雇用を保障するという趣旨であり、余程のことがない限り、解雇することはできません。契約期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような特別の重大な事由が必要であるということです。単に「新型コロナウイルスの影響で会社の経営が厳しくなった、人がいらなくなった」とか「仕事が少なくなった」などという理由では、契約期間途中の解雇は認められません。相談のケースも、簡単には解雇は有効とは認められないので、労働者が解雇を争いやすいケースといえます。
この解雇は整理解雇にあたると考えられます。整理解雇を行うためには、労働者に事前に、解雇を行う必要性や解雇を避けるために会社としてどのようなことをしてきたかなど、説明や協議を尽くすことが会社に求められており、このような説明も何もなく朝礼でいきなり整理解雇を言い渡すことなどできません。整理解雇が有効になる場合は、上のQAで詳しく解説していますから、ご覧下さい。
6内定取消し
- 内定取消しは解雇と同じで、会社が自由にすることはできません。
- 政府は、新型コロナを理由とする内定取消しをしないよう、主要経済団体に「特段の配慮」を求めていますので、会社に通知して対応を求めましょう。
採用内定によって労働契約が成立しているため、会社は自由に内定を取り消せるわけではありません。内定の取消しは、通常の解雇同様、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められなければ無効です(労働契約法16条)。解雇については、「5 解雇・雇止め」を参照して下さい。
新型コロナによる影響とはいえ、事業の縮小を理由とする内定取消し(解雇)ですから、いわゆる整理解雇と同様の要件によって、その有効性が判断されます。具体的には、現在の会社の経営上、内定取消しをしなければならない必要性があること、使用者が内定取消しを回避する努力を行ったこと、内定取消対象者の人選が適正であること、対象者と誠意をもって協議したこと、です。
例えば、事業縮小だけを理由にした内定取消しは、他の要件を満たさない限り、無効となるものと考えられます。
また、内定取消回避の努力としては、行政や金融機関が提供している雇用維持のための支援策を利用しているか否か、雇用調整助成金の受給を検討したか否か、といった点も問題になります。
今回は、政府が主要経済団体に対し、新卒の採用内定者について「特段の配慮」を要請しています(内閣官房内閣審議官、文部科学省高等教育局長、厚生労働省人材開発統括官、経済産業省経済産業政策局長令和2年3月13日付け「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた2020年度卒業・終了予定者等の就職・採用活動及び2019年度卒業・終了予定者等の内定者への特段の配慮に関する要請について」)。具体的には、採用内定取消を防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じること、やむを得ない事情により採用内定取消又は採用・入職時期の延期を行う場合には、対象者の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、対象者からの補償等の要求には誠意を持って対応することとされています。内定取消しを通告してきた会社には、かかる政府の通知も示して安易な内定取消をしないように求めていきましょう。
7退職勧奨
- まず、単なる休業にすぎないのか、退職(離職)を求められているのか確認しましょう。
- 退職(離職)を求められている場合、解雇なのか退職勧奨にすぎないのか確認しましょう。
- 退職勧奨に応じる義務はありません。退職勧奨に応じる場合にも、有利な退職条件を交渉したり、再雇用を約束する書面の作成を求めましょう。
この場合については、「1 賃金」を参照して下さい。
会社が離職について言及している場合には、さらに、解雇なのか、退職勧奨されただけなのか、会社にはっきりさせて下さい。
解雇とは使用者側からの一方的な労働契約の解約です。これに対し、退職勧奨は、労使双方の合意による労働契約の解約を目指した使用者側からの申込み(あるいは使用者側が労働者による申込みを誘っているにすぎない場合)に過ぎません。なお、解雇であった場合については、「5 解雇・雇止め」を参照して下さい。
退職勧奨の場合、労働者には退職勧奨に応じる義務はありませんので、自分から簡単に辞めると言わないで下さい。ひとりで抗しきれない場合には、労働組合に相談したり、弁護士に相談することをお勧めします。同じように退職勧奨を受けている同僚がいれば、連携して断ることも考えられます。
もし退職勧奨を受け入れる場合にも、ただ退職するのではなく、退職金の支給を求めたり、もともと退職金が支給される場合にはその増額を求めるなど、自身に有利な条件で退職することを求めて交渉してみて下さい。
また、Qのように社長が再雇用の提案と併せて退職勧奨してくる場合もあります。まず、社長としては前述した雇用調整助成金を活用するなどしながら雇用の維持を図るべきですし、後に再雇用されずに紛争が生じる可能性がありますので、再雇用の提案に安易に応じないようにすべきです。
その上で、あなたがもし再雇用を希望して退職勧奨に応じる場合には、単なる口約束ではなく、再雇用を約束する書面を作成してもらいましょう。その際にも、単に「業績が回復したら」とか、「再雇用に努めます」といった抽象的な文言では、再雇用を拒否されても保護されない可能性があります。「‥工場が再稼働したら再雇用する」とか「○年○月○日に再雇用する」など、具体的な再雇用時の状況や時期を記載した念書を作成してもらいましょう。このような念書があれば、採用内定が出されたのと同様の保護が期待でき、会社が条件を満たしたのに再雇用しなかった場合に、内定取消の場合として保護が及ぶ可能性があります。このQ&Aの「6 内定取消し」も参照して下さい。
但し、再雇用の約束をしている場合には、下記の失業給付金の受給資格である「失業」の状態にないと判断され、失業給付金が受給できないおそれがあります。そこで、離職している間の生活保障についても併せて交渉しておくべきですし、やはりそもそも再雇用の提案に応じることには慎重であるべきといえるでしょう。
なお、退職して離職票を作成してもらう際には、「自己都合」ではなく、必ず「会社都合」としてもらいましょう。自己都合退職としてしまうと、失業給付金の支給開始日や支給日数等に違いが出ますから、注意して下さい。
[参考]失業保険の概要
雇用保険は5人未満を雇用する農林水産業を除き、労働者を雇用している全ての事業に適用されます。事業主が届出や保険料納付を怠っていても支給の要件を満たせば、雇用保険給付を受けることができます。
ア 受給資格
イ 受給の要件
ハローワークに出向き、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあることが必要です。
ウ 基本手当の支給開始時期
ハローワークにおいて、求職申込みを行った後、7日間(待機期間)経過後からの支給となります。自己都合により退職した場合は、7日間の他に3ヶ月の待機期間が入ることになるので注意して下さい。
エ 基本手当の額、給付日数
基本手当の日額は、原則として、賃金日額(最後の6ヶ月間に支払われた賃金総額(残業代は含まれますが、賞与・退職金は含まれません。)を180で割った金額)の50~80%となります。
基本手当の給付日数は以下の表のとおりです。
※必ず、受給資格要件(アに記載)を確認してください。
オ 受給の手続
事業主は被保険者が離職したときは、離職証明書、離職票に離職理由や賃金支払状況などを記載して、離職者本人に確認の署名・押印を求めてきますので、記載事項(離職理由によっては待機期間が長くなりますし、賃金の記載に誤りがあると受給額が少なくなってしまう可能性がありますので、チェックは重要です。)に誤りがないかを確認して、署名・押印して下さい。
その後、事業主は離職証明書、離職票をハローワークに提出し、ハローワークは、離職票に必要事項を記載のうえ、事業主に交付します。
