松屋銀座で行われた催事「カレーなる7日間」はすごかったです。
色々と、すごいと思いました。
カレーですよ。
何がすごいのかというと、百貨店での催事がカレーという括りで行われたという部分。
現在、百貨店の催事は集客を細かく追求してきています。なかなか大変編んだと思います。それで、ついにカレーに至ったか、と感慨深いわけです。
百貨店の催事において、まず飲食物を出すという点でカレーは不利なんですよ。においが強くフロアにそれが広がるでしょ。後処理も大変。そういうのを飲み込んだ上ででもカレーのくくりでやるという企画書に判子を突いてくれる決済権を持つ管理職がいる、そういう企画が通るという時代になったというのをまじかで見ていて大き感慨を覚えたんですよね。
さて、会場には食べられるスペースが少し用意され、ワンウェイの容器に入ったお弁当形式の料理を食べたり持ち帰ったりができます。カレー関係の飲食物販売だけではなく物販もあったり、コアタイムにはトークショーもありで充実ぶりが感じられます。
知った顔もたくさんいて楽しめました。
デリー、エリックサウス、スープカレーらっきょ、カレーの車、ビートイート、ナイルレストラン、ハバチャルなどの出店、ああ、選りすぐりだねえという感があってね。他にも日替わりの店などもあったそうで、全てを網羅はちょっと大変なくらいの出店数でした。書籍、スパイス、食器、アクセサリーやアパレルなども販売されていて、さながら昨今のカレーブームのエッセンスの濃い部分をすくい上げたような展開。こりゃあ楽しい。
料理は楽しみにしていた喜多見の「ビートイート」の鹿ビリヤニを食べることにしました。
軽くてサラサラした仕上がりのごはんはいくらでも食べられるおいしいやつ。鹿は驚くほど癖がなく、でもやっぱり手応え食べ応えというものもあって、これがうまいビリヤニと合わさっている楽しさときたら、他の料理に代え難いです。うむー実に、大変に美味しく、幸せなまま一気にいただきました。
あ、ビートイートのステッカーもらえたのすごいうれしかった。あの鹿のマークのやつ。宝だわ。
さて、目玉のワークショップ。これを楽しみにしてきました。
愛もあればトレンドもある、という各トークショーのメンバーラインナップ。
「カシミールカレーの秘密」についてなど水野仁輔さん、稲田俊輔さん、田中源吾社長が語り合うなど大変なコンテンツだと思うよ本当に。そのまんまおしまいじゃあもったいなさすぎだ。紙に書き起こししたいですよね。
そしてこの日は香取薫先生のワークショップ。
「インドの台所の秘密に迫る」
というタイトル。
わずかな金額(500円!おいおい、、)で貴重な香取薫先生のお話を聞いて簡単なものではありますが自分の手を少しだけ動かしてスパイスを使った体験ができるのだというね。もうこれとんでもないことだよ。
当初申し込みは一瞬で埋まって、でも見学ができるのでトークはワークショップのスペースの外からのぞいてねって聞いてたんですよね。そうしたら、香取先生が取材枠を設けてくださって、実際に近くでもて少し手を動かして、を体験することができました。香取先生、本当にありがとうございます。
ワークショップ自体は香取先生のおしゃべりを聞きながら「アールーチャット」インドのストリートフードで日本人の舌にもよくあう美味しい軽食を作るところを見せてもらい、作ってくださったそれを実食(これ、超美味!!)、合わせて「ニンブーソーダ」スパイスの入った甘いソーダを自分たちで作って飲むというものです。言葉にしてしまえばそれだけなのですが。
それがね、どうすごいことかというと、文化の話にまでつながるというところ。
今回の小さなワークショプには香取先生が主催するインドやスリランカ料理を学べる教室「キッチンスタジオペイズリー」、そのエッセンスが注ぎ込まれるということなのです。
銀座松屋という場所でその入り口を体験をして、まずは興味を持ってもらう。その興味が必ず膨らむはずで(事実、ボクがそう)、武蔵境にある彼女の教室へ通いたくなるんです。これだけだと単なる宣伝っぽく聞こえるかもしれない。でもそうじゃないんだよね。
武蔵境に待っているのは調理技術や手法という話を超えた、インド亜大陸周辺のお母さんたちの英知の話し。そしてそこまでいくと気付く人は気づくのだけど、その英知というのは自分たちの、日本人のお母さんやおばあさんたちも持っていたものと同じで、それを絶やさぬようにせねばいけないということ。必ずその事実に行き当たるはずだと思うんです。すべての食は家族の健康のためにあります、それが料理の根源。そのことが世界共通であることをインド料理の教室で気づく。ここが大事なのではないかと思っています。商売とか料理教室とかいう表層のことではなく、そういうものがあることに気がついてしまったら後には引けなくなると思いますよ。その一歩目がこの松屋銀座でのワークショップであったと感じてい流のです。
ジェンダーの話とかセンシティブな時代になりました。でも、歴史を見ても、家族の健康を守ってきてくれたのは、お母さんとおばあちゃん。それはもう、変えようのない事実です。それをちゃんと大切にして、ちゃんと理解してゆくこと、伝えてゆくことは絶対にやらねばならないことだと思っています。ボクは男性ですが、たまたま食の世界でいろいろ書いたり喋ったりすることが生業になったので、理解する努力と伝えることはやっていきたいと思っています。
百貨店の催事の担当者がこの「カレーなる7日間~カレーの秘密に迫る~」というイベントにどういう想いで臨んだのかは計れないですが、そういうものが内包されたワークショップが開催されたという事実は変わらないのです。それを上手に銀座の真ん中で開催させたことに大きな意義があったのではないでしょうか。
売り上げと集客に喘ぐ百貨店。その催事はいろいろ大変なことも多いと思いますが、質の良い顧客をきちんとフォローアップし続けるためにきちんとわけも意義もある催事を続けることが何か突破口を開くことになるのではないでしょうか。そんなことを思っています。
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