『庭師は何を口遊む』
この世界が存在しているから人間が存在しているのではなく、
また人間が存在しているから世界が存在しているのではない。
両者に前後関係はなく、ただあるのは奇妙な縁と因果だけだ。
―――
推奨技能:戦闘技能・目星・拳銃
準推奨:聞き耳・精神分析
プレイタイム:ボイセ6~7時間(変動あり)
プレイ人数:4人(固定)
シナリオ形式:シティ
システム:秘匿HO制シナリオ。
新規限定:PCに特殊な要素が含まれます。
刑事探索者限定シナリオ
※年齢については「刑事」になるのに必要な年数+「4年前から発足しているチーム」というのも加味した場合、30歳以上となる。
■注意事項
・NPCと特別な関係(親友・恋人・家族・幼馴染etc)が含まれることがあります。
予めご注意をお願い致します。
GL/BL/NLで苦手なものがある場合は事前にお伝え頂きますようお願い申し上げます。
・秘匿のHOが設けられるため、新規限定のシナリオとなります。
・PvPの可能性が多大にあります。
PCは喧嘩をしても、PLはワイワイしていきましょう。
■刑事用語※使いたい場合は参考にどうぞ※
・マル被:被疑者
・マル対:対象者
・マル害:被害者
・ゲソ跡:足跡
・お宮:迷宮入り
・顔首(がんくび):顔写真
・打ち込み:現場に乗り込んで調査をする事
・帳場:捜査本部
※NPCが一部平然と言ったりしますので、それがまどろっこしい場合は普通に言い換えて頂いて構いません。これは作者の趣味です故。
■PC概要
<技能振り分けについて>
基本はルールブックにある【刑事】の項目を遵守するが、【職業】+【趣味】を足したポイント分は自由に振り分けて構わない。ただし特記事項がHOに含まれる場合、それに合った技能を取得しなければならない。
例えば【職業ポイント:240】【趣味ポイント:220】だった場合【合計ポイント:460】を趣味、職業を考えず振り分ける事が可能。
<PC達の所属>
『(PC1の苗字)班』、正式には『警視庁特殊犯罪捜査零課(けいしちょうとくしゅはんざいそうさぜろか)』という架空の課にPC達は所属している。人によっては『ゼロ』や『(PC1の苗字)班』と呼んでいる。
発足は四年前。PC達はその頃からの付き合いとなる。主な活動内容は警視庁刑事部捜査一課と特命捜査課を合わせたようなものとなっている。つまりは現行の犯罪と過去の未解決事件を並行して捜査している班という事になる。
警察署内の立場としては、NPCの後ろ盾などもありそこまで悪いものではないが、他の所属に比べて自由に動き回れる事や、警察組織にそこまで囚われない独特なチームである事というのもあり、快く思わない刑事も多い。
<共通認識>
あなた方は警視庁特殊犯罪捜査零課(通称『ゼロ』)の同僚である。各々がそれぞれに特化した技能を有しており、四年前の結成当初からの付き合いだ。紆余曲折ありながらも、共にそれだけの年数を過ごしてきた。
共通の同僚である『相模原 涼(さがみはら りょう)』は温厚で優しい女性であったが、三年前とある事件によって死亡してしまう。あなた方はその光景を忘れた事はない。
とある教会跡地にて、丸で磔刑にあったかのように吊るされた彼女の肢体。祭壇の奥に位置していた十字架に無数の蔦が這い、彼女はそこで事切れていた。肉の隙間から色とりどりのアザレア、アイビーそれ以上の美しい花々を咲かせて死んでいたのだ。
彼女の目や鼻、口から伸びたものが一層激しく、最初は誰のものかも判別は出来なかったが、ふと「相模原」と呼ぶ声が聞こえ、あなた方はそれを誰であるかを理解した。
三年前、応援の刑事達が現れるまでの間、あなた方はその名を叫び、泣き、悲痛と嘆きの中彼女の死体を床に降ろし、ただひたすら慟哭していたのだ。
犯人は未だ捕まっていない。その死体の異常性から犯人は『庭師』と呼ばれ、今でもメディアを賑わせている。
あなた方は日々別の捜査に当たりながら、『庭師』を探し続けている。
※シナリオ内の季節は冬です。
■HO
PC1:あなたはこの零課のチーフである。
あなたは並々ならぬ精神力を有し、それを用いて部下を率いている。
POWを算出する際、+3の固定値が付く。(ただし上限を超える事は出来ない)
PC2:あなたは天才的な手腕を持つメカニックだ。
こと機械に於いて、右に出るものは居ない。
INTを算出する際、+3の固定値が付く。(ただし上限を超える事は出来ない)
PC3:あなたはこの零課の中で最も屈強な体を持っている。
また、体術などに於いても非常に優れている。
STRを算出する際、+3の固定値が付く。(ただし上限を超える事は出来ない)
PC4:あなたは非常に手際よく、俊敏性に優れている。
チーフの補佐等を任される事が多く、医療の心得もある。
DEXを算出する際、+3の固定値が付く。(これは上限を超えても構わない)
次の頁より秘匿HOとシナリオ背景などのKP情報となります。
――――
【KPへの注意事項・回した時の話等】
※非常に限定的で、自由度がかなり低くなったキャラメイクになるかと思います。ただこのキャラメイクが上手く行くと楽しくなれるかもしれません。
※KP難易度がかなり高いと思います。非常に大変なので、難しい場合はSKPを立てる事をお勧めいたします。
※HOの配布タイミングがそれぞれ決まっているので、HOだけ個人ごとに保存しておくのをお勧めしております。
※テスト(ボイセ)で回した際は、どどんとふで個別窓を用意、更に自分のPC番号以外は見ないように決めてから行いました。内緒話も多くなるので、それぞれでどんどん窓を拡張していった具合になります。
(PC1-2,PC1-3,PC1-4……等ボイセで回す際、分かれて行動する時は片方はボイス、片方はテキストという半テキセという形式をとりました)
※HOはシナリオ内にも記載がありますが、管理しやすいように記憶回復トリガーと一緒にこっちにも記載させて頂きます。
※2018/02/23
【追記】
日本警察が所持している拳銃は全て同じものになる為、統一して頂くようお願い致します。
※最初口径を普通に打ち間違えていたので、それも直させて頂きました……!申し訳ないです。
☆38口径リボルバー ニューナンブM60 威力:1d10 耐久:10 装弾数:5 攻撃回数:2
またPCも刑事である為、拳銃の所持は認められてはいますが、基本的には保管庫にしまっているという事にして下さい。
PCの持ち物に銃が入っていた場合は、「このシナリオ内では銃を常に所持している状態ではなく、緊急時以外は保管庫に銃があるとしてください」とお伝え頂ければ幸いです。
※拳銃保管庫の描写がある為。
秘匿HO一覧
■秘匿HO
※以下、各PCの秘匿HOとなります。このHO内容を配る際、KPは「少なくとも三年間はこの内容を他のメンバーには黙っていた」という事を考慮した上でのRPをするようにとお伝えください。
ただしシナリオ内で手に入った情報(各PCに振り分けられた秘匿情報)に関しては、PCの判断で開示しても構いません。
※また【POW・INT・STR・DEX】*3ptという表記について。
例えばPOW15の場合は 15*3=45 となるので、45pt分を、指定された技能に振り分ける事が可能となります。
●HO1(PC1)
あなたは三年前に死亡した「相模原涼」の恋人である。しかしこの事実は同じ課の誰も知らない秘密だ。
あなたは彼女を愛し、また彼女から愛されていた。故に三年前からの心の傷は未だに癒えていない。
彼女の事件を追う内、犯人である『庭師』は警察署内関係者の誰かである可能性が高いとされた。
理由としては相模原自身が、体術・防衛手段に於いて一般人に劣る事が無い事。更に彼女が非常に警戒心が強い人物であると知っているからだ。
あなたは恋人が無残な死に方をした為か、その前後の記憶が曖昧な状態だ。
だが一つだけ確かな事は、その死体を見て一番に「相模原」と名を呼んだのは自分という事だ。
☆POWを算出する際に+3の固定値が付く。(ただし上限を超える事は出来ない)
☆あなたはPOW*3ptを<心理学>に振り分ける事が出来る。(そこにプラスして技能ポイントも付属出来る)
☆POWが他のステータスよりも低かった場合、ステータスの中で最も高い値になるように入れ替える事が出来る。
※PLに合わせ、関係性を変更しても構わない。その場合は「恋人」と同等となるような強い関係性である事が望ましい。
(腐れ縁の親友、異母兄弟など)
●HO2(PC2)
あなたには幼少期に生き別れた歳の近い妹が居る。妹を探す為に、あなたは情報収集の技能を身につけていったのだ。
妹を探している中で、とあるカルト教団の噂を入手する。そのカルト教団跡地は今既に取り壊されてしまっているが、そこで発見された美しい花から何故か死刑囚のDNAが発見された。
だが死体は見付からなかった。あなたはそのカルト教団に資料をどうにかして手に入れたいと思っている。
またあなたはPC3の事を快く思っていない。それは表面に出しても出さなくても構わない。ただ何故そう思っているのかあなたには確かな記憶というものがない。三年前のあの日以来、記憶が曖昧なのだ。
そしてあなたはある程度の<コンピューター>技能を有する立場である。
☆あなたはINT*3ptを<オカルト>に振り分ける事が出来る。(そこにプラスして技能ポイントを付属出来る)
☆あなたはINTを算出する際+3の固定値を付ける事が出来る。(ただし上限を超える事は出来ない)
☆INTが他のステータスよりも低かった場合、ステータスの中で最も高い値になるように入れ替える事が出来る。
※妹と表記があるが、姉でも構わない。
●HO3(PC3)
あなたは基本技能として初期値で<拳銃>40%を持っている。
しかしあなたは拳銃を持つことが出来ない。持とうとすれば酷く手が震えてしまうからだ。これは誰にも言えない秘密である。
その明確な理由に関してもあなたは忘却してしまっている為、説明する事も出来ない。
あなたは大量の血を見る度にSANc0/1が入る。これは『訳のわからない恐怖心』によるものだ。
ただし、あなたはその代わりとして誰よりも努力し屈強な体を手に入れた。肉弾戦に於いて右に出るものは居ないのだ。
三年前のあの事件以来、あなたは仲間の誰も失いたくないと思っており、そうした正義感を持った人物である。
