働く妊婦の保護 休める支援を職場から

2020年6月1日 08時31分
 働く妊婦にとって新型コロナウイルス感染への不安は大きい。政府は休業や在宅勤務などの対応を企業に義務付けたが、実効性には疑問符がつく。妊婦が安心して働ける支援を職場から広げたい。
 現時点では妊娠中の女性が感染すると重症化しやすいとのデータはないと言われるが、未知のウイルスで未解明な部分は多い。妊婦にすれば自身と生まれてくる子どもへの影響を心配する日々だ。
 胎児への影響を考えると服用できる薬や検査も制限される。感染した場合に出産できる医療機関も限られてしまう。
 人と接する機会が多い医療や介護、保育士、スーパーや店舗業務などは女性の働き手が多い。特にマスクや消毒液、防護具が不足する医療現場ではそのストレスは相当なものに違いない。
 厚生労働省は経済団体に在宅勤務の導入や休業などをしやすい環境づくりなどの配慮を要請してきたが拘束力はない。休業を認めてもらえなかったり、解雇をほのめかされたケースもあったようだ。
 厚労省は五月、男女雇用機会均等法に基づく指針を改正した。来年一月末までの期間、妊婦本人から申し出があれば感染のおそれが低い業務への転換や、在宅勤務、休業などを認めるよう企業に義務付けた。
 申し出をする際、医師や助産師の指導内容を記載した「連絡カード」を事業主に示し、その内容に沿った対応を求める。
 連絡カードの活用は申し出をしやすくする効果はあるだろう。ただ、人手不足の職場や、感染対策で業務が増えた業種では休むことへの罪悪感からなかなか本人から声を上げづらいのではないか。
 今回の改正では体調に今すぐ問題がなくても感染へのストレスを理由に申し出ができるが、その周知不足から産科医がカードへの記入を拒否した例もあったという。周知は政府の責任だ。
 このほか働く妊婦には、残業や休日労働、深夜業の制限などは労働基準法で医師からの指導がなくても請求が認められている。こうした規定も活用すべきだ。
 妊婦が体調を崩したり、不安から退職してしまっては企業にとっても人材を失うことになる。妊婦が働ける環境づくりを事業主や職場は取り組んでほしい。
 政府は妊婦に休業補償を払う事業主への助成制度を創設するが、その周知も必要だ。感染症とは共存を求められる。今回の改正の恒久化も今後の課題になる。

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