感染追跡アプリ 個人情報守る配慮を

2020年6月1日 08時31分

 新型コロナウイルス第二波の防止策として、感染追跡用の携帯電話アプリが注目されている。ただ、すでに導入された国では個人のプライバシー侵害の懸念も出ており、慎重な活用が望まれる。
 日本で開発が進んでいるのは、スマートフォンの「ブルートゥース」と呼ばれる近距離無線通信を利用したものだ。政府は六月中の実用化を目指している。
 米IT企業が開発したシステムを土台としている。同じアプリを入れたスマホが「一メートル以内に、十五分間以上」あると、情報が暗号化されたうえ、双方のスマホ内に記録される。
 このデータを基に、感染者と濃厚接触の可能性のある人に通知が届く仕組み。データは二週間後に自動的に削除される。アプリを使うかどうかは、個人の判断だ。
 感染防止と経済活動の両立を図るため、追跡アプリへの期待が高まっており、欧州でも広く導入が進んでいる。もちろん万能ではなく、課題も指摘されている。
 中国では、民間企業が「健康QRコードアプリ」を開発。立ち寄り先の情報などから携帯所有者の感染のリスクをQRコードで表示する。公共交通の利用やビルなどに入るには、提示が求められる。
 感染予防には役立っているものの、個人情報の扱いが不透明なため、市民の「監視」に使われているのではないかとの批判もある。
 韓国では、クレジットカードの使用歴、携帯電話の位置情報などから感染者の移動経路を特定し、公開。民間開発のアプリが、このデータを再利用している。
 感染者の実名や立ち寄った店名が特定されてしまうケースが相次いだため、公開範囲の見直しが行われた。
 先行してブルートゥース型追跡アプリを開発したシンガポール政府は、市民に利用を奨励した。
 しかし、アプリの使い勝手が悪いうえ、収集したデータを政府が管理することなどから、アプリの普及率は三割にも満たない。
 専門家によれば、感染追跡アプリが効果を発揮するには、六割以上の普及率が望ましい。
 これを達成するには情報の扱いについて事前に十分に説明し、透明化する必要がある。社会の安全を優先するのでなく、個人情報の保護への配慮が欠かせない。
 また、スマホに慣れていない高齢者にも分かりやすい設計や、濃厚接触が確認された人が、安心してPCR検査を受けられる制度の整備も必要だ。

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