机に積まれたオンライン申請の書類を点検する京都市職員(同市内) =画像の一部を加工しています

机に積まれたオンライン申請の書類を点検する京都市職員(同市内) =画像の一部を加工しています

 新型コロナウイルスの緊急経済対策として国民1人当たり10万円を支給する「特別定額給付金」。そのオンラインでの申請を巡り、全国で混乱が生じている。当初はマイナンバーを活用した迅速な給付が期待されたが、実際には入力ミスが相次ぎ、自治体が確認に追われる事態に。内部では、どんな作業が行われているのか。5月15日に申請受け付けが始まった京都市の現場を取材した。

 「1世帯ずつ紙に印刷して、目で誤りがないか確認しています」。京都市内の雑居ビルの1室。机に積まれた申請書類を前に、職員がため息をついた。小規模な自治体は庁舎内で作業を行うが、72万世帯を抱える市は膨大な申請を処理するため急きょ、2カ所の作業場を確保。庁舎から離れたこの場所で、職員は連日の点検作業に追われている。
 オンライン申請自体は、世帯主が国の専用サイト「マイナポータル」に、家族の氏名や振込口座などを入力すれば完了する。問題は、誤った内容でも申請を受け付けてしまうことだ。各自治体では、申請情報が住民基本台帳(住基)と一致するか確認する必要があるが、マイナポータルと住基システムがつながっていないため、人海戦術で印刷した書類を照合する「アナログ」な作業をせざるをえない事態になっている。
 27日までに寄せられた申請は約2万1千件。初日には9千件近くの申請が殺到し、その情報をダウンロードして印刷するだけで、3日間を要したという。現在も1日約300~400件の申請があり、担当者は「確認作業以前に、申請情報を印刷するだけでも一苦労。申請の入り口は良いけど出口がなっていない」とこぼす。
 印刷を終えてからも、道のりは長い。職員は1世帯ずつ申請書類と住基情報を見比べ、▽世帯主からの申請か▽世帯構成員が住基と一致するか▽口座名義は世帯主か―などを点検。ひとつでもミスがあれば、本人への再確認が必要になる。住基情報には個人番号が記され慎重な扱いが求められる上に、確認漏れがないよう複数回のチェックを実施。現在は応援要員も含め約30人が作業に当たっており、他部署に所属する男性職員は「世帯人数が多いほど大変。元々の自分の仕事もあるが、今は給付金優先なので仕方ない」と話した。
 市によると、不備があるのは全体の1割ほど。他都市に比べ割合的には少ないが、人口規模が大きい分、件数は膨らむ。市は本人への再確認を、電話による給付金詐欺との混同を避けるため郵送で行う予定で、担当者は「別途書面を作成して送るなどの作業があり、さらに時間と労力が必要になる」と懸念する。
 来月8~10日には、郵送で申請できる書類が各世帯に届く予定。あらかじめ給付対象者が印字され、誤記の心配が少ないとして、市は郵送での申請を勧めている。市地域自治推進室の廣瀬智史事業推進担当部長は「オンラインという言葉と実際の中身にはずれがあり、必死にやっても一定の時間がかかってしまう。今は早く市民に給付金を届けられるように精いっぱい取り組むしかない」と話した。