地酒の魅力 シェアする好機に 料理との気軽なペアリングを提案
今年に入り間もなくして新型コロナウイルス関連の報道が世間をにぎわせ、5カ月がたとうとしている。岡山県やその近郊でも多くの方が感染した。心からお見舞いを申し上げるとともに、検査や治療に当たる医療従事者をはじめ多くのエッセンシャルワーカーに感謝を伝えたい。
地元の酒蔵やそれに関連する各業界でも、厳しい状況が続く。外出自粛の影響をもろに受ける飲食店、新酒シーズンに各地で行われる予定だった蔵開きが相次ぎ中止に追い込まれた地酒メーカー。中には酒類の持ち帰り販売を可能とする「期限付酒類小売業免許」を取得して料理とともにテークアウトを行う飲食店や、オンラインメディアを駆使して情報発信に注力する酒蔵や酒販店もあるが、消費者としてすべてを利用し応援するのは物理的に難しい。
私は酒を販売したり提供したりする立場ではないものの、仕事上では多くの関係者からお世話になってきたし、自分なりに学んでもきた。今だからこそ何かできることはないだろうか。そう考えて一歩踏み出したのが、「岡山の地酒 × 旬のおつまみで『日本酒時間』!」という企画だ。
内容は、毎回岡山の地酒をセレクトし、その酒と合わせて味わうおつまみをレシピとともに紹介するもの。9年ほど前から日本酒と食にまつわるイベントなどを主催してきた「日本酒時間」というユニットのフェイスブックページ(https://www.facebook.com/nihonshu.jikan/)で今月から始めた。一見するとよくあるコンテンツかもしれないが、ここでは日本酒に対するハードルを極力下げることにこだわっている。おつまみは家にある食材で簡単に作れるレシピを提案。地酒も毎回1本セレクトするものの、あくまでその料理に合う一例としての紹介に徹する。酒の説明には難解な用語を排除し、料理との組み合わせがイメージできるよう簡潔に表現。目指すのは、自宅の在庫や身近な店舗で手に入るお酒と一品で双方のおいしさが十分に堪能できる「気軽なコンテンツ」だ。
根底には、岡山の地酒を地元の人たちにもっと親しんでほしいとの思いがある。始めたきっかけこそ今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴うものだったが、こんな時期だからこそ長期的に発信し続けることで日々の食卓に彩りを添えたいと思うのだ。この企画を通してお気に入りの地酒とおつまみで一献楽しむ人たちの新たなつながりができればうれしいし、酒類を販売したり提供したりする人と消費者とをつなぐ情報として役立つことができれば、この試みを続けるモチベーションにもなる。地元の酒蔵や酒販店、飲食店と消費者との良好な関係がじわじわと広がることを願って「コロナ後」も発信を続けていくつもりだ。
今回のコロナ禍で私たちの暮らしは一変。長期にわたる自粛生活でさまざまな不便を強いられた一方、オンラインメディアを駆使したライブイベントやセミナーが相次ぎ配信されるなど、新たな楽しみ方を知る機会となった。都市、地方に関係なく、ユーザーが居ながらにして地域の魅力をリアルに感じ取れるようなイベントや情報発信が今後増えるかもしれないと思うと、新たな可能性さえ感じる。
個人的には業界、ひいては地域が一体となってPRのあり方を考えるいい機会になればと期待している。これまでの日常や常識が変わることを受け入れ、新しい文化に変わりゆくことを楽しめる。そんな日が一日も早く訪れますように。
◇
市田真紀(いちだ・まき) 広島市出身の日本酒ライター。最近の主な活動は、日本酒業界誌『酒蔵萬流』の取材執筆や山陽新聞カルチャープラザ「知る、嗜む 日本酒の魅力」講師など。このほか講演やイベントの企画・運営を通して、日本酒や酒米「雄町」の認知拡大を図っている。夏は田んぼ、冬季は蔵が取材フィールド。たまに酒造り(体験・手伝い)。SSI認定きき酒師、同日本酒学講師。J.S.A SAKE DIPLOMA取得。1970年生まれ。