誰よりも班を想い、仲間を考え支えたいと願っている。
☆あなたはSTR*3分の%を特殊技能<挑発>に振り分ける事が出来る。
☆あなたはSTRを算出する際、+3の固定値が付く。(ただし上限を超える事は出来ない)
☆<挑発>
初期値5%:この技能はその戦闘ラウンドの間ずっと効力を発揮し続ける。つまり一度成功してしまうと、戦闘が終わるまでの間永続的に機能する。効果は、敵からの攻撃が全て自分に向けられるというものだ。ただし知能数が自分よりも下の獣等にのみ有効である。
☆STRが他のステータスよりも低かった場合、ステータスの中で最も高い値になるように入れ替える事が出来る。
※<挑発>は対人間・神格には利用できない。またこのシナリオのみで使用できる技能である。
●HO4(PC4)
あなたは非常に多趣味な人物であり、医学的なものから博物学的なものまである程度理解している。
三年前の事件より以前は植物を育て、仕事の傍らそうしたものの研究もしていた。
しかし事件後は花に対して強烈なまでの嫌悪感を抱くようになってしまっている。記憶が曖昧で何故かはわからない。
あなたはかつて、今はなき植物研究サークルに自身が育てた花や種を売っていた。そのサークルで殊更熱心に花について勉強をしていた女性が居たのを知っている。
名前は「南 玲子(みなみ れいこ)」。
花に興味を失ってしまったあなたはその女性ともそれきり会わなくなってしまっている。あらぬ誤解をされたくないあなたはその女性については黙っている事にした。
あなたはPC1の補佐をしつつも、どこかPC1に抵抗感を抱いている。その立場故か劣等感故かあなた自身にも解らない。
☆あなたはDEX*3ptを<博物学>に振り分ける事が出来る。
☆あなたはDEXを算出する際、+3の固定値が付く。(これは上限を超えても構わない)
☆DEXが他のステータスよりも低かった場合、ステータスの中で最も高い値になるように入れ替える事が出来る。
シナリオ背景
■シナリオ背景
NPC1(的場 元)は重度の死体愛好家である。
彼は時折「美しい」と感じた死体の写真やデータを盗む等の行為をしていたが、『記憶を曇らせる』という呪文を唱える事で誰からもそれを気付かれる事は無かった。
オカルト的な知識を持っていたのは『人花教』というカルト教団に所属していた為である。
人花教は『ヴルトゥーム』を強く信仰しており、花による救済、自然帰依を目的とする特殊な教団であった。彼らは最初の儀式として、植物のクリーチャーである『地獄の植物』の種をその身に宿す。
種を宿した者を贄として送る際、その死体からは花(地獄の植物)が芽吹く。的場はその死体を見たさにカルト教団に協力していただけだった。
主な協力内容は、死刑の決まった囚人たちの売買。贄の確保である。
けれども同時に、彼は部下であるPC1~4(+相模原)を大切に思っていた。自分が内通者だとバレた際は呪文詠唱でその事実を封じればよいと考え、その動向に関しては半ば放置していた。
また四年前、PC4は趣味として植物研究サークルに所属しており、花の研究や種の売買を行っていた。
そのサークルの中で「南 玲子」という女性に出会い、何度か話をすることになる。
南玲子は人花教の信者であり、熱心に植物について語るPC4に興味を持つ。そして成り行きで『地獄の植物』の種を渡した。
PC4は好奇心からその種を研究し、偶然にも品種改良までしてしまう。改良された種は半透明の美しいものであった為、PC4は花に興味のあった相模原と、種を渡した南玲子にプレゼントする事になる。
***
そして三年前、PC1~4は的場をカルト教団の内通者として秘密裏に捜査し、現行犯逮捕のチャンスを掴む。
上司と慕っていた的場への想いも有った為、周りには協力を求めず特別捜査課だけでカルト教団本部(教会跡地地下)に向かう事となった。
先だって調査に出ていた相模原とPC4は的場を発見するに至ったが、的場は誤って相模原を殺害してしまう。これは的場にとって計算外の事だった。
後から追いついたPC1はこれを見て激昂し、的場を射殺しようとするが、相模原の傷口からみるみる内に花々が咲き乱れる光景を目の当たりにする。
PC4が研究の結果『地獄の植物』を品種改良した種は、鮮やかな色合いを持つ花と瑞々しい蔦を生み出し、相模原の死体を覆ったのだ。
それだけではなく、その植物は死体を支配し意志をもって動こうとまでする。この異様で美しい光景に的場は一瞬で虜になってしまった。
死ぬに死ねなくなってしまった相模原をPC1は情けとして殺害を決意し発砲。PC4は彼女にプレゼントした種が原因だと悟り、その間必死に謝っていた。
ほぼ同時刻、カルト教団に所属している妹を救おうとPC2とPC3が教会へと踏み込むも、彼女は既に教団の手によって生贄にされており、腹部を刺され絶命していた。
呆然とするPC2の目の前で南玲子は相模原の遺体と同様に植物をその体に這わせ、ぎこちなく動き始める。PC2は妹がまだ生きていると信じ近付こうとするが、それをPC3が救おうと発砲。
「やめろ」と言うPC2の叫び声もあり照準を合わせる事が出来なかったが、何とかPC3は南玲子を殺害する事が出来た。
だがその悍ましさと、PC2の家族を殺したという実感が徐々に自らの良心を蝕みPC3は拳銃に対して酷い恐怖心を抱くようになった。
PC1~4に対して的場は『記憶を曇らせる』を唱え、「的場元はカルト教団の内通者である」という記憶を封じ、その他の証拠に関しても隠蔽した。
そして撃たれても尚僅かながらに活動を続けていた相模原涼の遺体を手中に収める事になる。
的場は教会の祭壇前までPC達を運び、その場を離れる。
間もなくして一番最初に目を覚ましたPC1は南玲子の遺体を見上げ、無意識に「相模原」と口に出してしまう。
そしてPC2~4もそれに同調した。
PC1は恋人を殺したという事実から目を背ける為、仮想の犯人を作り上げる。
PC2は妹が死んだという事実から逃れる為に、死んだのは別の人間であると信じ込む。
PC3はPC2の妹を撃った事実を忘却する為に、PC1に同調する。
PC4は自身が育てた種によって同僚を化物にしたという罪悪感から身を守る為に。
各々が各々、自らの罪悪から身を守る為に「謎の庭師に殺された相模原涼」を作り上げ、そう記憶は書き換えられ、仮初の事実が完成した。
結果、その前後の記憶が更に曖昧になり、今回の舞台はちぐはぐなまま作り上げられる。
『庭師』は存在しない。もし居るとしたらPC達四人の事を指す。
■各PCの記憶回復トリガー
●PC1
①猪狩より『あの遺体は相模原涼ではない筈なのに、何故そう思ったのか』と言われた時
【一番初めに「相模原」と彼女を呼んだのは自分だ。
それは間違いない。けれど何故そう呼んだのだろう。
あれは彼女では無いと、そう告げられた瞬間に、あなたにある光景が蘇る。
暗い場所を走っている。恋人とPC4を追って走っていた。
その道の先で「相模原涼」とPC4の悲痛な叫び声、そしてもう一人の影があった。
PC4が泣き叫んでいる。謝っているようだ。その謝罪は相模原に向けられていた。
暗がりで動き、かくりと首を傾けた彼女に無数の花や蔦が生い茂っていく。
耳の端で「美しい」と言う興奮したような声が聞こえていた。
そうだ。何故忘れていたのだろう。
いや、何故思い出してしまったのだろう。
ちらつく記憶の中で、彼女は吊るされていなかった。横たわっていたのだ。
その額に穴を空けた状態で、ただ横たわっていた。
ではあの吊るされた死体を見て、何故自分は彼女の名前を呼んだのだろう。
SANc1/1d3】
②自身が銃を持つ
【PC1にHO開示
銃を持った瞬間。あなたはある事を思い出す。
それは銃を撃った時の感覚だ。その独特の振動と匂いをあなたは鮮明に思い出す。
あなたは撃ったのだ。過去、人を殺すためにその銃を放った。
愛する人を殺すために。
その肉体が綻び、花が芽吹き切る前にと。
泣き叫び謝り続けているPC4の声を聴きながら、
あなたは相模原涼を殺した。額に一発の弾丸を撃ち込んで。
その死体が床に崩れ倒れる姿まで、あなたははっきりと思い出す。
暗いその空間で、腹から血を流しながら彼女は事切れたのだ。SANc1d3/1d6
その刹那、ブツリ、という音が聞こえ以降の記憶は残っていない。
次に目が覚めた時、あなたは教会の祭壇近くでしゃがんでいた。
そこで吊るされていた別の女性の遺体を見て、あなたは咄嗟にこう思う事にした。
「あれは相模原だ。彼女は「誰か」に殺されて「吊るされた」のだ」と。】
■PC1の発狂内容:(不定、一時関わらず)以下の1d3よりチョイス
1:【殺人癖】猛烈な破壊衝動があなたを取り巻いていく、武器を持つ他人に対して身を守らなければと思うだろう。殺すのだ、殺さねば、また大切な物を失う。あなたはその人物を殺したい。
2:【自傷癖】自分の頭が、体が何かに蝕まれていくような感覚に襲われる。自身が生きている事、生きながらえてしまっている事に嫌悪を覚え、早く終わらせなければと感じる。そして苦しみや痛みを求め、自身の体を傷つけたいと強く願う。
3:【異常性癖】死体愛好。その場に死体がある場合はそれに対し、またそこに死体が無ければ自身が目撃したあらゆる死体に対して固執し、妄想を駆り立てる。あなたは死体に対して異常なまでの興奮を覚える。
―――――
●PC2
①『南玲子』の写真を目撃
【この顔に覚えがある。本当に微かな類似点でしかないが、あなたは直感する事だろう。
これは、自分の妹だ。
ずっと探していた妹の情報が目の前にある。しかも「重要参考人」として。
生き別れた妹はその異常なカルト教団に属している可能性が高いようだ。
SANc0/1】
②PC3が拳銃を所持した状態で教会にいる姿を目撃
【PC2にHOを開示
ふとPC3に目が行く。拳銃を所持して立っているその姿に激しい既視感と恐怖、
そして憎悪が襲ってくる。
この教会で、あの祭壇の付近で、PC3は銃を何度も放っていた。
自分は叫びながら「やめてくれ」「撃たないでくれ」と言っていた。
それでもPC3は撃ち続けた。
PC3が撃ち続けた対象は、他でもない自分の妹(姉)だった。
その体の腹部の切り傷から大量の血を流しながら、
それでも植物に抱かれて立っている妹は、既に人間のそれではなかった。
駆け付けた時から、そんな事は解り切っていたが、あなたはどうしても彼女を抱き締めてやりたかった。
