---------------------------
----Y----044----------
----e-----------------------------
----l-----------------------
----l------------------------------
-----------------------------------
-----------------------------------
---------------------------------------------------------------
(あくび)
(潔子)音さん 今日も眠そうね。
(和子)また カフェーの仕事で夜更かし?
(音)ううん。 昨日は主人の友達が泊まりに来てて酔って暴れて 大変だったの。
(鉄男)最低だ! 俺が グズグズしてっから希穂子に見限られたんだ!(裕一)お帰り。
大将…。ああ~ 希穂子~!
えっ 主人?今 主人って言った?
うん。まさか 音さん 結婚してるの?
うん。 言ってなかったっけ?聞いてない!
うそでしょ?えっ? 人妻で 学生でカフェーの女給ってこと?カフェーは 今日で終わりだけどね。
楽しかったよ。 すごく勉強になった。
ああ…。
♪~
♪「泣いて 生まれて 響く命」
♪「きっと嬉しくて 笑っているんだ」
♪「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♪「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♪「きっといつか今日の日も意味を持って ほら」
♪「耳をすませば」
♪「星の見えない日々を 超えるたびに」
♪「互い照らすその意味を知るのでしょう」
♪「愛する人よ」
♪「親愛なる友よ」
♪「遠くまで 響くはエール」
(千鶴子)最終選考まで あと少しなのよ。必死で練習するのが普通じゃないの?
私だって必死だよ。
そういうの… 必死って言えるのかしら?
私はね 子どもの頃から音楽のために全てを犠牲にしてきたの。
なのに あなたは…音楽も 家庭も 友達も 恋愛も何でも欲しがって 手を伸ばす。
あなたみたいな強欲な人に私は負けるわけにはいかないの。
強欲?
私は… 私の全てを懸けてヴィオレッタを勝ち取ってみせるから。
(恵)は~い どうぞ。ありがとうございます。
あっ トーストを2つ。(恵)うん。
ホットケーキも つけていいぞ。ここは 俺が持つ。
じゃあ…。(恵)フフッ。
顔がいい人は言うことも かっこいいわね。
(保)顔がいいからかっこよく聞こえるんじゃないか?
昨日は 本当に悪がった。
いやいや… みんな いろいろあるよ。
会社は何時からなんだ?ああ… 出勤時間は自由だから。
大御所になると出社しない人もいる。へえ~ そういうもんなのか。
うん。…で どうなんだ? 仕事の方は。
うん…。「紺碧の空」のおかげで評価 上がったんじゃねえか?
そうでもないよ。
この前ね 地方小唄の話あったんだけど…うまいこといかなかった。
地方小唄?うん…。
(吟)人妻が カフェーの女給ってあんた 何考えとんの?
お母さんとか梅には言わんでよ。めんどくさいから。
言うに決まっとるじゃん。こんな面白い話ないわ。
お姉ちゃんは どうなっとんの?結婚の準備。
式の日取りが決まったとこ。
最近 気付いたんだけど うちの人何だかんだで亭主関白なんだわ。
裕一さんは いい旦那様よね。
何でも あんたの好きにさせてくれて。
お姉ちゃん…。
私って 強欲?
やだ… 今頃 気付いたの?
やっぱ そうなんだ。それが あんたのいいところじゃんか!
人間 欲がなくなったら おしまいよ。
強欲上等!
強欲上等…。
そっか…。
あっ! ちょっとそれ 高かったんだから やめてよ!
いいじゃん ちょっとくらい…。ちょっと… 本当駄目…。
かわいい!やめりん やめりん!
ああ… もう こんな減って…。
(ノック)どうぞ~。
あっ…。(希穂子)音江さん。
ゆうべは お騒がせして ごめんなさいね。
いえいえ… あの…。(ノック)
(ママ)音江ちゃん いよいよ最終日ね。はい。
一週間 お世話になりました。
残念だわ…。 あなた 鍛えれば一流になれそうなのに。
えっ? 怒られてばかりでしたけど…。
見込みがあるから怒られたんじゃない?
