皆さまこんにちは。
本日は「部品」のおはなしです。
というのも、JimDunlop社より、「SUPER POT」という商品が発売され、
ついに、日本にもモリダイラ楽器より正規輸入されることになったので、
部品大好き人間としては、気になって仕方ない。
という事で、細かくチェックしていきたいと思います!
とはいえ、ただの商品紹介ではなく、
新品を破壊して内部まで観察するという
実に手間とコストの掛かった記事となっておりますので、
どうぞ最後までお付き合い下さいませ!
まず、この「SUPER POT」という部品が何なのかというと、
エレキギター&ベースのボリュームやトーンなどの内部部品です。
皆様が指で触る部分をボリュームつまみと言い、
その中身がボリュームポットという呼び方になります。
電気回路的には可変抵抗なんていう呼び方もありますね。
つまり、入ってきた信号を増減させるといった役割の部品です。
このPOT、実は修理依頼の絶えない非常に故障の多い部品でもあるんです。
経験ある方も多いと思いますが、最も多いのは「ガリ」と言われる症状で、
アンプにつないでボリュームやトーンを回すとアンプから
ブツブツ、ジリジリ、ガガッ、バチバチ、等の不快なノイズが出るといった症状です。
触らなければ大丈夫と言って放置している方も結構居ますよね。
もしくは、「接点復活剤」的な物でしのいでいる方も居ますね。
接点復活剤は「その場しのぎ」にしかならず、むしろ予後は悪いです。
根本的に修理するには「POT交換」しかありませんね。
そこで、POTの種類の話になるのですが、
大きく分けると、「国産POT」と言われるものと、「CTS社製のPOT」の2種ですね。
その他にも「BOURNS POT」などそれ以外の物もたまに見掛けますが、
左からCTS、国産、BOURNS |
いずれにしてもほとんどのPOTが密閉されておらず、
「ほこり」「湿気」などが容易に入ってしまう構造となっています。
内部の可変抵抗部が丸見え。 これでは埃などの侵入は防げませんね。 キャビティーの中が汚いと、よりトラブルが多いのも頷けます。 |
また、POTの故障第2位としては、「シャフト折れ」(↓写真)が挙げられると思います。
一部を除いて、POTのシャフト部分はスプリットシャフトと呼ばれる
スリットのある構造になっています。
ここが「ポキッ!」と折れるんです。
ここが折れても可変抵抗としての機能を失う訳ではありませんので、
音が出ないという事もないのですが、ツマミを取り付けられなくなるので、
回しにくく、実際には使い物になりませんね。
ぶつけたり、つまみの付け外しで折れてしまったシャフト。 想像以上に簡単に「ポロッ」と折れます。 |
中には、シャフト自体が抜けてしまうものもあります。 |
では、これらの従来のPOTの弱点に対し、
「Jimdunlop SUPER POT」はどの様になっているのかを見ていきたいと思います。
「700万回以上回しても壊れることなく、それ以上のテストは止めました。」
というメーカーの言葉ははたして・・・・。
赤い樹脂製のハウジングに隙間なく蓋がされています。 |
まずは、外見から。
ご覧の通り、特に開口部を設けておらず、埃の侵入などの心配がありませんね。
湿気なども入りにくいと思いますので、ガリの発生を最小限に出来るというのも
頷けますね。
まぁ、デメリットをあえて言うならば、万一ガリなどが発生した場合に、
従来型の様に開口部から復活剤などを入れるといった応急処置や、
グリスの量を調整してトルクを変えたりなどの昔ながらのメンテは不可という
事でしょうか。。まぁ、もっともガリなどの不具合が起きなければそもそも
メンテ自体不要なのですが・・・。
個人的にはこのルックスに好感が持てます。
マニアックな高級POTや、最新式の密閉型POTは他にもありますが、
ルックスやサイズが大幅に変更されているものが多いですよね。
このSUPER POTの従来品と大きく変わらないルックスは、
保守的なギターリストにも受け入れやすい物だと思いますし、
実装する際にも従来品と同じ感覚で作業が出来るという大きなメリットがあります。
新品の「Jimdunlop SUPER POT」を用意し、ペンチで潰してみます。
明らかに硬いですね。これは安心感があります。
明らかに硬いので、素材を調べましたがどこにも情報が無く、
メーカーに確認したところ、「低摩擦ステンレス鋼」製との事。
それは硬いわけですね。
従来品は真鍮やアルミなので、強度は比べ物になりませんね。
ついでに「固くて入らない!」とよく言われるGibson系のつまみも装着して
みましたが、挿入し易かったです。かといって抜けやすいという事もありません。
更に詳しく見る為に、新品を壊します!!
