水害が起きやすい梅雨、そして台風の季節になった。感染症対策との両立が求められる今年、自分で自分の命を守る「自助」の考えがひときわ大切だ。身の回りの状況を再確認し、いざという場合に備えたい。
北海道標茶(しべちゃ)町で3月、大雨による避難指示が出た際には、町の体育館に住民が次々と集まった。職員が間隔を保ちながら館内に誘導したところ、500人入るはずが約200人で満杯になり、急きょ別の避難所を開設する事態になった。
通常、避難所で割り当てられるスペースは1人あたり2平方メートル弱だ。隣との間隔を2メートル程度あけると、収容できる人数は半分以下になってしまう。
政府は先月、避難所の数をなるべく増やすことや、ホテルや旅館に協力を求めることを自治体に通知した。しかし民間施設を借りると費用がかかる。幸い被害が小さく、利用しないで済んでも支払いは発生する。そんな時も国が支援する旨の方針を明確に打ち出し、自治体の後押しをしてもらいたい。
住民による「分散避難」も3密を避ける有効な方法だ。
まず自分の住む場所のリスクを知る。自治体のハザードマップで浸水想定区域にあるかどうかを確かめ、区域外だったり、区域内でも頑丈なマンションの高層階に住んでいたりすれば、在宅避難を考える。あるいは親類や知人宅に身を寄せることを検討する。短い期間、車中泊するのも選択肢とし、安全な駐車場所を探しておく――。
要は、感染のリスクを避けつつ、自らや家族に適した避難の方法と場所を考えることだ。それでも避難所が人であふれる可能性はあり、ここからは自治体の準備の質が問われる。
昨秋、台風15号で多くの家屋被害が出た千葉県南房総市は、体育館にいくつものテントを張り、避難者同士の接触を少なくする方針だ。発熱者がいた場合に備え、別室や専用トイレも設ける。神奈川県は、建築家の坂茂さんが代表を務めるNPO法人と、間仕切り用カーテンなどの提供を受ける協定を結び、飛沫(ひまつ)感染の防止とプライバシーの確保を図るという。
運用面でも工夫がいる。昨年の台風19号時に3万人以上が避難所を訪れた東京都足立区は、職員用の手順書を作る。避難者に後日連絡できるよう受け付け台帳を整えることなど、感染症対策を盛り込む方向だ。
どれも他の自治体の参考になる試みだが、間仕切りなどの調達には時間がかかる。日頃の備えがものを言うと肝に銘じてほしい。感染の第2波がいつ来るかわからない。避難のあり方も従来とは異なる発想が必要だ。
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