さすが希穂子ちゃん そのとおりよ。
それぐらい 言われなくても察しなさい。ここで 何 勉強したのよ。
すいません。フフフフ…。
・(ボーイ)困るんですよ。 出てって下さい。・(鉄男)少しでいいですから。
・(ボーイ)出てけって言ってんだよ。・(鉄男)お願いします!
(愛子)ママ 大変です! この前の人が…。・(鉄男)話すだけですから。
(鉄男)何でですか!(ボーイ)出てけよ!
別にいいでしょ 話すくらい!出てけって言ってんだよ。
少しですから お願いします!無理なんだよ。
希穂子…。
ちゃんと話がしてえ。少しでいいから時間くれねえか?
お引き取り下さい。
希穂子…。分からない? 迷惑してるの。
本当のことを言いますね。
福島を離れたのはあなたが重荷になったからです。
勘違いされて困ってたの。
お帰り下さい。
♪~
(ドアが開く音)
♪~
恋愛の機微を目の当たりにした音のカフェー勤務最終日でした。
(久志)どうぞ。よいしょ… はい 出来たよ。
(久志)おっ! おいしそうだ。鉄男君 頂こうよ。
ほら! 大将 ほら… 食べよう ほら!
まあまあ…。ああ… ありがとうね。 飲もう 飲もう。
おっ… そうだ!あの時も おめえが一番に逃げたんだ。
覚えてないな。いや 久志の逃げ足の速さはね学校… いやいや 宇宙一だよ!
危機対応能力にたけていると言ってほしいね。
あの先生 怖かったけどさ4年の時 藤堂先生になってくれたのうれしかったな~!
ああ… 藤堂先生には頭が上がんねえ。
懐かしいね~。
いいもんだね ふるさとの友達と飲むのは。うん!
裕一が鉄男君を東京に呼ぼうって言いだした時は さすがに驚いたけどね。
あっ ごめん ごめん。 あの時はねもう本当に舞い上がってました。
いや… うれしかったよ。 ここ最近詩 書くことなんて忘れてたから。
いや… しかたないよ。仕事だってあるしね。
実は… 書いてみたんだ。
えっ?
歌詞書いたの!? えっ?み み… 見せて 見せて! えっ?
「福島行進曲」。俺なりの福島を書いてみた。
いい… すごくいい。
す… すごくいいよ これ! ねっ?ああ いいよ!
恋の歌だな。ああ。
「紺碧の空」書いた時ね歌詞に共感するって すっごく すっごく大事なんだって分かったんだよ。
こういう… こういう… 心にグッて グッて来るこういうの ずっと待ってた!
僕ね… 福島捨てて ここに来たんだ。
でも… 忘れたことは一度もない!
大将が思い乗せた この歌詞でもう一度… もう一度ちゃんと福島と向かい合いたい!
大将 いや… 鉄男。
僕に… この詩で…この詩に曲をつけさせてくれ!
分がった。 いい曲つけてくれよ!
ありがとう! ありがとう…。
久志 歌ってくれるよな?
僕以外… いるの?
クッ フフフ…。
んん…。
(いびき)
(廿日市)「福島行進曲」。
はい。 地元で新聞記者やってる友人が書きまして…。
あっ もともと 作詞家志望でかなり才能のある男なんです。
(廿日市)ふ~ん…。
歌い手は 今 東京帝国音楽学校で声楽の勉強してる 僕の友人佐藤久志に頼もうかなって…。ちょっと黙ってて。
あっ はい。 す… すいません。
そうねえ…。
(杉山)私は とてもいい曲だと思いますが。
えっ そう?
横浜の地方小唄の話は結局 流れてしまいましたしほかのレコード会社がまだ目をつけていない東北方面の地方小唄なら話題にもなりやすいかと。
あっ そう…じゃあ これで作ってみようか。
えっ?
こうして 裕一の初めてのレコードが吹き込まれることになりました。
あっ… 今日は よろしくお願いします。よろしくお願いします。
スタジオへ ご案内します。
ただし 歌うのは久志ではなく廿日市が連れてきた女性歌手。
無名の学生を いきなり起用するのはさすがに難しかったようです。
(小田)いつでも始められるよ。
では…。
♪~
上京して2年 ついに裕一はプロの作曲家デビューを果たしたのです。