離職者は、事業主から離職票を受け取り、ハローワークに離職票を提出して、求職の申込みをして、受給の手続を行います。
申込みに当たっては、雇用保険被保険者証、写真、印鑑、住民票、預金通帳を持参することが必要となりますので、併せて準備するようにして下さい。
カ 参考ホームページ(ハローワークインターネットサービスHP)
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_guide.html
8残業・長時間労働
- 使用者は労働者に対して安全配慮義務を負い、長時間労働を是正する義務があります。緊急時の対応だからこそ、労働者の負担への配慮が必要です。
- 1日8時間・週40時間が労働時間の原則です
- 36協定の有無と上限規制の内容(「限度時間」「特別条項」)が遵守されているかを確認しましょう。
- 長時間労働を是正させるためには、客観的な労働時間の把握が必要です。
新型コロナの影響で、人手不足や業務量が増大している職場もみられます。もっとも、使用者は安全配慮義務として、労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負っています(労働契約法5条、労働安全衛生法3条1項)。
そして、労働者の担当する業務が、例えば医療、介護、マスクなど医療器具の製造など社会的に強い要請がある業務であろうと、使用者は労働者に対して安全配慮義務を果たす義務があります。
とりわけ、新型コロナへの対応のような緊急時の対応は、労働時間だけではなく、業務に過度な緊張感やストレスにより、労働者には重い負担が生じやすいため、数多くの労働災害(公務災害)が発生していることも忘れてはなりません。使用者は、その点をも考慮して、緊急事態だからこそ、労働者の健康状態には慎重な配慮が求められます。
労働基準法では、使用者に対して、休憩を除き労働者を1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないと定めています(労働基準法32条)。これを超えて使用者が労働者に残業を命じるには、法律で定められた手続をとった「36協定」を作成し、これを所轄の労基署に届け出ることが必要です。
ですが、職場によってはそもそも36協定が締結されておらず、または締結したつもりであっても法律が定める手続(例:過半数代表者の選任など)が適切に守られていない場合が多くあります。
そういった場合、使用者は1日8時間または1週40時間を超えて労働者を残業させることはできませんので、まずは36協定が存在するのか、確認をしてみて下さい。
また、残業の事由は、36協定において具体的に定められている必要があります(例:「納期に完納しないと業務に重大な支障を起こす恐れのある場合」)。そのため、あなたの会社において、そのような要件を満たしていない、あるいは定められた残業の事由に該当する事情がないということであれば、会社は労働者に対して残業を命じることはできません。
36協定を締結した場合でも、許される時間外労働の上限は、原則として月45時間、年間360時間(休日労働は含まず)に制限されています(「限度時間」と呼ばれます(労働基準法36条3項及び同条4項。大企業は2019年4月1日施行、中小企業は2020年4月1日施行)。
さらに、この限度時間を超えて時間外労働を行わせることも、使用者は一定の場合には許されていますが、そのためには予見できない事情の発生により臨時的に限度時間を超え時間外労働を行わなければならない特別な事情がある場合でなければならず、そのことをあらかじめ36協定にも定めねばなりません(「特別条項」と呼ばれます)。さらに、特別条項がある場合でも、上限時間数が細かく定められています(労働基準法36条5項)。
会社があなたに命じることができる残業は、36協定の中で定められた上限時間(しかも、定めることができる残業時間の上限は法律で決まっています。)の限度での残業にとどまります。
仮に上限内の残業であっても、安全配慮義務を尽くすため労働時間を調整する必要もありますので、是正を求めることができます。
使用者に対してそういった是正をさせるために重要なのは、まずは使用者に正確に労働時間を記録させることです。通達で、使用者は、「客観的なタイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として 確認し、適正に記録すること」が求められています(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」平成29年1月20日基発0120第3号)。また、近時の法改正により、医師の面接指導実施のため、使用者の労働時間把握義務(労働安全衛生法66条の8の3)としても、同様に客観的な方法での労働時間把握が義務づけられました。まずは、労働時間が正確に把握されているのか(持ち帰り残業も含む)を確認して、きちんと1分単位で正確に記録をさせるように求めることが重要です。
労働時間の上限規制を守らない、残業代支払いを渋るなどの使用者は、労働者に正確な労働時間を正確に記録させないように圧力をかけたり、業務負担は軽減せずに早く帰ることだけを強要したり(結果として、自宅への持ち帰り仕事で労働時間が増える)することも多いです。
使用者から与えられた仕事が終わらず自宅へ持ち帰ってやった業務でも、基本的には労働時間になることも覚えておき、しっかりと労働時間を記録して自衛措置をとっておいて下さい。在宅勤務を命じられた場合も同様です。
長時間労働の是正は、労働者が一人だけで声を挙げても実現するのは難しいでしょうし、使用者から報復的な措置をとられるリスクもあります。職場に労働組合があれば職場の労働組合を通じて、ない場合であっても職場一人だけでも加入できる労働組合が全国各地にあります。新たに職場に労働組合をつくり是正を求めることも可能ですので、ぜひご検討下さい。
とはいえ、既に長時間労働でお悩みの方は、弁護士など専門家に相談する時間を確保する余裕もないかもしれません。日本労働弁護団は全国各地で、無料・電話の相談も常時対応していますので、まずは気軽にお電話で状況をご相談下さい。職場の状況等に応じて、できるだけ適切な労働組合をご紹介するなどの対応も可能です。
詳しくは、末尾の「」をご覧ください。
9休暇
- 労働基準法で定められた年次有給休暇とは異なる特別な有給休暇(以下、「特別休暇」といいます。)を取得できるよう、会社に求めましょう。
- 特別休暇がない場合でも、年次有給休暇を取得することができます。
- 理由を告げて欠勤することでも問題ありません。
- 学校の一斉休校のために子どもの監護の必要があるという理由を告げて欠勤した場合には解雇・雇止めは認められません。
ア 特別休暇制度
新型コロナの感染拡大防止のため学校が一斉休校になり、それに伴い保護者である労働者が会社を休まなければならない場合には、有給の特別休暇を取得することができるよう、会社に求めましょう。会社に労働組合がある場合には労働組合を通して、ない場合には同僚の方と一緒に求めていくと良いでしょう(会社に労働組合がない場合については、「2 感染予防」の記述を参考にして下さい)。
ところで、国は有給の特別休暇制度の導入を推奨しており、臨時休業した小学校や特別支援学校、幼稚園、保育所、認定こども園などに通う子どもを世話するために、2020年2月27日から同年6月30日の間に従業員(正規・非正規を問わず)に有給の特別休暇を取得させた会社に対し、休暇中に支払った賃金全額(1日8,330円が上限)を助成するとしています(「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」・労働者個人が国から直接給付を受けられるわけではないので、注意して下さい)。
また、2020年2月27日から同年6月30日までの間に特別休暇を取得できず、その期間後に特別休暇を取得することが認められた場合、遡ってその期間内に特別休暇を取得したことと対応するよう、会社に求めましょう。
イ 年次有給休暇
会社が特別休暇として対応してくれなかったとしても、労働者は、年次有給休暇を自由に取ることができます(労働基準法39条5項本文)。