けれど、その望みは消え失せる。
あなたは目の前で探していた妹を殺された。
あなたが探していた妹はすでにこの世に居ない。SANc1d3/1d6】
■PC2の発狂内容:(不定、一時関わらず)以下の1d3よりチョイス
1:【殺人癖】猛烈な破壊衝動があなたを取り巻いていく、武器を持つ他人に対して身を守らなければと思うだろう。殺すのだ、殺さねば、また大切な物を失う。あなたはその人物を殺したい。
2:【自傷癖】自分の頭が、体が何かに蝕まれていくような感覚に襲われる。自身が生きている事、生きながらえてしまっている事に嫌悪を覚え、早く終わらせなければと感じる。そして苦しみや痛みを求め、自身の体を傷つけたいと強く願う。
3:【幻聴・幻覚】聴覚・視覚に関わる技能に-10%。そこにはいない筈の妹の声、姿が見え、自分に寄り添い支えてくれている。そしてPC3を殺してくれと懇願して、耳元で絶えず囁いて来ることだろう。
――――
●PC3
①『南玲子』という名前を知る
【『南玲子』という名前に既視感を覚える。この名前は何故かずっと自分に纏わりついていて、まるで呪詛のように張り付いて離れない様なもののように思える。
「玲子、玲子」と絶叫するように叫ばれ続けていた名前のように思う。誰の、声だったか。
そうだ、PC2の声だ。どうして忘れていたのだろう。
同時に刺すような痛みと恐ろしさが背を撫でてくる。 SANc0/1】
②自身が拳銃を握る
【震える手で銃を持った瞬間。あなたはある事を思い出す。
自分が元々銃を得意としている人間であった事をだ。
あの日、あなたは、PC2が「やめてくれ」「撃たないでくれ」と懇願する声を聴かず
ただ何発も彼女に対して発砲していた。
PC2は「自分の妹だ」とも叫んでいた。
けれど最早その妹はとっくに事切れていたのだ。
何度体に弾を受けてもそれは倒れる事は無かった。
慟哭と絶叫が耳にこびりついて離れない。
ようやく彼女の額に銃弾が撃ち込まれると、体は動かなくなり
その肢体から伸びる蔦によって徐々に彼女の体は吊るされていった。
あなたは人を殺した事がある。しかも同僚のとても大切な人を。SANc1d3/1d6
その刹那、ブツリ、という音が聞こえあなたは気を失ってしまう。
目を覚ましてもあの死体は変わらずそこに吊るされている。
けれど誰かが「相模原」と、それに告げた。
「ああならば、あれは相模原なのだ」とあなたはそう思い込むことにした。
「自分は相模原を撃っていない。ならば、違う誰かが彼女をああやって吊るしたのだ」と。】
■PC3の発狂内容:(不定、一時関わらず)以下の1d3よりチョイス
1:【殺人癖】猛烈な破壊衝動があなたを取り巻いていく、武器を持つ他人に対して身を守らなければと思うだろう。殺すのだ、殺さねば、また大切な物を失う。あなたはその人物を殺したい。
2:【自傷癖】自分の頭が、体が何かに蝕まれていくような感覚に襲われる。自身が生きている事、生きながらえてしまっている事に嫌悪を覚え、早く終わらせなければと感じる。そして苦しみや痛みを求め、自身の体を傷つけたいと強く願う。
3:【幻覚・幻聴】聴覚・視覚に関わる技能に-10%。そこにはいない筈の女の声、姿が見え、PC2の傍でこちらを指さし「ころされた。わたしはおまえにころされた。なんでころした。どうしてころした」と告げてくる。その声は止まらない。
――――
●PC4
①種の発見
PC4<博物学>成功でHOを開示
【それが、実際何なのかきっと誰にも解らない。けれど、あなたにはそれが何であるか手に取る様に解る。
これは植物の種だ。
どの文献にも、どの資料にもそれが何の植物の種であるかなど解る訳もないのだ。
何せこれは自分で生み出した種なのだから。
昔あなたは植物研究サークルに所属し、そこで南玲子に複数の不思議な種を渡された。
見た事も無い種にあなたは魅了され、好奇心から熱心に研究を始める。
奇妙で不気味な事だが、この種がよく育つ姿を見せたのは人の血を垂らした時だった。
研究に熱中していたあなたは、それも些細な事とと気にしなかった。
そこで偶然にも品種改良に成功した。その種の見た目が半透明でとても美しかった為、お礼として二人の女性に渡したのだ。
一人は南玲子。
もう一人は、三年前に植物に塗れて死んだ相模原涼だ。
彼女の死体の姿と閉じていた記憶からあなたは酷い恐怖心を覚える。
あなたは元々花を愛していた人間だ。 SANc1d3/1d6】
②PC1が銃をもったまま教会に入る姿を目撃
【PC1が拳銃を持っている。それだけで途轍もない罪悪感を抱く。
何故PC1に抵抗感を抱いていたのか、あなたは思いだす。
あの日、相模原涼はもっと暗い場所で死んだ。
少なくともあの教会で吊るされて死んだ訳ではないのだ。
誰かを追って自分と相模原は何処かを走っていた。
懐から出されるナイフに自分は気付けず、足を止める事が出来なかった。
動けずにいた自分の前に何かが躍り出す。
相模原だった。
彼女は自分を庇って腹部と胸を刺され死んでしまった。
そしてあとから来たPC1が自分達以外の誰かに向かって吼える。
自分は未だに動けない。
しかし隣にいた彼女から急に花や蔦が生い茂った。
傀儡人形のように動かされる死体。その花々の間であの種が目に入る。
あの種の所為で、彼女は人としての死を奪われた。怪物となったのだ。
そんなつもりはなかった。けれど結果を前にそんな言葉は無意味だ。SANc1d3/1d6】
■PC4の発狂内容:(不定、一時関わらず)以下の1d3よりチョイス
1:【殺人癖】猛烈な破壊衝動があなたを取り巻いていく、武器を持つ他人に対して身を守らなければと思うだろう。殺すのだ、殺さねば、また大切な物を失う。あなたはその人物を殺したい。
2:【自傷癖】自分の頭が、体が何かに蝕まれていくような感覚に襲われる。自身が生きている事、生きながらえてしまっている事に嫌悪を覚え、早く終わらせなければと感じる。そして苦しみや痛みを求め、自身の体を傷つけたいと強く願う。
3:【異常性癖】植物愛好。あなたは植物を過度に愛し、そしてそうしたものを見た時に酷い興奮を覚える。知的好奇心からか、単なる愛故かあなたには解らない。あなたは植物を傷つけられる事が耐えられない。植物を手放すことが出来ない。
NPC一覧
■NPC一覧
●NPC1:的場元(まとば はじめ)(48) 警視庁刑事部捜査一課警部
STR15 SIZ14 APP13 DEX12
EDU17 INT14 CON15 POW18
※戦闘時の技能は【戦闘開始】の部分にて記載。
【事前開示情報】
四年前に発足した『ゼロ』の元チーフ。三年前の事件より前の一年だけPC1~PC4と一緒のチームだった。
今では課も変わってしまったが、変わらず『ゼロ』を大事にしており、何かと世話をやいてくれている。
思慮深く、温かみのある人物であり、PC1にとっては頼れる上司だろう。
【KP把握情報】
部下としての『ゼロ』を大事にしているのは事実だが、重度の死体愛好家であり、その為にカルト教団に協力している。度を越している変態で、死体への興奮が中々隠す事が出来ないので、時折表情や仕草に出てしまう。
特に一番立場が近かったPC1と種を作ったPC4には話しかける事が多いといい。
●NPC2:神童大輔(しんどう だいすけ)(43)警視庁刑事部捜査一課警部
STR14 SIZ16 APP10 DEX13
EDU15 INT16 CON12 POW15
・38口径リボルバー:拳銃80% 1d10*2(その度のロール)
・組み付き 60%
・こぶし 70%
・精神分析 60%
※以下KP任意の刑事としての技能。
【事前開示情報】
二年半程前から的場の補佐をしている刑事。目元に大きな傷があり、それが原因でよく麻薬取締(麻取り)に間違われてしまう。控えめな性格で、言葉数もそこまで多い方ではない。
だがその分良く笑ったり、気遣ったりするような動作は多く、親しみやすいだろう。
【KP把握情報】
尖端恐怖症であり、刃物などにも恐怖を抱いている。捜査上どうしても纏わりつく問題ではあるが、それを何とか精神力で乗り切っている。自分がナイフを向けられた時は何とか動けるが、死体などで刺殺体があがると動揺と恐怖を抱いてしまう。
●NPC3:泉立夏(いずみ りつか)(36)大日新聞ジャーナリスト
STR10 SIZ11 APP14 DEX8
EDU12 INT13 CON8 POW11
【事前開示情報】
『ゼロ』発足当初から関わりのあるジャーナリスト。明るく世話焼きな性格でムードメーカー的存在。特に仲が良かったのは相模原涼である。『ゼロ』に何かと関わって来ては情報を提供してくれる。
【KP把握情報】
導入にて『種』について語った為、的場に殺されてしまう。彼女にとってはその『種』の出所がわかりそう程度の認識であり、この段階では誰が犯人で何故この種が生まれたのかまでは全くといい程解っていない。植物研究施設についても南玲子に関してもこの段階では解っていない。
●NPC4:猪狩幸太郎(いがり こうたろう)(32)警視庁刑事部鑑識課
STR8 SIZ15 APP9 DEX7
EDU18 INT18 CON12 POW12
・ナイフ 80% 1d4
・医学 90%
・芸術:鑑識 95%
・博物学 60%
・精神分析 80%
※以下KP任意の刑事としての技能。
【事前開示情報】
鑑識のプロであり、その若さでありながら様々なものの鑑識を依頼されている人物。これだけ見れば優秀な刑事なのだろうが、彼は空気を読む事をしない男である。不謹慎に物事を発言するも本人は気にしない。話し方も緩く、軽い。すぐに全て口に出す。
植物などについても詳しく、拳銃は苦手だが、料理が上手いためナイフ等の刃物の使い方は上手い。
【KP把握情報】
凄いどうでもいいんですが、彼は『ゼロ』のファンなので、散々関わってきます。コミケ3日目に早朝から参加する程度のオタク。秘密組織っぽい『ゼロ』に頼られている、『天才鑑識の俺』という感じなので、何かと喜んで応対してくれます。
☆相模原涼
【性格】
とても温厚で優しい人物。愛情深く、感情表現も豊かで『ゼロ』にとって大切な存在。
あとはPC1の意向に沿う形となる。
シナリオ本編:導入
■オープニング:導入