地元の酒蔵やそれに関連する各業界でも、厳しい状況が続く。外出自粛の影響をもろに受ける飲食店、新酒シーズンに各地で行われる予定だった蔵開きが相次ぎ中止に追い込まれた地酒メーカー。中には酒類の持ち帰り販売を可能とする「期限付酒類小売業免許」を取得して料理とともにテークアウトを行う飲食店や、オンラインメディアを駆使して情報発信に注力する酒蔵や酒販店もあるが、消費者としてすべてを利用し応援するのは物理的に難しい。
私は酒を販売したり提供したりする立場ではないものの、仕事上では多くの関係者からお世話になってきたし、自分なりに学んでもきた。今だからこそ何かできることはないだろうか。そう考えて一歩踏み出したのが、「岡山の地酒 × 旬のおつまみで『日本酒時間』!」という企画だ。
内容は、毎回岡山の地酒をセレクトし、その酒と合わせて味わうおつまみをレシピとともに紹介するもの。9年ほど前から日本酒と食にまつわるイベントなどを主催してきた「日本酒時間」というユニットのフェイスブックページ(https://www.facebook.com/nihonshu.jikan/)で今月から始めた。一見するとよくあるコンテンツかもしれないが、ここでは日本酒に対するハードルを極力下げることにこだわっている。おつまみは家にある食材で簡単に作れるレシピを提案。地酒も毎回1本セレクトするものの、あくまでその料理に合う一例としての紹介に徹する。酒の説明には難解な用語を排除し、料理との組み合わせがイメージできるよう簡潔に表現。目指すのは、自宅の在庫や身近な店舗で手に入るお酒と一品で双方のおいしさが十分に堪能できる「気軽なコンテンツ」だ。
根底には、岡山の地酒を地元の人たちにもっと親しんでほしいとの思いがある。始めたきっかけこそ今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴うものだったが、こんな時期だからこそ長期的に発信し続けることで日々の食卓に彩りを添えたいと思うのだ。この企画を通してお気に入りの地酒とおつまみで一献楽しむ人たちの新たなつながりができればうれしいし、酒類を販売したり提供したりする人と消費者とをつなぐ情報として役立つことができれば、この試みを続けるモチベーションにもなる。地元の酒蔵や酒販店、飲食店と消費者との良好な関係がじわじわと広がることを願って「コロナ後」も発信を続けていくつもりだ。
今回のコロナ禍で私たちの暮らしは一変。長期にわたる自粛生活でさまざまな不便を強いられた一方、オンラインメディアを駆使したライブイベントやセミナーが相次ぎ配信されるなど、新たな楽しみ方を知る機会となった。都市、地方に関係なく、ユーザーが居ながらにして地域の魅力をリアルに感じ取れるようなイベントや情報発信が今後増えるかもしれないと思うと、新たな可能性さえ感じる。
個人的には業界、ひいては地域が一体となってPRのあり方を考えるいい機会になればと期待している。これまでの日常や常識が変わることを受け入れ、新しい文化に変わりゆくことを楽しめる。そんな日が一日も早く訪れますように。
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市田真紀(いちだ・まき) 広島市出身の日本酒ライター。最近の主な活動は、日本酒業界誌『酒蔵萬流』の取材執筆や山陽新聞カルチャープラザ「知る、嗜む 日本酒の魅力」講師など。このほか講演やイベントの企画・運営を通して、日本酒や酒米「雄町」の認知拡大を図っている。夏は田んぼ、冬季は蔵が取材フィールド。たまに酒造り(体験・手伝い)。SSI認定きき酒師、同日本酒学講師。J.S.A SAKE DIPLOMA取得。1970年生まれ。
(2020年05月22日 16時00分 更新)