年次有給休暇を取得する場合には、休む理由を会社に告げる必要はありません。また、労働者が年次有給休暇を取得する日を指定した場合には、会社は基本的にその日を変更することはできません。会社が年次有給休暇日を変更できるのは、事業の正常な運営を妨げる場合だけで(労働基準法39条5項但書)、認められるケースは稀です。
ウ 欠勤
会社が特別休暇として対応してくれなかったり、年次有給休暇の残日数がない場合には、学校の一斉休校によりお子さんの面倒を見る必要があるため休まざるを得ないことを会社に告げた上で欠勤しましょう。なお、年次有給休暇の残日数があっても、労働者がこれを使う義務はありませんし、労働者が年次有給休暇を取得しないことを理由として、会社が労働者を解雇するなどの処分をすることはできません。
また、次に述べるとおり、会社は欠勤を理由に労働者を解雇することもできません。
就業規則の解雇事由には「欠勤が何日に及んだとき」などと記載されている場合がありますが、形式的にこれに該当しても、解雇には客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。
私生活との調和の観点から、休校によりお子さんを監護しなければならずに欠勤する場合には、会社に連絡していれば解雇の客観的合理的理由はありませんので、解雇することはできません。
契約社員などの労働契約の期間に定めがある労働者が次回の更新を拒絶される場合(雇止め)においても同様です。解雇・雇止めの詳細は、「5 解雇・雇止め」を参照して下さい(なお、派遣社員の方は、「12 派遣社員」の項目をご覧下さい)。
会社の対応は、妊娠中の女性労働者に対する配慮、安全配慮義務の観点から、許されない対応です。
使用者には、労働者の就労環境に配慮する義務があります(労働契約法5条)。そのため、使用者には、妊娠中の労働者の要望に応じて、休暇を取得させたり、柔軟に欠勤を容認することが求められます。
妊娠している女性労働者に対しては一層の配慮が求められます。厚生労働省は、一般的に妊娠中に肺炎を起こした場合、妊娠していない時に比べて重症化する可能性が指摘されていること、新型コロナ感染に対して不安を感じる場合もあることを踏まえて、「省をあげて妊婦の方々の安心・安全の確保に全力を尽くす」として、経済団体に向けて、妊娠中の女性労働者が休みやすい環境の整備、感染リスクを減らす観点からのテレワークや時差出勤の積極的な活用促進を要請しています(令和2年4月1日付 厚生労働省健康局長等「職場にける新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について」)。
更に、事業主は、2021年1月31日までの間、その雇用する妊娠中の女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき、当該女性労働者の作業等における新型コロナに感染するおそれに関する心理的なストレスが母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師等によりこれに関して指導を受けた旨の申出があった場合には、当該指導に基づき、作業の制限、出勤の制限(在宅勤務又は休業)等の必要な措置を講じ、また、事業主は、医師等による指導に基づく必要な措置が不明確である場合には、担当の医師等と連絡を取りその判断を求める等により、作業の制限、出勤の制限等の必要な措置を講ずる必要があります(男女雇用機会均等法13条2項、「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」2⑷を追加して、2020年5月7日から実施予定)。
したがって、欠勤する場合、感染リスクを避けるためにやむを得ないことを使用者に伝えましょう(メールなどで形を残しておくことが重要です)。さらに、主治医に頼んで「母性健康管理指導事項連絡カード」に感染リスクやそれに対する不安を避けるために出勤を避けるべきという医師の指導を記入してもらい、このカードを使用者に見せて医師の指導に基づく措置を講じるよう伝えてから休みましょう。
こういった手順を踏んで労働者が欠勤したことを理由にして、使用者が当該労働者を解雇することは許されませんので、安心して下さい(上のQAもご参照ください)。
10時差出勤・テレワーク
- 時差出勤を労働者の合意なく一方的に命じることは原則としてできません。
- 他方で、会社は、労働者の要望がある場合には、安全配慮義務として、必要な範囲で時差出勤を認めなければなりません。
- 正社員に時差出勤を認めつつ、非正規社員に認めないことは原則として許されません。
- テレワークについても、会社が業務内容を指示し、情報通信機器が常時通信可能な状況においている場合には、事業場外みなし制は適用されず、会社は残業代を支払わなければなりません。
始業時刻、終業時刻は、賃金など他の労働条件と同じく、労働契約によって決まるものです。ですので、始業時刻や終業時刻を変更する時差出勤についても、会社が一方的に命じることはできません。労働者との合意が必要です(労働契約法8条)。
なお、会社によっては、就業規則に「始業・終業の時刻及び休憩時間は、次のとおりとする。ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は 繰り下げることがある。」という定めを置いている場合があります。このような定めがある場合でも、会社は、「やむを得ない事情」がなければ、始業時刻・終業時刻を変更することはできません。新型コロナの感染予防のために求められている時差出勤は、労働者を感染から守ることが第一義的な目的ですので、一方的に時差出勤を命じることができるほどの「やむを得ない事情」が会社側にあるといえるか疑問です。また、会社には、個々の労働者の事情に応じて配慮が求められますので、帰宅が遅くなることによる負担が生じないか労働者に確認のうえ配慮する必要があります。
使用者には、労働者の健康等について、安全配慮義務があります(労働契約法5条参照)。
朝の通勤電車は、閉鎖空間であり、かつ、乗客同士の距離がとても近いため、新型コロナウイルスに感染するリスクがあるものと考えられます。労働者が新型コロナウイルスに感染しないようにするため、会社は、労働者の要望に応じて、できる限り時差出勤を認めるべきでしょう。
旧労働契約法20条や旧短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)8条は、労働契約の期間に定めがあったり、労働時間が短時間であるいわゆる非正規雇用労働者について正社員との間で不合理な労働条件の相違を設けてはならないと定めています(大企業には2020年4月、中小企業には2021年4月より短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期法)8条・9条が適用され、不合理な待遇の相違が禁止されます)。
時差出勤の目的は、「労働者を感染から守る」ことにあります。感染防止の必要性は、正社員であろうが、非正規であろうが変わりません。会社に対して、非正規にも時差出勤を認めるように求めるべきです。労働者の感染防止の必要性に変わりがない以上、非正規労働者にだけ時差出勤を認めない取扱いは不合理というべきです。
事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法38条の2)の適用は厳格に判断され、簡単に認められるものではありません。
