すごいやつ食べちゃったな。誘ってもらえてとても光栄。
ありがとう、吉田シェフ。ごちそうさま、伊場シェフ。
カレーですよ。
荻窪のものすげえうまいカレーを作る、ものすごく客を選ぶ、ものすごい店の店主、吉田シェフ。気概のあるサイコーの男なんですよ。その彼から年明けにメッセージが届きました。
「あけましておめでとうございます!吉田カレーです。1/21 22 23 でうちのお店で鹿児島の伊場カレーさんを呼んで特別営業する予定です。とても美味しい物なので食べていただきたいです。」
(どこに店があるのかさっぱりわからないのが素敵な吉田カレー)
おお!そういえば吉田シェフ、年明けひと月お休みして鹿児島に行ってくるって言ってたなあ。伊場カレーという名前がたしかあったなあ。よし!いってみるか。そんなこんなでおじゃますることに。なんでも吉田シェフはカレーにはノータッチ。伊場カレーだけが食べられる3日間だとのこと。
さて、やってきた荻窪の
「吉田カレー」
例によってシャッター半分おろし(笑)
この意味を知らないひとと心あるちゃんとしたひと以外はこのお店には入ってはいけないわけです。じつは吉田シェフが気を遣ってくだすって、お友達しか入れない並ばない時間帯に招待をしてくれました。ありがとうございます、すいません。行列苦手でちょっと並んでるとラーメン屋とか牛丼やに行っちゃうもんで(笑)
席に着き、メニューを見るとちゃんと今回だけのスペシャルメニューになっていて、伊場カレー、伊場シェフの紹介などもあります。入れ込んでいる様子がわかって自然と期待も高まります。
よし、カレー頼もう。
「伊場カレー」
上をください!辛口で。バナナミルクのハーフも!
ちょうど伊場さんと向かい合わせになるカウンターの席。ぽつぽつとおしゃべりをしながらできあがるのを眺めます。おや!カレーソースをバーナーであぶる?!これは初めて見たやり方だなあ。「香りが立つんですよ」ああ、なるほど!いろいろおもしろいぞ。
さてやってきたカレーがこれ。お肉の量がすごいです。水菜かな。こんもり。いろいろおもしろそうだぞ。伊場シェフが一つ一つ丁寧に説明をしてくれます。こういうのは楽しいねえ。
カレーソースの軸になる味は甘さ辛さではない方向に向いているとひと口目に感じます。どことなくふくよかさが根幹になってるんじゃないかな、そう感じるんですよね。出汁から来るのかな、この感覚は。
食べながら質問すると伊場シェフがどんどん答えてくれます。
カレーソースに使用する食材は九州産、野菜はその中でも鹿児島産の有機栽培ものを使用とのこと。強くこだわっているのですね。伊場シェフはトッピングという言い方をしていましたが、カレーソースの上に置かれた肉の数々。そのエキスがひたひたと滴りそれがカレーの中に混じり合っていくこれは、ちょっとトッピングという言葉だけで終わらせるのは惜しい気がします。
ごろごろと入った豚はものすごくエロチュクな弾力を持ったスゲーやつ。舌に絡みつく脂身のセクシーさときたら自分の性癖まで赤裸々に暴かれてしまいそうでどうにも表現がしづらい(笑)
長崎産の雲仙極み豚が使われているそうです。
牛みすじはスモーキーな深い味わいで舌にベルベットを滑らせるような気持ちよさがあります。風味が素晴らしいねえ。鹿児島産のA5クラス黒毛和牛のうわみすじの切り落としを使用。こちらは極み豚と打って変わってスプーンであっさりと切れるほどとろりとするくらい煮込んであってこれがまた素晴らしい。有機のだし醤油がふんわりと、しかし力強く香るもので、舌にそのおいしさが纏わり付いてくるようなたまらぬ味です。
どちらの肉もカレーソースに浸すのがもったいないような仕上がりで、そのまま食べるとたまらぬ味。ところがカレーソースと合わせると、こんどはまた違う個性が出てこちらもうまい。いや、迷ってしまって困るよこれは。
水菜は湧水町の有機栽培水菜。彩りなどではまったくない、がりがりぱりぱりとすてきな食感をくれるおいしいものがたっぷりと使われています。カレーの上にふわりとのせられた鹿児島県枕崎産の鰹節の香りも強く柔らかく他の料理に絡み、離れと楽しく変化を見せるのです。