零課の面々は、的場、猪狩、神童、そして長く付き合っているジャーナリスト泉で飲み屋に集まっている。今日は相模原涼の三回目の命日だ。
三年前謎の犯人『庭師』によって殺された同僚の事、そして事件の事を絶対に忘れまいと、必ずこうやって集まるようにしているのだ。
※NPC1~4の説明(事前開示情報)を入れつつ、RPをしていく。その中でこの場面で出して欲しい台詞だけを以下に書いているので、それ以外はPCに合せて話をさせても構わない。
的場「そうか、もう三年も経ってしまったか……。俺も一応課は変わっても捜査はしているんだが、如何せん立場が立場だから上手く動けなくてな。すまない」
神童「……、そっち(零課)も大変だった……よな?最近は……しっかり眠れているか?」
猪狩「あ~確かに! あの時のアンタらって必死過ぎて怖かったんだよね~。何か心此処にあらずってやつでさ。ま~そんなところもお気になんだけどね!」
泉「幸太郎ちゃんはなんというかぶれないわね~」
各々あなた方を慮るような事を言い、時折相模原の思い出話をしていたが、徐々に事件の本格的な話し合いへと発展していった。
特にこれといって成果はないような話だったが、泉が突然得意げな顔でこう告げてきた。
泉「そもそもあの花、普通じゃなかったじゃない?あんなにいっぺんに色んな花持ち歩いていられる訳ないんだから、いっそ種が特殊だったかもしれないって私考えてたのよ」
「だからそういう点でちょっと調べものする予定よ」
それに対して的場や神童は感心するような驚いた様な言葉を言い、猪狩は「はー!オカルトっぽい!」と元気に言い出す。
猪狩「そういえば三年前ってので、なーんかアンタらに聞きたい事あんだよなって思ったんだけど忘れちゃったな。ま、大したことじゃないんだろーけど」
神童「……猪狩は鑑識しか興味がないからな」
的場「ある意味特化しているという事だろう。さ、そろそろてっぺんを越えるぞ。勘定して帰ろう」
※飲み屋を出た後は各々自由に行動するが、特にやることが無ければ帰宅して眠るのみとなる。NPCも同様。短い会話は可能だがそれ以上は不可能。
●各々自宅
三回忌という事だからか、相模原の命日だからか、それとも泉が植物の話をしたからなのか、あなた方はそれにまつわる夢をみる事だろう。
●各々にHO
PC1:あなたは何か怒鳴っている。一体何に対してなのか、どうして怒鳴っているのかは解らない。ただ視界の端で相模原涼が横たわっていた。
PC2:あなたは誰かに何かを懇願している。「やめてくれ」と叫んでいる。しかしそれも何かの音によって終わりを告げる。
PC3:あなたは誰かの声を聴きながら、ひたすら手を伸ばし力を込めている。煩い息の音は自分自身から発せられていた。
PC4:あなたは酷く怯えている。祈っている。どうしてか助かりたいのだ。何に対してとも言えず「ごめんなさい」「許してください」と泣いている。
深い深い森の中にいるような、真っ白な霧に覆われているかのような、言いようのない恐怖が静かに忍び寄っている。
そんな感覚に襲われながら、あなた方は未だ眠りの中に居る事だろう。
●早朝
まだ日の出が出ていないような時間帯だ。
あなた方は一本の電話で、乱暴に起こされるだろう。
その内容に、思わず息をするのを忘れてしまう。
「死体があがった」
「恐らく『庭師』だろう」
あなた方はその現場へと駆け付ける。
現場は、「あの場所」だった。
相模原涼が殺された教会跡地だった。
◆事件現場:教会跡地
教会に着いたあなた方を待っていたのは、丁度朝陽によってその身を照らされた遺体の姿だった。
色とりどりの花々が、瑞々しい蔦が、その肢体にしっかりと絡み付き、まるで処刑にでもあっているかのような有様で逆さに吊るされている。
白いアザレア、赤いアイビー、青い薔薇、きっと死体を苗床にしていなかったら心底美しいと思えただろう。
その苗床となっている顔に、あなた方は見覚えがある。
昨晩まで一緒に話をしていたのだから当たり前だ。
落とされた手帳とボールペン。蔦の隙間から辛うじて顔を覗かせるネームホルダー。
ジャーナリスト、泉 立夏の変わり果てた姿を見たあなた方はSANc0/1d3
全員1d100(<聞き耳>の半分で判定)→「美しい……」という声が何処からか聞こえた。
※この判定に全員失敗した場合は、PC1にのみ開示。
現場には、鑑識の猪狩、捜査一課の的場、神童の姿がある。対応に追われているようで一様に顔色が悪い。
●泉の死体
首を一突きにされ、即死。抵抗したような痕はない為一瞬の出来事だった事が解る。
<目星>→体に少量の粉のようなものがついているのが解る。
<博物学>→植物の花粉と形状が非常に似ているように思う。しかしこういう種類の花粉は見たことがないという事が解る。
猪狩「知り合いの遺体弄るのとか、調査すんの、ヤだよな」
遺体を調べていると猪狩が唐突にそう言ってくる。
猪狩「見ての通りの死因だけどねー……花とかについてはこっちでちゃんと調べて捜査本部で上げっから任せてな」
「にしても、こうやって吊るしているのみるとさ~……相当な筋力を持ってるか、複数人か、はたまたはまた違う何かありそうだよねえ~」
※猪狩からの情報は特に無し。上記のように調べ終わってから伝えてくれる。
※神童or的場から得られる情報は以下の点のみ。
・泉が飲み屋を出てからの足取りも目撃証言もなし
・彼女のパソコンやスマートフォンから一切のデータが抜かれている。
・手帳も中身は全て抜かれている。
的場「帳場(捜査本部)が立つだろう。基本的に指揮を執るのは俺になるだろうが、お前達はお前達で動けるように取り計らおう。PC1、しっかりな」
そう言って的場はPC1の背を叩く。
※その他やりたい事があればやっても構わないが、この場から動く事は不可。
※この段階で得られる情報は以下の通り。
・的場の顔色が殊更に悪いように思う。
<心理学>→何か感情を押さえているように思う。
・神童も心此処にあらずというような態度だ。
<目星>→暫く様子を見ていると、自身の目元にある傷を撫でて顔をしかめている。
・教会周り
都心の中に埋もれた寂れた教会跡地だ。三年前よりも古びているように思うだろう。苔や蔦で覆われたゴシック調のその教会の裏には、硝子のオブジェクトが泉を取り囲んでいる。これも三年前と変わらない。オブジェは数個壊れてしまっているようだ。
泉自体はまあまあ透明だが、草が好き放題に生え茂っている為奥底は見えない。特にこれといって目ぼしいものは無いようだ。
■捜査開始
◆捜査本部:『庭師特別捜査本部』
捜査本部には多くの長机と椅子が並べられ、大きなホワイトボードが用意されている。
三年前刑事が殺害され、未だ犯人である『庭師』が逮捕されていないという事もあり、大掛かりな本部となっている。進行として的場が話を進め、管理官なども合間合間で何かの指示を出している。鑑識課の猪狩も判明した事について発言しているようだ。
『庭師特別捜査本部』と銘打たれたその本部では以下の事が伝えられた。
●内容
・泉立夏の足取りについて。
昨晩零課、並びに的場、猪狩、神童と呑み屋から出た後の足取りは不明。帰宅した痕跡はない事から、その帰りの間に殺害された可能性が濃厚。
・死亡推定時刻はAM01:00~02:00の間。
・彼女の体に付着していた粉については現在猪狩が調査をしているが、現状で言えることは『花粉』であるとのこと。
・泉立夏はパソコン・スマートフォン・その他の端末全てを必ず持ち歩いていた。家に置き去りにしたり、自分自身の手の届かない所におくような事はしない。そこを狙われたようだ。彼女はホテルを転々としていた。彼女が昨晩まで過ごしていた部屋からは何も見つかっていない。
・泉立夏交友関係について
人間関係、恋愛関係に於いてこれといって問題があった訳では無いようだ。彼女自身何かに困っているという情報も上がっていない。
<アイディア>→確かにそういった悩みなどはないように思える。何かあった時は必ずこちらに話を持ちかけている印象だ。
「三年前の『庭師』と同一犯、もしくはその模倣犯であると思われる。今日までその足取りを掴めていない事を考えると、また逃げられる可能性もある。僅かな情報でも構わない、足と頭を使って捜査をしろ」
そこに付け加える様に的場が主な段取りを告げていく。零課も指示を出されているようだが、先程的場が言ったように、好きに動いても構わなそうだ。
全員1d100
(POW*3に成功)「何か違和感を抱く。妙な感覚だ。だが、この感覚に覚えがあるように思えた」
※ここからは自由に行動が出来る。しかし基本的に二人一組での行動となる。
たった一人で行動する事は不可。
■捜査可能場所
<警察署内>
◆鑑識課[jump:9]
◆捜査本部[jump:10]
◆捜査資料室[jump:11]
◆零課[jump:12]
<屋外>
◆教会[jump:13]
◆南玲子のアパート[jump:14]
※これは捜査資料室にて、情報を得た場合のみ住所が開示される。
<警察署内>
◆鑑識課
鑑識課の猪狩のいる一角は良く解らないアニメキャラクターのフィギュアやブロマイドがこれでもかと並べられている。首からヘッドフォンを下げ、鼻歌交じりに彼は作業をしていた。顕微鏡で例の花粉を調べているようだ。
猪狩「やあやあ!全く解らなくて困ってんよー」
そう軽快な口調で告げてくるだろう。
猪狩が持っている情報
【・『花粉』である事は間違いないが、所々人間の細胞に近しいものも見つかっていて困惑している。
・しかもあれだけ見た事のある花が咲いていたのに何の『花粉』なのか解らない。
・また変異が始まりだしており、最初は明確に『泉立夏』のDNAだと判別出来た死体の状態も、みるみる内に失われていっている。まるで生きているようだ。
・零課以外にも刑事は来ていたように思うが、同じような内容を伝えてある。
・(神童の現場での行動について聞いたら)神童刑事の目元にある傷は昔彫刻刀で受けたものらしい。何か思う事があったんじゃないか。目元に刃物なんてあてられたら怖いだろう。
・(的場の現場での行動について聞いたら)的場警部も人間って事なんだろう。それ以上は野暮な事だ。】
PC4<博物学>→顕微鏡で改めて見てみると、やはりこんな種類の花粉は見たことが無いように思う。であるのに酷い嫌悪感を覚える。見るに耐えない。
PC2<オカルト>→死刑囚のDNAが含まれた植物の事を思い出す。カルト教団が関わっているのでは?