事業場外労働みなし労働時間制は、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事し、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間など一定時間労働したものとみなす制度ですが、この「労働時間を算定し難いとき」という要件は厳格に解されています。情報通信技術が発達した現代においては、携帯電話やインターネットにおいて、事業場外における労働者の勤務状況を把握することは容易だからです。テレワークについて、解釈通達(平成16年3月5日基発0305001号)は、①在宅業務が私生活を営む自宅で行われ、②情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされておらず、③在宅業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われるものではない、という3つの要件を全て満たす場合にだけ事業場外労働みなし労働時間制が適用されるとしています。テレワークにおいても、②情報通信機器が常時通信可能な状況におかれ、③会社が業務内容を具体的に指示している場合が殆どです。その場合には「労働時間を算定し難いとき」にはあたりません。
そして、テレワークを実施する場合にも労働基準法が適用されることは当然です。そして、会社は、労働時間を適正把握する義務があり、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日厚生労働省策定)に基づいて適切に労働時間管理をしなければなりません。
11ハラスメント
- 顧客等からのハラスメントに対しても、使用者は対応が必要です。顧客からのハラスメントを受けたら、会社や労働組合に相談しましょう。
- 新型コロナの感染者が多く出ていることを理由として、国籍・出身地等による差別は許されません。
会社には、労働者がその生命身体等の安全を確保しつつ働くことができるよう、環境整備する義務が課せられています(労働契約法5条)。
のような電話は、いわゆる「カスタマーハラスメント」に当たります。同じ人が繰り返しかけてくる場合や、社会情勢に鑑みて労働者に負担がかかることが容易に予想できる場合には、使用者は労働者に対する安全配慮義務として具体的なカスタマーハラスメント対策のための体制整備をする必要があります。たとえば、社内で対応マニュアルを作成して労働者に周知したり、労働者用の相談窓口を設けるなどの労働者に対するフォローをする体制を整えることが考えられます。まずは、会社や労働組合に相談して下さい。なお、2020年6月1日から大企業に対して施行される労働政策総合推進法に基づく指針「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)において、顧客等によるハラスメントについて、相談体制の確保、被害者への配慮、被害防止の取組が望ましい措置として挙げられています(同指針第7項)。
あなたの出身国・出身地・国籍やルーツを有する国や地域に感染者が多かったとしても、それはあなたの感染を疑う理由にはなりません。あなたの受けている扱いは国籍や出身地に基づく差別ですから、許されないものです(なお、労働基準法3条参照)。差別に対しては、使用者が許さない、という姿勢を明確に示すことが重要です。社内外に相談窓口があれば、その窓口や、労働組合に相談して、使用者に働きかけ、直ちに差別行為をやめさせましょう。
12派遣
- 有期派遣労働契約の契約期間中に解雇された場合、期間満了までの賃金を派遣元事業主に請求することができます。
- 有期派遣労働契約の契約期間満了後に更新をされなかった場合、契約更新を求めて粘り強く交渉しましょう。派遣元事業主に対して雇用安定措置を取ることを求めることができます。
- 有期派遣労働契約の派遣労働者は、派遣元事業主・派遣先の労働者との間の不合理な待遇の是正を要求できます。
有期の(期間の定めのある)派遣労働契約の場合、「やむを得ない事由がある場合でなければ、」契約期間途中に解雇することはできません(労働契約法17条1項)。この「やむを得ない事由」は正社員に対する通常の解雇(労働契約法16条)よりも厳格な要件だと解されています。期間の定めのない雇用契約とは異なり、有期雇用契約の期間の定めは、その期間は原則として雇用を保障するという趣旨であり、余程のことがない限り、解雇することはできません。契約期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了せざるを得ないような特別の重大な事由が必要であるということです。単に「新型コロナの影響で会社の経営が厳しくなった、人がいらなくなった」とか「仕事が少なくなった」などという理由では、契約期間途中の解雇は認められません。
有期の派遣労働契約の場合、仮に同じ派遣先での就労で派遣労働契約を反復更新していたとしても、労働契約法19条の雇止め濫用法理が適用されて雇用が維持されるかというと、現在の裁判所の判断では厳しいものがあります。しかし、派遣労働者や労働組合としては、新型コロナの影響があるというだけで「派遣切り」が許されていいということにはならないので、雇用調整助成金等の制度を利用しながら雇用をつなぐように粘り強く交渉していきましょう。
「特定有期雇用派遣労働者等」に該当する派遣労働者に対しては、派遣元事業主は「雇用安定措置」を取るべき努力義務や措置義務がありますので(労働者派遣法30条1項各号ないし2項、派遣規則25条等)、それを利用して交渉しましょう。
㋐特定有期雇用派遣労働者とは、「同一の組織単位の業務に1年以上派遣される見込みがあり、派遣終了後も継続就業を希望している者」をいい、㋑派遣元事業主での雇用通算期間が1年以上の有期雇用派遣労働者(登録状態にある者も含まれる)も㋐と合わせて「特定有期雇用派遣労働者等」といいます。
派遣元事業主は、㋐の特定有期雇用派遣労働者に対して、次の4つの雇用安定措置を取るべき努力義務が課せられています(労働者派遣法30条1項各号)。すなわち、①派遣先に対する直接雇用の依頼(1号)、①を求めても直接雇用されない場合でも、②新たな派遣先の提供(2号)、③派遣元事業主での直接無期雇用(3号)、その他の雇用安定を図るため必要な措置(4号)(例えば、新たな就業の機会を提供できるまでの有給の教育訓練や紹介予定派遣(職業紹介事業者の場合)等)を求めることができます。
そして、上記㋑の派遣労働者に対しては、派遣元事業主は雇用安定措置のうち①・③・④の措置を取るべき努力義務があります。
さらに、㋐の特定有期雇用派遣労働者の中で、「同一の組織単位の業務について3年間従事する見込みがある者」については、上記4つの雇用安定措置を講じるべき措置義務があります(労働者派遣法30条2項、派遣規則25条の2第2項)。
また、派遣先にも、「同一の組織単位の業務に同一の派遣労働者を1年以上受け入れたときは、」派遣期間経過後も同一の業務のために労働者を雇用するときは、当該派遣労働者を遅滞なく雇用する努力義務があり(労働者派遣法40条の4)、その事業所で通常の労働者(正社員)を募集するときは、それを当該派遣労働者に周知しなければなりません(同法40条の5第1項)。
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート有期法)8条(旧労働契約法20条、旧パートタイム労働法8条)及び労働者派遣法30条の3第1項は、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間、派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間の不合理な労働条件の相違をそれぞれ禁止しています。派遣元事業主の正社員が認められている子どもの面倒を見るための特別な休暇は、労働者が経済的に困ることなく子の世話をできるようにするという趣旨・目的で付与されるものですから、有期雇用派遣労働者と正社員とで異なる扱いをする合理的な理由を見出すことは困難です。
また、テレワークや時差出勤にしても、できるだけ通勤や事業場での就労による感染を予防して労働者の生命・健康を守るという趣旨・目的で行われるものですから、正社員も非正規雇用労働者も違いはありません。派遣労働者にだけ時差出勤を認めないのは違法ですし、派遣労働者が派遣元事業主や派遣先の正社員と同じようにテレワーク(自宅勤務)が可能な業務についているにもかかわらず、派遣労働者にだけ認めないのは合理的な理由がなければ違法となります(パート・有期法8条、改正労働者派遣法30の3第1項)。したがって、派遣元事業主に対して、正社員と同様の扱いをするよう求めることができるといえます。