そして鹿児島県産有機野菜を使ったアチャールがまたおもしろい。これは吉田シェフの手になるものです。力強く個性強い味なのに他の料理と交わった途端に裏方に回るという二面性の面白さ。混ぜても、単独でもクセになる。これはすごいなあ。たくさんほしいなあ!と渇望してしまいます。
吉田シェフの策はもう一つ、別で頼んだあのすてきなバナナミルク。ハニーアーモンド生クリームバナナミルクをハーフで頼んだけど満足感たっぷりです。前も思ったけど飲み物よりデザートに近い感覚があって、飲み物なのにおなかいっぱいになる満足感ももっている不思議でおいしいドリンクです。ココナッツの香りとバナナのバランスが絶妙でバナナの香りの鮮烈さが後を引くんだよ。
いやいや伊場カレー。食後の舌に残る力強い辛さと汗が心地よいです。すごかった、圧巻だったな。
伊場シェフとまたしばしおしゃべり。伊場さんは地元鹿児島で伊場カレーの屋号でカレー屋さんを営んでいます。実は店をやる前は東京で全く別の仕事をしていたそうで、そのころに吉田カレーに出会い、惚れ込み、吉田さんの元に通い詰めてその奥義を伝授してもらったそうなのです。
吉田カレー直系?いやいやところがおもしろいのが料理ってもので、同じものにはやっぱりならないわけですよ。食べてちゃんとわかりました。伊場さんが作るカレーは吉田シェフからの伝授ではあるけれど、だけどやっぱり伊場カレー。そこに価値と意味があるわけです。そのなかに吉田カレーの手法や影響が見て取れる。それも楽しいんです。
ちょいとすごい体験でした。
伊場カレーの上、2500円。高いと思いますか?
ちょっと思ったんですよね。この日の伊場カレー。カレーライスなわけです。ごはんがあって、そこにカレーがかかっていて。正真正銘カレーライスです。が、しかし。
こだわり抜いた素材を九州中から集め、シェフが目の前で調理をしてくれて、その場で料理の説明をしてくれる。料理はすさまじくおいしい。感動がある。
それでね、今回の伊場カレーなんですけど、ちょと分解してみましょうか。
まずごはんでしょ。それからカレーソース。どちらもきちんとおいしい。極上と言ってもいい。別々にします。それで、お肉も分解。これまた選び抜いた品質高い食材を大変おいしく調理してあって、食べているときも単独で食べると別体験なんですよね。スゲー肉をおいしく食べている体験。アチャールも水菜も素晴らしい。
それで、カレーをポットに、ライスを単独のお皿に。そして肉は豚と牛、これも別皿で盛りつけましょうか。アチャールと水菜は野菜プレートとしましょう。ほら、これで順番に提供すればコースのできあがりです。ところが「カレーは総合芸術」なのでひと皿に盛りつけいっぺんに出すわけです。そのなかで、くっついたり混ざったりが楽しい中、別々で食べるのと一緒に食べるのとが両方体験できるわけで、なかなか優れた料理なんですよね、カレーライス。
もちろんそのスタイルなど個別でこれをやれるもの、やれないもの、やることがナンセンスなものもあります。ただ、伊場カレーに関しては、吉田カレーもそうなのですが、分解も可能で分解した一つ一つがおいしい。
2500円のコースって安いんじゃないだろうか、と思います。
伊場シェフがキーワードをくれました。
「いちいちおいしいものを提供したい」
すごく腑に落ちるんですよ、この言葉。ボクも実は「いちいちおいしい」はたまに使う言葉で、いちいち、はどれもこれも一つずつ必ず、の意味です。いや本当にいちいちおいしい。すごかった。
何とかして鹿児島行きを画策せねばね。
それとね、贅沢ですが。
吉田カレー、ザ・オリジナル吉田カレーと伊場カレーを食べ比べができれば、などという贅沢なことを夢想しました。そんな贅沢したら目がつぶれるな。
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たべあるきオールスターズ「食べあるキング」に参加しています。
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2016/1/1、著書「カレーの本」が刊行されました。
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