アジアハンターの小林さんから連絡が来ました。
「ちょっと新メニューの試食会みたいのがあるんですけど協力してもらえませんか?」
しますよします。そこ、好きなお店だから。
カレーですよ。
うちの近くにこの看板がやってきた時には驚いたもんです。
ご存知銀座、アーンドラキッチン。
ボクの最寄り駅の隣駅にアーンドラの看板の店が出店したと聞いた時には耳を疑いましたねえ。城東地区にあのアーンドラの看板がやってきて繊細で大変美味しい料理を気軽に食べに行くことができるようになるなんてね、夢にも思わなかったよ。
そのことに一番驚き、喜んでいるのは実はボクなんです。
「アーンドラカフェ」
いいお店です。
少し東大島駅から歩くけど、その価値があるよなあ。
小林さんが仲を取りもち誘ってくださったこの夜の試食会。「Taste of HomeMenu」というテーマです。うわあ、明らかにボクの好みの方向のご飯が出るに違いない。面白い話も聞けるんじゃないかしら。
この夜の「Taste of HomeMenu」というテーマのもと、この日はレギュラーのシェフの料理ではなくて、スワティさんという普段はデザイナーのお仕事をしている美人さんが調理をしてくださったんですよ。新メニューの開発、その味見を仰せつかったというわけです。そうかあ、家庭風の料理をやるんだ。いいねえ。とてもいい。
アルー・サブジ
塩が強くキリッとした輪郭ある味のジャガイモのスパイス炒めです。こういうシンプルなものはいくらでも食べられる。いいよねえ。また、調理の時の自由度も高くその人なりのスパイスの使い方で表情の変化が大きいと感じるものなので、逆に特徴を出しやすいのかもしれないですね。スワティさんのはとても好み。アンケートでは何に合わせるといい?という問いが。ナーンではなくバスマティライスではなく、ビール!の一択。
エッグプラント
パンジャーブ料理などの甘いグレイヴィの卵のカレーとはまた違った美味しさです。そういうやつよりも甘さを控えてよりスパイシーになっているのがいいねえ。トマトのベースが生かされてる感じです。好みです。
ナスカレー
アーンドラ地方の人気料理。ナッツや柑橘類でアクセントをつけた、野菜の旨味とスパイスの力強さ感じる良カレー。うわこれうまい。辛くしない方向性でこれは好み。大変美味しいです。
ココナッツカレー
ココナッツを使ったクリーミーな野菜のカレー。野菜をローストして焼き目をつけてあるのが香ばしさと味の厚みを加えることになって好感。タイカレーと味が似ていると感じる?という質問がアンケートにあって面白く感じました。もちろんそんなことはまったくなくて、きちんとインドの味わいなわけですが外から見たときにどう思われているのかが知りたいのだろうなあと感じました。「ハーブではなくスパイスが香るのでちゃんとインドカレーのテイストになっているよ」と返してみました。
マサラ・キチュディ
日本でいえばお粥ということになるのかな。キチュディ(キチュリ)こそまさに家庭料理、家庭の味です。優しく、深く、穏やかで滋養、滋味という言葉がしっくりきます。あとはお漬物くらいあれば他に何もいらないって感じの1ボールで済む完全料理。本当においしかった!アンケートで「他に何か合わせたいものはありますか?カレーとかヨーグルトとか、、」という問いがありましたが、完全に、何もいらない。パーフェクトです。
それで、思ったのが女性が手を動かすインド料理というのは価値がある、ということ。
それは家庭料理とレストラン料理という区分けの話し。
本来土着の地域料理というものは、古今東西男性はあまり手を出さなかったんですよね。ゼロではないけれど、ほとんどの事例が、家族の健康と体調を管理するお母さん、おばあちゃんがその役を司ってきました。ジェンダー問題でセンシティブな昨今でありますが、これは別のお話し。歴史という観点から見れば、本来土着の料理というのは女性がその歴史を作ってきました。女性が作る家庭料理は健康管理、体調維持につながっています。男性の料理は芸術や仕事という側面が強いのではないでしょうか。どちらがいい悪いではなくどちらにも価値があります。そして現代の東京の話し。
日本は世界と比べると少し変わっていて、昔から家庭料理が商売になる不思議な国です。母ちゃんの味、おにぎりの店、などの看板を目にすることも多いでしょう。
今でこそヨーロッパ料理や世界のトレンドを受けての、例えばバンコクのガガンのような店もあるわけですが、インド人シェフたちは決して家庭料理を作らなかった時代が長かったのです。プロであり、星がいくつもつくようなホテルの料理長を務めた自分がなぜ日本にきてまで家庭料理などを作らなければならぬのか?彼らの意見はそういうものでした。もっともな意見でもあります。同様に屋台料理などもそういう扱いとなるわけです。
職業としてのプロフェッショナリズムとカーストの時代などを経てきたインドの人々のメンタリティなどでそういう風に考えるのでしょう。そして昔は女性シェフの数は極端に少なかったんです。
珍しい事例ですが。
浅草のサウスパークはケーララ州の主婦の方が数人集まって運営するレストランです。2010年代の東京という環境が生み出した貴重で特殊な事例だと感じています。あれは本国では実現不可能なのではないかな、など思うところがあり、いつかそこらへんの感覚というものをオーナーの女性たちにインタビューしてみたいと考えています。
そういうものも受け入れる場所を持つ東京のレストランシーン。
今回のアーンドラカフェの取り組み、女性がメニュー考案をしてそれを定番入りの検討するという流れ。
アジアハンターの小林さんもおっしゃっていましたが、そこを一歩進めて女性シェフがキッチンに入る日などをスペシャルデイとして設定、告知をして、遠方からカスタマーが集まる土日で予約を取って、というのはいいのではないかしら。ボクもそれ行きたいです。オーナー氏に熱心に進める小林さんは東京のインドレストランのシーンのキーを握る人物の一人。
近所に良い店があると気持ちが豊かになります。
そして城東地区、江東、江戸川から日本のインド料理のシーンが変わっていきます。
とても嬉しいことです。
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