13公務員
- 国家公務員(一般職)は、常勤・非常勤の区別なく、特別休暇を取得できる場合があります。
- 地方公務員(一般職)は、総務省が各地方公共団体に対して、国家公務員(一般職)における特別休暇取得の基準を参考に適切に対応することを要請しているため、これをもとに有給休暇取得を要求しましょう。
- 教職員は、文部科学省が出している「新型コロナウイルス感染症対策のための小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業に関するQ&A」を参考に要求を行いましょう。
総務省の通知(令和2年3月1日職職―104)は、「特別休暇」に関して「当分の間、職員が次に掲げる場合に該当するときは、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第17号の休暇(非常勤職員にあっては、人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)第4条第1項第4号の休暇)に規定する出勤することが著しく困難であると認められる場合と取り扱って差し支えない。」とした上で、以下の3つを挙げています。
「1 新型コロナウイルス感染症を検疫法第三十四条の感染症の種類として指定する等の政令(令和2年政令第28号)第3条において準用する検疫法(昭和26年法律第201号)第16条第2項に規定する停留(これに準ずるものを含む。)の対象となった場合
2 職員又はその親族に発熱等の風邪症状が見られることから、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針(令和2年2月25日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等を踏まえ、勤務しないことがやむを得ないと認められる場合
3 新型コロナウイルス感染症対策に伴う小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等の臨時休業その他の事情により、子の世話を行う職員が、当該世話を行うため勤務しないことがやむを得ないと認められる場合」
簡単にまとめると、①検疫法に基づく停留(これに準ずるものも含む)の対象になった場合、②職員またはその親族に発熱等の風邪症状がみられることから勤務しないことがやむを得ないと認められる場合、③一斉休校のために子の世話を行う親が勤務しないことがやむを得ないと認められる場合のいずれかに該当すれば、「特別休暇」という有給の休暇を取得することができます。
上記のいずれかに該当する場合には、各省各庁の長の承認(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第21条、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第27条)を得ることで、「特別休暇」(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第19条、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項17号)を取得できるため、給与の減額はありません(一般職の職員の給与に関する法律第15条)。
総務省の通知(令和2年3月1日職職―104)は、「当分の間、職員が次に掲げる場合に該当するときは、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第17号の休暇(非常勤職員にあっては、人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)第4条第1項第4号の休暇)に規定する出勤することが著しく困難であると認められる場合と取り扱って差し支えない。」と非常勤職員も対象にしています。
どのような場合に有給の休暇の取得できるかについては、常勤の職員と同じ3つの場合となります(上のQAを参照)。
これら3つのいずれかに該当する場合には、各省庁の長の承認(一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第23条、人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)第4条3項)を得た場合には、有給の休暇(人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)第4条1項4号)を取得できます。
地方公共団体においては、総務省の令和2年3月1日付け通知(総行公第34号)及び総務省の令和2年3月5日付け通知(総行公第41号)により、国家公務員(一般職)に対する取扱いを参考に、常勤の地方公務員(一般職)の休暇取得について適切に対応することが要請されています。そのため、地方公共団体が有給休暇の取得について未対応の場合には、国家公務員(一般職)が有給の休暇を取得できる場合(上のQAを参照)と同様の基準で有給の休暇を取得できるように要求することが重要です。一人で要求することもできますが、職員団体等を通じて要求する方がよいでしょう。
総務省の令和2年3月1日付け通知(総行公第34号)は、各地方公共団体に対して、新型コロナウイルスが疑われる場合などの有給休暇取得について国家公務員(一般職)を参考にすることを要請していますが、国家公務員(一般職)は常勤・非常勤で有給休暇の取扱いを分けていません(上のQAを参照)。
また、総務省の令和2年3月5日付け通知(総行公第41号)では、「各地方公共団体の制度においても、国家公務員と同様に、常勤・非常勤を問わず、「有給」の取扱いとするとともに、休暇の取得について配慮をいただきたいこと」と常勤・非常勤で有給休暇の取扱いを分けないことを明記しています。
これらの通知をもとに、国家公務員(一般職)が有給の休暇を取得できる場合(上のQAを参照)と同様の基準で有給の休暇を取得できるように要求することが重要です。一人で要求することもできますが、職員団体等を通じて要求する方がよいでしょう。
放課後児童クラブでの業務も教職員の教育活動等の一環とされており、学校が、教職員に対して、児童の対応を命ずることは可能と考えられています(文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課「新型コロナウイルス感染症対策のための小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業に関するQ&A」(以下「一斉臨時休業に関するQ&A」といいます。)問23参照)。
しかし、放課後児童クラブの業務は、正規の勤務時間を超えて勤務させることができる4つの場合(いわゆる「超勤4項目」)の①校外実習その他生徒の実習に関する業務、②修学旅行その他学校の行事に関する業務、③職員会議に関する業務、④非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務には該当しないと考えられます(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法第6条1項、公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令2号、「一斉臨時休業に関するQ&A」問23参照)。
したがって、学校は、教員に対して、放課後児童クラブでの児童の対応を正規の勤務時間を超えて命じることはできません。
放課後児童クラブでの業務も教職員の教育活動等の一環とされており、学校が教職員に対して、児童の対応を命ずることは可能と考えられています(「新型コロナウイルス感染症対策のための小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業に関するQ&A」問23参照)。
そのため、放課後児童クラブに携わっているときに怪我をした場合、公務災害として療養補償の対象になる可能性があります(地方公務員災害補償法第26条等)。