<目星>→殺害現場の写真がホワイトボードに貼り出されている。そんな中丁度写真一枚分のスペースが空いている事に気付ける。
※これを猪狩に問うても「なんでだー?全部印刷したんだけどなあ。まあゲラあるからいいけどさ」と言ってその写真(〇泉立夏の全体写真)を見せてくれる。
〇泉立夏の全体写真
現場で見たままの状態で映っている。特に目ぼしいものは見付かっていない。花も全て綺麗な色彩で写真に残っている。
猪狩「そういえばさ。昨日アンタらに何か言おうと思ってた事思い出したんだよね。三年前何かアンタ達捜査してなかったっけ?しかも俺にも内緒!つめたー!」
<アイディア>→記憶にない。記憶にない筈だが、何か調査していただろうか?思い出せない。
猪狩「まあきっとその捜査以上の事が起きちゃったから、思い出せないんだよな。悪かった悪かった。あー!アンタら結構秘密裏に動いたりしてたし、これからも俺に内緒で色々やるんだよなー!……はあ、仕事すんね」
猪狩はいじけたようにそう言って、鑑識の仕事に戻ってしまうだろう。
◆捜査本部
殆どの刑事達が外に出てしまっているようだ。しかし的場はホワイトボードの前で静かに情報を整理している。彼の部下である神童の姿はない。
<目星>→何か紙のようなものを懐に仕舞ったように思う。
※『泉立夏の全体写真』
※正直ここで手に入る情報は無い。強いて言うならば、的場が言っている事に対して嘘を言っているかどうかを見極める事が出来るかどうかという点のみとなる。
【的場が持っている情報
・現場での様子について追及すると「そりゃあ……知り合いが死んだからな……。俺だって抑えられなくなるものがあるんだよ」
<心理学>→少し違和感を抱く
・『庭師』について→「『庭師』のやっている事は許せない。何としても掴まえなければならないが、まずは足取りから洗う必要がある」
・捜査しにいかないのかor神童について尋ねられると→「神童は別行動中だ。調べたい事があるらしい。俺はもう少し状況を整理してから神童と共に調査しようと思っている。あいつも何を一人で調べているんだろうな。何か知っているか?」
・隠した物について→「家族の写真だ……。すまないが照れ臭くて見せられないぞ。別れた家族だからな……」
※独身なので嘘】
<目星>→帰り際的場がタブレットケースを見詰めている姿が見える。
中身は錠剤なのか何なのか解らないが、遠巻きに見て色が無い透明に近い色のもののように思える。
◆捜査資料室
資料室に向かうと、神童が書類を読みながら考え込んでいる姿が見える。三年前の事件のファイルを漁っているようだ。
<目星>→何かを仕舞ったように思う。ビニールに入った透明の錠剤のようだ。
※的場から隠れて入手した種を持っている。(本人は種だと解ってはいない)
【神童が持っている情報
・事件現場での行動を尋ねられる→「知り合いが死んだから、まあ……考え事をな」
「ああいう傷口は厭だよな……」
・的場について→「警部には悪い事をしているとは思うが、あの人もあの人で考える事がありそうだからな……。お前達よりも関わりが浅いので、俺にも解らない事が多くて」
・三年前の事件について→「……いや、『庭師』が現れたのが三年前だからな。何かないかと思ってもう一回洗い直しをしているだけだ」
・書類をまとめた人物などを聞かれると→「いや……調書は〇〇(知っているが今回とは関係ない刑事の名前)だろう……。カルト関係の書類は……『ゼロ』が調べていたんじゃなかったか……? ん……」(記憶の混乱が起こり、これ以上は解らない)】
<図書館>→ふ、と目にとまるファイルがある。何度か手に取った筈なのだが、まるで初めてみたかのような感覚に襲われるのは何故なのだろうか。
『庭師による猟奇殺人事件』『人花教(じんかきょう)狂信者』という二種の書類が見付かる。
●『庭師による猟奇殺人事件』
三年前の日付、文責などが記載された上で、以下のように書かれている。
相模原涼刑事が発見されたのは早朝。教会跡地にて植物などで吊るされており、腹部には深い切り傷があった。
死因は失血死である。
尚、第一発見者は警視庁特殊犯罪捜査零課、PC1班の総勢四名である。
相模原の死体損傷は激しく、特に顔は判別できない程花や蔦で歪んでいたが、状況証拠からして、相模原涼本人であるとされた。
死後五~六時間経過しており、冬の気温だと言うのに細胞の崩壊が激しく、詳しいDNA調査などはされていない。
当初、PC1班は精神不安定な状態であり、すぐに話を聴くのは不可能であった。
少々の時間を経た後、調書を取ったが、上記班の精神面は芳しくなく、また再度の取り調べが必要だと思われる。 以上。
<アイディア>→覚えていない。確かに取り調べは受けた記憶がある。しかしそれは一回きりだ。「再度の取り調べ」を受けたという記憶はないように思える。
●『人花教狂信者』
『庭師による猟奇殺人事件』の元、あるカルト教団が浮上。『人花教』という自然帰依、植物回帰を目的とした教団である。
彼らの目的は、「人間の安らかな死」「自然のままの終わり」であり、死体を花で包む、もしくは死体を苗床に花を植えるという行為をしているようだった。
教団員は皆、入団の儀式として首元に小さな穴を開け、そこに種を埋め込むようにと教えられていた。
儀式自体は強制では無いようで、自身が「埋めたい」と思った種を選ぶまでは猶予を与えられるらしい。
このカルト教団は予てより薄暗い話題が多く、失踪者も多く出ていた。その失踪者の内の一人と接触し、よく表舞台に出ていた重要参考人が『南玲子(みなみれいこ)』である。
彼女の住まいは『●●都〇〇区×××-×-×××』であるが、2XXX(三年前)より消息は不明である。彼女のアパートは調査が入ったが、驚くほど何も無く、彼女と共に消えてしまったカルト教団も現在捜査中である。
☆『南玲子のアパートの住所』を入手
【PC3にHO
『南玲子』という名前に既視感を覚える。この名前は何故かずっと自分に纏わりついていて、まるで呪詛のように張り付いて離れない様なもののように思える。
「玲子、玲子」と絶叫するように叫ばれ続けていた名前のように思う。誰の、声だったか。
そうだ、PC2の声だ。どうして忘れていたのだろう。
同時に刺すような痛みと恐ろしさが背を撫でてくる。 SANc0/1】
<目星>→文章が敷き詰められたその書類に、不自然な開きが見付かる。そこには恐らく『南玲子』という人物の顔写真が入っていたのだろう。頁を捲ってみても、他を探してみても、その写真は見付からない。
<アイディア>→調査資料に関して、署内のパソコンで一部閲覧できることに気が付く。しかし、閲覧レベルがあり、物によっては調べられない事も思い出すだろう。
※PC2には補正が付き、それ以外のPCは<コンピューター>の半分で判定となる。
※PC2以外には「自分には難しいかもしれない」という内容を伝える。
<オカルト>→『人花教』という宗教は昔からある宗教では無い。どちらかと言えば、19世紀後半ごろに現れた新しい方の宗教であり、本来は「この世界からの脱却」といった社会に適合しきれなかった人々が、その逃避の為に築いた思想だ。彼らは「土」「植物」「花」などに固執し、儀式で使用する物や、自身の大切な物を一時の保管場所としてそうしたものを用いることがあった。
◆零課
それぞれのデスクと仮眠室が設置された程々に大きなオフィスとなっている。自身で何か調べものをする際は、自分のパソコンを利用してもいいだろう。
パソコンで警察内部の情報を調査する場合、閲覧レベルに達していないものの資料に関しては「普通ならば」調べる事は出来ない。
誰にも悟られず情報を閲覧するには、それなりの技術が必要になる。
それぞれのデスク情報
●PC1
『ゼロ』結成当時の写真が飾られている。その裏には、何故か指輪(小物のアクセサリー、友人だった場合は警察バッジ)が貼り付けられている。
<目星>→僅かに血痕が付着している。指輪の裏には0229と彫られているようだ。
※PC1はこれが『相模原涼』のものだと解る。2月29日は婚約記念日だ。だが何故ここにあるか思い出せない。
●PC2
引き出しの奥から誰かの写真が見付かる。女性のようで裏を見れば『人花教 カルト教団重要参考人/南玲子』と書かれている。
※書類で欠落していた写真を三年前のPC2が隠し持っていた名残。何故ここにあるか思い出せない。
●PC3
机の書類を整理してみると、ころりと何かが転がる。薬莢(やっきょう)のようだ。
※弾は警察指定の拳銃のもの。PC3は記憶にない。
●PC4
引き出しの中にボロボロの冊子が入っている。
何かの植物について書かれた資料のようだが、くしゃくしゃであったり破られていたり、線が引かれている為読む事は出来ない。
※PC4は自分のものと解るが、何故ここにあるか解らない。
◆零課:資料保管室
今まで調べていた資料などが並べられてあるが、常に使っている為そこまで珍しいものがあるようには感じられない。
けれど、どこか頭の奥で何かが引っかかっているような感覚を覚えるだろう。
<目星>→資料の並びが狂っている書棚がある。
気になり、そこを調べてみれば、奥には小さな金庫が隠されていた。どうにも記憶には無い。
パスワードは4桁の数字のようだ。
【0229】と入れると、カチャン、と開くような音が聞こえる。
金庫の中には『被疑者Xについて』と書かれた簡易的な書類が入っているだろう。
●『被疑者Xについて』
日付は丁度三年前となっている。
所々にPC1、2、3、4の名が記されていた。
誰が主立って書いたかは解らない様に態々そうしているようだ。
Xは重度の死体愛好の癖があるようである。
殺人事件の調査の最中、数枚写真が抜かれている事も確認されている。
更には、妙なカルト教団と内通し何人かの遺体も渡しているようだ。
遺体に関しては、未だ状況証拠のみとなっている為、
実際渡している現場を押える必要があるだろう。
また、これは警戒すべきかは解らないが、Xは何らかの方法で人の行動を操っている節がある。
所謂マインドコントロールなどのそういったものではなく、もっと不可思議なものだ。
説明が非常に難しい。
現に、こうして調査している中でもところどころの抜けを感じてしまう。
これの対処方法が解らない為、何か怪しい行動をした際はそれも記載していく。
【PC2:<コンピューター>の成功で開示
・『南玲子の顔写真』→画像が数枚出てくる。その内の一枚を拡大すれば、物静かそうな女性がそこには映っていた。
・『死刑囚02417・02927その他NOの特別執行について』
→通常、死刑執行は複数人の目がある中で行われるが、例外が数人上がっているらしい。自身が調べた死刑囚の名前もある。この人々はいったいどこに消えたのか。
・『死体安置所の立ち入り記録』
→何人かの警察関係者の名前を見つけるが、頻繁に名前が挙がっているのは猪狩、神童、的場、そして『ゼロ』の面々のようだ。】
※猪狩、神童、的場の三人は全員『未解決捜査の糸口になる可能性がある』という理由を口にする。
猪狩は解剖の必要性があるかないかを見定める為。神童は身元不明の死体の家族を探す為。的場は己の欲の為となるので<心理学>に成功すれば「何か隠している」となる。
<アイディア>→何かの、いや、誰かの調査の為に安置所に向かったような記憶がある。しかしうまく思い出せない。
【『南玲子』の写真をPC2が見た時点でHO
この顔に覚えがある。本当に微かな類似点でしかないが、あなたは直感する事だろう。
これは、自分の妹だ。
ずっと探していた妹の情報が目の前にある。しかも「重要参考人」として。
生き別れた妹はその異常なカルト教団に属している可能性が高いようだ。
SANc0/1】
署を出る際に全員1d100(POW*5の成功で)「厭なものが迫っているような感覚だ。けれど、何処かそれを待ちわびているような気がする」となる。
<屋外>
◆事件現場:教会跡地
早朝に現場を見た時と殆ど同様の状態だった。異なる事とすれば、見張りをしている警察官だけが立っているという状態である事、またその分見晴らしがよくなっているという事だ。
●泉立夏遺体発見現場
植物の蔦や、花弁が未だ残っている。天井や壁からそれらが伸びていた訳ではなく、本当に彼女の遺体から植物が生い茂っていたようで、建物などには苔程度しかこびりついていない。
<聞き耳>もしくは<幸運>→早朝の雑踏がなくなった御蔭か、何処からか妙な風の音が聞こえてくる。窓や扉などからではなく、どうやら足元からのようだ。
●床
一見すれば誰も気が付かない様な些細な変化のように思う。教会の床に描かれた模様の一部と思えば確かにそうだろう。
しかし、それは模様では無く窪みだった。指先で軽く土埃を払えば小さな鍵穴が見付かる。
※南玲子のアパートに鍵がある
<アイディア>→この床の奥を知っているような奇妙な既視感を覚える。
<目星>→何かきらりと光るものが見付かる。泉が吊るされていた壁のひびの間にそれがあるようだ。手に取ってみれば、半透明の欠片のようだ。
●半透明の欠片
半透明の欠片で、米粒程度の大きさしかない。中から何かが割れて出てきたように、真ん中で真っ二つに分かれている。
【PC4 種についての<博物学>成功でHOを開示
それが、実際何なのかきっと誰にも解らない。けれど、あなたにはそれが何であるか手に取る様に解る。
これは植物の種だ。
どの文献にも、どの資料にもそれが何の植物の種であるかなど解る訳もないのだ。
何せこれは自分で生み出した種なのだから。
昔あなたは植物研究サークルに所属し、そこで南玲子に複数の不思議な種を渡された。
見た事も無い種にあなたは魅了され、好奇心から熱心に研究を始める。
奇妙で不気味な事だが、この種がよく育つ姿を見せたのは人の血を垂らした時だった。
研究に熱中していたあなたは、それも些細な事とと気にしなかった。
そこで偶然にも品種改良に成功した。その種の見た目が半透明でとても美しかった為、お礼として二人の女性に渡したのだ。
一人は南玲子。
もう一人は、三年前に植物に塗れて死んだ相模原涼だ。
彼女の死体の姿と閉じていた記憶からあなたは酷い恐怖心を覚える。
あなたは元々花を愛していた人間だ。 SANc1d3/1d6】
※◆南玲子のアパート(資料室で情報が出た時に開示)
そこは質素なアパートだった。前もって得ていた情報の通り、警察が調べきった部屋なのだろう。
というより、驚くほど調べられる場所が無い。引き出しを開けようとも、押入れを覗こうにも、物がないのだ。あるとすればベランダで枯れ果てた花と大きな植木鉢程度。
彼女が此処で暮らしていたかどうかすら怪しい場所だ。
●植木鉢
枯れた花を引き抜き、土を掘っていくと、ビニールでぐるぐるにパッキングされた何かが現れる。それを破って中身を出してみると、手帳と、小さな鍵が入っていた。
●小さな鍵
何かの鍵なのだろう。小さく花の文様が入っている。鍵と一緒に何かきらりと光るものが落ちた。
※地下聖堂へ続く鍵
●半透明の欠片
半透明の欠片で、米粒程度の大きさしかない。中から何かが割れて出てきたように、真ん中で真っ二つに分かれている。
●手帳
彼女の手帳のようだ。最初こそ整然と書かれていた日記だが、最後に記載されているのは人花教の教えか何かだろうか。
〇月〇日
兄(姉)は見付からない。
何処に行ってしまったんだろう。
ずっと探しているのに。何処にも見つからない。
〇月〇日
教会の人々が、兄(姉)は死んだと言ってきた。
花になったのだと言った。
とても綺麗な花を渡してくれた……。
本当に兄(姉)はこうなってしまったの?