カシメを外し、分解してみると・・・
左がSUPER POT。右はCTS。 |
SUPER POTのシャフト。 溝が3本あり、白いグリスが詰まっている。 |
まず見てすぐに分かるのが、シャフトの形状ですね。
何やら3本の溝が彫ってあり、その溝に白いグリスが詰められています。
そして、このシャフトの精度に相当差がありました。
具体的には、、
CTSは本体に対しシャフトがやや細く、ガタつきが結構あります。
一方SUPER POTは本体とシャフトのガタつきがほぼありません。
まるで、シャフトと本体が吸いついている様な感覚。
さらには3本の溝に詰められたグリスで気密性を確保しつつ、
低摩擦ステンレス鋼の特性と相まって、程好いトルク感を生み出しています。
感覚的には「ヌメー」とした回し心地。
SUPER POTの接点部分。 この銀色の部分が抵抗体の上を滑ります。 あまりに小さくてサイズ感がわかりにくいですね。 端子と端子の隙間がだいたい髪の毛1本くらいです。 |
次に気になるのが、接点部分ですね。
CTSは真鍮製のもので、厚みもあって、接点自体が「板バネ」的な役割も兼ねています。
SUPER POTは、かなり繊細な作りで、極細のブラシの様な接点が7本あります。
ノギスで計測すると、1本がおよそ0.2mmでした。
このブラシ状接点がハウジング側の抵抗体の僅かな凹凸にもきちんと追従し、
確実な導通を確保していると思われます。
細いと強度が心配ですよね。。勿論、考えられています。
この接点部分はカーボン製で、貴金属メッキをかけて作られていて強度も確保。
ここは、現代ならではの精密加工技術あってこそですね。
そして、ハウジング側の抵抗体にも差が、、
とはいえ、写真では全く写らず、どちらもただの黒いドーナツ形状なんですが、
微妙に色や素材感が違うので、これもメーカーに確認しました。
すると、SUPER POTに使われている抵抗体は、
「航空宇宙産業用に開発されたフェノール系の
非腐食性導電性材料でできています。」
とのこと。ちなみに、この素材をPOTに使用した例は今回が史上初だそうです。
サウンドと、実際の耐久性などは、ギターに実装してみないと
何とも言えないので、現在、ワタクシの所有するギターに実装し、
テスト中です!
特にガリなどのトラブルはかなり長期にわたってのテストをしなければ
答えは出ませんしね。
それでも、「見切り発車」的にこの「SUPER POT」を採用するのは
「アリ」だと思います!!
なぜなら、
素材、構造、精度、の面で従来品より確実に良くなっているうえ、
価格は大して差が無いので、試してみる価値はあるという事です。
マニアックな高品質POTもあるにはあるのですが、
正直価格が高すぎて、なかなか手が出ませんよね。
このSUPER POTは通常のPOTと大差無い価格というのも
大きな魅力ですよね。
そして、何より、これまで選択肢の少なかったPOT選びに
新たな選択肢が加わった事が有難いですよね。
これでまた、「SUPER POTが壊れなくて良かった」とか、
「それでもCTSが好き」とか、いやいや「sUPER POTは音がクリアだよ」
とかそれぞれのギターリストの主観による、素晴らしく、楽しい
「ギター談義」に花が咲きますよね!
それだけでも「価値」はあると思うのはワタクシだけでしょうか?
今のところ、
スプリットシャフト250K Aカーブ インチノブ
スプリットシャフト500K Aカーブ インチノブ
ソリッドシャフト250K Aカーブ
のラインナップです。
最後に注意点ですが、、
シャフトのトルク(回し心地)が軽いもの(触っただけでクルクル回る)
様なものをお求めの方はこの商品は使わない方が良いです。
あくまで適度なトルク感がある商品です。
商品パッケージはトルクの確認が出来る親切なパッケージになっていますので、
心配な方はネットで買わずに店頭で回してみてから購入する事をオススメします。
では、皆様も是非お試しください!
~お問い合わせ~
MACS大野楽器・南越谷店
埼玉県越谷市南越谷1-16-10
048-986-8686