また、地方公共団体は、教員に対して、その生命及び健康等を危険から保護するように配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っています。教員の怪我の原因が、学校の安全対策の欠如にある場合には、安全配慮義務違反があったとして、地方公共団体に対して、国家賠償法1条に基づく慰謝料などの損害賠償請求をすることが考えられます。
文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課の「新型コロナウイルス感染症対策のための小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業に関するQ&A」(以下、「一斉臨時休業に関するQ&A」といいます。)問25は、「学校現場で任用されている非常勤講師、学校用務員、給食調理員等や補助金事業により配置される職員等が今回の臨時休業に伴って報酬が支払われなくなるのではないか。」という問いですが、以下の回答がされています。
「授業がない場合であっても、休業中の学校においては引き続き、非常勤講師については授業準備、年度末の成績処理や児童生徒の家庭学習の支援、学校用務員の場合は学校施設の修繕、給食調理員の場合は給食調理場等の清掃、消毒、寄宿舎の職員の場合は寄宿舎の清掃、消毒、特別支援教育支援員の場合は教材準備の補助、次年度に向けた引継ぎなどの業務を行うことが考えられます。また、補助金事業により配置される職員等についても休業期間中もなんらかの業務に携わることが可能であると想定されるところです。このため、各教育委員会及び各設置者において、当該非常勤講師等の任用形態や学校の運営状況等、補助金事業により配置される職員についてはその補助目的を踏まえながら、適切な対応をお願いしたいと考えています。」
このように、文部科学省は、休校中であっても何らかの業務があることから、当該業務を行うことで報酬を支払うことが要請されています。
そのため、教育委員会や設置者に対して、「一斉臨時休業に関するQ&A」問25をもとに、何らかの業務を行わせること及び報酬の支払いを求めるべきでしょう。要求をする際には、職員団体等を通じて要求をすると良いでしょう。
14フリーランス
- 仕事のキャンセルについての取り決め(契約書やメールのやり取り)を確認しましょう。
- 政府から、フリーランスとの契約を変更する場合には、取引の相手方である個人事業主・フリーランスと十分に協議した上で、報酬額や支払期日等の新たな取引条件を書面等により明確化するなどの要請があるので、報酬請求のときに併せて活用しましょう。
- フリーランス向けの政府支援策(学校休校による休業に対する支援等)があるので、活用できるか確認しましょう。
(1)仕事のキャンセルについて契約書等において取り決めがある場合
仕事のキャンセルは、原則として、締結している契約の取り決めにしたがって対応することになります。そのため、キャンセルの時期にしたがってキャンセル料を請求していくことが原則になります。その場合、コロナウイルスの影響とはいえ、依頼者からのキャンセルになりますので、依頼者の都合によるキャンセルを基礎にキャンセル料の請求をしていくのが原則になります。
この点に関しては、契約条件の変更と関連して政府からの要請がありますので(詳細は後述。)、下請法、独禁法の趣旨に照らして一方的に条件変更は控え適正な対応が求められることになっています。
(2)政府からの要請
(https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200310007/20200310007.html)
事業基盤が弱く、収入の減少が生活基盤の悪化に直結しやすい個人事業主・フリーランスに対する影響を最小限とするため、発注事業者に対して、取引上の適切な配慮を行うよう、経済産業大臣、厚生労働大臣、公正取引委員会委員長が連名で関係団体を通じ、以下の要請がなされています(令和2年3月10日20200309経第1号、厚生労働省発雇均0310第4号、公取企第25号)。
・新型コロナウイルス感染症の拡大防止やそれに伴う需要減少等を理由に、個人事業主・フリーランスとの契約を変更する場合には、取引の相手方である個人事業主・フリーランスと十分に協議した上で、報酬額や支払期日等の新たな取引条件を書面等により明確化するなど、下請振興法、独占禁止法及び下請代金法等の趣旨を踏まえた適正な対応を行うこと
・新型コロナウイルス感染症により影響を受けた個人事業主・フリーランスが、事業活動を維持し、又は今後再開させる場合に、できる限り従来の取引関係を継続し、あるいは優先的に発注を行うこと
・個人事業主・フリーランスから、発熱等の風邪の症状や、休校に伴う業務環境の変化を理由とした納期延長等の求めがあった場合には、取引の相手方である個人事業主・フリーランスと十分に協議した上で、できる限り柔軟な対応を行うこと
(3)政府による支援策
ア 持続化給付金
新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年1月~12月のうちのひと月について、売上が前年同月比で50%以上減少している法人や個人事業主(フリーランスを含む)等に対して、事業継続のための持続化給付金が支給されます。給付額は、法人が200万円、個人事業主が100万円(ただし、前年総売上からの減少分が上限)です。
5月1日から申請受付が開始されました。申請の必要事項等、申請要領の詳細は経済産業省ホームページ()をご覧下さい。
イ 無利子・無担保融資
新型コロナウイルス感染症の影響により、資金繰りに苦しむ事業者(フリーランスを含む)を対象に、運転資金及び設備資金を実質的に無利子・無担保で融資する制度が用意されています。
民間金融機関からの融資に際して政府系金融機関が100%の信用保証を行う制度(「セーフティネット保証4号」、「同5号」、「危機関連保証制度」)のほか、政府系金融機関による融資制度(「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「危機対応融資」、「小規模事業者経営改善資金融資(通称マル経)」の特例措置)があり、原則として、1か月の売上高が前年同時期比5%以上減少している個人事業主(事業性のあるフリーランス含み、小規模に限る)であれば、実質的に無利子・無担保による融資を受けることができます。
民間金融機関からの信用保証付融資については最寄りの民間金融機関又は信用保証協会、新型コロナウイルス感染症特別貸付及び小規模事業者経営改善資金融資については最寄りの日本政策金融公庫(沖縄振興開発金融公庫)、危機対応融資については商工中金相談窓口(0120⁻542⁻711)へお問合せ下さい。
詳しくは、経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdfをご覧下さい。
ウ 小学校休業等対応支援金
個人で就業する予定であった方にも、業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われており、契約において業務従事や業務遂行の態様、業務の場所・日時等について、発注者から一定の指定を受けているなどの所定の要件を満たす場合に支援を実施することとし、2020年2月27日から6月30日までの間に、臨時休業した小学校等の子の保護者が子の世話を行うために就業できなかった日数に応じて定額(4,100円/日)を支給することとされています。
エ 納税猶予・減免
2020年2⽉以降、収⼊が減少(前年同⽉⽐▲20%以上)したすべての事業者について、 無担保かつ延滞税なしで納税を猶予する制度があります。対象税目は、法人税や消費税、固定資産税など、基本的にすべての税となっています。
これまでは特例で、⼀定の期間(原則1年)、⼤幅な⾚字が発⽣した場合に納税を猶予するという制度がありましたが、原則、担保提供が必要で、軽減はなされるものの、延滞税は免除されませんでした。しかし、今回の制度では、2020年2⽉から納期限までの⼀定期間 (1か月以上)において、収入が減少(前年同期⽐概ね20%以上)した場合、担保提供や延滞税の負担なしで、1年間の全ての費目の納税を猶予するというもので、制度の大幅な変更がなされています。