何て……綺麗なんだろう。
〇月〇日
植物について研究しているという刑事に出会う。
興味本位で「例の種」を渡した。
珍しいといって喜んで持ち帰ってくれた。
〇月×日
数か月後になって、あの刑事が種を渡してきた。
半透明で美しい種だった。
「一つは同僚の女性にあげた」などと言って笑っていた。
私に埋める種はこれにしよう。とても美しい。
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嗚呼、我らが祖にして、麗しき花ヴルトゥーム
その甘き香りの前では誰もが魅了され
その美しさの前では全てが平伏すだろう
我らが意志もその下に
御身の御心のままに
彼岸で咲く一輪の花となり
未来永劫あなたに仕えよう
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<オカルト>→「彼岸で咲く一輪の花」という言葉で思い当たる事がある。『地獄の植物』という植物の事だ。それは人や生物に寄生し、その苗床となるものの死などによって芽吹くらしい。
シナリオ本編:夜
■夜
白い息を吐きながら捜査を続けていた面々。明日も早いとの事で、今晩は零課の仮眠室やソファを使って泊まる事になった。
☆一カ所だけデスク以外の場所に行く事が出来る。
ここで情報があるのは捜査本部のみ。
デスク、捜査本部には誰かが居た方がいいので、夜の警察署内のみは単独行動が可能と告げて良い。
●零課
※何か話したいようであればここでRP腹の探り合いなども出来る。
※ある程度のところで、<聞き耳>→外から言い争うような声が聞こえる。
窓の下を見てみれば、署の出入り口で猪狩、的場、神童の三人が何か言い争っている姿が見える。
的場「神童……疲れているのなら、もう帰って休め。何を興奮しているんだ」
神童「…………ッ、的場さん……さっきの質問の答えを教えてください……それだけでいい」
的場「俺が家族写真を持っていたらそんなに可笑しいか?」
神童「……家族写真……? 貴方、家族なんて……」
猪狩「ど、どーしたの神童ちゃんも的場ちゃんも~! 神童ちゃん一緒に的場ちゃんの家族に会った事あるじゃんー?」
神童「……? な、んだ……?」
的場「……はあ、やはり疲れているんだ神童。ゆっくり休め、な?」
神童「……、……そう、でした……何で忘れて……? いや、……すみま、せんでした」
神童も的場も、猪狩も酷く動揺している様子だったが、的場は気を取り直したかのように僅かに微笑み、神童の背を叩く。
そして労うような言葉を伝えて、そのままその場を去っていってしまうだろう。
神童と猪狩も一言二言何か話してから、各々その場を後にしたようだった。
的場の家族構成について疑問が挙がった場合は<アイディア>→そもそもあまり、そういった話をしたことが無いように思う。だが確か、恐らく、居たはずだ。よく思い出せない。
●捜査本部:夜
未だ、数名の警察官が夜通し作業をしているようだ。
これといって進捗は無いらしい。
<目星>→報告書などの書類とは別に、床に何か古い紙が落ちているのに気が付く。
『CLOUD MEMORY』と書かれたメモだ。全て英語で書かれている。
<英語>or<知識1/2>→『記憶を曇らせる』という何か呪文のようだと解る。
●『記憶を曇らせる』呪文
この呪文の対象になった者は、ある特定の出来事を意識的に覚えている事ができなくなる。
この呪文をかけるためには1d6マジック・ポイントと1d2正気度ポイントのコストがかかる。呪文の効果は即時に現れる。
呪文の使い手は対象が目に見えていなければならず、対象は呪文の使い手の指示が受け取れるような状態でなければならない。
■深夜
本当に僅かな睡眠時間であったが、こうした生活を続けているあなた方にとってはまあまあ深い眠りが出来たというところだろう。
もう少し眠ろうか、というところで激しく零課の扉が開かれる。
猪狩「ちょっとお!聞いてよゼロ!!」
猪狩があなた方を起こすように資料で顔や体を叩きながら、何かを喚いている。
猪狩「『庭師』の事もあったからさあ! 三年前のデータも引っ張り出して鑑識してみたんだよねえ!」
「そーしたらビックリ。今回の遺伝子や細胞の変質も加味して調べ直してみたらさ、三年前の死体、なんかおかしいんだよなあ!」
「何がおかしいってさ、女性って事以外解らないってのは元々の見解なんだけど」
「あれ、涼ちゃんですらないかもなんだよね」
「というかほぼ90%の確率で別人?」
「でもさあ、第一発見者はゼロじゃん??見間違う訳ないし??」
「誰が涼ちゃんって言ったかしらないけど、これってどーいうことよ」
「とゆーか、何であそこで皆発見できたのさ? いー加減秘密は無しだぜ?」
【PC1にHOを開示
一番初めに「相模原」と彼女を呼んだのは自分だ。
それは間違いない。けれど何故そう呼んだのだろう。
あれは彼女では無いと、そう告げられた瞬間に、あなたにある光景が蘇る。
暗い場所を走っている。恋人とPC4を追って走っていた。
その道の先で「相模原涼」とPC4の悲痛な叫び声、そしてもう一人の影があった。
PC4が泣き叫んでいる。謝っているようだ。その謝罪は相模原に向けられていた。
暗がりで動き、かくりと首を傾けた彼女に無数の花や蔦が生い茂っていく。
耳の端で「美しい」と言う興奮したような声が聞こえていた。
そうだ。何故忘れていたのだろう。
いや、何故思い出してしまったのだろう。
ちらつく記憶の中で、彼女は吊るされていなかった。横たわっていたのだ。
その額に穴を空けた状態で、ただ横たわっていた。
ではあの吊るされた死体を見て、何故自分は彼女の名前を呼んだのだろう。
SANc1/1d3】
全員1d100(POW*6で判定)→「自身が抱いていた記憶とのズレ感じる。靄が晴れていくように鮮明になっていく。誰かに操作されていたかのような感覚だ。SANc0/1」
【猪狩の持っている情報
・先程の言い争いについて。→「神童ちゃんが問い詰めにいった感じだったから止めに入っただけだけど。的場ちゃんは家族写真って言ってるし、そうじゃんね?」
「あれ……?ん?そうそう……?」首を何度か傾げながら頷く。(記憶が曖昧で上手く答えられない)】
■早朝
※猪狩との会話やRPのキリのいいところで早朝へと移行する。
朝陽が僅かに零れ入る様な時間。窓から外を見れば、うっすらと霧がかっている。今日も寒いのだろう。
そこに一つの無線が入る。
「各部隊に通達。各部隊に通達。警視庁捜査一課神童大輔刑事が拳銃を所持したまま消息不明。繰り返す、警視庁捜査一課神童大輔刑事が拳銃を所持したまま消息不明」
「止めようとした警備員を殴打し怪我を負わせたとの事」
「総員、これは緊急事態である。拳銃の所持を許可。これより神童大輔容疑者の捜索にあたる様に。容疑者は銃を所持している」
このような無線が繰り返し流れている。PC1にも個別に連絡が入り、零課も神童の捜索にあたる事となった。
聞いていた猪狩も何か理由を言ってついていこうとする。
神童と最後にあったのが自分なので、何かと心配なようだ。
●拳銃保管室
各々が各々の名前のある拳銃と防弾チョッキを装着する。確かに「神童大輔」の場所には拳銃が無い。
<目星>→更に気が付くのは、もう一丁拳銃が持ち出されている事だ。そこに名前は無い。元々はネームが入っていたのだろうが、剥がされているようだ。
<アイディア>→その場所は、元々「相模原涼」の銃があった場所だ。
【PC1にHO開示
銃を持った瞬間。あなたはある事を思い出す。
それは銃を撃った時の感覚だ。その独特の振動と匂いをあなたは鮮明に思い出す。
あなたは撃ったのだ。過去、人を殺すためにその銃を放った。
愛する人を殺すために。
その肉体が綻び、花が芽吹き切る前にと。
泣き叫び謝り続けているPC4の声を聴きながら、
あなたは相模原涼を殺した。額に一発の弾丸を撃ち込んで。
その死体が床に崩れ倒れる姿まで、あなたははっきりと思い出す。
暗いその空間で、腹から血を流しながら彼女は事切れたのだ。SANc1d3/1d6
その刹那、ブツリ、という音が聞こえ以降の記憶は残っていない。
次に目が覚めた時、あなたは教会の祭壇近くでしゃがんでいた。
そこで吊るされていた別の女性の遺体を見て、あなたは咄嗟にこう思う事にした。
「あれは相模原だ。彼女は「誰か」に殺されて「吊るされた」のだ」と。】
【PC3にHO開示
震える手で銃を持った瞬間。あなたはある事を思い出す。
自分が元々銃を得意としている人間であった事をだ。
あの日、あなたは、PC2が「やめてくれ」「撃たないでくれ」と懇願する声を聴かず
ただ何発も彼女に対して発砲していた。
PC2は「自分の妹(姉)だ」とも叫んでいた。
けれど最早その妹(姉)はとっくに事切れていたのだ。
何度体に弾を受けてもそれは倒れる事は無かった。
慟哭と絶叫が耳にこびりついて離れない。
ようやく彼女の額に銃弾が撃ち込まれると、体は動かなくなり
その肢体から伸びる蔦によって徐々に彼女の体は吊るされていった。
あなたは人を殺した事がある。しかも同僚のとても大切な人を。SANc1d3/1d6
その刹那、ブツリ、という音が聞こえあなたは気を失ってしまう。
目を覚ましてもあの死体は変わらずそこに吊るされている。
けれど誰かが「相模原」と、それに告げた。
「ああならば、あれは相模原なのだ」とあなたはそう思い込むことにした。
「自分は相模原を撃っていない。ならば、違う誰かが彼女をああやって吊るしたのだ」と。】
署から出る手前で、暴行を受けたらしい警備員が座り込んでいるのが見える。
警備員「多分、神童刑事だと思う……頭を打ったせいなのか何なのか、記憶が曖昧でわからないが」
「ああ……確か、『あの場所』に、行かなくては……と、誰か、言っていたな……」
※実際は、的場が拳銃を持ちだす姿を見た神童が、同じように拳銃を所持し尾行したところ、的場が止めに入った警備員を殴打した姿を目撃。的場は警備員に『記憶を曇らせる』をかけ、倒れそうになっていたのを支えた神童を犯人と認識させた。神童は的場を追い、署を出て行った。
◆教会跡地
教会の現場は変わらない。三年前と面影は変わっていない。