フリーランスも本制度の適用対象となっています。
(4)「労働者」に該当する場合もありうる
なお、フリーランスの方でも労働者として評価される場合があります。
「労働者」に当たるか否かは、契約の形式ではなく、実態から判断されます。そのため、契約書上、「業務委託契約」や「請負契約」等という形式であったとしても、労働基準法上や労働契約法上の「労働者」であると判断される可能性があります。仮に、労働者と判断されれば、このQ&Aで述べてきたような、あらゆる労働法上の保護を受けられることになります。
「労働者」と判断されるか否かは法律的な判断ですから、働き方の詳細を確認する必要がありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。
15生活支援
- 生活費や住居費などに対する各種の支援策が実施されています。
- 日々更新されているので、最新の情報を取得するようにしましょう。
(1)特別定額給付金
5月1日から1人につき一律10万円の特別定額給付金の支給が始まりました。
給付対象者は、2020(令和2)年4月27日に、住民基本台帳に記録されている人全員です。受給権者は、その人の属する世帯の世帯主となります。郵送やオンラインでの申請が可能となります。受付及び給付開始日については、お住いの市区町村にご確認ください。(2020年4月21日現在)
(2)生活福祉資金貸付制度
各都道府県社会福祉協議会では生活に必要な資金貸付を行う生活福祉資金貸付制度を実施しており、新型コロナの影響を踏まえて、貸付の対象世帯を低所得世帯以外に拡大するなど、緊急小口資金等の特例貸付を実施しています。
新型コロナの影響を受け、休業等により収入減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のために貸付を必要とする世帯に対しては、学校等の休業、個人事業主等の特例の場合20万円、その他の場合10万円を上限として貸付を実施しています(緊急小口資金)。
また、新型コロナの影響を受け、収入減少や失業等により生活に困窮し、日常生活の維持が困難となっている世帯に対しては、単身月15万円、2人以上月20万円を上限に貸付を実施しています(総合支援資金)。
いずれも無利子で保証人も不要です。制度の詳細は地元の社会福祉協議会にお問い合わせ下さい。
(3)公共料金(水道料金・下水道使用料等、電気料金、ガス料金、電話料金、NHK受信料)の支払猶予
ア 政府からの支払猶予の要請
2020年3月18日、新型コロナウイルス感染症対策本部で、電気料金等の公共料金(上水道・下水道、NHK、電気、ガス及び固定電話・携帯電話の使用料)の支払いが困難な事情がある者に対しては、その置かれた状況に配慮し、支払い猶予等、迅速かつ柔軟に対応するよう要請がされました。
イ 水道料金・下水道使用料等
① 水道料金
厚生労働省から水道事業者に対して、「各水道事業者におかれましては、「生活困窮者自立支援制度担当部局との連絡・連携体制の構築等について」(平成31年3月29日付薬生水発0329第1号。厚生労働省医薬・生活衛生局水道課長通知)等に基づき、生活困窮者に対して料金未払いによる機械的な給水停止を回避する等の柔軟な対応をしていただいているものと認識しております。つきましては、各水道事業者におかれましては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金・総合支援資金の特例貸付の貸付対象者をはじめ、一時的に水道料金の支払に困難を来している者を対象として、上記貸付対象者であることの確認や必要に応じて戸別訪問等を実施することにより、その置かれた状況に配慮した支払い猶予等の対応や料金未払いによる機械的な給水停止の回避等、柔軟な措置の実施を検討いただきますようお願いいたします。」と要請がされています(薬生水発 0318 第1号・令和2年3月18 日)。
実際、例えば、東京都の水道局では、支払猶予の対象者を「今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、新型コロナウイルスの影響により収入が減少している場合など、一時的に水道料金・下水道料金のお支払いが困難になった方 ※個人、法人の全てのお客さまが対象」とした上で、支払猶予の期間について、「お客さまから、以下のお客さまセンターへ電話で申し出をいただき、その日から最長で4か月、お支払いを猶予します。 ※この猶予期間後も、支払いについての御相談に応じます。」としています。
( 2020年3月19日更新時点)
このように、水道料金が支払えない場合であっても、支払猶予がされる可能性がありますので、支払先の水道事業者に相談してみましょう。
② 下水道使用料
国土交通省から下水道管理者に対して、「各下水道管理者におかれましては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金・総合支援資金の特例貸付の貸付対象者をはじめ、一時的に下水道使用料の支払に困難を来している下水道使用者を対象として、地域の実情に応じ、福祉部局及び水道部局とも十分に連絡・連携しつつ、支払を猶予する等の柔軟な措置の実施を検討いただきますようお願いいたします。」と要請されています。
なお、東京都水道局については下水道使用料の対象者・支払猶予期間は上記水道料金と同様です。
このように、下水道使用料が支払えない場合であっても、支払猶予がされる可能性がありますので、支払先の水道管理者に相談してみましょう。
③ その他使用料
農業集落排水施設使用料、漁業集落排水施設使用料、浄化槽使用料についても支払猶予についての要請が行政からありますので、支払先へ相談をしてみましょう(元農振第3433号・令和2年3月18日、元水港第2326号・令和2年3月18日、環循適発第20031854号・令和2年3月18日)
④ 条例の定めがない場合
2020年3月19日、総務省から各都道府県などに対する要請では、「当該公共料金に係る条例等に規定が無い場合において、当該支払猶予については、別紙のとおり、水道、公共下水道以外の下水道及びガスの料金については地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第171条の6第1項第3号の規定に基づき、公共下水道の使用料については地方自治法第231条の3第3項の規定に基づき地方税法の滞納処分の例により、行うことができることに留意下さい。」とされているように(総財公第72号・令和2年3月19日)、支払猶予に関する規定が各地方公共団体の条例にない場合でも、支払猶予がされる可能性があります。
条例がないから対応できないと言われた場合には、上記要請を指摘して支払猶予を求めてみましょう。
ウ 電気料金
2020年3月19日、経済産業省は、小売電気事業者に対して、「生活不安に対応するための緊急措置」(令和2年3月18日 新型コロナウイルス感染症対策本部)を踏まえ、支払いの猶予等、迅速かつ柔軟な対応を要請しました(「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、電気料金の支払いなど生活に不安を感じておられる皆様へ」)
【】。
対象者について、上記要請は、「新型コロナウイルス感染拡大の影響により、緊急小口資金又は総合支援資金の貸付を受けた者であって、一時的に電気料金の支払いに困難を来している者」としています。
支払猶予の期間について、上記要請は、「託送供給約款及び特定小売供給約款等に定める支払期日について、電気の使用者の申出により、その状況に応じて柔軟に設定する特例措置を講ずる。本特例措置により、託送供給等約款等に定める支払期日を1ヶ月繰り延べ、その後においても、電気の使用者の状況に応じて柔軟な対応を実施。」としています。
電気供給停止に関して、上記要請は、「電気の使用者の料金の支払い遅延による電気の供給の停止については、当該電気の使用者が置かれた状況に配慮し、柔軟に対応するよう、小売電気事業者に対し要請をしました。」としています。
このような要請がされておりますので、電気料金の支払いが困難になった場合には、契約をしている小売電気事業者に相談してみましょう。
エ ガス料金
2020年3月19日、経済産業省は、ガス事業者に対して、「生活不安に対応するための緊急措置」(令和2年3月18日 新型コロナウイルス感染症対策本部)を踏まえ、支払いの猶予等、迅速かつ柔軟な対応を要請しました(「新型コロナウイルス感染症の影響を受け、ガス料金の支払いなど生活に不安を感じておられる皆様へ」)
【】。
対象者について、上記要請は、「新型コロナウイルス感染拡大の影響により、緊急小口資金又は総合支援資金の貸付を受けた者であって、一時的にガス料金の支払いに困難を来している者」としています。
支払猶予期間について、上記要請は、「託送供給約款及び指定旧供給区域等小売供給約款に定める支払期日について、ガスの使用者の申出により、その状況に応じて柔軟に設定する特例措置を講ずる。本特例措置により、託送供給約款等に定める支払期日を1ヶ月繰り延べ、その後においても、ガスの使用者の状況に応じて柔軟な対応を実施。」としています。
ガス供給停止について、上記要請は、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けたガスの使用者の料金の支払い遅延によるガスの供給の停止については、当該ガスの使用者が置かれた状況に配慮し、柔軟に対応するよう、ガス小売事業者に対し要請をいたしました」としています。
このような要請がされておりますので、ガス料金の支払いが困難になった場合には、契約をしているガス小売事業者に相談してみましょう。
オ 電話料金
NTTグループ、KDDI(au)、ソフトバンクは、電話料金について支払猶予の措置をしています。
NTTグループでは、支払期限が2020年2月末日以降となっている料金について、申し出があった場合、2020年5月末日までお支払い期限を延長すると発表しています。
( 2020年3月19日時点)。
KDDI(au)では、支払期限が2020年2月25日以降となっている料金について、申し出があった場合に、2020年5月末日までお支払い期限を延長
すると発表しています。
( 2020年3月19日時点)
ソフトバンクでは、支払期限が2020年2月末日以降の料金について、申し出があった場合、2020年5月末日まで支払期限を延長すると発表しています。
( 2020年3月19日時点)
また、NTTグループ・KDDI・ソフトバンクは、新型コロナの感染状況などによっては、さらなる支払い期限の延長もあり得ると発表しています。
このように支払猶予の措置がありますので、支払猶予を受けられるかについて、契約をしている業者へ相談をしてみましょう。
カ NHK受信料
NHKは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により影響を受けた者について受信料のお支払いに関する相談を受ける専用窓口を設けています
( 2020年3月25日時点)。
受信料の支払いが困難な場合には、NHKの専用窓口へ相談してみましょう。
(4)住居確保給付金
ア 支給対象の拡大
「生活困窮者住居確保給付金」は、家賃を補助するための給付金です(生活困窮者自立支援法3条3項)。住居確保給付金と呼ばれることもあります。
住居確保給付金は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を契機に、2020年4月20日から適用対象を拡大し(生活困窮者自立支援法施行規則3条及び10条の改正)、「事業を行う個人が当該事業を廃止した場合」(生活困窮者自立支援法3条3項、同規則3条1号)のみならず、「就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由又は当該個人の都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は前号の場合と同等程度の状況にある場合」(生活困窮者自立支援法3条3項、同規則3条2号)にまで拡大しました。
なお、住居確保給付金は、フリーランスも利用可能です。
イ 支給要件
住居確保給付金の支給要件を列挙すると以下の8つになります。
ⅰ 離職等により経済的に困窮し、住居喪失者又は住居喪失のおそれのある者であること
ⅱ イ)申請日において、離職、廃業の日から2年以内であること又は ロ)就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由、都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は廃業の場合と同等程度の状況にあること
ⅲ 離職等の日に、その属する世帯の生計を主として維持していたこと
ⅳ 申請日の属する月における、申請者及び申請者と同一の世帯に属する者の収入の合計額が、基準額に申請者の居住する賃貸住宅の家賃額を合算した額(収入基準額)以下であること[収入要件]
ⅴ 申請日における、申請者及び申請者と同一の世帯に属する者の所有する金融資産の合計額が基準額×6(ただし、100 万円を超えないものとする。)以下であること[資産要件]
ⅵ 誠実かつ熱心に求職活動を行うこと 【⇒4月30日の省令改正により公共職業安定所への求職の申込みが当分の間不要となりました。】
ⅶ 国の雇用施策による給付(職業訓練受講給付金)又は自治体等が実施する離職者等 に対する住居の確保を目的とした類似の給付等を、申請者及び申請者と同一の世帯 に属する者が受けていないこと
ⅷ 申請者及び申請者と同一の世帯に属する者のいずれもが暴力団員による不当な行為 の防止等に関する法律(平成3年法律第 77 号)第2条第6号に規定する暴力団員 (以下「暴力団員」という。)でないこと
上記の収入要件、資産要件の金額は地方公共団体によって異なりますので、実際の金額や申請必要書類などはお住いの市町村に確認して下さい。一例として、小田原市のULRを以下に掲載しますが、お住いの市町村の住宅確保給付金のページも必ずご確認下さい。また、今後、支給要件が更に緩和されるという報道もありますので、最新の情報を確認してください。
(日時点)
ウ 支給額・期間
支給額には上限があり、上限は地方公共団体によって異なります。
支給期間は、原則として3か月間、延長が認められた場合には最長で9か月間です(生活困窮者自立支援法6条2項、同規則12条1項)。
なお、給付金は、行政から賃貸人へ支払われることになりますので申請人に直接支給されるわけではありません(同規則17条)。
エ 相談先
より詳細な内容については、お住いの市町村のホームページなどで相談窓口を確認して、相談してみましょう。
相談先一覧
日本労働弁護団 ホットライン
*ここでご紹介する相談先団体は、主に4・7コロナ対策連絡会議に参加した団体です(この他にも多数の団体が活動しています)。
労働相談、労働組合への加入・結成等
公務員の労働相談
労働相談、組合への加入・結成等
労働相談、組合結成等
各地域のコミュニティー・ユニオン(地域個人加盟労組)
報道・出版系の労働組合
無料労働相談の申込フォームがあり。
独立系の産業別労働組合
労働相談、組合加入等
フリーランス・個人事業主
外国人労働者の相談
労働災害の相談
外国人向けQ&A
新型コロナ労働問題Q&Aを多言語化しました。対象言語は、英語、タガログ語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、ミャンマー語、中国語です。ぜひ、外国人労働者支援の際にご活用ください。
労働組合向けQ&A
新型コロナウィルスの感染拡大は労働組合の組織内部の運営にも大きな影響を及ぼしています。このQ&A では、新型コロナウィルスの感染拡大の中で、平時と異なり、労働組合の定期大会や役員選挙、争議権の確立などをどのように行うことが考えられるのか、その疑問や工夫についてまとめています。ぜひ参考にしていただければと思います。
活動報告
- 学習会
- 声明
- 集会
- ホットライン