この場所に立ち入るのは、果たして何回目なのだろうか。
【PC2にHOを開示
ふとPC3に目が行く。拳銃を所持して立っているその姿に激しい既視感と恐怖、
そして憎悪が襲ってくる。
この教会で、あの祭壇の付近で、PC3は銃を何度も放っていた。
自分は叫びながら「やめてくれ」「撃たないでくれ」と言っていた。
それでもPC3は撃ち続けた。
PC3が撃ち続けた対象は、他でもない自分の妹(姉)だった。
その体の腹部の切り傷から大量の血を流しながら、
それでも植物に抱かれて立っている妹は、既に人間のそれではなかった。
駆け付けた時から、そんな事は解り切っていたが、あなたはどうしても彼女を抱き締めてやりたかった。
けれど、その望みは消え失せる。
あなたは目の前で探していた妹を殺された。
あなたが探していた妹はすでにこの世に居ない。SANc1d3/1d6】
【PC1が拳銃を持っている。それだけで途轍もない罪悪感を抱く。
何故PC1に抵抗感を抱いていたのか、あなたは思いだす。
あの日、相模原涼はもっと暗い場所で死んだ。
少なくともあの教会で吊るされて死んだ訳ではないのだ。
誰かを追って自分と相模原は何処かを走っていた。
懐から出されるナイフに自分は気付けず、足を止める事が出来なかった。
動けずにいた自分の前に何かが躍り出す。
相模原だった。
彼女は自分を庇って腹部と胸を刺され死んでしまった。
そしてあとから来たPC1が自分達以外の誰かに向かって吼える。
自分は未だに動けない。
しかし隣にいた彼女から急に花や蔦が生い茂った。
傀儡人形のように動かされる死体。その花々の間であの種が目に入る。
あの種の所為で、彼女は人としての死を奪われた。怪物となったのだ。
そんなつもりはなかった。けれど結果を前にそんな言葉は無意味だ。SANc1d3/1d6】
●教会地下道
床下の扉に小さな鍵を使うと、カチャリと鍵の開く音が聞こえた。
開ければ奥は暗く、冷え切っていた。地下道になっているらしい。
全員1d100(POW*8で判定)※自動成功
【成功者全員に開示
自分達は覚えている。この道を覚えている。
PC1:そこで一人は大切な人を殺した。
PC2:そこで一人は大切な人を見つけた。
PC3:そこで一人は大切な人を守る為に撃った。
PC4:そこで一人は大切な人を苦しめてしまった。】
光のない深い深いその地下道を歩みながら、自分たちの吐く息は霧のように宙を舞い続ける。
吸い込む空気はどれも冷たく肺を満たしていく。
聞こえてくるのは自分たちの息遣いと、靴の音だけだった。
シナリオ本編:クライマックス
■クライマックス
地下道を進んでいけば、重々しい扉が目の前に現れる。誰かが言い争っているようで、声が聞こえてくるだろう。
<聞き耳>→神童と的場の声のように聞こえる。
◆地下聖堂
そこは草木が生い茂る地下庭園のように思えた。その部屋を敷き詰める様に緑の絨毯が敷かれ、色とりどりの花が咲き乱れている。
それは床だけに留まらず、天井にまで続き、とても美しい光景だと思えた。
部屋の中心では的場と神童が拳銃を手に対峙している。
こちらには気が付いていないようで、何か怒鳴り合っているように思えた。
呆然とし、困惑し、つい視線が部屋へと戻ってしまう。それによりあなた達はこの部屋の全貌を改めてみる事が出来た。
その草木は未だに増殖と成長を続けている。
床の草木もよく見れば異様な盛り上がりがあるだろう。人の形をしているようにも思う。
そして二人の刑事が対峙している先の壁に十字架が掛かっている事にも気が付く。
そこに恭しく飾られている花と女性にも目が留まる。
うっすらと輝く冷たい光は、彼女の体に巻きつく花と蔦から発せられている。
一際美しく輝く銀色の花は、左胸で大きく咲き誇り、息を吸うように時折波打っていた。
その脈動に呼応するように、周りの植物達はゆっくりと成長し続けているようだった。
彼女の顔を、忘れた事は無い。
彼女、相模原涼の遺体は未だ生きているかのように美しくそこに吊るされていた。SANc1/1d3
神童「あんたがやったんだろ、これも、三年前も! どうなんだ!?」
的場「落ち着け神童……! そもそも拳銃を持ったまま出て行ったのはお前の方だろう!」
「理由が何だか知らないが、銃を下せ」
神童「何を言っているんだ……あんたが警備員を殴って……」
神童が狼狽える様な表情を浮かべ、数歩的場から距離を取る。
その刹那、床全体が大きく脈打った。
何事かと辺りを見回せば、部屋全体に蔓延っていた植物や蔦が自分達を飲込む様に大きな壁を作り始めている。
<DEX*5>→成功者は失敗者を助ける事が可能。
的場も神童も動く事が出来ないのか、その場から駆けるような真似をしていない。
DEXが最も高い者のみ、どちらかの手を引く事だけは間に合うだろう。
時間は限りなく少ない。
制限時間の間にどちらかを選ばない場合は動けなかったという判定となる。
制限時間30秒。
※ここで的場を選んだ時点で、神童がロスト。戦闘ラウンドに移る。
神童に何とか駆け寄り、PC4は彼をこちら側へと引き込んだ。草木たちが的場の近くまで伸びようとした時、それはぴたりと止まる。
的場「はは……酷いもんだ。俺を見捨てるなんて」
彼はうっすらと微笑み、何処か寂しそうに言った。
的場「お前達は大事な部下だったんだが、また性懲りもなく昔の事を思い出してしまったんだな」
「大変だったよ……。何度も思い出そうとするものだから、何度も記憶を奪う事になって手間だった」
的場は相模原の死体を見上げてから、再度こちらを見詰めるだろう。
「別に泉を殺す気は無かった……また記憶を奪えばいいと思っていたからな」
「でも、この種が三年越しに手に入った……相模原を媒介として、ようやく……」
「そうしたらもう止められなかった……」
「泉の死体を見て思ったよ」
「見知った顔が、花に囲まれ死ぬ姿は……他のどれよりも美しくて、……興奮する」
彼はパチンと指を鳴らす。草木の塊が1d2+2体現れゆらゆらとあなた達を囲むだろう。
的場「だから、今回は三年前とは違う」
「丁寧に全員殺そうか……」
【戦闘開始】
攻撃対象『的場元』『相模原涼』『地獄の植物』
●的場元
・NPC1:的場元(まとば はじめ)(48) 警視庁刑事部捜査一課警部
STR15 SIZ14 APP13 DEX12
EDU17 INT14 CON15
・回避 60% ・拳銃:50% 1d10*2(その度にロール)
・ナイフ:80% 1d6
・呪文:恐怖の注入60% (PC1に固定) 0/1d6のSANc
※戦闘中RP例 臨機応変に
「お前達は大切だ。だからなるだけ傷つけず、綺麗に死なせてやりたい」
「PC1、お前は本当にいいチーフだ。見込みがあったよ。三年前からずっと、お前は優秀だった。俺を追い詰めるほどに」
「PC2、妹さんは残念だったな。けれど彼女も美しく咲いただろう! 最期の死に方としてあれほど素晴らしいものは無い!」
「PC3、お前は勇敢な奴だ。その優しさ、正義心で人を助けてきたのだろう。だがそれでお前はよりにもよってPC2の妹を殺す事になった。残念だよ」
「ああ、PC4。本当にお前は凄いよ……お前が作った種は傑作だ。その種が魅せる花に俺は魅了された。感動した!興奮した……!お前は天才だ」
※的場を狙おうとする場合、<地獄の植物>が庇う形になる。
●相模原涼
HP1+装甲
※装甲1d10+5pt分
※遠距離攻撃のみ有効。装甲が剥がれる際は、「彼女の周りで何かパキパキと崩れる音が聞こえる」という描写を入れ、完全に攻撃を寄せ付けない訳ではない事を告げる。
●<地獄の植物 芽吹いたばかりの悪夢>
STR 10
DEX 3~4
HP 20+2d6毎ターン成長
・STR吸収
まず60%の巻きひげ 判定
STR対抗の際この植物が成功してしまうと1d6のSTRポイント吸収を受ける。
<的場を庇う>80%
1Rから
その部屋に何かの粉が撒かれていく。何の粉かは解らないが、花から吹かれているようだ。
※<戦闘技能>の他に<探索技能>も戦闘中振る事が可能である事を伝える。
その場合は1Rの消費となる。
戦闘技能以外を振ると宣言があった場合は、各PCに振り分けて技能を提示。
<博物学>→これはあの種の花だ。花粉には酷い毒の作用がある。吸い込み過ぎるのは危険だ。時間はあまりないだろう。またこの花粉は全ての花から舞うものでは無い。宿主の素体からより多く放たれる。逆に言えば、その素体を叩けば、花は死に花粉も発生しない。
<オカルト>→『地獄の植物』は銃火器による攻撃を殆ど無効化してしまう。またまともに闘ってもこの植物は成長し続け、体力を回復し続ける。ただこの植物の力はそこまで強いものではない。巻きつかれても抵抗が上手くいけば剥がせるだろう。
<PC1:POW*5>→
奥にある相模原の姿にどうしても目がいってしまう。そうして見ていると、微かに彼女の視線が動いた様に思えた。
呼んでいるのだ。終わらせたいと。あなたに願っているように思う。
その心臓から大きく花開く銀色の美しい花はアイビー。『永遠の愛』を指す。
ここからなら何とか拳銃が届くだろう。
※戦闘のコツ
地獄の植物は基本的には倒す事は出来ない。狙うとしたら相模原涼だけとなり、彼女を破壊すれば戦闘は終了となる。
地獄の植物とはSTR対抗となり、失敗すれば大幅にSTRが削られてしまう。
なのでPC3は<挑発>を利用し、全ての地獄の植物の攻撃を担う方が圧倒的に生存率が上がる仕組みです。
R毎にPOW*5との対抗、失敗で0/1d3 SANc 「くらつき、眩暈を感じる」
■エンディング分岐
・戦闘勝利+神童or猪狩が生きている→A[jump:19]
・戦闘勝利+NPC両名死亡→B[jump:20]
・戦闘勝利+的場死亡→C[jump:21]
・戦闘敗北:全滅→D[jump:22]
■A
最後の一発を相模原涼に撃ち込んだ瞬間、びくり、とその体は波打ち、壊れた玩具のように全く動かなくなった。同時に周囲に伸びていた植物も、彼女の体を吊るしていた蔦も全てみるみる内に枯れていく。
的場は唖然とし、相模原を見詰めながら「何という事を」と口にする。そして胸元から再びタブレットケースのようなものを取り出すのを、あなたは見逃さなかった。
そうはさせまいと彼の身柄を拘束し、手錠を掛ければ、ハッとしたように彼は顔を上げる。
けれど的場はうっすらと微笑み、「なあ、これを外してくれ」「お前達も見ただろう? とても美しいと思わなかったか?」というような言葉を告げてくる。
彼はしきりに、その美しさを、彼女達の死に様を語り出すだろう。
きっと、理解してもらえるだろうと。そう信じて疑わないような素振りで話し続けている。
床に降ろされた相模原涼の遺体に触れてみれば、氷のように冷たかった。
勿論目を覚ます様な事は無い。彼女は三年前にとっくに死んでいるのだ。
けれど、その表情は何処となく穏やかなもののように思える。
終ったのだと、そう安堵するような声が今にも聞こえてきそうだった。
―――
やがて、神童と猪狩が応援の刑事を呼び、あなた方はともかくもその場を後にすることとなった。
的場は連行される間際まで、花の事を口にし、そして悪びれも無く自白もした。
尋問などする必要もなく、彼は事細かにこれまでのことを語り、微笑んでいたという事だった。
諦め故か、それとも興奮しているだけか。とにかく彼は狂気すらも受け入れて、全てを話した。
しかし彼の語るオカルトの類は中々に信用はされず、調書を取るのにも難航したようだ。
『ゼロ』の面々も的場同様、何かカルト的なものに染まっていたのではないか。
などという噂すら流れたが、神童と猪狩の証言もあり、その噂が大きく広がる事は無かった。
調書を取る中で的場はこう言ったらしい。
「三年前の庭師が俺だったか、だって?何を言っているんだ」
「そもそも庭師なんて犯人は存在しないんだよ」
「もし『庭師』などという犯人が居たのならば、それは罪から逃れる為に生まれた罪悪の表れだろう」
「俺は、ただそれを利用しただけだ」
そうして自分の喉元に埋められた透明な種を見せてきたという。
■エピローグ
あなた方は神童たちの助力を受けながらも、二か月の謹慎処分を受ける事となった。
その謹慎の間に、改めて相模原涼の葬式をあげる事となった。
相模原涼の墓から南玲子の遺骨を取り出し、そこに彼女を埋葬する為にと神童が手を打ってくれたらしい。
火葬場にて、あなた方は骨だけとなった相模原涼を静かに骨壺の中へと入れていく。
あらゆる花の色を纏ったその小さな欠片たちを、ただ静かに運ばせた。
最後にその蓋が閉められる時、陶器が重なり合う音がその場に響く。
それでようやっとあなた方はまともに息を吐く事が出来た。
『庭師』はこれをもって、確かに終わったのだ。
【報酬】
・生還 1d10
・神童、猪狩が生きている 1d3
■B
最後の一発を相模原涼に撃ち込んだ瞬間、びくり、とその体は波打ち、壊れた玩具のように全く動かなくなった。同時に周囲に伸びていた植物も、彼女の体を吊るしていた蔦も全てみるみる内に枯れていく。
的場は唖然とし、相模原を見詰めながら「何という事を」と口にする。そして胸元から再びタブレットケースのようなものを取り出すのを、あなたは見逃さなかった。
そうはさせまいと彼の身柄を拘束し、手錠を掛ければ、ハッとしたように彼は顔を上げる。
けれど的場はうっすらと微笑み、「なあ、これを外してくれ」「お前達も見ただろう? とても美しいと思わなかったか?」というような言葉を告げてくる。
彼はしきりに、その美しさを、彼女達の死に様を語り出すだろう。
きっと、理解してもらえるだろうと。そう信じて疑わないような素振りで話し続けている。
床に降ろされた相模原涼の遺体に触れてみれば、氷のように冷たかった。
勿論目を覚ます様な事は無い。彼女は三年前にとっくに死んでいるのだ。
終った、と安堵出来るような状況では無かった。
猪狩も、神童も既に事切れてしまっている。
あまりにも多く人が死んでしまった。目の前にありながら、救う事すら出来なかった。
―――
やがて、応援の刑事を呼び、あなた方はともかくもその場を後にすることとなった。
的場は連行される間際まで、花の事を口にし、そして悪びれも無く自白もした。
尋問などする必要もなく、彼は事細かにこれまでのことを語り、微笑んでいたという事だった。
諦め故か、それとも興奮しているだけか。とにかく彼は狂気すらも受け入れて、全てを話した。
しかし彼の語るオカルトの類は中々に信用はされず、調書を取るのにも難航したようだ。
『ゼロ』の面々も的場同様、何かカルト的なものに染まっていたのではないか。
などという噂すら流れ、『ゼロ』の解散を余儀なくされてしまった。
調書を取る中で的場はこう言ったらしい。
「三年前の庭師が俺だったか、だって?何を言っているんだ」
「そもそも庭師なんて犯人は存在しないんだよ」
「もし『庭師』などという犯人が居たのならば、それは罪から逃れる為に生まれた罪悪の表れだろう」
「俺は、ただそれを利用しただけだ」
そうして自分の喉元に埋められた透明な種を見せてきたという。
相模原涼の遺体は、警察組織の中で内々に処理される事になったらしい。
葬式にすら出る事が出来ないと解り、やる瀬なさがひたすらに募っていく。
周りの猜疑の眼差しと、後ろ盾を失くしたあなた方の立場はかなり危ういものとなってしまっている。
それでも何とか刑事として働く事は認められたが、四か月謹慎処分を受ける事となった。
あなた方は『庭師』というものに囚われながら、これからも生きていく事になる。
【報酬】
・生還 1d10
■C
全ての事を思い出し、そして憤り、的場へと殺意の牙を剥く。
息の根を止めてしまえと、頭の中でガンガンと大声を上げている。
その最後の一撃を打ち込んだ時、自分の中で大切な何かがプツリ、と弾けていくのが分かった。
切れてはならないものが切れてしまった音だった。
鮮血が舞い、彼の体が大きく揺れ、後方へと倒れようとしている。
呆然と目を見開く的場の表情が、緩やかに笑みへと変わっていくのをあなたは目撃するだろう。
声を発する事は無かったが、その口元がこう告げたように思う。
「おまえもおんなじだ」
刹那、彼の喉元から急速に植物の蔦が伸び、花が咲き乱れていった。
その中心には半透明の種が埋め込まれており、血を吸い取る様にして大きく大きく育っていく。
猪狩も神童も声を上げているが、それが何処か遠くの事のように思えてくるだろう。
逃げなくては。逃げなくては。
そう警鐘を鳴らし始める。
今自分がやった事を。今自分たちがやってしまった事を両手を見て再度確認する。
人を殺したのだ。
明確な殺意を持って、的場元を殺した。
あなた方は駆け出してしまっていた。その植物と、「警察」から逃れる為に。
『庭師』というものに囚われ、そして一生拭う事の出来ない罪を抱きながら、あなた方は犯罪者として生きていく事となる。
【報酬】
・なし
■D
目の前が真っ暗になっていく。
深い深い森の中に、霧の中にぬったりと沈み溶けてしまうかのように、自身の体に力が入らなくなっていった。
体勢が崩れ地面に臥してしまっても、痛みは感じなかった。
赤い鮮血が自分の体を汚していく。
その視界の端で、的場の足が徐々にこちらに近付いている事がわかった。
「綺麗に咲いてくれよ」
そんな一言が聞こえ、種が落とされる。
半透明の種が赤を纏ったその瞬間に、かぱ、と種は割れてしまう。
そして血をぐんぐんと飲込みながら、色鮮やかなアイビー、アザレア、薔薇を咲かせ、瑞々しい蔦を這わせていく。
花々が自身を襲うような勢いで育っていくというのに、あなたの身体は全く動かない。
『死』は目前だ。
そう認識しているというのに、思わず
「うつくしい」
と口にしてしまった。
満足げな的場の吐息を最後に、あなたは自身の生に幕を下ろす。
―――
駆け付けた刑事達が見たのは、苗床とされた零課の面々だったという。
その光景はあまりにも異様で、そして同時に 美 し か っ た 。
『庭師』は再度苛烈にその名を上げ、マスコミが連日連夜と特集を組み取り上げた。
一種の社会現象と化した『庭師』の犯行に、何処か期待するような声も上がってくる。
「美しい」
「うつくしい」と。
口々に誰もが言ったのだ。
【報酬】
・なし
ロスト
四人の庭師は、色とりどりの花々と、自身の望んだ緑を添え、
虚構の庭園を作り上げる。
この世界が存在しているから人間が存在しているのではなく、
また人間が存在しているから世界が存在しているのではない。
両者に前後関係はなく、ただあるのは【気遣い】だけだ。
※ハイデガー『世界内存在』の思想からヒントを得て構成致しました。
次のページはあとがきとなります
■簡単な時系列
シナリオ前の大まかな時系列。
●四年前 ゼロ発足
的場をチーフとして発足し、PC達は紆余曲折有りながらチームとして絆を深めていった。
しかしその中で、的場の不審な行為をPC1は目撃し、その性的嗜好を知る。
的場への信頼もあり、これを内々で処理する事に決め、PC2~4+相模原に協力を求める。
最初は抵抗感を抱いていた他のPC達も、的場を調べていく内にその行動に不信感を抱き、彼を上げる用意を進める。
その調査の中でPC2は妹である南玲子の事と、的場が関わっているカルト教団の事を知る。
●三年前~現在 シナリオ背景に明記した事件が起きてから現在まで
この三年の間、PC達は何度か記憶を取り戻そうとしてその度に的場によって改竄されている。
デスクにある指輪や植物に関する資料などは、忘れぬようにと過去のPC達が遺した産物である。
だが、PC達も過去の惨劇を深く思い出したくないという無意識が働き、不安定な精神状況が続いてしまう。
そんなぐちゃぐちゃに弄られた頭で突入するのが本シナリオである。
大変面倒なシナリオとなっておりますが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
勿論ですが、このシナリオに出る全ての組織、団体はフィクションであり、実際の人物とは何ら関係もありません。
また、小難しい警察組織の決まり等々もあるかと思いますが、全てを実際のまま再現してしまうと身動きが取れなくなってしまうため、色々と省かせて頂いています。
シナリオの進行、システム上の処理となりますので、事実とは異なりますことをご容赦ください。